肩手術からの復活へ
ケイラ・パシナがPWBAペプシ・オープンでマッチプレー進出
トップ16入り以上の意味を持つ、ケイラ・パシナの復活
2026年PWBAツアー選手権ウィーク第2戦「PWBA Pepsi Open(PWBAペプシ・オープン)」の予選12ゲームが、オハイオ州パルマハイツのヨークタウン・レーンズで行われた。
ハイスコアが相次いだ予選を制したのは、ペンシルベニア州ミルトンのアレクシス・ランク。12ゲーム合計2,793ピンをマークし、堂々の首位通過を果たした。2位には2,748ピンのステファニー・ザバラ、3位には2,720ピンのシンガポール代表ニュー・フイフェン、4位には2,707ピンのシドニー・ブラメットが続いた。
世界各国の実力者が上位を占めるなか、今回ひときわ大きな意味を持つマッチプレー進出を果たしたのが、ケイラ・パシナだ。
パシナは2,623ピンで14位。最終16位のブリアナ・クレマーが2,620ピンだったため、マッチプレー進出ラインとの差はわずか3ピンだった。
この数字だけを見れば、僅差でトップ16に滑り込んだ選手の一人に映るかもしれない。
しかし、彼女がここまで歩んできた2026年シーズンを振り返れば、その14位という順位の意味はまったく違って見えてくる。
約8カ月前、パシナは右肩の手術を受けた。
フルアプローチで投球できるようになってからは、まだ約4カ月。シーズンの約半分を手術からの回復とリハビリに費やしながら、一歩ずつ競技への復帰を進めてきた。
つまり今回のトップ16入りは、単なる予選通過ではない。
再びPWBAのトップ選手たちと本気で勝負できるところまで戻ってきたことを示す、一つの大きな到達点なのである。
ゼロから投球を作り直したパシナ、復活への長い道のり
予選首位はアレクシス・ランク 世界の強豪がトップ16に集結
PWBAペプシ・オープンの予選では、ランクが2,793ピンでトップ通過。
2位ザバラ、3位ニュー、4位ブラメットに続き、コロンビアのロシオ・レストレポ=ホステトラーが2,671ピンで5位、韓国のソ・ヨンリュが2,656ピンで6位に入った。
7位にはオリビア・コモロウスキーとサマー・ジャスミンがともに2,653ピンで並び、以下、マランダ・パティソン、ノラ・ヨハンソン、ホープ・グラムリー、ディアナ・ザビャロワ、クリスタル・エリオットと続いた。
そして14位にパシナ、15位にキャシディ・クーリー、16位にクレマーが入り、16名によるマッチプレーブラケットが決定した。
予選順位を眺めても、まさに国際色豊かな強豪ぞろいのフィールドだ。
その中でパシナがトップ16に残ったことには、結果以上の価値がある。
なぜなら、彼女の今シーズンは「勝つためのシーズン」であると同時に、もう一度プロボウラーとして戦い続けられる身体を作り直すシーズンでもあったからだ。
右肩手術後、最初に始めたのは「ワンステップ」
右肩の手術後、パシナは数週間にわたって腕をスリングで固定した。
そこから理学療法を開始し、まずは肩の可動域を取り戻すことに取り組んだ。その後、少しずつ筋力を戻していき、ようやくボウリング再開の許可が下りた。
しかし、復帰したからといって、いきなり通常のアプローチで投球したわけではない。
パシナが最初に行ったのは、ワンステップドリルだった。
そこから徐々に投球動作を増やし、慎重に段階を踏みながらフルアプローチへ戻していった。
トップレベルで戦ってきた選手にとって、これは精神的にも決して簡単な作業ではなかったはずだ。
以前なら何気なく行えていたアプローチを、一から組み立て直す。
以前なら当然のように投げられたゲーム数を、「今日は何ゲームまで投げられるのか」と確認しながら増やしていく。
競技復帰とは、単にボールを再び投げられるようになることではない。
長時間の競技に耐え、連日投げ続け、それでもパフォーマンスを維持できる身体に戻らなければならない。
その意味で、パシナの復帰は非常に慎重なものだった。
「痛みがあれば戻る」焦らず身体の声を聞いた復帰
リハビリ中、パシナが最も意識していたのは、自分の身体から出るサインを無視しないことだった。
肩に痛みがあれば負荷を下げる。
医師やセラピストの意見を聞き、自分自身でも肩の状態を細かく確認する。
「早く元に戻したい」という気持ちよりも、「長く競技を続けられる状態まで戻す」ことを優先した。
プロスポーツの世界では、復帰を急ぐことが必ずしも正解とは限らない。
早すぎる復帰によって再び故障すれば、さらに長い離脱を余儀なくされる可能性もある。
パシナが選択したのは、一歩進んで状態を確かめ、必要なら一歩戻るという地道な復帰方法だった。
その積み重ねが、今回のPWBAペプシ・オープンへつながっている。
大会そのものが「肩の耐久テスト」だった
復帰後のパシナにとって、大会への出場は単なる勝負の場ではなかった。
自分の肩が、どこまで競技の負荷に耐えられるのかを確認するテストでもあった。
5月のUSBC Queensを皮切りに、PWBA Barbara Chrisman Classic、そして翌月のU.S. Women’s Openへ出場。
試合を重ねるごとに、1日あたりのゲーム数、連続する競技日数、投球後の疲労や痛みなどを確認しながら、自分の限界を探っていった。
特に大きな試金石となったのがU.S. Women’s Openだった。
パシナは3日間で24ゲームを投球。
これは復帰後、彼女が3日間で経験した最多ゲーム数だった。
肩はその負荷に耐えた。
しかし大会終了後、今度は前腕に小さな故障が発生した。
そこでパシナは無理に投げ続けるのではなく、再び約3週間の休養を選択。その後、少しずつ投球量を戻しながら、ツアー選手権ウィークへ向けて調整していった。
この経緯を見ると、今回のトップ16入りがどれだけ重い意味を持っているかが分かる。
「投げられる」から「戦える」へ。
パシナは数カ月をかけて、その距離を少しずつ縮めてきた。
クリーブランド・オープンの苦戦を引きずらず、気持ちをリセット
ツアー選手権ウィークに入り、パシナは直前のPWBA Cleveland Openで苦しい結果を経験した。
しかし、ペプシ・オープンに向けて彼女が選んだのは、技術的な不安を引きずることではなかった。
「新しい気持ちで投げること」だった。
結果を考えすぎず、その日のボウリングを楽しむ。
できる限り良い形でシーズンを締めくくる。
そしてピンが倒れるかどうかは、最後は自然に任せる。
そうしたシンプルな気持ちでレーンに立ったことが、結果的に14位でのマッチプレー進出につながった。
ボウリングでは、数ピンの差で順位が大きく変わる。
今回の予選でも、パシナと16位との差はわずか3ピンだった。
だからこそ、余計なプレッシャーを手放し、一投一投に集中できたことが大きかったのかもしれない。
初戦は前年年間最優秀選手ニュー・フイフェン
14番シードのパシナがマッチプレー初戦で対戦するのは、予選3位のニュー・フイフェン。
ニューはPWBAの現年間最優秀選手。
当然、厳しい相手だ。
しかしパシナは、対戦相手だけを見ているわけではない。
彼女が意識しているのは、「最終的には自分対ピンである」ということだ。
予選では、レーンのトポグラフィーなどの影響によって、ペアごとにスコアの出方に違いが見られた。
マッチプレーでは一つのペアで戦うため、そのレーンをどれだけ早く読み、適応できるかが重要になる。
相手がどれだけ強くても、自分ができることは変わらない。
レーンを読む。
適切なラインを選ぶ。
そして10本のピンを倒す。
ボウリングの本質に集中できるかどうかが、勝負の鍵を握る。
パシナに残されたツアー選手権への道は「優勝のみ」
パシナにとって、今回のマッチプレーにはもう一つ大きな意味がある。
PWBA Tour Championshipへの出場だ。
彼女はこれまで地域大会で2度のテレビ決勝進出を経験し、そのうち1大会では優勝している。
しかし、全国大会ではまだチャンピオンシップラウンドに進んだことがない。
そして今大会では、パシナ自身が認識している通り、PWBA Tour Championshipへ進むために残された道は「優勝」しかない。
条件は極めて厳しい。
14番シードから、世界トップクラスの選手たちを次々と破らなければならない。
それでも、数カ月前の状況を考えれば、この舞台に立っていること自体が一つの大きな前進だ。
肩を手術し、ワンステップから投球を作り直していた選手が、今はPWBAツアー選手権への出場権を懸けて戦っている。
その事実だけでも、パシナがここまで積み重ねてきた時間の重さが伝わってくる。
「復帰」はゴールではない パシナの本当の勝負はここから
PWBAペプシ・オープンのマッチプレーは、16名によるトーナメント方式で行われる。
最初の2ラウンドはベスト・オブ・5形式。その後の2ラウンドは1ゲームマッチで行われ、最後まで勝ち残った選手がツアー選手権ウィーク第2戦の優勝者となる。
全ラウンドはBowlTVでライブ配信される予定だ。
パシナの前にある道は簡単ではない。
初戦からニュー・フイフェンという強敵が待つ。
仮にそこを突破しても、さらに強豪との試合が続く。
そしてPWBA Tour Championshipへの出場権を手にするためには、最後まで勝ち切らなければならない。
だが、2026年のパシナを語るうえで、最も重要なのは結果だけではないだろう。
右肩手術から約8カ月。
スリングで腕を固定するところから始まり、リハビリを続け、ワンステップドリルから投球を再構築した。
復帰後は大会ごとにゲーム数を増やし、自分の肩が連戦に耐えられるかを確かめた。
U.S. Women’s Openでは3日間24ゲームを乗り越え、その後に前腕を痛めれば、無理をせず再び休養した。
そして今、PWBAペプシ・オープンで16人しか残れないマッチプレーブラケットに名前を連ねている。
復帰とは、以前と同じようにボールを投げられるようになることだけではない。
再び戦える身体を作り、再び勝負できる自信を取り戻し、トップレベルの舞台で結果を残せるところまで戻ることだ。
その意味で、パシナの復活は今まさに新しい段階へ入った。
今回の14位通過はゴールではない。
むしろ、ここからが本当のスタートなのかもしれない。
一つ勝てば、次のチャンスが生まれる。
さらに一つ勝てば、これまで経験したことのない舞台が近づいてくる。
パシナ自身も、今は結果そのもの以上に、再びこうして試合を戦えることへの感謝を口にしている。
だからこそ、この先の一投には特別な意味がある。
約8カ月前の右肩手術から始まったケイラ・パシナの復活劇。
14番シードからの挑戦は、初の全国大会チャンピオンシップラウンド、そしてPWBA Tour Championshipという新たな舞台へつながるのか。
長いリハビリを乗り越えたパシナの2026年シーズンは、まだ終わっていない。
むしろ、本当の物語はここから始まる。
