PBA世界選手権、記憶に残る勝利TOP10
第7位から第10位を振り返る

17人目の王者誕生へ、PBA世界選手権が再び熱を帯びる

PBAワールドシリーズ・オブ・ボウリングは、これまでに16人のメジャーチャンピオンを生み出してきた。そして次回のAMF PBA世界選手権決勝では、新たに17人目の王者が誕生する可能性がある。

今年の最大の注目は、EJタケットだ。タケットはPBA世界選手権で現在3連覇中。今回もステップラダーの頂点で待ち構えており、もし優勝すれば、PBAツアーにおいて同一大会を4年連続で制した初の選手となる。

さらに、その偉業は史上初となる4年連続PBA年間最優秀選手賞にも大きく近づくものだ。つまり今回の世界選手権は、単なるタイトル争いではない。PBAの歴史を塗り替えるかもしれない、極めて重要な大会なのである。

その舞台となるのは、ミシガン州アレンパークのThunderbowl Lanes内にあるStrobl Arena。PBAワールドシリーズ・オブ・ボウリングの歴史と深く結びついた会場であり、歴史的瞬間を迎えるにはこれ以上ない場所だ。

今回の記事では、PBA世界選手権の名勝負ランキングから、特に印象的な第7位から第10位までの勝利を振り返る。順位は、歴史的な意味、試合展開の緊張感、感情的なインパクト、そして観客の反応を基準に選ばれている。

 

PBA世界選手権を彩った名勝負ランキング

第7位:2010年

クリス・バーンズ、批判を跳ね返しトリプルクラウン達成

2010年のPBA世界選手権で大きな注目を集めたのが、クリス・バーンズの優勝だった。

当時のバーンズは、実力者として高く評価されながらも、「テレビ決勝で勝ち切れない選手」という印象を持たれていた。中継でも、彼の実力を称える一方で、重要な場面での弱さがたびたび指摘されていた。

しかし、この日のバーンズは違った。

プレーインマッチでマイケル・ハウゲンJr.を243対172で下すと、その後もオスク・パレルマーを246対176ショーン・ラッシュを237対161ビル・オニールを267対237で撃破。すべての試合で30ピン以上の差をつける圧巻の内容だった。

平均スコアはほぼ250。まさに隙のない勝ち上がりだった。

この優勝により、バーンズはトリプルクラウンを達成した。長年つきまとっていた「大舞台に弱い」という評価を、自らの投球で完全に振り払った瞬間だった。

この勝利が第7位に選ばれている理由は明確だ。単なるメジャータイトル獲得ではなく、選手としての評価を大きく変えた勝利だったからである。

 

第8位:2013年

ドム・バレット、早すぎる歓喜からつかんだ初メジャー

第8位に選ばれたのは、2013年のドム・バレットによるPBA世界選手権初制覇だ。

この試合で語り継がれているのは、バレットの勝利そのものだけではない。むしろ、彼が勝利を確信したタイミングの早さが印象的だった。

通常、ボウラーは最終フレームで必要なピン数を正確に把握し、最後の一投まで冷静さを保つ。しかしバレットは、10フレームでダブルを決めた時点で大きく喜びを表した。実際には、まだフィルショットで8ピンが必要な状況だった。

それでもバレットは、その重圧をものともせず、最後の投球でもストライクを決めた。そして2013年PBA世界選手権の王者となった。

この勝利は、バレットにとってキャリア初のメジャータイトルだった。さらに後にトリプルクラウンへとつながる、重要な第一歩にもなった。

勝利を確信する大胆さ、最後まで投げ切る集中力、そして初メジャー獲得というキャリア上の意味。そのすべてが重なったからこそ、この試合は第8位にふさわしい名場面として記憶されている。

 

第9位:2015年

ゲイリー・フォークナーJr.、歴史を変えた唯一無二の優勝

第9位は、2015年のゲイリー・フォークナーJr.による歴史的勝利だ。

フォークナーにとって、このタイトルは現時点で唯一のPBAツアー優勝である。しかし、その価値は単なる「1勝」では語れない。彼はこの勝利によって、PBAツアーで優勝した史上2人目の黒人選手となった。ジョージ・ブラナムIII以来となる快挙であり、PBAの歴史に大きな意味を残した。

さらに驚くべきことに、この大会はフォークナーにとってPBAのテレビ決勝デビューでもあった。

初戦ではスコット・ノートンを相手に262対218で勝利。ほぼ完璧に近い内容で、堂々とした投球を見せた。続く試合では、当時年間最優秀選手候補だったライアン・シミネリを247対237で破った

そして決勝で対戦したのが、若きEJタケットだった。

今でこそタケットはPBAを代表する絶対的な存在だが、当時はまだ成長段階にあった。それでも、トップシードとして決勝に進んでいたことから、すでに将来の支配的な強さを予感させる選手だった。

しかし、この日のフォークナーを止めることは難しかった。最終スコアは216だったが、数字以上に内容は圧倒的だった。9フレームの時点で事実上勝負を決め、タケットを退けたのである。

この勝利は、フォークナー自身の人生を変えただけでなく、PBAという競技の歴史にも深く刻まれた。だからこそ、第9位という順位以上に重みのある優勝だと言える。

 

第10位:2022年

クリス・プラザー、ロールオフの死闘を制す

第10位に入ったのは、2022年のクリス・プラザーによる劇的な勝利だ。

この年の決勝は、プラザーとジェイソン・スターナーによる緊迫した一戦となった。プラザーは終盤まで9ピンのリードを持ち、ストライクを続ければ勝利を決定づけられる状況にあった。

しかし、終盤で痛恨の10ピン残りが続く。勝利を目前にしながら、流れは一気にスターナーへ傾いた。

プラザーにとって、この状況は特に重かった。数週間前のトーナメント・オブ・チャンピオンズでも、彼はタイトルマッチでドム・バレットに敗れていた。再びメジャー決勝で勝利を逃すかもしれない。その重圧は計り知れないものだった。

一方のスターナーは、第4シードからジェイコブ・バトラフ、ジェイソン・ベルモンテ、トミー・ジョーンズを破って決勝まで勝ち上がってきた。初のメジャータイトル、そしてキャリアを大きく変える勝利が目前にあった。

しかし、10フレームでスターナーは決定的な一投を投げ切れず、試合はロールオフへ突入する。

そこでプラザーは見事に立て直した。最初の投球でストライクを決め、スターナーに再び「ストライクを取らなければ敗北」という極限の状況を突きつけた。スターナーは応えきれず、プラザーが2つ目のメジャータイトルを手にした。

この試合が第10位に選ばれた理由は、勝利までの道のりにある。プラザーの苦悩、スターナーの快進撃、そしてロールオフという劇的な結末。すべてが重なり、忘れがたい名勝負となった。

 

名勝負の積み重ねが、タケットの挑戦をさらに大きくする

PBA世界選手権は、単にその年の最強選手を決める大会ではない。選手の評価を変え、キャリアの意味を塗り替え、時には競技の歴史そのものに新しい章を加える舞台である。

第7位のクリス・バーンズは、批判を実力で跳ね返し、トリプルクラウンを達成した。
第8位のドム・バレットは、大胆な歓喜とともに初メジャーを手にし、偉大なキャリアへの扉を開いた。
第9位のゲイリー・フォークナーJr.は、PBAの歴史に残る象徴的な勝利を挙げた。
第10位のクリス・プラザーは、極限の重圧を乗り越え、ロールオフの死闘を制した。

そして今、EJタケットが新たな歴史の入口に立っている。

もしタケットが今回のPBA世界選手権を制すれば、同一大会4連覇という前人未到の偉業が達成される。それはPBAツアー全体の歴史に残る瞬間となり、彼の支配的な時代をさらに決定づけることになるだろう。

Thunderbowl LanesのStrobl Arenaで、新たな伝説は生まれるのか。それとも挑戦者たちが、タケットの歴史的快挙を阻むのか。

過去の名勝負を振り返るほど、今回の世界選手権が持つ意味は大きくなる。PBA世界選手権は今年もまた、ボウリングファンに忘れられない瞬間を届けてくれそうだ。