EJタケットが初日首位発進
PBAノーム・デューク・オープンで王者の存在感

伝説の名を冠した大会で、実力者たちが動き出す

米ペンシルベニア州シンキングスプリングのLucky Strike Sinking Springで開幕した「The Magnum Ice Cream Company PBA Norm Duke Open」は、予選第1ラウンドを終え、早くも優勝争いの輪郭が見え始めた。

今大会は、AスクワッドBスクワッドに分かれて進行する独自形式が特徴だ。選手たちは決勝戦までそれぞれのスクワッド内で勝ち上がり、最後に各スクワッドの勝者がチャンピオンシップマッチで激突する。通常のトーナメントとは異なり、同じ大会でありながら、まるで二つの山を同時に登っていくような構図になっている。

その初日、Aスクワッドではブランドン・ランクが6ゲーム合計1,351ピンで首位に立った。一方、BスクワッドではEJタケットが最終ゲームで289を叩き出し、合計1,367ピンを記録。直近のワールドチャンピオンシップを制したばかりの王者が、今大会でも強烈な存在感を示した。

大会名に冠されたノーム・デュークは、PBAの歴史を語るうえで欠かせない名選手である。その名を背負う大会だけに、選手たちにとっては単なる1タイトル以上の意味を持つ。スコアだけでは測れない緊張感と敬意が、今大会の空気を一層特別なものにしている。

 

難解なレーンコンディションで問われた対応力

Aスクワッドはブランドン・ランクが安定感を発揮

Aスクワッドでトップに立ったのはブランドン・ランクだった。6ゲーム合計1,351ピン、平均225超という内容は、決してスコアが伸びやすい環境ではなかったことを考えると、非常に価値のあるスタートと言える。

今大会で使用されている39フィートのノーム・デューク・オイルパターンは、選手に正確なライン取り繊細なボール選択を求める難しいコンディションだった。ハイスコアが簡単には出ない状況の中で、ランクは大崩れすることなくスコアを積み上げ、Aスクワッドの主導権を握った。

上位には、トーマス・カイフコブランドン・ボンタザック・ジェンタイルカイル・トゥループといった実力者が続いている。いずれも勝ち上がりの可能性を十分に持つ選手たちであり、第2ラウンド以降も順位変動は大きくなりそうだ。

また、地元ペンシルベニア州ラングホーン出身のビル・オニールも6位につけた。前週のAMF PBAワールドチャンピオンシップでは4位に入ったものの、ステップラダー決勝では144という悔しいスコアに終わっている。本人もその結果を引きずりながら、今大会での再起を期している様子だ。

オニールは、ワールドチャンピオンシップでの投球について、身体的な感覚そのものは悪くなかったと振り返っている。一方で、レーンの読みボール選択に課題があったと認め、「メンタル面で切り替え、もう一度集中し直したい」という姿勢を見せた。

勝負の世界では、技術のミス以上に判断の迷いが結果を左右することがある。オニールにとって今大会は、前週の失敗を修正し、自分のボウリングを取り戻すための重要な舞台でもある。

 

ノーム・デュークへの敬意が生む特別なモチベーション

今大会の大きな見どころの一つは、選手たちがノーム・デュークという存在にどのような思いを抱いているかだ。

オニールにとって、デュークは「ヒーロー」と呼べる存在である。子どものころからそのプレーを見て育ち、ツアーに出てからも大きな影響を受けたという。さらに、PBAエリートリーグのダラス・ストライカーズでは、約10年にわたってデュークと同じチームでプレーしてきた。

ただ尊敬しているだけではなく、実際に同じ時間を共有し、言葉を交わし、影響を受けてきた相手。その名が刻まれたトロフィーを掲げることができれば、オニールにとってはキャリアの中でも特別な勝利になるだろう。

こうした背景は、ノーム・デューク・オープンを単なるランキング争いや賞金レース以上のものにしている。PBAの現在を担う選手たちが、過去の偉大なレジェンドへの敬意を胸に競い合う。その構図こそが、この大会の魅力を深めている。

 

BスクワッドはEJタケットが圧巻のフィニッシュ

Bスクワッドで初日トップに立ったのはEJタケットだった。6ゲーム合計1,367ピン。特に最終ゲームで記録した289は、初日の流れを一気に変える圧巻の一投群だった。

タケットは、序盤から決して簡単な展開ではなかったと語っている。レーンは「難しく、非常にトリッキー」だったという。ハイスコアを狙うよりも、まずは大きなミスを避け、いかに安定したラインを見つけるかが重要だった。

その中でタケットは、やや遅めのボールを選び、手をしっかりボールの後ろに残す意識で対応した。コンディションに無理やり合わせにいくのではなく、自分の投球を微調整しながらレーンの反応を探る。この判断力こそ、トップ選手ならではの強みである。

そして迎えた最後のペア。タケットにとってレーンは比較的投げやすい状態となり、そこで良いショットを重ねた。結果として289というビッグゲームにつながり、順位表の上位へ一気に駆け上がった。

本人は「平均240ではなかったが、相対的には素晴らしいスタート」と冷静に振り返っている。実際、この日のコンディションを考えれば、平均227.83という数字は十分に強い。タケットの基準では控えめに見えるかもしれないが、他の選手が苦しむ中で確実に上位を取るあたりに、現在の充実ぶりが表れている。

Bスクワッドでは、ライアン・バートンチェイス・ナドーエリック・ジョーンズサントゥ・タハバナイネンらがタケットを追う展開となった。第2ラウンド以降、彼らがどこまで差を詰められるかも注目される。

 

ワールドチャンピオンから続くタケットの勢い

タケットは前週、PBAワールドチャンピオンシップを劇的に制し、PBA史上初となる同一大会4連覇を達成した。歴史的な快挙であると同時に、本人にとっては2026年シーズン初優勝でもあった。

ポイントと獲得賞金ではすでに圧倒的なリードを築いていたものの、タイトルという形での勝利には手が届いていなかった。トップ選手であればあるほど、「勝てていない」という事実は重くのしかかる。だからこそ、ワールドチャンピオンシップでの優勝は、タケットにとって大きな重圧から解放される一勝だった。

本人も「ようやく勝てたことで肩の荷が下りた」と語っている。その言葉どおり、ノーム・デューク・オープン初日の投球には、過度な力みよりも落ち着きがあった。流れを待ち、チャンスが来た場面で一気に仕留める。最終ゲームの289は、まさにその象徴だった。

さらにタケットは、シーズン平均でも歴史的な記録に迫っている。大会前の平均は229.5で、ジェイソン・ベルモンテが保持するシングルシーズン平均記録229.39を上回るペースだ。もちろん、シーズンは最後まで何が起こるかわからない。それでも、この数字はタケットが今季を通じてどれほど高い水準で投げ続けているかを示している。

ノーム・デューク・オープンでさらに結果を残せば、単なる一大会の勝利にとどまらず、シーズン全体の評価にも大きな意味を持つことになる。

 

カットラインが示す大会の難しさ

初日の結果を語るうえで見逃せないのが、各スクワッドの32位カットラインだ。Aスクワッドは1,188ピン、Bスクワッドは1,202ピン。Bスクワッドはわずかにプラススコアとなったが、全体としてはスコアが伸びにくい大会であることが明らかになった。

これは、39フィートのノーム・デューク・オイルパターンが選手たちに大きな課題を与えているためだ。オイルパターンが難しい場合、単にストライクを連発する力だけでは勝ち切れない。スペアを確実に拾う集中力レーン変化を読む観察力ボールチェンジのタイミング、そして自分の感覚を信じる判断力が問われる。

予選第2ラウンドでは、各スクワッドの上位32名が次のステージに進出する。初日に好位置につけた選手も、油断はできない。わずか数ゲームで順位が大きく入れ替わる可能性があり、特に中位以下の選手にとっては、攻めるべきか守るべきかの判断が難しくなる。

この大会は、単なるスコア勝負ではなく、メンタルと戦略の勝負でもある。

 

今後の展望:週末に向けて一気に絞られるフィールド

大会は6月17日水曜日に予選第2ラウンドを迎える。Bスクワッドは午前11時から、Aスクワッドは午後6時からそれぞれ6ゲームを投球し、各スクワッド上位32名が次のラウンドへ進む。

6月18日木曜日にはエリミネーションラウンドが行われる。午前の第1ラウンドでは各スクワッド上位16名に、午後の第2ラウンドでは上位8名に絞られる。さらに6月19日金曜日の第3ラウンドでは4ゲームが行われ、各スクワッドの上位4名がグループ別ステップラダー決勝へ進出する。

テレビ中継ラウンドは6月21日日曜日CBS Sports Networkで行われる予定だ。正午からAスクワッドのステップラダー、午後2時からBスクワッドのステップラダー、午後4時からチャンピオンシップマッチが組まれている。

また、同じ週末にはPBAエリートリーグ「Battle of the Brands」も開催される。タケット率いるMotivチームは6チームによるステップラダー決勝でトップシードを獲得しており、HammerStorm900 GlobalBrunswickRoto Gripのいずれかを相手にコミッショナーズカップを争う。

PBAツアーとエリートリーグが重なるこの週末は、ボウリングファンにとって濃密な時間になる。個人戦としてのノーム・デューク・オープン、そしてブランド対抗戦としてのエリートリーグ。その両方でタケットが中心人物になっている点も、今季のPBAを象徴している。

 

タケットが一歩リードも、勝負の本番はこれから

ノーム・デューク・オープン初日は、Aスクワッドでブランドン・ランク、BスクワッドでEJタケットが首位に立つ展開となった。ランクは安定感でAスクワッドを引っ張り、タケットは最終ゲーム289という爆発力でBスクワッドのトップに躍り出た。

特にタケットは、前週のワールドチャンピオンシップ優勝から勢いを持ち込み、難しいコンディションの中でも確実に結果を残した。シーズン平均記録更新の可能性も含め、彼の一投一投には今後さらに注目が集まるだろう。

一方で、大会はまだ始まったばかりだ。予選第2ラウンドエリミネーションラウンドステップラダーと進むにつれ、プレッシャーは一段と高まっていく。初日のリードは大きな意味を持つが、それだけで勝利が約束されるわけではない。

ノーム・デュークの名を冠した特別な大会で、誰が最後にトロフィーを掲げるのか。タケットが王者の勢いを継続するのかランクが初日のリードを本物にするのか。あるいは、オニールやトゥループら実力者が巻き返すのか

初日は序章に過ぎない。ここから始まる数日間こそが、真の勝負である。