王者の中の王者は誰だ
2026 PBAトーナメント・オブ・チャンピオンズ開幕プレビュー
名門リビエラで始まる“王者の中の王者”決定戦
「この扉をくぐるのは、世界最高のボウラーたち。」――そのフレーズが選手とファンを迎える、PBAツアー最高峰のメジャーが PBA Tournament of Champions(TOC) だ。2026年大会の舞台は、オハイオ州フェアローンの名門 AMF Riviera Lanes。今大会は第61回を数え、リビエラでの開催は通算37回目。長い歴史の重みと、今この瞬間の最強を決める緊張感が同居する一週間が幕を開ける。
今年は節目の年でもある。レジェンド マーシャル・ホルマンがTOCで2度頂点に立ってから40年・50年という記念すべき周年にあたり、プロアマ前夜にはセレモニーも実施された。TOCは過去の偉業を称えながら、次の“伝説”を生む場でもある。ここで勝つのは、ただの勝者ではない。タイトルホルダーだけが集う大会で頂点に立つ、文字通りの「チャンピオンの中のチャンピオン」だ。
そして今大会は、PBAツアーのテレビ中継ラインとしても重要な位置づけにある。今季最後の「PBA Championship Sunday」として、決勝ステップラダーは 4月26日(日)16:00(米東部時間) にThe CWで生放送される。日本(東京)時間の目安では、時差の関係で 翌4月27日(月)早朝 のスタートになる見込みだ。
見どころは「王者の格」か「新時代の波」か
1)ベルモンテ復帰。最強の帰還は“思い出のレーン”で加速するか
今大会の主役候補を挙げるなら、やはり ジェイソン・ベルモンテを外すわけにはいかない。現役屈指の実績を誇る32勝のツアーチャンピオンで、直近のシングルスタイトルは 2023年TOC。あの年、圧巻の追い上げで勝ち切り、TOC史に残る 「4度目の優勝」を成し遂げた。
注目したいのは、会場リビエラの中でも象徴的な 「レーン27-28」 という文脈だ。ベルモンテは2018年にTOCがリビエラへ戻って以降、ここでメジャーを2度制している。実績がそのまま自信に変わる舞台で、復帰直後のベルモンテがどこまでギアを上げるのか。TOCはスターが勝ちやすい大会、という常識を体現できるかが最初の焦点になる。
2)スベンソン連覇へ、タケットは歴史へ、サイモンセンは年間王へ
もちろん、守る側にも強い物語がある。イェスパー・スベンソンは2025年王者として連覇に挑む。王者の立場で“全員から研究される側”になっても勝てるかどうかは、トップ選手の証明そのものだ。
対抗の筆頭格が EJ・タケット。2026年はまだ勝利がなく、渇望感は誰よりも強い。しかもタケットにとって、もしTOCをもう一つ積み上げられれば「ただの一勝」では終わらない。TOCはメジャーの中でも特別な重みを持ち、複数回制覇は歴史的な評価に直結する。リビエラでの初タイトル、そしてキャリアの格付け――その両方を賭けた勝負になる。
さらに アンソニー・サイモンセンも見逃せない。2年前に準優勝を経験しているだけに、あと一歩の距離感を身体で知っている。今大会で2つ目の今季タイトル、かつ今季初メジャーを獲れば、年間タイトルレース(Player of the Year)で一気に主導権を握るシナリオも現実味を帯びてくる。
3)今年のツアーは波乱基調。「初優勝の連鎖」がTOCにも及ぶのか
ただし、ここで重要なのが“今季の空気”だ。2026年シーズンは、すでにタイトル獲得者10人のうち 「6人が初優勝」。さらに 「連覇者がまだいない」。スターが順当に勝つだけでは説明できない、勢力図の揺れが起きている。
しかもルーキー優勝者が複数名登場し、メジャーもまた“初メジャー”が続く。TOCは本来、経験と実績がものを言いやすい大会だが、今年に限ってはその常識が揺らぐ余地がある。王者たちの安定感が勝るのか、それとも新世代の上昇気流が「最も格式ある舞台」にまで到達するのか。今大会の最大のテーマは、実はここにある。
4)フォーマットは42ゲームの総力戦。勝ち方が問われる“濃い一週間”
TOCの難しさは、顔ぶれの豪華さだけではない。勝ち上がりのプロセスが長く、要求される能力が多面的だ。
- 出場条件:PBAツアータイトル保持者が本戦招待。地域ツアー王者は事前予選から勝ち上がる
- 予選:水・木の2日間で 「18ゲーム」 を投球し、上位24人がラウンドロビンへ
- ラウンドロビン:金曜までを含め合計 「42ゲーム」 終了時点の上位5人が決勝へ
- 決勝:上位5人による 「ステップラダーファイナル」(4月26日 16:00 ET)
一日だけの出来で勝てる大会ではない。スコアメイクの技術、ラインの構築、コンディション変化への適応、勝負どころでのメンタル――すべてを42ゲームで試され、その上で最後は一発勝負の緊張感が待っている。TOCは「強さの総合点」を問うメジャーだ。
5)オイルは40フィート。「ドン・ジョンソン」への敬意が示す、リビエラの物語性
今大会のオイルパターンは40フィートで、PBA殿堂入り ドン・ジョンソンにちなんで命名された。ジョンソンが1970年、リビエラの レーン27-28 で刻んだ象徴的な 「299」――その記憶が、現代のタイトル争いの背景として息づく。伝説を生んだ場所で、次の伝説が生まれる。TOCが特別であり続ける理由は、こうした 「舞台の物語性」にもある。
伝統の舞台で、2026年の“答え”が出る
2026年のTOCは、分かりやすい主役たちが揃う一方で、シーズン全体の潮流は波乱を示している。ベルモンテが「王者の格」でねじ伏せるのか。スベンソンが連覇で強さを証明するのか。タケットが歴史的な一勝を掴むのか。サイモンセンが年間レースを決定づけるのか。そして何より、今年のツアーを象徴する 「初優勝の連鎖」 が、最も格式あるメジャーにも及ぶのか。
42ゲームの総力戦を経て、最後に残る5人がステップラダーで見せる一投一投が、2026年シーズンの勢力図をはっきりと描き出す。名門リビエラで示される“答え”を見逃したくない。