第28回DSDサムホ・コリアカップ、デビッド・クロールが頂点へ
日本代表は国別対抗戦で劇的優勝
17カ国・400人が集結した国際大会、最後に笑ったのはデイビッド・クロール
韓国・龍仁市のボルトピアで9月3日から7日にかけて開催された「第28回DSDサムホ・コリアカップ国際オープンボウリング大会」が閉幕した。
今大会には17カ国から400人のボウラーが参加。韓国のトッププロをはじめ、アメリカPBA、日本JPBAなど世界各地から実力者が集まり、5日間にわたって激戦が繰り広げられた。
個人戦のTVファイナルに進出したのは6名。3名ずつ2グループに分かれてシュートアウトを行い、それぞれの1位だけが優勝決定戦へ進出する厳しいフォーマットで争われた。
その頂点に立ったのは、アメリカのデイビッド・クロール(David Krol)だった。
クロールは決勝でメキシコのアルトゥーロ・キンテーロ(Arturo Quintero)を237対197で破り、第28回大会のチャンピオンに輝いた。
そして日本のファンにとって、もう一つ大きなニュースとなったのが国別対抗戦だ。藤井信人、安里秀策、大久保雄矢の3選手で臨んだTEAM JPBAが、韓国、アメリカとの戦いを制して優勝。個人戦とはまた違った形で、日本勢がTVファイナルの舞台に強烈な存在感を刻んだ。
シュートアウトを制したクロールとキンテーロ、勝敗を分けた「変化への対応力」
TVファイナル6名が3人ずつのシュートアウトへ
個人戦TVファイナルは、6名を2組に分けて行われた。
第1グループには、アマチュアのイ・ジョンシク、PBAのデイビッド・クロール、韓国のキム・ヨンファン。
第2グループには、PBAのクリス・ヴァイ(Chris Via)、メキシコのアルトゥーロ・キンテーロ、韓国のイム・スンウォンが入った。
方式は3人同時のシュートアウト。各グループで最も高いスコアを記録した1名だけが決勝に進む。
1対1なら相手のミスによって流れが変わることもある。しかし3人シュートアウトでは、1人が大きなスコアを作れば、残る2人もストライクを積み重ねなければ生き残れない。
一つのオープンフレーム、一度の判断の遅れが、そのまま敗退につながりかねない。
TVファイナルらしい緊張感に包まれた戦いとなった。
第1グループ、デイビッド・クロールが接戦を制す
第1シュートアウトを勝ち抜いたのはクロールだった。
クロールが205、イ・ジョンシクが193、キム・ヨンファンが172。クロールがトップスコアを記録し、優勝決定戦への切符を手にした。
しかし、数字だけを見れば簡単な勝利ではない。
特に存在感を示したのが、アマチュアのイ・ジョンシクだった。中盤にストライクを重ね、PBA選手を相手に最後まで勝負を分からなくする展開を作り出した。
それに対してクロールが見せたのが、レーン変化に対する細かなアジャストだった。
ゲームが進むにつれて手前のオイルが削られ、ボールが早い段階から反応するようになると、クロールは立ち位置を徐々にインサイドへ移動。さらにロフト量も調整しながら、手前の摩擦を避け、ボールを狙ったブレークポイントまで運ぼうとした。
同じ場所から、同じボールで、同じように投げ続けるのではない。
「いま、この瞬間のレーンで何が起きているのか」を読み取り、自分の投球を変化させる。
世界トップレベルの戦いで求められる能力が、随所に表れたゲームだった。
第2グループ、キンテーロが大胆なボールチェンジ
第2シュートアウトでは、クリス・ヴァイ、アルトゥーロ・キンテーロ、イム・スンウォンが対戦した。
ここで決勝進出を決めたのがキンテーロだ。
このゲームで注目したいのが、キンテーロの大胆なボール選択だった。
キンテーロがTVファイナルで、それまで使用していなかった新しいボールを投入。練習投球からレーン状態を読み取り、手前をスムーズに走らせながらバックエンドで動きを出せるボールが必要だと判断した。
その選択が機能し、4フレーム目から9フレーム目にかけて6連続ストライクを記録。決勝進出を大きく引き寄せた。
TVファイナルでは、選手に与えられる確認の時間は決して長くない。
その限られた投球の中からオイルの状態、ボールの走り、バックエンドでの反応を読み取り、「このボールではない」と判断した瞬間に別の選択肢へ切り替える。
キンテーロの戦いは、ボールチェンジそのものが一つの技術であることを改めて示す内容だった。
こうして決勝は、
デイビッド・クロール vs アルトゥーロ・キンテーロ
というカードになった。
決勝、クロールがダブル発進で主導権
優勝決定戦では、クロールが序盤から試合を動かした。
第1フレーム、第2フレームを連続ストライク。
決勝という大舞台で最高のスタートを切ると、そのまま主導権を握っていった。
一方のキンテーロは、シュートアウトで見せた勢いをそのまま持ち込むことができない。
ここで重要なのは、直前のゲームで良かったラインが、決勝でもそのまま機能するとは限らないということだ。
投球が繰り返されればオイルは削られ、一部は奥へ運ばれる。わずかな変化でボールの立ち上がりが早くなったり、逆に奥での動きが甘くなったりする。
クロールはその変化を見ながら、準決勝とは異なるボールを選択し、立ち位置やターゲット角度、ロフト量を細かく調整した。
クロールの勝利を単に「ストライクを多く出した」と表現するだけでは、その強さを十分に説明できない。
ボール選択、ライン取り、ロフト、そしてレーン変化の察知。
複数の要素を組み合わせながら、自分の投球を現在のコンディションに合わせ続けたことが、決勝で大きな差となった。
最終的にクロールが237対197でキンテーロを下し優勝。クロールは60,000,000ウォン(4万4500ドル以上)を獲得。
日本代表、国別対抗戦で劇的な優勝
個人戦と並んで注目を集めたのが、韓国(KPBA)、アメリカ(PBA)、日本(JPBA)の3チームによる国別対抗戦だった。
日本代表は、
- 藤井信人
- 安里秀策
- 大久保雄矢
の3名。
アメリカ代表にはAnthony Simonsen、Nathan Bohr、Tomas Kayhko、韓国代表にはチョン・テファ、キム・テヨン、パク・グヌが名を連ねた。
序盤は地元・韓国チームがストライクを連ねて先行。日本にとっては厳しい展開となった。
しかし、そこで終わらなかった。
藤井、安里、大久保が終盤まで粘り続け、日本は逆転の可能性を残したまま10フレームへ突入する。
韓国が247で終了したのに対し、日本は最後に3連続ストライクを決めれば逆転できる状況となり、アンカーの安里秀策がその大役を担った。
そして安里が10フレームで3連続ストライクを完成させ、日本が253で逆転。
追う側に回っていた日本が、最後の最後で試合をひっくり返す劇的なフィニッシュとなった。
個人戦では日本勢の優勝こそ実現しなかったが、世界のトップ選手が並ぶTVファイナルでTEAM JPBAが勝利したことは、日本ボウリング界にとって大きな結果となった。
世界のトップボウラーが見せた「アジャスト」の重要性
第28回DSDサムホ・コリアカップを制したのは、アメリカのデイビッド・クロールだった。
第1シュートアウトを突破し、決勝では序盤のダブルから主導権を握ると、アルトゥーロ・キンテーロを237対197で撃破。国際オープンの頂点に立った。
しかし、今回のTVファイナルを振り返ったとき、結果以上に印象に残るのが「変化への対応力」である。
クロールはレーンのブレイクダウンを察知してインサイドへ移動し、ロフト量やボールを調整した。
キンテーロはシュートアウトで大胆なボールチェンジを敢行し、6連続ストライクにつなげた。
そして国別対抗戦では、日本代表が最後まで勝負を諦めることなく、10フレームのパンチアウトによって劇的な逆転優勝を成し遂げた。
ボウリングでは、数フレーム前までの正解が、次の瞬間には正解ではなくなる。
だからこそ必要なのは、ただ同じフォームを再現する能力だけではない。
レーンを読み、変化を察知し、必要ならボールを替え、ラインを動かし、投球そのものを微調整する能力。
世界各国のトップ選手が集結した第28回DSDサムホ・コリアカップは、現代ボウリングにおけるその重要性を改めて示した大会だった。
個人戦ではデイビッド・クロールが頂点へ。そして国別対抗戦ではTEAM JPBAが劇的な逆転優勝。
17カ国400人が参加した国際オープンは、最後の一投まで結果が分からないボウリングならではのドラマを残し、5日間の熱戦に幕を下ろした。