サンダーボウルに集う王者たち
AMF PBA世界選手権決勝の見どころ

名勝負を刻んできた聖地で迎えるシーズン最終メジャー

今週末、PBAツアーのシーズン最終メジャーであるAMF PBA世界選手権が、ミシガン州アレンパークのストロブル・アリーナで決着を迎える。

現在、この会場はAMFサンダーボウル・レーンズの名で知られている。名称こそ変わったものの、ボウリング界における存在感は今も揺るがない。数々の名勝負初優勝記録達成、そしてキャリアの転機を生んできたこのレーンは、まさにPBAの歴史が刻まれてきた舞台である。

今大会の決勝に進出した9人のうち、実に5人がこのサンダーボウルでタイトルを獲得した経験を持つ。トップシードのEJ・タケットをはじめ、ビル・オニールクリス・プラザージェイソン・ベルモンテジェイソン・スターナー。いずれも、この会場で特別な瞬間を経験してきた選手たちだ。

世界選手権は、単なる一大会ではない。勝者にはメジャータイトルという栄誉だけでなく、キャリアを大きく変える評価、そしてPBA史に名を刻む資格が与えられる。特に今大会は、タケットの4連覇ベルモンテのメジャー記録更新新世代の台頭など、複数の大きな物語が交錯している。

プレーイン・ステップラダーは6月13日土曜日午前11時、米東部時間にCBS Sports Networkで開始。その後、午後1時からCBSとParamount+でチャンピオンシップラウンドが放送される。

 

サンダーボウルに刻まれたファイナリストたちの物語

EJ・タケット、4年連続世界王者へ挑む絶対的本命

今大会最大の焦点は、EJ・タケットが世界選手権4連覇を成し遂げられるかどうかだ。

現在のタケットは、PBAツアーを代表するトッププレーヤーであり、勝って当然と見られる存在である。しかし、彼にとってサンダーボウルは、最初から王者として立った場所ではなかった。むしろ、若き日の自信と覚悟を確かなものにした原点の一つである。

2016年、タケットはPBAベア・オープンでこの会場に臨んだ。当時すでにPBAツアー2勝を挙げていたものの、テレビ決勝でのタイトルはまだなかった。直前のトーナメント・オブ・チャンピオンズでは敗れていたが、本人はその試合を若いキャリアの中で最高の内容だったと振り返っている。

その敗戦後、タケットは父に「次にテレビ決勝に出たら勝つ」と語った。そして、その言葉どおりにイェスパー・スベンソンを下し、テレビ決勝で初めて頂点に立った。サンダーボウルは、タケットが大舞台で勝つ選手へと変わった場所だった。

2024年にも、タケットは同じ会場で重要な勝利を手にしている。前年のプレーヤー・オブ・ザ・イヤーとして迎えたシーズン序盤、10大会で5度の決勝進出、7度のトップ10入りを果たしながら、タイトルだけが遠かった。周囲からは「世界最高の選手はいつ勝つのか」という声が高まっていた。

その問いに、タケットは結果で答えた。シャーク・チャンピオンシップを制し、その4日後には世界選手権も制覇。再び「勝つべき選手が勝つ」ことを証明した。

今回、タケットには4年連続世界王者という大記録が懸かっている。さらにUSBCマスターズでは、キャリア・グランドスラム達成を目前にしながら、10ピンに阻まれる悔しい敗戦を喫している。その記憶が残る中で迎える今大会は、単なる防衛戦ではない。王者としての威信を示し、悔しさを力に変えるための一戦でもある。

 

ビル・オニール、殿堂入り選手の原点に戻る

ビル・オニールにとって、サンダーボウルはキャリアの始まりを象徴する場所だ。

第1回ワールドシリーズ・オブ・ボウリングが開催された当時、オニールはPBAツアー5年目を迎えていた。ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた実績はあったものの、まだツアータイトルには届いていなかった。

それまで、オニールは12度もチャンピオンシップラウンドに進出しながら、いずれも優勝を逃していた。才能は認められていた。実力も十分にあった。それでも、最後の壁を越えられない時間が続いていた。

転機となったのが、カメレオン・チャンピオンシップの決勝だった。ロニー・ラッセルとのタイトルマッチで、オニールは最終フレームに2投連続ストライクを必要とする状況に立たされた。重圧のかかる場面で、彼はキャリア屈指のショットを2本続けて投げ切り、ついに初優勝をつかんだ。

その瞬間、オニールは「勝てない有力選手」から「PBA王者」へと変わった。そして、その後の殿堂入りへとつながるキャリアが本格的に動き出した。

今大会でオニールが狙うのは、自身4つ目のメジャータイトルである。原点とも言えるレーンで再び栄光をつかめば、その勝利は単なる一勝以上の意味を持つだろう。

 

クリス・プラザー、静かな存在から勝負強い王者へ

クリス・プラザーもまた、サンダーボウルでキャリアを大きく変えた一人である。

2019年のスコーピオン・チャンピオンシップ決勝。当時のプラザーは、決勝進出者の中で最も注目度が高い選手ではなかった。放送内で彼に向けられたコメントも多くはなく、どちらかといえば伏兵として扱われていた。

しかし、試合が始まると評価は一変した。プラザーはカイル・トゥループビル・オニールBJ・ムーアを次々と破り、念願のPBAツアー初タイトルを獲得した。

派手な前評判ではなく、レーン上の結果で存在を証明する。それがプラザーという選手の強さである。大舞台であっても、自分のリズムを崩さず、勝負どころで確実にストライクを重ねる。その冷静さと実行力が、彼をトップ選手の一人へ押し上げた。

さらに2024年には、アンドリュー・アンダーソンとのペアでロス/ホルマン・ダブルス・チャンピオンシップを制覇。チーム戦でも結果を残し、勝負勘の鋭さを改めて示した。

今回の世界選手権でも、プラザーは決して軽視できない存在だ。目立たない位置からでも、ひとたび流れをつかめば一気に頂点まで駆け上がる力を持っている。

 

ジェイソン・ベルモンテ、記録を更新し続けるレジェンド

今大会のファイナリストの中で、最も輝かしい実績を持つのがジェイソン・ベルモンテである。

両手投げの革新者として知られるベルモンテは、PBAの戦術と技術のあり方を変えた存在だ。そしてサンダーボウルでも、数々の重要な勝利を収めてきた。

ベルモンテは2014年のトーナメント・オブ・チャンピオンズを制し、2018年のPBAツアーファイナルズ決勝ではEJ・タケットを撃破した。さらに2019年のワールドシリーズ・オブ・ボウリングでは、2つのタイトルを獲得している。

中でも象徴的だったのが、2019年の世界選手権優勝である。この勝利により、ベルモンテはキャリア通算11個目のメジャータイトルを獲得。ピート・ウェバー、そして世界選手権トロフィーに名を冠するアール・アンソニーと並んでいたPBAツアーのメジャー最多記録を更新した。

今大会で優勝すれば、ベルモンテのメジャータイトル数は16に到達する。これは現役選手の中でも突出した数字であり、他の追随を許さない歴史的な領域である。

タケットが現在の王者なら、ベルモンテは時代を築いた王者である。両者が同じ舞台に立つ今大会は、現在と歴史が交差する特別な決勝となる。

 

ジェイソン・スターナー、初優勝の記憶が残る場所で再び頂点へ

ジェイソン・スターナーにとっても、サンダーボウルは忘れられない場所だ。

2013年のドン・カーター・クラシック。29歳だったスターナーは、タイトルマッチでウェス・マロットを相手に圧巻の投球を見せた。最後の一投では10ピンを残したものの、勝利は揺るがず、ついにPBAツアー初優勝を果たした。

長く追い求めたタイトルを手にした瞬間は、選手のキャリアに深く刻まれる。スターナーにとってサンダーボウルは、努力が実を結んだ場所であり、自分がツアーで勝てることを証明した場所でもある。

今大会で再びこのレーンに立つことは、単なる再訪ではない。過去の成功体験を力に変え、再び大舞台で存在感を示す機会となる。

 

初タイトル経験者だけではない、注目すべき挑戦者たち

サンダーボウルに特別な足跡を残しているのは、タイトル獲得者だけではない

クリス・ヴァイは、この会場で優勝こそしていないものの、2021年のPBAツアーファイナルズでEJ・タケットを相手にテレビ放送でパーフェクトゲームを達成している。この300ゲームにより、ヴィアはテレビ放送で複数回のパーフェクトゲームを記録した史上3人目の選手となった。さらに、同一シーズンに2度のテレビ放送300ゲームを達成した初の選手にもなっている。

ザック・ウィルキンスは、2024年のPBAエリートリーグでサンダーボウルを経験した。ワコ・ワンダーズの一員として出場し、ストライク3本シングルピン残り2回という内容を記録している。大舞台での経験はまだ限られているが、だからこそ勢いに乗った時の怖さがある。

ダレン・タンも同じPBAエリートリーグに、ベルモンテ率いるL.A. Xのメンバーとして出場している。ワンハンド投法のタンは、最初の3投でストライクを重ねる好スタートを切ったが、その後スプリットを残し、ロールオフでは8本に終わった。安定感と爆発力の両面を持つタンが、世界選手権の決勝でどのような投球を見せるかにも注目が集まる。

そして、ブランドン・ボンタは今回のファイナリストの中で唯一、サンダーボウルのテレビ放送レーンで投球経験がない選手である。注目のルーキーであるボンタは、今年のUSBCマスターズで決勝進出まであと一歩に迫った。4人中3人が決勝へ進む試合で4位となり、惜しくもテレビ決勝の舞台を逃している。

さらに2023年にはアマチュアとして出場し、テレビ決勝前の最後の非放送マッチでカイル・シャーマンに敗れた経験もある。あと一歩で大舞台に届かなかった悔しさは、今回の世界選手権で大きな原動力になるはずだ。

 

サンダーボウルは再びPBA史の転換点となる

AMF PBA世界選手権の決勝は、単にシーズン最後のメジャータイトルを争う大会ではない。伝統あるサンダーボウルを舞台に、過去の栄光現在の実力未来への可能性が交差する特別な一戦である。

EJ・タケットが4年連続世界王者という偉業を達成するのか。
ジェイソン・ベルモンテがメジャー通算記録をさらに伸ばし、レジェンドとしての地位を一段と強固にするのか。
ビル・オニール、クリス・プラザー、ジェイソン・スターナーが、思い出深いレーンで再び頂点に立つのか。
それとも、ブランドン・ボンタをはじめとする新たな挑戦者が、歴史の流れを変えるのか。

サンダーボウルはこれまで、多くの選手にとって転機の場であり、名場面の舞台であり続けてきた。初優勝をつかんだ者、記録を打ち立てた者、敗戦を糧に成長した者。それぞれの記憶が、このレーンには積み重なっている。

そして今週末、その歴史に新たな一章が加わる。

世界最高峰の選手たちが集うAMF PBA世界選手権決勝。勝者はタイトルだけでなく、サンダーボウルの伝説の一部となる。