EJタケット、止まらない
2026年に刻んだ歴史的シーズンの本当の価値
記事に入る前に、音声による要点解説をお聞きいただくと、内容が一段と理解しやすくなります。
要点音声解説
本要点音声解説は、「OneHandedBowling」掲載の動画内容をGemini Notebook を用いて生成したものです。
わずか1勝。それでも年間最優秀選手の最有力候補となった理由
2026年のPBAツアーを振り返るうえで、決して外すことのできない選手がいる。
EJタケットだ。
シーズンの結果をタイトル数だけで見れば、彼の2026年は一見すると圧倒的な一年には映らない。
獲得タイトルは1勝。
年間3勝、4勝と勝利を積み重ねる選手のシーズンと比べれば、「本当にそこまで特別な一年だったのか」と感じる人がいても不思議ではない。
しかし、2026年のEJタケットをタイトル数だけで評価すると、このシーズンの本当の異常さを見落としてしまう。
タケットは年間を通してPBAツアーのポイント、獲得賞金、アベレージで極めて高い水準を維持。
そして何より、長年破られなかったフルシーズンのアベレージ記録を更新した。
ジェイソン・ベルモンテが2017年に380ゲームで記録した229.39。
この数字は長く、PBAにおける年間アベレージの巨大な壁として存在していた。
その記録をタケットは2026年、449ゲームで229.78という数字によって塗り替えた。
しかも、その過程で彼はシーズンの大半をタイトルなしで過ごしている。
誰よりも打っている。
毎週のように上位へ進出する。
それでも、勝てない。
そして最後に待っていたのは、PBA史上初となる歴史的な快挙だった。
2026年のEJタケットは、私たちに一つの問いを突きつけた。
ボウリングにおける「本当の強さ」とは、一体何なのか。
タイトル数だけでは見えてこない2026年の圧倒的な支配力
PBA史に残る「伝説のシーズン」とは何か
EJタケットの2026年を評価するには、まずPBAの歴史に残る偉大なシーズンと比較する必要がある。
過去を振り返れば、年間タイトル数という面で圧倒的な数字を残した選手たちがいる。
1975年のアール・アンソニーは7勝を記録。
その中には、現在のPBAワールドチャンピオンシップにあたるPBAナショナルチャンピオンシップも含まれていた。
さらに1978年には、マーク・ロスが年間8勝という驚異的な記録を残している。
年間8タイトル。
現代のPBAツアーから考えれば、ほとんど想像しにくい数字だ。
ただし、ここで注意したいのが時代による大会数の違いである。
当時のPBAツアーでは、1シーズンに30〜40大会ほどが開催されていた。
一方、現代では16〜20大会程度となっている。
単純に考えても、現在の選手がタイトルを獲得できる機会そのものが大幅に減っている。
そのため、アール・アンソニーやマーク・ロスの年間勝利数を、そのまま現在の選手と比較することは難しい。
重要なのは「何勝したか」だけではなく、その時代のツアー環境において、ライバルたちに対してどれほど抜きん出ていたのかという視点だろう。
ジェイソン・ベルモンテが築いた229.39という巨大な壁
現代PBAを語るうえで、ジェイソン・ベルモンテの存在も欠かせない。
ベルモンテはツーハンドスタイルを世界最高峰の舞台で確立し、2010年代の競技ボウリングそのものを象徴する存在となった。
単に多くのタイトルを獲得しただけではない。
ボールスピード、回転数、入射角、オイルへの対応方法など、トップレベルのボウリングに対する考え方そのものを大きく変えた選手でもある。
そのベルモンテが2017年に記録したのが、380ゲームで年間アベレージ229.39という数字だった。
これは単発の大会で記録されたアベレージではない。
シーズンを通じて、何百ゲームもの投球を積み重ねた末の平均値である。
数十ゲームであれば、好調な期間によって数字が大きく上振れすることはある。
しかし380ゲームとなれば話は違う。
難しいコンディション。
ボールリアクションが見えない日。
フィジカルの状態が整わない日。
メンタル的に苦しい週。
そうしたすべてを含めたうえで、229点台を維持し続けなければならない。
だからこそ229.39は、長年にわたってPBAの大きな壁となっていた。
その数字を、2026年のEJタケットが突破したのである。
449ゲームで229.78。その数字が持つ本当の意味
2026年、タケットが記録した年間アベレージは229.78。
数字だけを見ても驚異的だ。
しかし、この記録の本当の価値を理解するには、もう一つの数字を見る必要がある。
449ゲーム。
ベルモンテが229.39を記録したのは380ゲーム。
タケットは、それより69ゲーム多く投げたうえでアベレージを上回った。
ここが極めて重要である。
ゲーム数が増えれば増えるほど、高い平均値を維持することは難しくなる。
69ゲーム増えるということは、単純に言えば、スコアを落とす可能性のあるゲームが69回増えるということでもある。
レーンコンディションへの対応を外す可能性も増える。
ボール選択を間違える可能性も増える。
スプリットを出すゲームもあれば、ストライクが続かないゲームもある。
会場ごとのレーン特性やトポグラフィーによって、得意なラインを使えないこともある。
さらに、ショート、ミディアム、ロングなど、PBAでは大会ごとにまったく異なる対応能力を要求される。
それでもタケットは449ゲームもの長丁場で229.78を維持した。
これは単なる爆発力ではない。
どのコンディションでも、どの週でも、極端に崩れなかったという証明である。
2026年のタケットを一言で表現するなら、
「一年間ずっと強かった」
これに尽きるのかもしれない。
アベレージが映し出すのは「最高点」ではなく「最低ライン」
年間アベレージの価値を考えるうえで、非常に重要なのが「悪い日のスコア」である。
PBAのトッププレイヤーであれば、調子の良い日に270、280、あるいは300を投げる能力を持っている。
しかし、年間アベレージを229点台後半まで引き上げるために重要なのは、ビッグゲームだけではない。
むしろ大きな差が生まれるのは、うまくいかない日にどこまで耐えられるかだ。
ストライクが続かない。
ラインが見つからない。
リアクションが読み切れない。
そんな状況で180を打つのか。
それとも210、220までまとめられるのか。
年間数百ゲームという単位になると、この差が積み重なって大きなアベレージ差となって現れる。
つまり229.78という数字は、タケットが毎ゲーム完璧だったことを意味するわけではない。
むしろ、
完璧ではない日でさえ、大崩れしなかった。
そこに、この記録のすごさがある。
トップレベルになるほど、最高のショットを投げたときの能力差は小さくなる。
だからこそ、最終的な差を生むのは「悪い状態でもスコアをまとめる能力」なのだ。
スペアを確実に取る。
ラインを少しずつ修正する。
必要であればボールを変更する。
無理にストライクを狙い続けず、次のゲームへつなげる。
そうした細かな判断の積み重ねが、449ゲームで229.78という記録につながっている。
誰よりも打っているのに、なぜ勝てなかったのか
さらに2026年を異例のシーズンにしているのが、これほどの数字を残しながら、タケットが長期間タイトルを獲得できなかったことだ。
PBAツアー最高水準のアベレージ。
ポイントでも上位。
獲得賞金でも上位。
毎週のように終盤まで勝ち残っている。
通常であれば、複数タイトルを獲得していても何ら不思議ではない。
ところが、タケットには最後の最後で勝利を逃す大会が続いた。
Playersではブランドン・ボンタが決勝で300を達成。
タケットは準優勝に終わった。
相手がパーフェクトゲームを達成すれば、どれだけ素晴らしい投球をしても、それ以上のスコアを出すことはできない。
Mastersでは、ブーグ・クロールにわずか1ピン差で敗戦。
決定的な場面で10番ピンが残り、タイトルを逃した。
Illinois Classicでは3位。
Indiana Classicでも3位。
優勝できる力がなかったのではない。むしろ、ほぼ毎週のように優勝できる位置にいたのに、最後の扉だけが開かなかった。
ボウリングは「一番打った選手」が必ず優勝する競技ではない
ここに、競技ボウリングの面白さと難しさがある。
長い予選で最も高いアベレージを記録した選手が、そのまま大会を制するとは限らない。
ステップラダー方式では、最終的に1ゲームの勝負となる。
ブラケット形式でも、特定の対戦で敗れればそこで終了する。
つまり、数十ゲームを通して圧倒的な内容を残していたとしても、最後の1ゲームで勝てなければタイトルは手に入らない。
1回のスプリット。
1個の10番ピン。
ほんの数センチの投球誤差。
相手の突然のビッグゲーム。
そうした要素が、勝敗を大きく左右する。
もちろん、タイトル獲得に運だけが必要だという意味ではない。
プレッシャーのかかる場面で質の高いショットを投げる能力は、チャンピオンに欠かせない。
ただし、年間を通した強さと、一大会を勝ち切る強さは完全に同じものではない。
2026年のタケットは、その違いを極端な形で示したシーズンだった。
何度敗れても翌週には再び優勝争いへ戻ってくる
そして、2026年のタケットをさらに評価すべき理由がある。
それは、何度も勝利寸前で敗れながら、パフォーマンスそのものが崩れなかったことだ。
競技経験のあるボウラーであれば分かるだろう。
「あと少しで勝てた」という敗戦は、ときに大敗よりも精神的なダメージが大きい。
300を打たれて敗れる。
1ピン差で負ける。
3位、また3位。
これだけの結果が続けば、投球そのものに迷いが生まれても不思議ではない。
しかしタケットは、翌週になると再び上位へ戻ってきた。
負けたことによって、自分のボウリングまで壊さなかった。
これもまた、229.78という年間アベレージを支えた重要な要素だろう。
高い技術だけでは、シーズンを通してこの数字を維持することはできない。
敗戦を受け入れる。
原因を整理する。
次の大会では再びゼロからスタートする。
このリセット能力まで含めて、2026年のタケットは驚異的だった。
ワールドチャンピオンシップで迎えた歴史への挑戦
そして、長く続いたタイトル未勝利期間の先に待っていたのが、PBAワールドチャンピオンシップだった。
ただし、この大会でタケットが挑んでいたのは、単なるシーズン初勝利ではない。
同一タイトルイベント4連覇。
PBA史上誰も達成したことのない記録だった。
タケットは5種類のオイルパターンを使用する予選で平均227を超え、トップシードを獲得。
これは非常に象徴的な結果でもある。
特定のパターンだけで圧倒したのではない。
異なるレーンコンディションを次々と攻略し、その合計でトップに立ったのである。
まさに2026年のタケットを象徴するような勝ち上がりだった。
ザック・ウィルキンスとのタイトルマッチ
タイトルマッチでタケットと対戦したのは、ザック・ウィルキンスだった。
ウィルキンスは7番シードから驚異的な勝ち上がりを見せていた。
ジェイソン・ベルモンテ。
ブランドン・ボンタ。
ビル・オニール。
クリス・ヴァイ。
クリス・プラザー。
PBAを代表する実力者たちを次々と破り、ついにトップシードのタケットとの決勝へ到達した。
試合は序盤から簡単な展開にはならなかった。
両者ともスプリットを出し、大きなリードを奪うことができない。
タケットは中盤で少しずつ差を作ったが、決して勝利が確定するような状況ではなかった。
そして終盤。
ウィルキンスには勝利の可能性を残すスプリットメイクが必要となった。
しかし、これを成功させることができない。
その瞬間、タケットの優勝が決まった。
PBA史上初。同一タイトルイベント4連覇
この勝利によって、EJタケットはPBA史上初となる同一タイトルイベント4連覇を達成した。
しかも、その舞台はメジャーであるPBAワールドチャンピオンシップだった。
通算28勝目。
メジャー8勝目。
そして、2026年シーズン初タイトル。
年間を通して誰よりも高いアベレージを残しながら、どうしてもタイトルだけが手に入らなかった。
そのタケットが、ようやくつかんだシーズン最初の勝利でPBA史上初の記録まで完成させた。
ただの1勝ではない。
2026年というシーズン全体を象徴するようなタイトルだった。
「タイトル1勝」という数字だけで評価していいのか
ここから、2026年のタケットをどう評価するかという議論が始まる。
結果だけを見れば、タイトルは1勝。
PBA史には、年間3勝、4勝、さらには8勝というシーズンが存在する。
ジェイソン・ベルモンテのように、メジャータイトルを積み重ねながら年間最優秀選手となったシーズンもある。
その意味では、2026年のタケットを無条件に「PBA史上最高のシーズン」と呼ぶのは難しい。
しかし同時に、1勝だから歴史的シーズンではない、と片付けるのも明らかに違う。
なぜなら、タイトル数と年間アベレージでは、測っているものが異なるからだ。
タイトルは「勝ち切る力」、アベレージは「一年間の総合力」
タイトルは、最終局面で勝ち切る能力を示す。
テレビ決勝という独特のプレッシャー。
最後の数フレーム。
相手との直接対決。
そこで最高の投球を出せるかどうか。
チャンピオンになるためには不可欠な能力である。
一方、年間アベレージが映し出すのは別の強さだ。
コンディションを読む力。
ボール選択。
レーン移動への対応。
スピードや回転の調整。
スペア能力。
崩れかけたゲームを立て直す力。
そして、何カ月にもわたって高いレベルを維持する再現性。
タイトルが「瞬間の強さ」を示すのだとすれば、年間アベレージは「長期間の強さ」を示す数字とも言える。
2026年のタケットが特別なのは、その長期間の強さにおいて歴史的な数字を残した点にある。
年間トップ5入り10回という圧倒的な安定感
2026年のタケットは、年間でトップ5入りを10回記録した。
これは非常に重要な数字だ。
一度大会で優勝することはもちろん難しい。
しかし、毎週のように最終盤まで勝ち残ることも、別の意味で極めて難しい。
開催地は変わる。
レーンも変わる。
コンディションも変わる。
対戦相手も変わる。
それでも上位にいる。
また次の大会でも上位にいる。
「またEJタケットがいる」
そんな状態をシーズンを通して作り続けたこと自体が、2026年の支配力を象徴している。
爆発力ではなく再現性。それが2026年最大の価値
ボウリングでは、短期間に爆発的なスコアを記録する選手はいる。
ある大会だけ完璧にコンディションと噛み合い、優勝することもある。
数週間だけ絶好調になる選手もいる。
しかし、その状態を何カ月も続けることは難しい。
2026年のタケットは、そこをやってのけた。
ショートでも。
ロングでも。
メジャーでも。
通常大会でも。
勝った週も。
負けた週も。
パフォーマンスの最低ラインそのものが極端に高かった。
ここに2026年の最大の価値がある。
爆発力ではなく、再現性。
一瞬のピークではなく、年間を通した支配力。
229.78という数字は、単なる記録ではない。
EJタケットが一年間ほとんど崩れなかったという事実を、そのまま数字にしたものなのである。
2026年は「史上最高」でなくても、間違いなく歴史的なシーズン
EJタケットの2026年を、PBA史上最高のシーズンと断言するのは難しい。
過去にはアール・アンソニー、マーク・ロス、ジェイソン・ベルモンテらが、複数のタイトルやメジャーを積み重ねた伝説的な一年を残している。
仮に2026年のタケットが229.78という年間アベレージを維持したまま、さらに3〜4タイトル、そのうち1〜2勝がメジャーだったとすれば、「史上最高」という議論は一気に現実味を増していただろう。
それでも、このシーズンが特別であることに疑いはない。
449ゲームで年間アベレージ229.78。
ベルモンテが持っていた229.39の記録を更新。
トップ5入り10回。
そして最後には、
PBAワールドチャンピオンシップで史上初の同一タイトルイベント4連覇。
タイトル数だけを見れば1勝。
しかし、一年間の投球全体を見れば、その数字から受ける印象は大きく変わる。
EJタケットは2026年、ほぼ一年を通じてPBAツアーの最前線に立ち続けた。
競技ボウリングでは「何勝したか」が最も分かりやすい評価基準になる。
だが、強さはそれだけでは測れない。
どれだけ長く高いパフォーマンスを維持できるか。
悪い日でもどこまでスコアを落とさずに耐えられるか。
あと一歩で敗れた翌週にも、再び優勝争いへ戻ってこられるか。
そのすべてを含めて考えたとき、2026年のEJタケットが残したものの大きさが見えてくる。
記録更新そのものも歴史的だ。
しかし、それ以上に重要なのは、世界最高峰のPBAツアーで449ゲームもの長期間にわたり、229点台後半という異常な水準を維持し続けたことだろう。
勝利数だけでは説明できない強さがある。
そして2026年のEJタケットは、そのことをこれ以上ないほど明確に証明した。
2026年は、EJタケットというボウラーの「本当の強さ」が、数字として歴史に刻まれたシーズンだった。