Storm×F5 Bowlingの新センサー、その実力とは?
回転数・軸回転・チルトまで可視化する新しいボウリング練習
記事に入る前に、音声による要点解説をお聞きいただくと、内容が一段と理解しやすくなります。
要点音声解説
本要点音声解説は、「Storm Bowling Products Inc.」掲載の動画内容をGemini Notebook を用いて生成したものです。
感覚で投げる時代から、数値で確かめる時代へ
ボウリングの上達において、自分が実際にどのようなボールを投げているのかを正確に把握することは、想像以上に難しい。
「今日は回転が多かった気がする」
「いつもより球速が出ている」
「少し横回転が強かったかもしれない」
こうした感覚は、ボウラーにとって大切な情報だ。しかし、人間の感覚だけでは投球ごとの微妙な変化まで正確に捉えることは難しく、本人の認識と実際の投球内容が一致していないケースも少なくない。
そこに新しい選択肢を提示するのが、Storm BowlingとF5 Bowlingによる「F5 Sensor」だ。
Stormのアンソニー・サイモンセンが紹介したこのセンサーは、ボウリングボール内部に設置し、球速、回転数、アクシスローテーション、アクシスチルトといった投球データを取得するデバイスである。
これまで「なんとなく回転が増えた」「少し縦回転になった」と感覚的に捉えていた部分を、具体的な数字として確認できる。
さらに注目したいのは、単なる計測機器ではなく、センサーを実際のボウリングボール内部へ組み込み、普段に近い状態で投球できる点だ。
今回公開された内容では、その取り付け方法からスマートフォンとの接続、使用後の取り外し、充電方法まで詳しく紹介されている。
F5 Sensorは、ボウリングの練習を「感覚中心」から「感覚と数値を照合するもの」へ変える可能性を持つ。
では、実際にどのような仕組みになっているのだろうか。
F5 Sensorはボウリングの練習をどう変えるのか
フィンガーグリップの下にセンサーを設置する
F5 Sensorの大きな特徴は、外部からボールの動きを読み取るのではなく、ボール内部へ直接センサーを設置する構造にある。
基本的には、フィンガーグリップの下にセンサーを配置する。
キットには異なるグリップ径に対応する3種類のアウタースリーブ、レシービングスリーブ、センサー本体のほか、センサーの挿入・取り外しや充電に使うツール、ケーブルなどが含まれている。
すでにドリルされているボールへ取り付ける場合は、まずフィンガーグリップを外すところから作業が始まる。
グリップ周辺の接着剤を少しずつ除去し、グリップを取り外した後、ホール内部に残った接着剤や残留物をきれいに取り除く。
そして、ここからF5 Sensorを設置するための加工を行う。
一般的なフィンガーホールの深さは約2 1/8インチだが、F5 Sensorを取り付ける場合は、ミドルフィンガーのホールを2 5/8インチまで深くすることが推奨されている。
これは、フィンガーグリップの下にセンサー、ハウジング、スリーブを収納するスペースを確保するためだ。
つまりF5 Sensorは、グリップ内部へ無理に押し込むような構造ではない。
グリップのさらに下へ専用スペースを設け、その中にセンサーを正確に固定する設計になっている。
3種類のグリップ径に対応
取り付け前には、使用しているフィンガーグリップの外径を確認する必要がある。
紹介された例では7/8インチのグリップが使用されており、F5のシステムでは主に、
7/8インチ
31/32インチ
1 1/32インチ
という3種類の標準的なサイズに対応している。
VACタイプのインサートを使用している場合も、ホール底部のサイズを基準に判断できると説明されている。
さらに重要なのが、ホールのピッチだ。
紹介されたボールでは、ホリゾンタルが1/8インチ左、バーティカルが3/8インチリバースとなっており、その数値を確認したうえでドリルプレスにも同じ設定を行っている。
F5側は基本的にミドルフィンガーへの設置を推奨しているが、リングフィンガーへ取り付けても問題ないとしている。
この点からも分かるように、F5 Sensorは単にボールへ入れればよい装置ではない。
現在のドリルレイアウトやピッチを崩さず、適切な位置へ正確に設置することが重要になる。
スリーブによってセンサー位置を固定する仕組み
ホールを2 5/8インチまで加工した後は、アウタースリーブとインナースリーブを組み合わせて内部へ挿入する。
アウタースリーブには切り込みが設けられており、ホール底部で広がることで内部へ固定される構造になっている。
続いてセンサー本体を挿入する。
センサーやスリーブには大小のスロットやノッチが設けられており、正しい方向でなければ装着できない。
センサーを底まで押し込み、そこから約4分の1回転させることでロックする仕組みだ。
この構造は非常に重要だ。
回転数や軸回転、チルトを計測する以上、センサーがボール内部で自由に動いてしまっては正確なデータを取得できない。
F5 Sensorでは、スリーブとロック機構によってセンサーの位置と向きを一定に保つことで、安定した計測を可能にしていると考えられる。
「小型センサーを入れる」のではなく、「正しい位置へ固定したうえで投球する」ことがF5の基本設計なのである。
接着剤の付けすぎには注意が必要
センサーを取り付けた後は、その上に再びフィンガーグリップを設置する。
その際、グリップ底部を少しカットし、ボール表面とグリップが適切な高さになるよう調整する。
そして最も注意しなければならないのが、接着剤の量だ。
グリップを固定するために必要な最小限の量だけを使用することが推奨されている。
接着剤がグリップより下へ流れてしまうと、内部にあるセンサーまで接着され、取り外せなくなる可能性があるためだ。
F5 Sensorはテスト後に取り外し、再び通常のボールとして使用できることも大きな特徴である。
そのため、センサーを常設する前提ではなく、「必要なときだけ取り付けて計測する」という運用も可能だ。
一方で、ドリル深度やピッチ確認、グリップ加工、接着剤の量など、取り付けには一定の技術が求められる。
一般ユーザーが自己流で加工するよりも、プロショップなど専門的な知識を持つ環境で作業するほうが現実的だろう。
スマートフォンと接続してすぐに計測を開始
ボールへの設置が完了したら、次はスマートフォンとの接続だ。
F5 Bowlingアプリを起動し、「Start a New Session」を選択。
その後、練習、ゲーム、トレーニングなどからモードを選び、スマートフォンをボールの近くへ持っていく。
「Tap to connect」を押すとセンサーへの接続が開始され、そのままセッションをスタートできる。
ここで取得できる主要データが、
球速
回転数
アクシスローテーション
アクシスチルト
である。
この4項目を一つのセンサーで取得できることは、練習の質を大きく変える可能性がある。
たとえば「回転数を増やしたつもり」の投球が、本当に回転数の増加によるものなのか。
あるいは回転数そのものはほとんど変化せず、アクシスローテーションだけが大きくなっていたのか。
見た目だけでは判断しにくい違いも、数値として確認できる。
フォーム変更前後の比較にも有効だ。
リリースを変更したとき、球速が落ちていないか。
回転数は増えているのか。
アクシスローテーションやチルトが意図した方向へ変化しているのか。
「変えたつもり」と「本当に変わった」を区別できること。
これこそが、F5 Sensor最大の価値の一つだろう。
回転数だけを追いかけない練習へ
近年、ボウリングでは回転数が注目される場面が多い。
高回転のプロボウラーが活躍することで、「もっと回転を増やしたい」と考える選手も少なくない。
しかし実際のボールモーションは、回転数だけで決まるものではない。
同じ回転数であっても、アクシスローテーションやアクシスチルトが異なれば、レーン上でのボールの動きも変化する。
そこでF5 Sensorのようなデバイスが興味深いのは、単純な回転数計測にとどまらない点だ。
球速、回転数、アクシスローテーション、チルトを同時に見ることで、「なぜそのボールモーションになったのか」をより具体的に考えられる。
たとえば、フックが強くなった理由を「回転数が増えたから」と思っていたとしても、実際にはアクシスローテーションが増加していたというケースも考えられる。
逆に、回転数を上げることに成功しても球速が大きく低下していれば、必ずしも望んだ投球になっているとは限らない。
F5 Sensorが示しているのは、一つの数字だけではなく、複数の数値を組み合わせて投球を理解する練習方法だ。
これは競技レベルの高いボウラーほど大きな意味を持つ可能性がある。
使用後は取り外して通常のボールへ戻せる
練習終了後は、取り付け時と逆の手順でセンサーを取り外せる。
まずグリップを外し、センサーを押し込んで4分の1回転させることでロックを解除する。
その後、専用ツールを使用してスリーブ類もまとめて取り外すことができる。
取り外した各パーツは再利用可能だ。
同じボールへ後日再び取り付けることもできれば、別の選手のボールへ移して使用することもできる。
新品のボールへ設置する場合は、さらに作業がシンプルになる。
最初からミドルまたはリングフィンガーを2 5/8インチの深さでドリルし、その後スリーブとセンサーを取り付ければよい。
この仕組みを考えると、個人所有だけでなく、プロショップやコーチング施設などで一つのセンサーを複数のボウラーが共有する運用も考えられる。
F5 Sensorは「一つのボール専用」ではなく、取り外して繰り返し利用できる計測システムとして設計されている。
1回の充電で約30〜50時間のデータ取得
実用面で注目したいのがバッテリー性能だ。
F5 Sensorは充電式で、1回の充電で約30〜50時間のデータ取得が可能と説明されている。
充電時には、専用ツールに設けられた接続端子をセンサーへ装着し、USB-Cケーブルを接続する。
センサーをボールから取り出して充電することもできるが、練習用ボールなどへ入れたまま、フィンガーグリップ越しに充電ツールを差し込んで充電することも可能だ。
毎回取り外す必要がないため、日常的にデータ計測を続けたいボウラーにとっては使いやすい仕組みと言える。
30〜50時間という稼働時間であれば、通常の練習セッションを何度も行える。
計測機器でありながら、充電を過度に意識せず使える点もF5 Sensorの実用性を高めている。
フィンガーグリップを使わない選手にも対応可能
普段フィンガーグリップを使用していないボウラーについても、使用方法が紹介されている。
その場合は、センサーを設置する目的でミドルまたはリングフィンガーへ一時的にグリップを入れる方法がある。
通常とは多少フィーリングが変わる可能性はあるものの、球速、回転数、アクシスローテーション、チルトといった主要データに大きな変化は生じにくいという考え方が示されている。
また、一部のVIP Pro ShopではMatchMaker用ボールにグリップとセンサーをあらかじめ設置する方法も想定されている。
つまり必ずしも、自分のメインボールへF5 Sensorを組み込む必要はない。
計測専用ボールやテスト用ボールを用意し、フォームやリリース確認のために使用する運用も可能ということだ。
この使い方が普及すれば、プロショップでボールを購入するときだけでなく、コーチングやフィッティングの場面でも投球データを活用できるようになるかもしれない。
F5 Sensorが変えるのは「数字」ではなく練習そのもの
F5 Sensorの登場で最も注目すべきなのは、回転数を測定できることだけではない。
本当に大きな意味を持つのは、自分が感じている投球と、実際に起きている投球を照合できることだ。
これまでも動画撮影や外部の計測機器を使えば、フォームや球速などを分析することはできた。
しかしF5 Sensorでは、ボール内部から直接、球速、回転数、アクシスローテーション、アクシスチルトという複数の情報を取得できる。
「回転数を増やした」
「リリースを縦にした」
「スピードを抑えた」
「横回転を強くした」
その感覚が、本当に数値へ反映されているのか。
投球ごとに確認できれば、練習の内容は大きく変わる。
もちろん、センサーを取り付けただけでボウリングが上達するわけではない。
数字を見て終わるのではなく、その数字がなぜ変化したのか、そしてボールモーションへどのような影響を与えたのかを考えることが重要になる。
一方で、これまで感覚だけに頼らざるを得なかった部分へ客観的な数値が加わることの意味は大きい。
投げる。
数値を見る。
修正する。
もう一度投げる。
このサイクルを繰り返すことで、練習はより具体的になっていく。
F5 Sensorがもたらす最大の変化は、「感覚を捨てて数字に頼ること」ではない。
感覚と数字を結び付け、自分の投球をより正確に理解できるようになることだ。
StormとF5 Bowlingが提示したこの新しい計測方法が、プロボウラーだけでなく、プロショップ、コーチ、競技ボウラー、そして一般のボウラーにまでどのように広がっていくのか。
ボウリングの練習が「感覚だけの世界」から一歩先へ進む、その入口になるデバイスとしてF5 Sensorは注目すべき存在と言えそうだ。