PBA世界選手権ランキングで振り返る
記憶に残る名勝負

PBA世界選手権が迎える大きな節目

プロボウリング界の最高峰の一つであるPBA世界選手権が、再び大きな注目を集めている。PBAワールドシリーズ・オブ・ボウリングはこれまで16人のメジャーチャンピオンを生み出してきたが、次回のAMF PBA世界選手権決勝では、17人目の王者が誕生する可能性がある。

なかでも最大の焦点は、EJタケットの動向だ。タケットは現在、PBA世界選手権を3連覇中。今回もステップラダーの最上位で待ち構えており、もし優勝すれば、PBAツアーにおいて同一大会4年連続優勝という歴史的偉業に大きく近づく。さらに、4年連続PBA年間最優秀選手という記録的な評価も現実味を帯びる。

一方で、ジェイソン・ベルモンテをはじめとする強豪選手たちもプレーイン・ステップラダーに登場する。ベルモンテは現代ボウリングを代表する存在であり、タケットとの因縁も深い。決勝ラウンドへ進むための戦いは、単なる予選通過争いではなく、PBAの歴史を左右する重要な一戦となる。

舞台はミシガン州アレンパークのサンダーボウル・レーンズ内にあるストロブル・アリーナ。PBAワールドシリーズ・オブ・ボウリングの歴史とも深く結びついたこの会場は、まさに記念碑的な瞬間を迎えるにふさわしい場所だ。今回の大会は、競技としての勝敗だけでなく、PBAの過去、現在、未来が交差する特別なイベントになろうとしている。

 

ランキングで振り返るPBA世界選手権の名勝負

PBA世界選手権の魅力は、単に優勝者を決めることにとどまらない。そこには選手のキャリアを一変させる瞬間長年の評価を覆す勝利、そしてスポーツ史に残るドラマがある。

 

第6位:2025年――タケット、圧巻の3連覇

近年を象徴する存在がEJタケットだ。2025年大会では、2年連続王者として臨んだタケットが、トップシードのジェイソン・ベルモンテと対戦した。2023年の世界選手権決勝の再戦ともいえるこのカードは、期待通りの緊張感に包まれた。

タケットはベルモンテを完全に突き放すため、終盤にダブルを必要とする状況に追い込まれた。その場面で本人が「キャリア最高のショット」と語るほどの投球を見せ、勝負を決定づけた。2025年のワールドシリーズ・オブ・ボウリングXVIにおけるタケットの成績は圧巻だった。5つすべてのチャンピオンシップラウンドに進出し、シャーク・チャンピオンシップのタイトルを防衛し、さらに世界選手権3連覇を達成した。

この勝利が特別なのは、単なる強さの証明ではない点にある。10年前、同じレーンで世界選手権を勝ち取るチャンスを逃したタケットは、その経験を教訓に変えた。そして2025年、同じ舞台で歴史的な勝利をつかんだ。挫折を記憶し、成長によって乗り越えた物語が、この勝利に深みを与えている。

 

第7位:2010年――クリス・バーンズ、トリプルクラウン達成

2010年大会ではクリス・バーンズが大きな評価の転換点を迎えた。当時の中継では、バーンズについて「優れた選手だがテレビ決勝に弱い」という見方が繰り返し語られていた。12勝を挙げながらも、22回のタイトルマッチで敗れていたという実績は、彼に対する評価を複雑なものにしていた。

しかし、その日のバーンズは批判を完全に封じた。マイケル・ハウゲンJr.、オスク・パレルマー、ショーン・ラッシュ、ビル・オニールを次々に破り、平均250近いスコアで圧倒。各試合を30ピン以上の差で制し、ついにトリプルクラウンを完成させた。これは、技術だけでなく精神面でもトップ選手であることを証明した勝利だった。

 

第8位:2013年――ドム・バレット、勝利を確信した歓喜

2013年大会のドム・バレットの優勝も、PBA世界選手権らしい劇的な場面として記憶されている。10フレームでダブルを決めたバレットは、まだフィルショットを残していたにもかかわらず、勝利を確信するかのように喜びを見せた

最終的にはストライクを決め、2013年PBA世界選手権を制覇。この勝利は彼にとって初のメジャータイトルであり、後にトリプルクラウンへつながる第一歩となった。通常なら最後の一投まで感情を抑える場面で見せた早すぎる歓喜は、この大会を象徴する印象的なシーンとして語り継がれている。

 

第9位:2015年――ゲイリー・フォークナーJr.、歴史を刻む勝利

2015年大会では、ゲイリー・フォークナーJr.が歴史的な勝利を収めた。フォークナーはPBAツアーで優勝した史上2人目の黒人選手となり、ジョージ・ブラナム3世以来の快挙を達成した。

テレビ初登場にもかかわらず、フォークナーは冷静な投球を続け、スコット・ノートン、ライアン・シミネリ、そして若きEJタケットを破って頂点に立った。特に決勝では、後にPBAを代表する存在となるタケットを相手に主導権を握り、9フレームの時点で勝利を大きく引き寄せた

この勝利はフォークナー自身のキャリアにとって大きな意味を持つだけでなく、PBA全体にとっても象徴的な出来事だった。また、決勝で敗れたタケットにとっては、その後の飛躍へつながる重要な経験になったともいえる。

 

第10位:2022年――クリス・プラザー、ロールオフを制す

2022年大会のクリス・プラザーの勝利も忘れがたい。ジェイソン・スターナーとの決勝は、終盤まで予測不能な展開となった。プラザーは優位に立ちながらも、終盤に10ピンを残し、勝利目前から一気に苦しい状況へ追い込まれた。

スターナーはジェイソン・ベルモンテ、トミー・ジョーンズら強豪を破って決勝まで勝ち上がり、自身初のメジャータイトル獲得まであと一歩に迫っていた。しかし10フレームで決定打を逃し、試合はロールオフへ突入する。

そこでプラザーは再び力を取り戻した。ロールオフの最初の投球でストライクを決め、スターナーにプレッシャーをかける。スターナーは応えきれず、プラザーが自身2つ目のメジャータイトルを手にした。この試合は、勝負の流れが何度も入れ替わる緊張感と、選手の感情がむき出しになるドラマ性によって、PBA世界選手権史に残る名勝負となった。

これらの過去の名場面を振り返ると、PBA世界選手権が単なる年間タイトルの一つではないことがわかる。ここでの勝利は、選手の評価を変え、キャリアの方向性を決定づける。時には、競技そのものの歴史に新たな意味を与える。だからこそ、今回の大会でタケットが4連覇を狙うことには、極めて大きな意味がある。

 

タケットの偉業か、挑戦者の逆襲か

今回のAMF PBA世界選手権決勝は、PBA史における重要な分岐点となる可能性が高い。EJタケットが勝てば、世界選手権4連覇という前例のない偉業に到達し、現代ボウリング界における支配的存在としての地位をさらに強固にするだろう。4年連続PBA年間最優秀選手という記録も視野に入り、彼のキャリアは伝説の領域へと進んでいく。

しかし、PBA世界選手権の歴史は、常に本命だけが勝つ舞台ではなかった。クリス・バーンズは批判を力に変え、ドム・バレットは劇的な最終フレームでメジャー初制覇を果たし、ゲイリー・フォークナーJr.は歴史的な意味を持つ勝利をつかんだ。クリス・プラザーもまた、崩れかけた流れをロールオフで取り戻し、自らの評価を大きく高めた。

その歴史を考えれば、ベルモンテをはじめとする挑戦者たちにも十分なチャンスがある。特にベルモンテとタケットの対決が実現すれば、それは現代PBAを象徴するライバル対決として、再び大きな注目を浴びることになるだろう。

ストロブル・アリーナという特別な舞台で、PBAはまた新たな伝説を生み出そうとしている。タケットが歴史を塗り替えるのか。それとも挑戦者がその流れを止め、新たな物語を始めるのか。答えはレーン上の一投一投に託されている。