パッキー・ハンラハン、PBAチーター選手権制覇
テレビ決勝で掴んだキャリア3勝目

ミネアポリスを包んだ“Pac-Man Fever”

ミネアポリスの夜に、ひときわ大きな熱狂が生まれた。PBAワールドシリーズ・オブ・ボウリングXVIIの最初のタイトルイベントとして行われた「PBAチーター選手権」で、パッキー・ハンラハンが圧倒的な強さを見せ、PBAツアー通算3勝目を飾った。

今大会のハンラハンは、まさに“止められない存在”だった。テレビ放送されたブラケット決勝で5試合を投げ、平均スコアは263点超。チェイス・ナドー、ザカリー・タケット、クリス・プラザー、マット・サンダースといった実力者たちを次々と退け、頂点まで駆け上がった。

特に印象的だったのは、決勝戦の内容である。相手はマット・サンダース。両者ともサウスポーであり、さらにテレビ放送のPBAツアー決勝での初優勝を狙う立場だった。緊張感の高い一戦となったが、ハンラハンはRace-to-Two形式のチャンピオンシップマッチを237-192、265-227のストレートで制した。

これまで何度もテレビ決勝の舞台に立ちながら、あと一歩のところで勝利を逃してきたハンラハン。だからこそ、今回の優勝には特別な意味がある。単なるツアー3勝目ではない。テレビ決勝で勝ち切ったという事実が、彼のキャリアに新たな重みを加えた。

 

第5シードから頂点へ、完璧に近い勝ち上がり

初戦から見せた圧倒的な集中力

今大会には120人の選手が出場し、10ゲームの予選を経てテレビ放送のブラケット決勝進出者が決まった。上位4シードには不戦勝が与えられる形式だったため、第5シードのハンラハンはラウンド・オブ・12からの登場となった。

初戦の相手は、テレビ決勝初出場のチェイス・ナドー。大舞台の緊張もあってか、ナドーは序盤からリズムを掴みきれなかった。一方のハンラハンは、相手に立て直す隙を与えない。ストライクを重ね、試合の主導権を完全に握ると、268-169の大差で勝利した。

この一戦は、ハンラハンの今大会における強さを象徴していた。単にスコアが高いだけではなく、試合の入り方、相手へのプレッシャーのかけ方、そしてチャンスを逃さない判断力が際立っていた。

 

準々決勝では289点の爆発力

準々決勝では、同じく2ハンドの左投げであるザカリー・タケットと対戦した。この試合でハンラハンは、さらにギアを上げる。序盤からストライクを量産し、相手に反撃の余地を与えない展開を作った。

最終スコアは289-174。ほぼ完璧に近い内容で、ハンラハンが準決勝進出を決めた。ここまでの2試合で、彼は268点、289点という驚異的なスコアを記録。短期決戦のブラケットでは、ひとつのミスが命取りになる。その中でこれほど高いスコアを連発できること自体、技術だけでなく精神面の充実を物語っている。

 

クリス・プラザーを封じた準決勝

準決勝の相手は、経験豊富なクリス・プラザーだった。プラザーはラウンド・オブ・12でルーキーのブランドン・ボンタを279-215で下し、準々決勝ではトップシードのキャム・クロウを247-228で撃破して勝ち上がってきた。実績、対応力、勝負勘のすべてを備えた難敵である。

試合前には再オイルが行われ、レーンコンディションも変化した。プラザーはリアクティブボールでスタートしたものの、序盤にブルックリンへ入りスプリットを残す苦しい立ち上がりとなる。その後、ウレタンに切り替えて立て直しを図ったが、6フレーム、7フレーム、9フレームで単ピン残りが続き、ハンラハンの勢いに追いつくことはできなかった。

対するハンラハンは、レーンの変化に柔軟に対応しながら、安定してストライクを重ねた。結果は259-214。相手が試行錯誤する中でも、自分のボウリングを崩さなかったことが勝因だった。

 

サンダースの283点が決勝をさらに熱くした

もう一方の準決勝では、マット・サンダースがスペンサー・ロバージを相手に圧巻の投球を披露した。サンダースは試合開始から10連続ストライクを決め、パーフェクトゲーム目前まで迫った。11投目で300点達成は逃したものの、最終スコアは283点。テレビ決勝の舞台でこのスコアを出したことは、サンダースの実力を強く印象づけた。

一方のロバージは、ストライクを連続させることができず、流れを掴めなかった。結果は283-201。サンダースは圧勝で決勝進出を決め、ハンラハンとのサウスポー対決が実現した。

ハンラハンにとって、サンダースの好調ぶりは大きな脅威だったはずだ。直前の試合で10連続ストライクを出した選手と、タイトルを懸けて戦う。そのプレッシャーは決して小さくない。しかし、ハンラハンは試合後、サンダースが300点を出すことを「願っていた」と語っている。大きな達成の直後には、アドレナリンの反動が生じる可能性があるからだ。

この発言からは、ハンラハンの冷静な勝負観が見える。相手の勢いを恐れるのではなく、その勢いの後に起こり得る変化まで読んでいたのである。

 

決勝:勝負どころで見せた本物の強さ

チャンピオンシップマッチは、2ゲーム先取のRace-to-Two形式で行われた。

第1ゲームは、ハンラハンが主導権を握った。サンダースは4つのストライクを奪ったものの、ダブルは1回のみ。準決勝で見せたような爆発力は影を潜めた。一方のハンラハンは9つのストライクを記録し、237-192で先勝した。

第2ゲームでは、サンダースがリードを保つ場面もあった。ハンラハンは7番ピンのスペアをミスし、一時は流れが相手に傾いたかに見えた。しかし、サンダースが第8フレームで6番ピンを残したことで、ハンラハンに逆転のチャンスが訪れる。

この場面で、ハンラハンは自分に言い聞かせたという。

「3連続ストライクを出せば、自分のものだ」

もちろん、そこには緊張もあった。試合後、彼は「優勝が懸かった10フレームに立つときの緊張は、テレビでもローカル大会でも同じ。ただしテレビでは、それが何倍にも増幅される」と振り返っている。

その極限の状況で、ハンラハンは崩れなかった。9フレームでは10番ピンが遅れて倒れる幸運もあった。続く10フレームでは完璧なストライク。そして勝利を決める一投では、3番ピンが印象的に倒れ、優勝が決定した。

スコアは265-227。ハンラハンが2ゲームを連取し、PBAチーター選手権のタイトルを手にした。

 

ハンラハンの優勝が示したもの

今回の優勝は、ハンラハンにとってキャリアの節目となる勝利だった。PBAツアー通算3勝目という数字以上に大きいのは、テレビ決勝で勝ち切ったという事実である。

彼はこれまで、何度もテレビ決勝の舞台に立ってきた。しかし、そこからタイトルを掴むことは簡単ではなかった。実力があっても、テレビ放送の独特な空気、限られた投球数、対戦相手の勢い、そして一投ごとの重みが、選手の心身に大きな負荷をかける。今回のハンラハンは、そのすべてを乗り越えた。

また、今大会では若手選手の活躍も目立った。ブランドン・ボンタ、ブランドン・クライヤー、ヘイデン・スティピッチ、スペンサー・ロバージらが存在感を示し、PBAツアーの新しい流れを感じさせた。その中で31歳のハンラハンが成熟した投球と勝負強さを見せたことは、今後のツアー戦線においても大きな意味を持つ。

PBAワールドシリーズ・オブ・ボウリングXVIIは、今後も複数のチャンピオンシップイベントが続く。ハンラハンはPBAシャーク選手権にも進出しており、さらなるタイトル獲得の可能性を残している。

ミネアポリスを包んだ“Pac-Man Fever”は、単なる一夜の熱狂では終わらないだろう。テレビ決勝で壁を破ったハンラハンが、ここからどのような存在へと進化していくのか。今回のPBAチーター選手権は、その新たな物語の始まりとして記憶されるはずだ。