USBCマスターズ2026:バトゥルフが史上最高2,485更新
ただ本当に怖いのは「63位争い」だった

USBCマスターズで起きた「記録更新」という事件

格式あるUSBCマスターズでは、勝敗だけでなく「そこで何が起きたか」が長く語り継がれる。2026年大会の序盤、その“語り継がれる出来事”が早くも生まれた。ジェイコブ・バトゥルフ(Jakob Butturff)が予選前半10ゲームで合計2,485を記録し、大会史上最高スコアを更新大会全体でも首位に立った。

予選は短期決戦に見えて、実際はレーンの変化、判断のズレ、メンタルの揺れが数字に直結する領域だ。そこで2日間にわたり高水準を積み上げ、歴代記録を塗り替えた――この一点だけでもニュースとして十分に強い。だが今回の面白さは、記録の派手さだけではない。上位争いの密度、そして「63位」をめぐる静かなサバイバルまで含めて、マスターズ特有の緊張感が立ち上がっている。

 

2,485の意味と、見え始めた大会の構図

1)2,485という数字が示すもの――“史上最高”の重み

バトゥルフは予選ラウンド1で1,252、ラウンド2で1,233。合計2,485(アベレージ248.5)に到達し、USBCマスターズにおける「最初の10ゲーム予選」史上最高を打ち立てた。従来の最高は2,479で、2017年のダレン・タン、1992年のジム・ペンチャクが残していた数字だ。

30年以上の時間をまたいで生き残ってきた記録を更新した事実は、それ自体が大会の空気を変える。しかもバトゥルフは2019年覇者。経験と実績のある選手が、序盤から“勝てる形”を提示して見せたことが、今大会の視線を一気に集める理由になっている。

 

2)ただの独走ではない――上位は高密度のまま並走

一方で、今大会は「首位が抜けた」だけの単調な展開ではない。初日(オープニングラウンド)の首位だったデオ・ベナード(Deo Benard)は、マスターズ史上2番目となる5ゲーム1,309という衝撃的な立ち上がりを見せた。2日目も1,139でまとめ、合計2,448で総合2位。首位との差はあるが、依然として存在感は大きい。

3位にはスウェーデンのイェスパー・スベンソン(Jesper Svensson)が2,416。4位はカナダのグラハム・ファッハ(Graham Fach)が2,413、5位はペンシルベニアのキリアン・キルパトリック(Killian Kilpatrick)が2,386と続く。国籍やスタイルの異なる選手が上位に並ぶことで、得意条件の押し付け合いではなく、“適応力の勝負”になりつつあることが読み取れる。

さらに、デビッド “ブーグ” クロール(David “Boog” Krol)がゲーム2で300を達成し、この日の合計1,123で総合37位(2,220)まで浮上したというトピックも象徴的だ。ビッグゲームひとつで景色が変わる一方、安定感の有無が順位を分ける。まだまだ入れ替わりの余地が大きい段階である。

 

3)本当の焦点は「63位」――マスターズが怖い理由

今回の記事で特に“マスターズらしい”のは、目立つトップ争いと同じ熱量で、カットライン付近の緊張が描かれている点だ。マッチプレーへ進めるのは基本的に上位64名。ただしディフェンディングチャンピオンのゲイリー・ヘインズ(Gary Haines)は、予選順位に関係なく枠が保証される。このルールが、実質的に「63位までが安全圏」という状況を生みやすい。

そしてそのヘインズは、残り5ゲームを残して同率180位(2,069)とされ、王者枠を使用する可能性が高い。つまり、予選を“64位で通ったつもり”でも、実際には外側へ押し出されるリスクがある。数字の派手さとは別のところで、静かな恐怖が走っているのだ。

記事時点の63位はメイソン・エドモンドソン(Mason Edmondson)で2,177(アベレージ217.7)。トップのニュースが大きくなるほど、ボーダー付近の1投、1フレームの価値は跳ね上がる。マスターズは、華やかな首位と、息を呑む“境界線の勝負”が同時に進む大会である。

 

4)バトゥルフが強いのは「両方で打てる」から

バトゥルフの強みは、条件が変わっても崩れない点にある。2026年マスターズのオイルパターンは41フィートとされるが、彼はフレッシュ(新しいコンディション)でもバーン(進行で削れた状態)でも手応えを得ていると語る。

実際のスコア推移も説得力がある。フレッシュでは224、246、207、298、258。前日のバーンでも213、225、268、288、258と高水準を維持。単発の爆発ではなく、再現性のある攻めが成立している。

本人は、ボールをレーンの早い段階で動かし始める「Aゲーム」を見つけられている、といった趣旨のコメントを残している。マスターズは読み勝負の色が濃い。そこで「自分の核」を早期に掴めていることは、予選首位以上に、その後のマッチプレーで効いてくる。

 

5)ここからが本番――マッチプレーとテレビ決勝の設計

予選は合計15ゲーム(フレッシュ10+バーン5)で木曜に最終ブロックが行われる。マッチプレーは金曜午前10時(東部時間)開始で、3ゲームのトータルピン方式。勝ち上がりの先に、日曜午後4時(東部時間)にはThe CWでステップラダー決勝が放送される。テレビ決勝までのラウンドはBowlTVで独占ライブ配信とされている。

また、2026年大会ではテレビ決勝で「伝統的な5人ステップラダー形式」が戻る点も注目だ。勝者側の最終2人がトップシード決定戦を戦い、敗者側の4人が残り3枠を争う。そして1位シードには最終戦で1度だけ敗北が許される。予選で築いた優位が、はっきりと“制度的なアドバンテージ”として形になる設計であり、バトゥルフがこのまま第1シード争いを主導できるかが大会の背骨になる。

 

記録は序章、マスターズのドラマはここから始まる

バトゥルフの2,485は、USBCマスターズの歴史に刻まれる数字だ。ただしマスターズの怖さは、ここから先にある。ダブルエリミネーションのマッチプレーは、上位で入っても一度のミスが致命傷になり得る一方、下位通過でも波に乗れば主役になれる舞台である。

今回のニュースが面白いのは、単に「優勝候補が序盤で抜けた」では終わらないところだ。トップの記録更新上位争いの高密度、そして63位という境界線の緊張。さらにフレッシュとバーンの両局面で数字を残す適応力の価値が、一つの大会の中で同時に提示されている。

バトゥルフがこのまま第1シードを掴みPBAツアー9勝目と2度目のマスターズ制覇へ加速するのか。それとも、マッチプレーの荒波が新たな勝者を押し上げるのか。記録が生まれた今週は、むしろ「ここからが本番」である。

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