Roto Grip「Perfect Gem」と900 Global「Portal」発表!
異色の新作2球を徹底解説
同じ「走り」でも、目指す動きはまったく異なる
Storm Bowlingから、Roto Gripの「Perfect Gem」と900 Globalの「Portal」という2つの新作ボールが発表された。いずれも2026年10月2日の発売が予定され、米国での販売価格は210ドルとされている。
今回の2球に共通しているのは、フロントで必要以上にエネルギーを消費させず、レーン後半まで力を残そうとしている点だ。ただし、その性能を実現する方法は大きく異なる。
Perfect Gemは、Gemシリーズらしい強いトラクションと大きなフレアを維持しながら、従来モデルよりもヘッドをクリーンに通過させる方向へ進化した。一方のPortalは、現代の高性能リアクティブボールとしては異例の高RGコアを採用。強力なカバーストックと組み合わせることで、遅いフック開始と鋭いバックエンドを両立させようとしている。
単なる新色や小規模な仕様変更ではない。今回発表された2球は、「強いボールは手前から早く曲がる」という従来のイメージを覆す存在として注目される。
エネルギーを使う場所まで設計された2つの新作
Perfect GemはGemシリーズの強さを再構築
Perfect Gemは、Roto Gripを代表するGemシリーズの第4弾にあたる。ピンクローズとオニキスを組み合わせたカラーリングが採用され、外観からもシリーズらしい力強さが感じられる。
しかし、Perfect Gemの本当の変化は外観ではなく、内部構造にある。
搭載されるのは、A.I. Core Technologyを取り入れた「Gemless A.I. Core」。15ポンドモデルでは、RG2.49、ディファレンシャル0.057、インターミディエイトディファレンシャル0.017という数値が設定されている。
RG2.49は、ボールが比較的早い段階から回転を始めやすい領域にある。一方、ディファレンシャル0.057は非常に高く、大きなトラックフレアを生み出す可能性を持つ。投球中に新しい表面が次々とレーンへ接触するため、オイル上でも継続的に摩擦を得やすい。
メーカーはPerfect Gemについて、Storm、Roto Grip、900 Globalを含むラインナップの中でも、特に高いフレア性能を持つボールと説明している。
つまりPerfect Gemは、単純に手前から早く曲げるボールではない。適度なタイミングで回転を始め、大きなフレアによってミッドレーンからピンまでレーンを読み続ける設計なのである。
従来のGemよりもヘッドをクリーンに通過
Perfect GemのRGは、これまでのGemシリーズよりもわずかに高く設定されている。数値上の差は小さく見えるが、カバーストックの変更と組み合わされることで、ボールモーションには明確な違いが生まれる可能性がある。
初代Gemは、オイルの多いコンディションに対して早い段階から強く噛み、安定した軌道を作れることが大きな特徴だった。特に、ヘッドからミッドレーンにかけてオイルが多く残っている状況では、ボールが滑りすぎるのを防ぎ、ポケットへ向かうための土台を作りやすかった。
一方で、ゲームが進んでフロントのオイルが減ってくると、初代Gemの強いカバーが手前から反応しすぎる場合がある。ブレークポイントへ到達する前にエネルギーを消費し、見た目には大きく曲がっていても、ピン前では動きが弱くなるケースも考えられる。
Perfect Gemは、この部分を調整したモデルと見ることができる。Gemシリーズの強さを失わせるのではなく、RGとカバーストックを見直すことで、ヘッドで発生する余分な摩擦を抑えている。
目指しているのは、初代Gemのようにオイルを確実に捉えながら、より長く、より力強く動き続けるGemだ。
新開発「E-R1 Solid」が生み出すオフロード型トラクション
Perfect Gemには、新開発の「E-R1 Solid Reactive」が採用されている。表面仕上げは2000 Abralonで、箱出しでは光沢を抑えたソリッドらしい状態となる。硬度は73〜75と公表されている。
これまでRoto Gripでは、V-R1やG-R1といったカバーストックが使用されてきた。今回のE-R1は、その流れに加わる新たな配合となる。
初代Gemのトラクションは、雪道を力強く進むスタッドレスタイヤのような性格として表現されてきた。それに対してPerfect GemのE-R1は、凹凸のある路面を進むオフロードタイヤのようなトラクションを目指している。
どちらも強いグリップを意味するが、力の使い方は異なる。
初代Gemは、手前からオイルを強く捉え、早めに安定した回転へ移行するタイプだった。Perfect Gemは、ヘッドでは比較的スムーズに進みながら、ミッドレーンで確実に摩擦を得て、バックエンドまで連続性のある動きを残そうとしている。
E-R1は、初代GemやMagic Gemに採用されたカバーより、わずかにヘッドを通しやすい可能性がある。ただし、それを単純に「弱いカバー」と判断するべきではない。表面は2000 Abralonであり、コアは極めて高いフレア性能を備えている。
Perfect Gemの目的は摩擦を減らすことではなく、必要な場所で、必要な量の摩擦を発生させることにある。
高フレアがもたらすメリットと注意点
Perfect Gemのディファレンシャル0.057は、このボールを理解するうえで非常に重要な数値だ。
フレアが大きければ、オイルを吸着した部分が何度もレーンへ触れることを防ぎ、新しい表面を使いながら曲がりを作りやすくなる。オイル量の多いコンディションでは、ボールが滑り続けるのを防ぎ、ミッドレーンで安定した立ち上がりを生み出す大きな武器となる。
しかし、フレアが大きければ、どのような状況でも使いやすいわけではない。
オイルが少ないコンディションでは、広い範囲の表面が強く摩擦を受けることで、ボールが手前から立ち上がりすぎる可能性がある。さらに、フロントでエネルギーを消費すると、ブレークポイント以降の動きが鈍くなり、ピンへ柔らかく入りすぎることもある。
Perfect Gemが真価を発揮するのは、十分なオイルが存在し、大きなフレアを受け止められるコンディションだ。強いコアを生かすためには、強さに見合ったオイル量が必要になる。
Perfect Gemが活躍しそうなコンディション
Perfect Gemの中心的な使用領域は、ミディアムヘビーからヘビーオイルになると考えられる。特に、ある程度の長さがあるオイルパターンや、中央部分に多くのオイルが残るコンディションで力を発揮する可能性が高い。
ゲーム序盤では、内側のオイルを利用しながら安定した軌道を作れる。レーン変化が始まった後も、従来のGemよりヘッドを通過しやすければ、立ち位置と狙うラインを内側へ移動しながら使い続けられるだろう。
これは、シリーズを通して同じボールを使いたい競技ボウラーにとって大きな利点になる。
一方、ショートパターンやオイル量の少ないハウスコンディションでは、大きなフレアと2000番の表面が過剰になる可能性がある。外へ向ければ手前から強く噛み、内側へ移動すればブレークポイントまでに力を失うという難しい反応も起こり得る。
Perfect Gemは、どのレーンにも対応できる万能型ではない。十分なオイルがある状況で、強いトラクションとピンまで続く動きを必要とするボウラー向けの一球である。
Ion MaxやAlpha Cruxとの違いが立ち位置を決める
Perfect Gemの実際の役割を判断するうえで、比較対象となるのがStormのIon MaxやAlpha Cruxだ。
Perfect GemとIon MaxはRGが近い一方、ディファレンシャルではPerfect Gemが上回っている。公表されているモーションチャートでは、Perfect GemはIon Maxより大きなフレアを生み出し、バックエンドではやや滑らかで連続的な軌道を描くボールとして位置づけられている。
ここで注意したいのは、フレアが大きいボールほど、必ず総フック量が多くなるわけではないという点だ。
実際の動きは、コアだけでなく、カバーストックの強さ、表面仕上げ、ドリルレイアウト、オイルパターン、球速、回転数、軸回転などによって変化する。
Perfect GemがIon Maxより早く動き始めるのか。それともE-R1によってヘッドを通過し、ミッドレーンから大きく立ち上がるのか。さらにAlpha Cruxと比べた場合、どちらが早く安定した軌道へ移行し、どちらがピン前で強い動きを残すのか。
単独の投球映像だけで判断するのではなく、同じ投球者、同じレイアウト、同じコンディションによる比較が重要になる。
Portal最大の特徴はRG2.59のConduit A.I. Core
900 GlobalのPortalは、今回の2球の中でも特に個性的な存在だ。
搭載される「Conduit A.I. Core」は、15ポンドでRG2.59、ディファレンシャル0.050、インターミディエイトディファレンシャル0.019。14ポンドではRGが2.61、16ポンドではディファレンシャルが0.053となっている。
RG2.59という数値は、エントリークラスのボールでは見られることがあるものの、高性能な非対称リアクティブボールとしては極めて高い。
一般的に高RGコアは、投球直後から急激に回転を高めるのではなく、レーンの奥へ進みながら徐々に回転状態を変化させる。そのため、フロントでの走行距離を確保しやすく、ブレークポイントまでエネルギーを運びやすい。
一方、ディファレンシャルは0.050と十分に高く、インターミディエイトディファレンシャルも0.019ある。高RGだからといって、単に走るだけの弱いコアではない。レーン後半へ到達してからは、フレアと非対称性を活用し、強い方向転換を生み出せる可能性がある。
Portalの設計思想は、極端な高RGでエネルギーを温存し、非対称コアの力をレーン後半で一気に解放することにある。
強い「RB92」とPower Edgeを組み合わせた理由
Portalのカバーストックには「RB92」が採用され、Power Edgeによるポリッシュ仕上げが施されている。
900 Globalでは、カバーストック名に含まれる数字が強さを判断するひとつの目安となる。RB92はブランド内でも比較的強いカテゴリーに位置し、RB91を採用するVengeanceシリーズより強く、RB93を採用した初代Originよりわずかに下という関係になる。
一般的には、強いカバーストックほどオイル上で早く摩擦を得やすい。ところがPortalでは、その強いカバーを高RGコアとポリッシュ仕上げに組み合わせている。
ここがPortalの最も興味深い部分だ。
高RGコアとPower Edgeによってフロントでの過剰な立ち上がりを抑えながら、RB92によってミッドレーン以降のグリップ力を確保する。走りだけを優先して弱いカバーを組み合わせるのではなく、強いカバーでオイル上の安定感を残し、コアと表面仕上げによって走行距離を作る設計となっている。
この組み合わせが狙いどおりに機能すれば、オイル上では滑りすぎず、それでいて手前から早く動きすぎないという、独特のバランスを実現できる。
Portalは単純なドライ用ボールではない
Portalは、スキッド・フリップ系のボールとして紹介されている。フックの開始位置は遅く、ドライゾーンに触れた際の反応は速い。公開された投球映像でも、レーン前半を軽快に通過し、ブレークポイントから素早く向きを変える動きが強調されている。
ただし、「よく走るボールだから乾いたレーン向き」と考えるのは早計だ。
メーカーは、レーンが極端に乾燥している場合や、早いフック開始が必要な状況には適していないと説明している。Portalには強いRB92が搭載されているため、ドライなレーンではカバーが予想以上に反応し、バックエンドの動きが制御しにくくなる可能性がある。
Portalが狙っているのは、フロントからミッドレーンに一定量のオイルがあり、そのオイルを利用してボールを奥まで運べる状況だ。
内側にオイルが残り、外側に明確な摩擦があるコンディションでは、高RGと鋭いレスポンスが生きる。投球ラインを内側へ移し、ブレークポイントへ向けて角度をつけたい場面でも有力な選択肢になるだろう。
Portalは、オイルを避けて走らせるボールではなく、オイルを利用してレーン後半の角度を作るボールなのである。
Next Factorの発想を実戦向けに再構築
Portalと比較される可能性が高いのが、StormのNext Factorだ。
15ポンドのNext FactorはRG2.56で、発売当時から高RGボールとして注目された。Portalは、その数値をさらに上回るRG2.59を採用している。両者のディファレンシャルとインターミディエイトディファレンシャルは近く、コアの基本的な方向性には共通点がある。
しかし、大きく異なるのがカバーストックだ。
Next Factorに採用されていたR3Sは、Stormの中では比較的弱いカバーに位置する。ポリッシュ仕上げと高RGコアの組み合わせにより、非常に高い走行性能を持っていた一方、オイル量の多い状況では滑りが長くなりすぎることがあった。
ヘッドを通過できても、ミッドレーンで十分な摩擦を得られなければ、バックエンドの動きは不安定になる。走りとキレを期待して投げても、ブレークポイントで抜けたり、投球ごとの反応差が大きくなったりする可能性があった。
Portalでは、より強いRB92を採用することで、この弱点を補おうとしているように見える。高RGによる走りを維持しながら、強いカバーでミッドレーンの接地感を加える。
これはNext Factorをそのまま復活させたのではない。高RG非対称ボールの可能性を、より実戦的な形で作り直した一球と見るべきだろう。
角度系ボールの中でどこに位置するのか
Portalの比較対象には、Next Factorのほか、Phaze II Pearl、Vengeance Returns、Rocket A.I.、Bionicなどが挙げられる。
これらはいずれも、レーン後半で明確な動きを作ることを期待されるボールだ。しかしPortalには、RB92という強いカバーとRG2.59という極端なコア特性があるため、一般的なパール系ボールとは異なる動きを見せる可能性がある。
Phaze II Pearlよりミッドレーンの安定感が強いのか。Vengeance Returnsよりフロントを長く走るのか。Rocket A.I.よりブレークポイントでの反応が鋭いのか。こうした違いによって、Portalの実戦的な立ち位置が見えてくる。
また、球速と回転数のバランスによっても評価が分かれそうだ。
回転数が多く、ボールが手前から立ち上がりやすい選手にとっては、高RGによる走りが大きな助けになる。一方、球速が速く回転数が少ない選手の場合、ブレークポイントまで滑りすぎる可能性も考えられる。ただし、RB92が十分にミッドレーンを捉えるなら、高RGボールを扱いにくかった選手にも使用範囲が広がる。
Portalの価値を決めるのは、派手なバックエンドだけではない。ミッドレーンで安定して向きを変える準備ができるかどうかが、最も重要な評価点になる。
210ドルの価格に見合う役割を持てるか
Perfect GemとPortalは、どちらも米国で210ドルという高価格帯に設定されている。
Perfect Gemは人気シリーズの新作であり、ヘビーオイル用として役割を説明しやすい。既存のGemシリーズを使用してきたボウラーにとっては、初代Gemとの違いや、現在所有している強いソリッドとの使い分けを想像しやすいだろう。
一方のPortalは、非常に専門性の高い設計だ。RG2.59とRB92の組み合わせは魅力的だが、あらゆるコンディションに対応する万能型ではない。すでに複数のボールを所有し、角度系ボールの選択肢を増やしたい競技ボウラーに適している。
Portalが市場で成功するためには、珍しいスペックという話題性だけでなく、既存の角度系ボールでは対応しにくかった場面を埋める必要がある。
フロントが削れている一方、ミッドレーンにはまだオイルが残っている状況。強いソリッドでは手前から動きすぎるが、弱いパールでは奥まで滑りすぎる状況。こうした難しい場面で安定した動きを見せられれば、Portalは価格に見合う価値を持つ。
Portalの成否を分けるのは、最大フック量ではなく、既存ボールの隙間を埋められるかどうかだ。
曲がる量ではなく「どこで力を使うか」で選ぶ時代へ
Perfect GemとPortalは、どちらもレーン後半までエネルギーを残すことを意識している。しかし、その役割は明確に異なる。
Perfect Gemは、高フレア非対称コアと2000番仕上げのソリッドカバーによって、オイルの多いコンディションを安定して攻略するためのボールだ。Gemシリーズの強いトラクションを受け継ぎながら、従来モデルよりヘッドでの過剰な消耗を抑え、ピンまで続く動きを目指している。
Portalは、極端な高RGコアと強いポリッシュカバーを組み合わせ、フロントの通過性能とレーン後半の角度を追求した。単純なドライ用パールではなく、一定量のオイルが存在する状況で、走りとバックエンドを両立させる異色の非対称ボールだ。
オイルの多い場面で早めにレーンを読み、安定した軌道を作りたいならPerfect Gem。内側のオイルを利用してボールを奥へ運び、ブレークポイントから明確な角度を作りたいならPortalが候補になる。
今回の2球が示しているのは、強いボールとは、単に早く、大きく曲がるボールではないということだ。
どの地点で回転を始め、どこで摩擦を得て、どこまでエネルギーを残すのか。ボールモーションを時間軸で考えることが、現代のボール選びではますます重要になっている。
Perfect Gemは“強さを持続させる進化”、Portalは“強さを奥へ運ぶ挑戦”だ。
まったく異なる設計思想を持つ2球が、実際のレーンでどのような答えを示すのか。今後公開される同一条件での比較投球が、その本当の価値を判断する鍵となるだろう。