夢を追い続けた61歳の一投
ヴァーブルがつかんだ初のメジャータイトル

夢を追い続けた男が、ついに頂点へ

2026年PBA60ワールドチャンピオンシップで、ラリー・ヴァーブルが自身初となるナショナルタイトルを獲得した。決勝の相手は、世界的な名手として知られるアムレト・モナチェリ。最終スコアは213対210。わずか3ピン差の接戦を制し、ヴァーブルは61歳にして悲願のメジャータイトルを手にした。

ボウリングを始めた日から夢見てきた瞬間が、ついに現実となった。

「ボウリングを始めた日から、ずっとこの場面を夢見てきた。10フレームで優勝のチャンスを持って投げる。その瞬間が本当に訪れたんだ」

試合後、ヴァーブルはそう振り返った。

この勝利が特別なのは、彼がフルタイムでツアーを転戦する選手ではないという点にもある。ヴァーブルは現在、DiLaura Brothers Bowling Supplyで外部営業担当として働いている。日々の仕事をこなしながら、限られた時間の中で練習を重ね、大舞台への準備を続けてきた。

今年のトーナメント出場は、今回がわずか2戦目。それでも彼は、ミシガン州のJAX60でオイルパターンへの対応力を磨き、試合に向けたコンディションを整えてきた。その努力が、PBA60世界選手権という最高峰の舞台で実を結んだ。

61歳での初優勝。しかも、それがメジャータイトル。ラリー・ヴァーブルの勝利は、単なる番狂わせではない。長年の努力、信念、準備、そして家族やコーチの支えが結実した、ひとつの物語だった。

 

勝負を決めた10フレーム、感情を抑え込んだ集中力

決勝戦は、トップシードのヴァーブルと、準決勝を勝ち上がったモナチェリによる対戦となった。

試合はモナチェリのストライクで始まった。経験豊富な王者らしい落ち着いた立ち上がりだった。一方のヴァーブルは、他の選手とは明らかに異なるラインを選択する。彼は誰よりも左側に立ち、まだ多くの選手が試していなかったエリアを使ってレーンを攻略しようとしていた。

「自分は他の誰よりもずっと左にいた。そこに、誰も本格的に試していないものを見つけたんだ。だから、まるで自分ひとりで投げているような感覚だった。あとは良い投球をして、素晴らしいボールリアクションを信じるだけだった」

その言葉通り、ヴァーブルは自らの判断を信じた

序盤は決して楽な展開ではなかった。ヴァーブルは2フレーム連続でスペアを重ねた後、8-10スプリットを残してオープンフレームとしてしまう。モナチェリも3連続スペアの後、5フレームで難しい残りピンを残してオープン。試合は互いに決定打を欠きながら、緊張感のある展開で進んでいった。

流れを引き寄せたのは中盤以降のヴァーブルだった。得意とする左レーンで4フレーム、6フレーム、8フレームにストライクを奪い、右レーンでは確実にスペアでつなぐ。大きく崩れない粘り強さが、終盤の勝負につながっていった。

そして迎えた8フレーム。ヴァーブルはストライクを決めると、続く右レーンでもこの試合初となるストライクを奪った。連続ストライクに思わず感情が高ぶり、手を叩いて喜びを表した。

しかし、そこで彼はすぐに自分を落ち着かせる。リラックを要求し、呼吸を整えた

「自分を落ち着かせる必要があった。少し興奮してしまうんだ。感情を出しすぎてはいけないと分かっているけれど、止められない時がある。だからこそ、考えを整理し、感情をコントロールして、良い投球をすることだけに集中した

その冷静さが、勝負を分けた。

ヴァーブルは続く投球でもストライクを奪い、さらにもう一度リラックを挟んだ後、再びストライク。4連続ストライクでモナチェリに大きなプレッシャーをかけた。最後の投球で7本以上を倒せば、モナチェリを完全に封じる状況。ボールがレーンを進むと、ヴァーブルは片膝をつくようにしてその行方を見守った。

倒れたピンは8本。スコアは213。モナチェリの210を上回り、ヴァーブルの優勝が決まった。

 

モナチェリの追撃を振り切った、価値ある3ピン差

決勝で敗れたとはいえ、モナチェリの戦いぶりも見事だった。序盤から粘り強くスペアを重ね、5フレームでオープンを出した後も立て直しを図った。6フレームではロフトを取り入れた投球に切り替え、6フレームと8フレームでストライクを獲得。さらに7フレームでは、2-4-8-10スプリットをカバーする驚異的なスペアメイクを見せた。

終盤にはダブルを決め、最後は9本で210。勝敗は最後まで分からなかった。ヴァーブルにとって、この3ピン差の勝利は、精神力と集中力のすべてを注ぎ込んだ結果だった。

試合後、ヴァーブルは自らの支えになったものとして、祈りと周囲の存在を挙げた。

「自分が投げていない時は、ずっと祈っていた。祈ることで心が落ち着くんだ。私には素晴らしいサポートがある。妻のローリー、娘のベサニー、そしてJAX60のコーチであるアンディ・シュネーベルト。アンディは私のフィジカル面を支えてくれている」

さらに、対戦相手であるモナチェリへの敬意も忘れなかった。

「アムレトにも感謝したい。彼は本当に才能あるチャンピオンだ。最後まで私の背中を押してくれていた。『さあ、良い投球をしよう』と声をかけてくれた」

勝者が敗者を称えるだけでなく、敗れた選手も勝者を後押しする。そこには、PBAシニアツアーならではの敬意と競技者同士の絆があった。

ヴァーブルはこの勝利について、「ボウリングキャリアの頂点」と表現した。

「61歳になるまでかかった。でも人生にはいろいろなことが起こる。フルタイムでツアーに出られるわけではない。この勝利は、私のボウリング人生の頂点だ。本当に満たされた気持ちだ」

初のナショナルタイトルがメジャー大会。さらに、優勝賞金1万5000ドルを獲得。数字だけを見ても大きな成果だが、その背景にある長い道のりを考えれば、この勝利の意味はさらに深い

 

ステップラダーを勝ち抜いた実力者たち

決勝までのステップラダーも、見応えのある試合が続いた。

最初の試合では、第5シードのブライアン・ルクレアと第4シードのビル・ロウが対戦した。両者ともPBA60タイトルを狙う立場であり、序盤から緊張感のある展開となった。

ルクレアはスペアでスタートしたが、2ピンをミスし、さらに難しい残りピンでオープンを出して流れをつかみきれなかった。一方のロウはダブルで好発進。その後もスペアで粘り、終盤の9フレームと10フレーム最初の投球でストライクを決め、215対194で勝利した。

第2試合では、ジャック・ジュレックが登場した。ジュレックは水曜日の開始時点では首位に立っていたが、最終的には第3シードとしてステップラダーに回っていた。相手は初戦を突破したロウだった。

ロウはストライクで試合を始め、途中にオープンを挟みながらも3連続ストライクを記録。対するジュレックは序盤にスプリットでオープンを出し、6フレーム終了時点で94点と苦しい展開に追い込まれた。

しかし、ここからジュレックが意地を見せる。スペア、ストライク、スペアで立て直し、最後に勝負強い3連続ストライクを決めて184でフィニッシュ。ロウは勝利のために10フレームでダブルが必要だったが、2投目が右に外れて6本カウントにとどまり、181。ジュレックが184対181で接戦を制した。

準決勝は、ジュレックとモナチェリの再戦となった。これは土曜日に行われたPBA60ウェブチャンピオンシップ決勝と同じカードで、その時はジュレックがモナチェリを破っていた。

しかし今回は、モナチェリがリベンジを果たした。1フレームで6-7スプリットを残してオープンとしたものの、その後はダブルで立て直す。中盤をスペアとストライクでつなぎ、7フレーム以降は圧巻の6連続ストライク。最終スコア238を叩き出し、ジュレックの194を大きく上回った。

この勝利でモナチェリは決勝へ進出。だが、最後に待っていたヴァーブルが、さらに大きな物語を完成させることになった。

 

年齢を超え、環境を超え、努力が報われた勝利

2026年PBA60ワールドチャンピオンシップの最終順位は、優勝がラリー・ヴァーブル、2位がアムレト・モナチェリ、3位がジャック・ジュレック、4位がビル・ロウ、5位がブライアン・ルクレアとなった。

賞金は、優勝のヴァーブルが1万5000ドル、2位のモナチェリが8000ドル、3位のジュレックが6000ドル、4位のロウが5000ドル、5位のルクレアが4000ドルだった。

各試合のスコアは以下の通り。

第1試合では、ビル・ロウがブライアン・ルクレアを215対194で下した。第2試合では、ジャック・ジュレックがビル・ロウに184対181で勝利。準決勝では、アムレト・モナチェリがジャック・ジュレックを238対194で破った。そして決勝では、ラリー・ヴァーブルがアムレト・モナチェリを213対210で退け、初のナショナルタイトルを獲得した。

ヴァーブルはすでに、8月に開催されるジョニー・ペトラグリアBVL PBA50トーナメント・オブ・チャンピオンズへの出場予定がある。その前には、オハイオ州ボウリンググリーンで行われるリージョナル大会にも出場する。次なる目標について、彼は「どの大会でもいいから、次の優勝を目指したい」と語っている。

61歳での初優勝フルタイムのツアープロではなく、仕事と競技を両立しながら積み上げてきた努力。そのすべてが、PBA60ワールドチャンピオンシップという最高の舞台で報われた。

ラリー・ヴァーブルの勝利は、単なる大会結果ではない。夢を持ち続けること、準備を怠らないこと、そして自分の可能性を信じ続けることの大切さを示す物語だ。

年齢は挑戦を止める理由にはならない。環境は夢を諦める言い訳にはならない。ヴァーブルが証明したのは、努力を続ける者には、いつか人生を変える一投が訪れるということだった。