ジリアン・マーティン
激闘のロールオフを制しU.S. Women’s Open
歴史に残る接戦を制した若きチャンピオン
女子プロボウリング界に、また一つ語り継がれる名勝負が生まれた。
米オハイオ州ストウ出身のジリアン・マーティンが、インディアナ州インディアナポリスのRoyal Pin Woodlandで開催された「2026 Go Bowling U.S. Women’s Open」を制し、自身2度目となるメジャータイトルを獲得した。
決勝の相手は、マレーシアの強豪シン・リージェーン。試合は最後まで勝敗が読めない展開となり、10フレーム終了時点で212対212の同点に。勝負は一投ごとのロールオフにもつれ込み、さらに両者が譲らないまま4球目まで続いた。
最後に明暗を分けたのは、極限の緊張感の中で放たれた一投だった。マーティンがストライクを決めた一方、シンは9本にとどまり、マーティンの優勝が決定した。
この勝利により、マーティンはPWBAツアー通算4勝目を達成。さらに2024年のUSBC Queensに続く、通算2度目のメジャー制覇となった。21歳にしてメジャー2勝。若き才能は、また一段階その評価を高めた。
勝負を分けたのは技術、粘り、そして心の強さ
序盤から緊張感あふれるタイトルマッチ
決勝戦は、序盤からシンが主導権を握るかに見えた。シンは最初の4フレームで3度のストライクを奪い、力強い立ち上がりを見せる。
一方のマーティンは、第2フレームでウォッシュアウトを残す苦しい展開となった。しかし、ここで彼女は崩れなかった。難しい残りピンを冷静にカバーし、さらにその2フレーム後には3-6-7-10のスプリットを成功させる。序盤で大きく離されてもおかしくない場面を、粘り強いスペアメイクでしのいだ。
試合後、マーティンは父から「スプリットとウォッシュアウトの成功率が良くない」と指摘されていたことを明かしている。その助言を受け、彼女は苦手な場面への対応を磨いてきたという。
大舞台で問われるのは、派手なストライクだけではない。ミスを最小限に抑え、苦しい場面で踏みとどまる力もまた、勝者に必要な要素である。今回のマーティンは、まさにその力を証明した。
終盤に追いついたマーティン、勝利目前だったシン
中盤、シンは第6フレームでオープンを出したものの、その後すぐに立て直し、終盤へ向けて3連続ストライクを決めた。決勝の舞台でも流れを失わない対応力は、さすがトップシードと言える内容だった。
マーティンにとっても、簡単な展開ではなかった。第3フレームでストライクを決めた後、しばらくストライクが出ない時間帯が続く。しかし、試合終盤に集中力を高め、第9フレームと第10フレームで重要なストライクを重ねた。最終的にスコアを212まで伸ばし、シンにプレッシャーをかける。
この時点で、シンには勝利の条件が残されていた。最終フレームで8本、スペア、フィルボールでストライクを決めれば、1ピン差で優勝できる状況だった。
しかし、シンの投球は右レーンで思うように曲がらず、2-4-5を残す。彼女はこれを確実にカバーし、続くフィルボールでストライクを決めたが、スコアはマーティンと同じ212。勝負はロールオフへ突入した。
4球に及んだロールオフが生んだ劇的な結末
ロールオフの1球目は、両者ともストライク。会場の緊張感は一気に高まった。
続く2球目では、マーティンとシンがともに3本を残し、決着はつかない。3球目では再び両者がストライクを決め、勝負は4球目へ。トップレベルの選手同士が互いに一歩も譲らない、息詰まる展開となった。
そして4球目。マーティンは勝負どころで完璧なストライクを決める。対するシンは厚く入りすぎ、結果は9本。ここで長く続いた激闘に終止符が打たれた。
マーティンはロールオフについて「勝っても負けても、あのような場面にいるのが好き」と語っている。さらに「ボウリングがどれほど楽しい競技なのかを見せたい」とも話した。
この言葉は、彼女の強さをよく表している。プレッシャーから逃げるのではなく、その場に立てること自体を楽しむ。結果にとらわれすぎず、自分が投げる一投に集中する。その精神的な落ち着きが、勝負の最後で大きな差となった。
第4シードから頂点へ、階段を上り切ったマーティン
今回のマーティンは、第4シードとしてステップラダー決勝に登場した。優勝するためには、上位シードの選手たちを連続で倒さなければならない厳しい立場だった。
最初の相手は、第5シードのジョーダン・スノッドグラス。試合前半は互いに譲らない展開だったが、スノッドグラスが第6フレームでオープンを出すと、マーティンが流れをつかむ。さらに第9フレームのオープンで勝負は決まり、マーティンが初戦を突破した。スノッドグラスは5位となり、賞金1万3000ドルを獲得した。
次に対戦したのは、ラトビアのダイアナ・ザヴィヤロワ。2021年以降、U.S. Women’s Openのステップラダーに4度出場している経験豊富な選手である。この試合は両者にミスが出るロースコアの展開となったが、マーティンが172対166で競り勝った。ザヴィヤロワは4位で、賞金1万7000ドルを手にした。
準決勝では、ウクライナのダシャ・コバロワと対戦。コバロワは2019年のUSBC Queens覇者で、自身2度目のメジャータイトルを狙っていた。試合は両者がストライクを重ねる接戦となったが、コバロワの第3フレームのオープンが最後まで響いた。マーティンは230対223で勝利し、決勝進出を決めた。コバロワは3位で、賞金2万2000ドルを獲得した。
そして最後に待っていたのが、トップシードのシン・リージェーンだった。マーティンは第4シードから一段ずつ階段を上り、最後の一戦まで勝ち切ったのである。
怪我による棄権から、同じ会場での戴冠へ
今回の優勝には、競技成績以上の意味がある。マーティンは2年前、同じRoyal Pin Woodlandで行われた大会を怪我のため棄権していた。その苦い記憶の残る会場に戻り、今度はグリーンジャケットとイーグルトロフィーを手にした。
選手にとって、過去に悔しさを味わった場所で結果を出すことは大きな意味を持つ。マーティンにとって今回の勝利は、技術面の成長だけでなく、精神面での成熟を示すものでもあった。
彼女は試合後、「21歳、もうすぐ22歳でメジャー2勝、通算4勝というのは信じられない」と語った。その一方で、「今この瞬間に集中し、ただボウリングをして楽しもうとしている」とも話している。
若くして実績を重ねる選手ほど、周囲からの期待やプレッシャーは大きくなる。しかし、マーティンは自分がコントロールできることに意識を向け続けた。他の選手の結果や会場の空気に振り回されず、自分の投球に集中する。その姿勢が、最後の最後で勝利を引き寄せた。
シン・リージェーンは2週連続の準優勝
敗れたシンにとっては、悔しさの残る結果となった。彼女は前週のPWBA Barbara Chrisman Classicでも、ジョーダン・スノッドグラスに敗れて準優勝。今回も決勝まで進みながら、あと一歩のところでタイトルに届かなかった。
それでも、U.S. Women’s Openでトップシードとして決勝に進出し、マーティンとロールオフまでもつれる激戦を演じた実力は疑いようがない。今回、3度目のメジャータイトル獲得は持ち越しとなったが、今後のツアーでも優勝候補であり続けることは間違いない。シンは2位の賞金として3万ドルを獲得した。
マーティンの勝利が示したボウリングの魅力
2026年Go Bowling U.S. Women’s Openの決勝は、ボウリングという競技の魅力を凝縮した一戦だった。
ストライクの迫力。難しいスペアを拾う技術。1ピンが勝敗を左右する緊張感。そして、たった一投で運命が変わるロールオフ。観る者を引き込む要素が、すべて詰まっていた。
その中心にいたのが、ジリアン・マーティンだった。第4シードから勝ち上がり、強豪を次々と破り、最後はトップシードのシン・リージェーンとの激闘を制した。勝因は一つではない。確かな技術、粘り強いスペアメイク、終盤の集中力、そして勝負の場面を楽しむ精神力。そのすべてが合わさって、今回の優勝につながった。
マーティンはこの勝利により、賞金6万ドル、グリーンジャケット、イーグルトロフィーを獲得した。そして、21歳にしてメジャー2勝、PWBAツアー通算4勝という輝かしい実績をさらに積み上げた。
PWBAツアーはここで予定された休みに入り、次戦は7月30日からヒューストンで始まるPBA/PWBA Striking Against Breast Cancer Mixed Doublesとなる。
苦い記憶の残る会場で、最高の結果を手にしたマーティン。今回の勝利は、彼女が女子ボウリング界の未来を担う存在であることを改めて示した。若きメジャーチャンピオンの次なる挑戦に、ますます注目が集まる。
