バトゥルフ、歴代記録まであと4ピン
USBCマスターズ予選を首位通過
バトゥルフが“あと4ピン” USBCマスターズ予選で首位、記録は目前に
USBCマスターズの予選(15ゲーム)で、ジェイコブ・バトゥルフが大会の空気を一変させた。通算3,668ピン(+668)、アベレージ245超。首位シードを獲得しただけでなく、1996年から更新されていない「15ゲームの歴代最高記録」(パーカー・ボーンIIIが保持)に、わずか4ピン差まで迫る“ニアレコード”を叩き出した。
ただし、本人が見据えるのは数字の余韻ではない。ここから始まるのは64人によるダブルエリミネーション方式のブラケット戦。予選の順位は追い風になる一方、勝敗を決めるのは目の前の1試合であり、レーンの変化への適応力と、迷いを切り捨てる決断力だ。記録級の予選は、あくまで序章。マスターズの本番は、ここから加速する。
勢力図は固まった だが「ブラケットに入れば別大会」
1)首位バトゥルフが示したのは、スコア以上の“再現性”
3,668という数字は強烈だが、より重要なのは、その内容が偶然の爆発ではなく「一週間通して成立した」点にある。マスターズはコンディションの変化が勝負を左右し、昨日の正解が今日は不正解になることも珍しくない。そんな中で、バトゥルフは「自分のやるべきこと」を明確にし、試合運びの軸をぶらしていない。
本人は、先の対戦相手を意識するより「目の前の一人」に集中すべきだと語った。さらに、自分には多くの選手が真似できない“小さな工夫”があるとも言う。これは奇策ではなく、球速・回転・角度の作り方など、彼ならではの引き出しを指す言葉だろう。勝負どころで頼れる武器がある選手は、短期決戦で強い。予選首位は、戦い方が仕上がっている証明でもある。
2)初戦から最注目カード:相手は前年王者ヘインズ
首位通過のバトゥルフが、初戦でいきなり対するのはディフェンディングチャンピオンのゲイリー・ヘインズ。ブラケットの初戦としては異例の豪華さであり、同時に落とし穴もある。ダブルエリミネーションは1敗で終わらないが、序盤でつまずけば回るラウンドが増え、集中力の消耗が積み上がる。
だからこそ、バトゥルフの「遠くを見ない」という姿勢が生きる。予選首位の肩書を守りに使うのではなく、普段通りのプロセスで投げ切れるか。最初の一戦が流れを決める可能性は高い。
3)2位エリック・ジョーンズのキーワードは「調子に乗るな」
予選2位はエリック・ジョーンズ(3,592)。彼が強調したのは技術論よりも、昨年の反省に根ざしたメンタル面だった。前年は予選6位で進出しながら、初戦から連敗して姿を消したという。その経験から導いた教訓が「Don’t get cocky(調子に乗るな)」だ。
21歳のジョーンズは、マスターズに特別な思いを抱く選手でもある。ジェイソン・ベルモンテのファンとして育ち、マスターズのタイトルが“レジェンドの証”になり得ることを肌で感じてきた。だからこそ気負いも生まれる。勝負に必要なのは、気持ちを上げること以上に、気持ちを乱さないこと。彼が今年、昨年の緊張を克服できるかは注目ポイントだ。
4)左腕勢が上位を占める 右腕最上位はバレット
今回の予選で目を引くのは、トップ8に左利きの選手が複数名並んだことだ。イェスパー・スベンソン、マット・ルッソ、キリアン・キルパトリックが“左腕の上位勢”を形成し、レーンの使い方の違いが結果として表れた。
一方、右利きで最上位だったのがドム・バレット。予選9位、アベレージは233に迫る高水準で通過した。バレットは「最初の5ゲームは今季最高。判断が良かった」と手応えを語りつつ、最後は本質を突く。「ブラケットに入れば新しい大会」。予選順位は指標に過ぎず、勝負は毎試合、ゼロから積み直される。
5)歴代覇者が揃って進出 “勝ち方”を知る者たち
マッチプレーには、過去のUSBCマスターズ覇者が複数名進出している。バトゥルフ(2019)、パーカー・ボーンIII(2001)、アンソニー・サイモンセン(複数回)、ジェイソン・ベルモンテ(複数回)、そして前年王者ヘインズ(2025)。華やかな名前が並ぶのは、マスターズが「経験が結果に直結しやすい」大会であることの裏返しでもある。
予選ではアベレージの高低がものを言うが、ブラケット戦では“勝ち方”が問われる。ストライクの量産だけでなく、スペア精度で踏みとどまる力、流れが悪い時に被害を最小化する判断、そして一球に集中し直す切り替え。歴代覇者たちは、その局面を何度も潜り抜けてきた。バトゥルフの勢いと、覇者たちの老練さが交錯する舞台が整った。
6)視聴情報と日程:配信で追い、決勝はテレビで迎える
マッチプレーはBowlTVで全ラウンドがライブ配信され、選択された一部はPBAのYouTubeチャンネルでも無料配信される。ステップラダーファイナルは、日曜にThe CWで生放送予定。山場へ向けて視聴手段が段階的に用意されているのは、ファンにとって追いやすい構成だ。
日程(すべて米東部時間)
- 金曜:10:00(左側ブラケット)/12:30(右側ブラケット)/14:30(勝者側)/17:00(コンテンダーズ側)
- 土曜:10:00(勝者側・コンテンダーズ側)/14:00(同)
- 日曜:16:00(決勝)
記録は熱狂を呼ぶ しかしタイトルは「一戦一戦の最適解」でしか掴めない
バトゥルフは、歴代最高記録に4ピン差という“記録級の予選”で主役の座を奪った。しかしUSBCマスターズの恐ろしさは、そこから先にある。ブラケット戦は、好調さを維持できる選手ではなく、変化に応じて正解を更新し続けられる選手が勝つ。ジョーンズが戒めた「調子に乗るな」も、バレットが言い切った「新しい大会」も、結局は同じ地点を指している。勝負は、過去の数字ではなく、次の一球で決まる。
前年王者ヘインズとの初戦を、バトゥルフはどう料理するのか。左腕勢の強みはマッチプレーでも生きるのか。そして、ベルモンテやサイモンセン、ボーンIIIといった覇者たちは、勝負どころで“勝ち方”を再び証明するのか。記録は人を熱くさせる。だが、タイトルへの道はいつも静かで、冷静で、執拗だ。今大会は、その現実を最もドラマチックに映し出す週末になる。