PBAツアー王者ディーロン・ブッカー、希少な白血病を公表
骨髄移植に向け闘病
ボウリング界に広がる支援の輪
PBAツアーで活躍するプロボウラー、ディーロン・ブッカーが、希少で進行の速い血液がん「芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)」と診断されたことを明らかにした。
35歳のブッカーはすでに化学療法を開始しており、今後は骨髄移植が必要になるという。2024年のUSBCマスターズを制し、PBAツアーのメジャーチャンピオンとなった実力者の突然の告白に、選手やファンをはじめ、ボウリング界全体から励ましの声が寄せられている。
ブッカーは自身のSNSで、普段は悪い知らせを公にすることを好まないとしたうえで、今回の病状については伝えるべきだと判断したと説明した。
「回復までには長い道のりがあります。でも、私はこの病気に勝ちます」
その言葉には、過酷な治療に立ち向かう覚悟と、再びレーンに戻るという強い意志が込められている。
希少疾患との闘いと深刻な容体
化学療法を開始、今後は骨髄移植へ
ブッカーが診断されたBPDCNは、血液や骨髄、皮膚などに異常な細胞が増殖する希少な血液がんで、進行が速いとされている。
本人の報告によると、すでに化学療法による治療が始まっており、今後は骨髄移植を受ける必要がある。長期にわたる入院や治療が予想されるなか、ブッカーは病状を率直に伝えながらも、回復への希望を失っていない。
競技生活では数々のプレッシャーに向き合ってきたブッカーだが、現在直面しているのは、これまでとは比較にならないほど大きな試練である。
敗血症性ショックで数日間ICUに
7月27日に投稿された近況報告では、敗血症性ショックにより、数日間にわたって集中治療室(ICU)で治療を受けていたことも明かされた。
敗血症性ショックは、感染症に対する全身の反応によって血圧が著しく低下し、臓器の機能に深刻な影響が及ぶ可能性がある状態だ。抗がん剤治療中は免疫機能が低下することがあり、感染症への警戒が欠かせない。
生命に関わる危険な状態を経験しながらも、ブッカーは周囲から寄せられた支援に感謝を示した。
「皆さんからの応援を見ていると、涙が出ます。人生で最もつらい時期に、これほど多くの人が支えてくれていることに心から感謝しています」
さらに、再び元気な姿で戻り、大切な人たちと多くの思い出を作りたいとつづり、「必ず乗り越える」とあらためて決意を示した。
努力を結実させた2024年USBCマスターズ
無敗で勝ち上がり、初のPBAツアータイトル
ブッカーは現在、PBAツアー参戦4シーズン目。ツアー通算タイトルは1勝だが、その1勝は競技人生を象徴する大きな勝利だった。
2024年のUSBCマスターズで、ブッカーはマッチプレーを無敗で突破。当時、大会3連覇を目指していたアンソニー・サイモンセンや、世界トップクラスの実力者EJ・タケットを破り、メジャータイトルを獲得した。
長年の努力が最高の舞台で実を結んだ瞬間だった。
優勝直後、ブッカーは、自分が積み重ねてきた練習量を考えれば、いつかこの場所にたどり着けると信じていたと語った。
「ついにここまで来ました。もうどこにも行きません。皆さんに私の姿を見てもらいたいです」
その言葉は、一度の優勝に満足するのではなく、PBAツアーで継続的に存在感を示していくという決意の表れでもあった。
黒人選手として刻んだ新たな歴史
USBCマスターズでの優勝により、ブッカーはジョージ・ブランハム3世、ゲーリー・フォークナー・ジュニアに続き、PBAツアータイトルを獲得した3人目の黒人選手となった。
その後、アレックス・ホートンがPBAトーナメント・オブ・チャンピオンズを制して新たに加わり、4人はいずれもPBAのメジャータイトル獲得者となっている。
ブッカーはタイトルマッチを前に、自らの成功を個人的な栄誉だけで終わらせたくないと語っていた。
「どのような民族的背景を持つ人でも、この場所にたどり着けるように手助けしたい。ここは私が夢見て、努力してきた場所です。誰もがここに座り、同じ経験ができるよう、この競技のアンバサダーとして力を尽くしたいと思います」
競技における多様性の象徴として、次世代の選手に道を示したい。その思いは、ブッカーのキャリアを語るうえで欠かせない要素である。
仲間と歩んだキャリア
ブッカーはPBAツアーだけでなく、アマチュア時代からさまざまな大会で実績を積み重ねてきた。
2023年のUSBCオープン選手権では、長年の友人であるマーク・カーティス・ジュニアとペアを組み、ダブルス部門で優勝。大会の優勝者に贈られる「イーグル」を獲得した。
また、複数回にわたってTeam USA Trialsに挑戦し、米国代表入りを争ってきた。すぐに結果が出ない時期にも努力を続け、PBAツアーで飛躍する日は必ず来ると信じていたという。
そしてUSBCマスターズで訪れた最大の好機を、ブッカーは見事につかんだ。
優勝後には、自らの成功を通じて、さらに多くの人を勇気づけたいと語っている。
「今回の勝利によって、ほかの人たちをもっと後押ししたいという気持ちが強くなりました。家に戻ったら、私に会いに来てください。一緒にやりましょう」
自分だけが成功するのではなく、周囲の人々とともに成長し、可能性を広げていく。その姿勢もまた、多くの仲間やファンに支持される理由の一つだ。
わずか4日間で3万7000ドル超の支援
ブッカーの闘病を支えるため、姉妹のカプライスはクラウドファンディングサイト「GoFundMe」で寄付の募集を開始した。
集まった資金は、治療費や自己負担金に加え、病気に伴って今後生じる可能性がある経済的な負担に充てられる予定だという。
ブッカーが診断を公表してからわずか4日間で、寄付額は3万7000ドルを超えた。
短期間で大きな支援が集まったことは、ブッカーが選手として残してきた実績だけでなく、人として築いてきた信頼や絆の深さを物語っている。
今回の発表をきっかけに、骨髄ドナー登録への関心も高まりつつある。骨髄移植を必要とする患者にとって、適合するドナーが見つかるかどうかは、治療の可能性を左右する重要な要素となる。
一人の選手の闘病は、ボウリング界を超え、血液がんや骨髄移植について多くの人が知る契機にもなっている。
再びレーンに立つ日を信じて
ディーロン・ブッカーは、2024年のUSBCマスターズで頂点に立ち、PBAツアーの歴史にその名を刻んだ。
強豪選手を相手に無敗で勝ち上がった実力、長年の努力を結果につなげた精神力、そして多様な背景を持つ次世代の選手たちを支えたいという使命感。ブッカーの歩みは、単なる優勝者という言葉だけでは表せない。
現在は化学療法と骨髄移植を伴う厳しい治療に臨み、敗血症性ショックという深刻な危機も経験している。それでも、本人の言葉からは、未来を諦めない意志が一貫して伝わってくる。
競技人生のなかで、ブッカーは努力を続ければチャンスは訪れると信じ、その瞬間を逃さずつかみ取ってきた。今度は、自らの命と未来を懸けた長い闘いに挑んでいる。
家族、友人、選手、ファン、そしてボウリングコミュニティーは、ブッカーが治療を乗り越え、再びレーンに立つ日を願っている。
「私はこの病気に勝ちます」
その言葉を現実にするための闘いは、すでに始まっている。
