PBA史が動く一戦へ
タケット4連覇と9人の挑戦者たち

PBAワールドチャンピオンシップ、歴史が動く6月13日

6月13日、ボウリング界の頂点を決める大一番「AMF PBAワールドチャンピオンシップ」が、Thunderbowl LanesStrobl Arenaで開催される。舞台に立つのは、厳しい戦いを勝ち抜いた9人のファイナリスト。プレーイン・ステップラダーは米東部時間午前11時からCBS Sports Networkで放送され、その後、午後1時からCBSとParamount+でチャンピオンシップラウンドが行われる。

しかし、今年のワールドチャンピオンシップは、単なるメジャータイトル争いではない。

ある選手にとっては前人未到の記録への挑戦であり、ある選手にとってはキャリアの評価を決定づける一戦であり、また別の選手にとっては過去の悔しさを晴らすための舞台でもある。9人のファイナリストは、それぞれ異なる物語を背負いながら、たった一つのタイトルを目指してレーンに立つ。

今年の大会を特別なものにしているのは、勝敗の先にある「意味」だ。誰が勝つかによって、PBAの歴史、年間最優秀選手争い、殿堂入りの議論、さらにはボウリングの技術的な潮流までもが大きく変わる可能性がある。

 

9人のファイナリストが背負う、それぞれの物語

EJタケット、前人未到の4連覇へ

今年最大の注目を集めるのは、やはりEJタケットだ。彼は過去3年連続でワールドチャンピオンシップを制しており、今回勝てば、同一メジャー大会4連覇という前例のない偉業を達成する。

PBAの歴史を振り返れば、偉大な連覇記録はいくつも存在する。アール・アンソニーはPBAナショナルチャンピオンシップで3連覇を達成し、ジェイソン・カウチはトーナメント・オブ・チャンピオンズで3連覇を果たした。ジェイソン・ベルモンテも、マスターズとワールドチャンピオンシップでそれぞれ3連覇を成し遂げている。

だが、メジャー大会であれ通常大会であれ、4年連続で同じ大会を制した選手はいない。タケットは今、その扉の前に立っている。

2023年のタイトルマッチでは、ベルモンテを相手に第10フレームでダブルを決め、劇的な勝利を収めた。この試合は、PBAコミッショナーのトム・クラークが「史上最高の試合」と評したほどの名勝負だった。2024年にはThunderbowlで、左投げ選手4人が並ぶステップラダーを勝ち抜いて連覇。そして昨年もリノで、再びベルモンテを相手に第10フレームで勝負を決めた。

もし今年も勝てば、ワールドチャンピオンシップ4連覇だけでなく、4年連続年間最優秀選手という史上初の偉業にも大きく近づく。タケットにとって、この大会は単なる防衛戦ではない。PBA史に自分の名前を刻み込むための、決定的な一戦である。

 

クリス・ヴァイ、勝利の先にある「納得」を求めて

クリス・ヴァイは、すでにメジャータイトルを手にしている選手だ。2021年の全米オープンを制し、PBAツアーでも実績を残してきた。しかし、彼の物語は「勝ったことがある」という一言では片づけられない。

2021年の全米オープン優勝は、パンデミック下での勝利だった。会場の空気は通常とは異なり、彼の母親も客席ではなく、駐車場からスマートフォン越しに息子の戦いを見守っていた。その勝利は間違いなく価値あるものだったが、満員の観客の前で、自分の力を証明しきったという感覚とは少し違っていたのかもしれない。

昨夏には、親しい友人であるブライアナ・コテとのミックスダブルスでPBAツアー2勝目を挙げ、長く続いていたタイトルから遠ざかる時間にも終止符を打った。それでも、彼が本当に求めているのは、ただ勝利数を増やすことではない。

アスリートが追い求める「最高」は、必ずしも結果だけで測れるものではない。勝利には種類がある。相手のミスによって転がり込む勝利もあれば、勝負どころで自らストライクを決め、観客を沸かせてつかみ取る勝利もある。

今回、ボウリング界を代表する強豪たちを倒し、象徴的な会場でメジャータイトルを獲得できれば、ヴァイにとってそれは過去のどの勝利とも違う意味を持つだろう。彼が求めているのは、タイトルそのもの以上に、「自分は本当に最高の舞台で勝った」と胸を張れる瞬間なのだ。

 

ビル・オニール、殿堂入り後に築く新たなレガシー

ビル・オニールは、すでにPBA殿堂入りを果たした名選手である。しかし、殿堂入りはキャリアの終着点ではない。むしろ彼にとっては、そこからどれだけ評価を積み上げられるかという、新たな段階の始まりでもある。

PBAツアー史上、メジャー4勝以上を挙げた選手はわずか16人しかいない。そのうち現役選手は、ジェイソン・ベルモンテ、EJタケット、アンソニー・シモンセンの3人だけだ。オニールが今回のワールドチャンピオンシップを制すれば、この極めて限られたグループに加わることになる。

オニールの価値は、単に勝利数だけでは語れない。彼は2000年代から2020年代にかけて、競技環境や用具、レーンコンディション、投球スタイルの変化に適応しながらトップレベルで戦い続けてきた。特に両手投げの台頭が進む現代において、ワンハンドボウラーとして自らの技術を磨き、進化させてきた点は高く評価されるべきだ。

今回の優勝は、彼のキャリアに新たな勲章を加えるだけではない。時代の変化に適応し続けたワンハンドボウラーとしての評価を、さらに確固たるものにする勝利となる。

 

クリス・プラザー、殿堂入りを決定づける一勝へ

クリス・プラザーは、すでに十分な実績を持つ選手だ。ツアー6勝、メジャー2勝。2022年のワールドチャンピオンシップ優勝によって、PBA殿堂入りの資格を満たすだけのタイトル実績も築いている。

さらに、2020年のトーナメント・オブ・チャンピオンズでは、メジャー大会のステップラダーを勝ち上がる力を証明した。大舞台で勝つ方法を知っている選手であることは、すでに結果が示している。

それでも、殿堂入りをめぐる議論には「決定打」が必要になることがある。プラザーが今回、強豪ぞろいのステップラダーを再び突破し、3つ目のメジャータイトルを手にすれば、その評価は一段と揺るぎないものになるだろう。

彼にとって今年の大会は、過去の実績を補強する場ではない。自分が一時代を代表する選手であることを、誰の目にも明らかにするための舞台である。

 

ジェイソン・ベルモンテ、GOAT論争を動かす一戦

ジェイソン・ベルモンテは、現代ボウリングを語るうえで欠かせない存在だ。両手投げの象徴であり、数々のメジャータイトルを手にしてきた彼は、すでに史上最高選手、いわゆるGOAT候補として広く認識されている。

一方で、近年はタケットの圧倒的な活躍によって、ベルモンテの存在感が相対的に薄れて見える場面もあった。だが、それをもって彼の衰えを語るのは早計だ。過去4シーズンの成績を見ても、ベルモンテは依然としてツアー屈指の実力者である。

重要なのは、物語の力だ。GOAT論争においては、数字だけでなく、どの場面で誰を倒したのか、どんな歴史を止めたのかが大きな意味を持つ。

ベルモンテは昨年のワールドチャンピオンシップでトップシードを獲得した際、「世界最高の選手」を目指しているのではなく、「史上最高の選手」を目指していると語った。もし今年、タケットの4連覇を自ら阻止し、通算16個目のメジャータイトルを手にすれば、その物語性はあまりにも強烈だ。

2度にわたってタケットに敗れた舞台で、今度は自らが歴史を止める。そんな結末になれば、ベルモンテのGOAT論争における立場は、さらに強固なものになるだろう。

 

ブランドン・ボンタ、新人王の枠を超える可能性

ブランドン・ボンタは、今季のルーキー・オブ・ザ・イヤー争いにおける中心人物の一人だ。しかし、彼の活躍はすでに「有望な新人」という枠を超えている。

賞金ランキングでは2位、ポイントランキングでは3位。しかもこれは新人内での順位ではなく、全選手を対象にした成績である。さらに、出場した4つのメジャーすべてでトップ8入りを果たし、PBAプレイヤーズチャンピオンシップでは、デビュー戦でいきなりメジャータイトルを獲得した。

もちろん、ルーキー・オブ・ザ・イヤー争いには、トーナメント・オブ・チャンピオンズを制し、さらにシャークチャンピオンシップでも優勝したアレックス・ホートンという強力なライバルがいる。それでも、ボンタのシーズン全体を通じた安定感とメジャーでの強さは、非常に説得力がある。

もし今回、ステップラダーを勝ち上がり、再びタケットを破ってメジャータイトルを獲得するようなことがあれば、議論は新人王にとどまらない。年間最優秀選手と新人王を同一シーズンに獲得する、史上初の選手となる可能性すら出てくる。

ボンタにとって、この大会は「新人としてすごい選手」から「ツアー全体を代表する選手」へと評価を変えるチャンスである。

 

ザック・ウィルキンス、勢いを本物の評価へ変えられるか

現在のPBAツアーで、最も勢いのある選手の一人がザック・ウィルキンスだ。ロス/ホルマン・ダブルスチャンピオンシップを制し、トーナメント・オブ・チャンピオンズでもトップに立ち、さらにスコーピオンチャンピオンシップで優勝。今季、複数タイトルを獲得した最初の選手となった。

この躍進を予想できた人は多くなかっただろう。ウィルキンスは昨秋までリージョナルタイトルすら持っていなかった。それが今や、年間最優秀選手争いに名前が挙がる存在になっている。

ただし、勢いは結果によってのみ本物の評価へと変わる。今回のワールドチャンピオンシップで今季3勝目、しかもメジャータイトルを獲得できれば、彼は混戦の年間最優秀選手争いから一歩抜け出すことになる。

ウィルキンスにとって今年の大会は、驚きのシーズンを「一時的なブレイク」で終わらせるのか、それとも「トップ選手への本格的な到達」として記憶させるのかを分ける一戦だ。

 

ジェイソン・スターナー、4年前の悪夢に決着をつける舞台

ジェイソン・スターナーにとって、ワールドチャンピオンシップは特別な響きを持つ大会だ。4年前、彼は2022年大会のタイトルマッチでクリス・プラザーを相手に最終フレームまでリードしていた。しかし、その後の展開とロールオフにより、メジャータイトルは目前で手からこぼれ落ちた。

勝利に限りなく近づきながら届かなかった経験は、選手のキャリアに深く刻まれる。特にメジャー大会の決勝での敗戦は、何年経っても消えない悔しさとして残るものだ。

今回、スターナーがタイトルを獲得するには、連続してステップラダーを勝ち上がる必要がある。簡単な道ではない。それでも、だからこそ意味がある。

42歳のスターナーにとって、初のメジャータイトルは単なる初優勝以上の価値を持つ。過去の敗戦を乗り越え、自らのキャリアを再定義する勝利になるだろう。

 

ダレン・タン、両手投げ革命の新たな象徴へ

ダレン・タンの挑戦も、今年の大会を語るうえで欠かせない。彼は両手投げに転向してからわずか16カ月で、ワールドチャンピオンシップ制覇を狙う位置まで来た。

ボウリング界における両手投げの歴史は、すでに大きな流れとなっている。オスク・パレルマーが両手投げ選手として初めてメジャーを制し、その後、ベルモンテが両手投げ時代を一気に加速させた。今では両手投げは特別なスタイルではなく、トップレベルで勝つための有力な選択肢として定着している。

それでも、タンが今回優勝すれば、その意味は大きい。転向から短期間でメジャーを制することになれば、両手投げへの転向を考える選手たちに強烈なメッセージを与えることになる。

すでに彼の成功は、一部のツアー選手や周辺選手に影響を与えているとされる。もし3度の決勝進出を2つ目のタイトル、しかもメジャータイトルへとつなげれば、両手投げへの流れはさらに加速するだろう。

タンにとって今年の大会は、自分自身のタイトル獲得だけでなく、ボウリング界の技術的な未来を示す可能性を持っている。

 

勝者は一人。しかし、変わる歴史はいくつもある

AMF PBAワールドチャンピオンシップは、9人のファイナリストが一つのタイトルを争う大会である。しかし、今年の一戦が特別なのは、その結果が単なる優勝者の名前だけにとどまらない点にある。

EJタケットが勝てば、PBA史上前例のない4連覇という偉業が生まれる。ジェイソン・ベルモンテが勝てば、GOAT論争に新たな決定的材料が加わる。ブランドン・ボンタが勝てば、新人王を超え、年間最優秀選手候補として歴史的なシーズンを完成させる可能性がある。

ビル・オニールにとっては、殿堂入り後の評価をさらに高める機会。クリス・プラザーにとっては、殿堂入りへの説得力を決定づける一勝。クリス・ヴィアにとっては、自分自身が本当に求めてきた勝利をつかむ舞台だ。

ザック・ウィルキンスは勢いを本物の評価へ変えようとしている。ジェイソン・スターナーは4年前の悔しさに決着をつけようとしている。そしてダレン・タンは、両手投げの未来をさらに前へ押し出そうとしている。

勝者は一人だけだ。しかし、この大会で動く物語は一つではない。

6月13日、Thunderbowl Lanesで投じられる一投一投は、選手個人の運命だけでなく、PBAの歴史そのものを変える可能性を持っている。今年のワールドチャンピオンシップは、まさに「一投が時代を動かす」大会になる。