EJタケット、PBA史上初の4連覇達成
王者が刻んだ前人未到の記録

プロボウリング史に残る「4年連続」の衝撃

2026年のAMF PBAワールドチャンピオンシップで、EJタケットがプロボウリング史に残る偉業を成し遂げた。トップシードとして決勝に進んだタケットは、タイトルマッチでザック・ウィルキンス188-181で下し、同大会4連覇を達成。PBA史上初となる「同一タイトルイベント4年連続優勝」という前人未到の記録を打ち立てた。

この勝利は、単なるメジャータイトルのひとつではない。PBAの長い歴史において、誰も到達できなかった領域にタケットが踏み込んだ瞬間だった。

舞台はミシガン州アレンパークAMFサンダーボウル・レーンズ内、ストロブル・アリーナ。会場を埋めた観客、そしてCBSParamount+を通じて世界中から見守ったファンは、最後の最後まで息をのむ展開を目撃した。

試合後、タケットはこう語っている。

「今この瞬間の気持ちを言葉にすることができない。このスポーツの歴史で誰も成し遂げたことのないことをやってのけたのだから」

その言葉には、喜び、安堵、誇り、そして長年トップレベルで戦い続けてきた選手だけが知る重圧から解き放たれた感情が込められていた。

 

劇的な最終フレームが分けた栄冠の行方

第7シードから駆け上がったザック・ウィルキンス

今回の決勝ラウンドで、タケットと同じくらい強烈な存在感を放ったのがザック・ウィルキンスだった。

ウィルキンスは、9人で争われるステップラダー決勝第7シードとして登場した。ステップラダー方式では、下位シードの選手ほど多くの試合を勝ち抜かなければ頂点に届かない。つまりウィルキンスにとって優勝への道は、最初から極めて険しいものだった。

しかし、彼はその不利をものともしなかった。

まず第8シードのジェイソン・スターナー180-165で破ると、続く第6シードのブランドン・ボンタ戦では223-173と快勝。さらに第5シードのジェイソン・ベルモンテ185-181で下した。世界的な実績を持つベルモンテを倒したことで、ウィルキンスの勢いは一気に本物になった。

チャンピオンシップラウンドに入っても、その快進撃は止まらない。

第4シードのクリス・プラザー戦では192-192の同点となり、ロールオフにもつれ込んだ末に勝利。続く第3シードのビル・オニールには205-144で大勝し、第2シードのクリス・ヴィア235-217で退けた。

第7シードからの6連勝。ウィルキンスは、まさに奇跡の優勝まであと一歩のところまで迫っていた。

 

タイトルマッチは最後まで読めない接戦に

決勝の相手は、トップシードのEJタケット。すでに3年連続でAMF PBAワールドチャンピオンシップを制している絶対王者だった。

一方のウィルキンスは、長いステップラダーを勝ち抜いてきた挑戦者。試合勘、集中力、勢いという点では、むしろウィルキンスに分があったとも言える。

対するタケットは、長時間待機した後にいきなりタイトルマッチへ臨む立場だった。トップシードは有利に見えるが、実戦を重ねて温まっている相手と一発勝負を戦う難しさもある。しかも相手は6連勝中。試合の流れだけを見れば、ウィルキンスが主導権を握っても不思議ではなかった。

それでもタケットは崩れなかった。

スコアは最後まで大きく離れず、緊迫した展開が続いた。どちらが勝ってもおかしくない空気の中、勝負は最終フレームへともつれ込んだ。

 

10フレーム目、勝利目前で訪れた4-9スプリット

この試合最大のドラマは、ウィルキンスの第10フレームに訪れた。

ウィルキンスは、最終フレームでマークを取れば優勝を決められる状況にあった。第7シードから6人を倒し、最後に絶対王者タケットを破る。そんな劇的なストーリーが完成する寸前だった。

しかし、投球後に残ったのはポケット4-9スプリット。優勝が目前に迫る中で、極めて難しい残りピンが立ちはだかった。

ウィルキンスはスペアを狙った。だが、ボールはわずか数センチ届かなかった

その瞬間、会場の空気が止まった。

歓声より先に訪れたのは、沈黙だった。観客も、画面越しに見守るファンも、あまりに残酷で劇的な結末に言葉を失った。勝負の女神は最後の最後でタケットに微笑んだ。

最終スコアは188-181。わずか7ピン差で、タケットが歴史的な4連覇をつかみ取った。

 

同じレーンで味わった敗北を、歴史的勝利へ変えた

今回の優勝をより印象深いものにしているのが、試合が行われたレーンの背景である。

タケットは2カ月前、同じペアのレーンで行われたUSBCマスターズで、劇的かつ痛烈な敗戦を経験していた。その大会で彼は、キャリア・グランドスラム達成のチャンスを逃している。

大記録にあと一歩届かなかった悔しさ。勝負所で手からこぼれ落ちたタイトル。その記憶は、タケットにとって簡単に消えるものではなかったはずだ。

だが今回は違った。

キャリア・グランドスラムは逃した。しかし、PBA史上初の4連覇は逃さなかった

同じ場所で味わった苦い記憶を、同じ場所で歴史的な勝利へと変えた。この構図こそ、今回の優勝を単なる記録以上の物語にしている。

 

通算28勝、メジャー8勝目という重み

この勝利により、タケットはPBAツアー通算28勝目を挙げた。さらにメジャータイトルは通算8勝目。AMF PBAワールドチャンピオンシップでは4年連続の戴冠となり、優勝賞金10万ドルを手にした。

4年連続で同じメジャー大会に照準を合わせ、4年連続で最後に勝ち切る。これは技術だけで実現できるものではない。

レーンコンディションへの対応力プレッシャー下での判断力身体とメンタルのコンディショニング、そして勝負どころで自分の投球を信じ切る強さ。そのすべてが揃って初めて、今回のような記録は生まれる。

タケットは、ただ好調な選手ではない。時代を代表する王者であり、PBAの歴史そのものを更新する存在になった。

 

試合結果:ウィルキンスの快進撃とタケットの戴冠

プレイイン・ステップラダー

対戦結果
No.8 Jason Sterner vs No.9 Darren TangJason Sterner 203-202 Darren Tang
No.7 Zach Wilkins vs No.8 Jason SternerZach Wilkins 180-165 Jason Sterner
No.7 Zach Wilkins vs No.6 Brandon BontaZach Wilkins 223-173 Brandon Bonta
No.7 Zach Wilkins vs No.5 Jason BelmonteZach Wilkins 185-181 Jason Belmonte

チャンピオンシップラウンド

対戦結果
No.7 Zach Wilkins vs No.4 Kris PratherZach Wilkins 192-192、ロールオフで勝利
No.7 Zach Wilkins vs No.3 Bill O’NeillZach Wilkins 205-144 Bill O’Neill
No.7 Zach Wilkins vs No.2 Chris ViaZach Wilkins 235-217 Chris Via
No.1 EJ Tackett vs No.7 Zach WilkinsEJ Tackett 188-181 Zach Wilkins

 

最終順位と賞金

順位選手賞金
1位EJ Tackett100,000ドル
2位Zach Wilkins60,000ドル
3位Chris Via40,000ドル
4位Bill O’Neill30,000ドル
5位Kris Prather25,000ドル
6位Jason Belmonte20,000ドル
7位Brandon Bonta17,000ドル
8位Jason Sterner14,000ドル
9位Darren Tang12,000ドル

 

EJタケットは「勝ち続ける王者」から「歴史を変えた王者」へ

2026年AMF PBAワールドチャンピオンシップは、EJタケットの偉大さを改めて証明する大会となった。

4連覇という結果だけを見れば、タケットの強さが際立つ。しかし、その裏側には、ザック・ウィルキンスの驚異的な6連勝最終フレームでの4-9スプリット、そして2カ月前に同じレーンで味わったタケット自身の苦い記憶があった。

だからこそ、この優勝は単なる数字以上の意味を持つ。

タケットは、過去の敗北を乗り越え、極限のプレッシャーの中で勝ち切った。あと一歩で歴史的逆転優勝をつかみかけたウィルキンスの挑戦を退け、自らの手でPBA史上初の4連覇を完成させた。

PBAツアー通算28勝目メジャー通算8勝目。そして、AMF PBAワールドチャンピオンシップ4年連続優勝

EJタケットは、もはや「現代最高峰の選手」のひとりという枠にとどまらない。彼は今、プロボウリングの歴史を更新する王者として、その名を確かなものにしている。

2026年のPBAツアーは、次戦のマグナム・アイスクリーム・カンパニーPBAノーム・デューク・オープンへと続く。歴史を作ったタケットが、この先さらにどんな記録を積み上げていくのか。ボウリングファンの視線は、これまで以上に彼の一投一投へ注がれることになる。