エリン・マッカーシー、2026年USBCクイーンズ制覇
予選首位から頂点へ

ラスベガスで刻まれた、完璧な戴冠劇

女子ボウリング界の伝統あるメジャー大会「2026 USBCクイーンズ」で、エリン・マッカーシーが新たな歴史を作った。

ネブラスカ州エルクホーン出身のマッカーシーは、ラスベガスのゴールドコースト・ボウリングセンターで行われた決勝戦で、マレーシアのナターシャ・ロスラン225-204で下し、優勝を果たした。これにより、2022年のU.S.ウィメンズオープンに続く自身2度目のメジャータイトル、そして通算3度目のPWBAタイトルを獲得した。

今回の優勝が特別なのは、単にメジャー大会を制したからではない。マッカーシーは予選を首位で通過し、ステップラダー決勝でもトップシードを獲得。そのまま最後まで勝ち切った。PWBAツアー再始動後、USBCクイーンズで「予選首位」「トップシード」「優勝」のすべてを成し遂げた選手は、彼女が初めてである。

試合後、マッカーシーはこの快挙について、すぐには実感が湧かないと語った。過去にこの大会を彩ってきた名選手たち、そして現在ともに戦うライバルたち。その流れの中で自分が歴史に名を刻んだことに、驚きと喜びが入り混じっていた。

ラスベガスの夜に輝いたティアラは、ただの優勝の証ではない。努力を積み重ね、重圧を受け止め、最後の一投まで自分を信じ抜いた選手に贈られた、確かな栄冠だった。

 

国際色豊かな決勝ラウンドと、勝負を分けた冷静さ

今年のUSBCクイーンズ決勝ラウンドは、まさに世界の実力者たちが集う舞台となった。

出場したのは、アメリカのエリン・マッカーシージョジー・バーンズ、マレーシアのナターシャ・ロスラン、シンガポールのニュー・フイフェン、そしてフランスのエマ・フリアント。実績ある選手、勢いに乗る選手、そして新たに名を上げようとする若い才能が入り混じり、ステップラダーは初戦から緊張感に包まれた。

最初の対戦は、シンガポールのニュー・フイフェンとフランスのエマ・フリアント。フリアントはプロ入り後わずか3大会目で初のチャンピオンシップラウンド進出を果たした注目株だった。しかし、大舞台特有の緊張もあったのか、序盤は思うようにストライクを重ねられない。

一方のニューは、ディフェンディングPWBAプレーヤー・オブ・ザ・イヤーらしい安定感を見せた。最初の7フレームで5つのストライクを奪い、試合の主導権を握る。終盤には相手の追撃を完全に封じ、227-194で勝利。フリアントは5位に終わったものの、プロとして早くも大舞台を経験したことは、今後につながる大きな収穫となった。

続く試合では、ニューが2025年大会女王のジョジー・バーンズと対戦した。バーンズは連覇を狙う立場であり、経験も実績も十分。試合は序盤からハイレベルな打ち合いとなり、両者ともに4連続ストライクでスタートした。

しかし、わずかなミスが流れを変えた。バーンズは10ピンを残した場面でカバーに失敗。対するニューは3-6-10を確実に処理し、リードを奪う。その後も両者はストライクを重ね続けたが、10フレームでバーンズに弱い10ピンが残り、2年連続のティアラ獲得はならなかった。ニューは275という圧巻のスコアで勝利し、準決勝へ進出した。

準決勝の相手は、マレーシアのナターシャ・ロスランだった。

ロスランにとって、今回がキャリア初のチャンピオンシップラウンド進出だった。しかし、その内容は初出場とは思えないほど力強いものだった。大会期間中のマッチプレーでは2度のパーフェクトゲームを達成しており、勢いと爆発力では誰にも引けを取らない存在だった。

ニューとロスランの準決勝は、最後まで目が離せない展開となった。ロスランは227で先に試合を終え、ニューに最終フレームでのダブルを求める状況を作る。ニューは今季3大会連続のタイトルマッチ進出を狙っていたが、最後の投球でボールが曲がり切らず、2-4-8-10のスプリットを残してしまう。最終スコアは205。ロスランが決勝進出を決めた。

この時点で、決勝は「予選から圧倒的な安定感を見せてきたマッカーシー」と「初の大舞台で勢いに乗るロスラン」の対決となった。

タイトルマッチの立ち上がりは、明暗がはっきり分かれた。

ロスランは第1フレームでスプリットからオープン。続く第2フレームでは10ピンをミスし、連続オープンで苦しいスタートとなった。一方のマッカーシーは、最初から3連続ストライク。トップシードとして待ち受ける立場の難しさを感じさせない、落ち着いた滑り出しだった。

ただ、ロスランも簡単には引き下がらない。スペアで流れを整えると、そこから3連続ストライクを決め、試合を再び緊迫した展開へと引き戻す。初のタイトルマッチという重圧の中でも、攻める姿勢を失わなかった点は見事だった。

それでも、試合の主導権を最後まで握り続けたのはマッカーシーだった。大きく崩れることなくスコアを積み重ね、ロスランにプレッシャーをかけ続ける。勝負は10フレームまでもつれたが、マッカーシーは最初の投球で9本以上を倒せば優勝を確定できる状況を迎えた。

しかし、ここで思わぬ展開が待っていた。マッカーシーの一投目は8-10のスプリット。完全に勝利を決めるはずだった一投で、ロスランに同点の可能性が残ったのである。マッカーシーは10ピンを倒して225で試合を終えたが、ロスランがストライクアウトすれば同点に持ち込める状況となった。

会場の空気が一気に張り詰める。ロスランは最後のチャンスにすべてを懸けた。しかし、その一投で1本のピンが残り、同点の可能性は消滅。マッカーシーはベンチに座ったまま、優勝の瞬間を迎えることになった。

最終スコアは225-204。ロスランは準優勝で賞金30,000ドルを獲得し、マッカーシーは優勝賞金60,000ドルとともに、USBCクイーンズの象徴であるティアラを手にした。

表彰式では、もう一つ印象的な場面があった。マッカーシーにティアラを授けたのは、2025年大会の優勝者であり、親友でもあるジョジー・バーンズだった。

マッカーシーとバーンズは、長年にわたり遠征生活をともにしてきた親しい間柄だという。勝利の喜びも、悔しい敗戦も、苦しい時間も共有してきた存在からティアラを受け取る。その瞬間は、競技者としての栄光だけでなく、ツアーで築かれる絆の深さを物語っていた。

マッカーシーは、今回の優勝によってPWBA殿堂入りのパフォーマンス部門にも一歩近づいた。同部門では、通算10タイトル、またはメジャー2勝以上を含む通算5タイトルが条件となる。マッカーシーは現在、通算3タイトル、そのうちメジャー2勝。数字の上では、殿堂入りへの道筋が少しずつ見え始めている。

ただし、本人はそのことを強く意識しているわけではない。マッカーシーは地元でフルタイムの仕事を持ちながら、ツアーにも参加している選手である。競技に人生のすべてを注ぐ選手たちへの敬意を示しつつ、自分自身については、殿堂入りを考えるよりも、目の前の一週、一試合に集中することを大切にしている。

この姿勢こそ、彼女の強さを支えているのかもしれない。大きな記録を達成しても、自分を過度に大きく見せない。プレッシャーのかかる場面でも、やるべきことを一つずつ積み重ねる。派手さよりも堅実さ、感情の高ぶりよりも冷静な判断。そのバランスが、マッカーシーを再びメジャー女王へと押し上げた。

 

マッカーシーの勝利が示した、女子ボウリングの現在地

2026年USBCクイーンズは、エリン・マッカーシーの歴史的な戴冠で幕を閉じた。

予選首位、トップシード、そして優勝。大会を通じて最も高い安定感を示した選手が、そのまま頂点に立った結果だった。PWBAツアー再始動後初となるこの快挙は、マッカーシーの実力と精神力を強く印象づけるものとなった。

一方で、この大会はマッカーシーだけの物語ではない。初のチャンピオンシップラウンドで準優勝を果たしたロスラン、今季の好調を維持しながら3位に入ったニュー、連覇を狙って堂々と戦ったバーンズ、そしてプロ入り間もない段階で5位に入ったフリアント。それぞれの選手が、女子ボウリングの競争の激しさ国際的な広がりを示した。

特にロスランの躍進は、今後のPWBAツアーにおいて大きな注目材料となる。大会中に2度のパーフェクトゲームを記録し、初の決勝ラウンドでタイトルマッチまで勝ち上がった経験は、今後のキャリアに大きな自信を与えるはずだ。

マッカーシーにとっても、この勝利は単なる通算3勝目ではない。2度目のメジャータイトルを手にしたことで、彼女は現代のPWBAを代表する選手の一人として、さらに存在感を高めた。殿堂入りへの可能性も見えてきたが、本人が語るように、本当に大切なのは遠い未来の肩書きではなく、目の前の試合に集中し続けることだ。

PWBAツアーは次戦、5月26日からニューヨーク州ロチェスターで開催される「PWBAサマーシリーズ・ロチェスター」へと続く。USBCクイーンズで生まれた熱戦の余韻を残しながら、女子ボウリング界は次なる舞台へ向かう。

ラスベガスで輝いたティアラは、マッカーシーのキャリアにおける新たな象徴となった。冷静さ、粘り強さ、友情、そして勝負強さ。そのすべてが重なった夜、エリン・マッカーシーは名実ともにクイーンズの頂点に立った。

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