ロスランが2度の300ゲーム達成
USBCクイーンズで歴史的快投
記録と執念が交差したラスベガスの熱戦
女子ボウリング界の頂点を争う2026年USBCクイーンズは、ラスベガスのゴールドコースト・ボウリングセンターで大きな山場を迎えた。マッチプレーの序盤5ラウンドを終え、優勝の象徴である「ティアラ」を狙える選手は16人に絞られた。
この日、会場を最も沸かせたのは、マレーシアのナターシャ・ロスランと、アメリカのアレクシス・ランクだった。ロスランはマッチプレーで2度のパーフェクトゲームを達成し、大会史に名を刻む快挙を成し遂げた。一方のランクは、左足の疲労骨折を抱えながらも敗者復活側で勝ち進み、USBCクイーンズのマッチプレー記録を更新する圧巻の投球を見せた。
さらに、この日のマッチプレーでは計7回の300ゲームが生まれ、今大会全体ではここまで12回のパーフェクトゲームが記録されている。ハイスコアが続出する異例の展開の中で、選手たちの技術、集中力、精神力がこれまで以上に問われる大会となっている。
無敗のロスラン、逆境のランク。主役候補が次々に浮上
無敗を守る8人、決勝進出へあと一歩
勝者側のブラケットでは、予選トップ通過のエリン・マッカーシーを筆頭に、ケイトリン・ジョンソン、ジャンナ・ブランドリーノ、エミリー・エックホフ、ビクトリア・バラノ、ナターシャ・ロスラン、エマ・フリアン、カーリーン・ベイヤーの8人が無敗を維持している。
この8人は、あと2試合に勝利すれば、火曜日に行われるステップラダー決勝への出場に大きく近づく。USBCクイーンズは、単に高得点を出すだけでは勝ち抜けない。相手との直接対決で流れをつかみ、レーンコンディションの変化に対応し、勝負どころでミスを抑える総合力が求められる。
一方、エリミネーションブラケットにも実力者がそろう。マレーシアのシャズワニ・サハル、アメリカのアレクシス・ランク、シンガポールのニュー・ホイフェン、エリザベス・トイバー、日本の近藤菜帆、ジョシー・バーンズ、シンガポールのチェリー・タン、バレリー・ベルシエが生き残っている。
敗者復活側は、1敗すれば大会終了という極限の状況だ。だが、だからこそ選手の底力が表れる。ここから勝ち上がる選手が、決勝の流れを大きく変える可能性も十分にある。
日本の近藤菜帆もサバイバルを勝ち残る
日本勢として注目したいのが、近藤菜帆だ。近藤は残り16人の一角に名を連ね、エリミネーションブラケットで大会に踏みとどまっている。
近藤は勝者側ブラケットの初戦で、ブリアナ・ロジャースを694対679で破り、好スタートを切った。接戦をものにしたこの勝利は、マッチプレーでの勝負強さを示す内容だった。しかし続くジリアン・マーティン戦では550対762で敗れ、勝者側ブラケットからエリミネーションブラケットへ回ることになった。
ここからの近藤に求められるのは、まさに崖っぷちでの集中力だ。エリミネーションブラケットでは、次に敗れれば大会終了となる。無敗で勝ち上がる選手たちよりも厳しい立場ではあるが、その分、ここから勝利を重ねれば大会全体の流れを変える存在になれる。
今大会は300ゲームや800シリーズが相次ぐハイスコアの展開となっており、勝ち残るには爆発力だけでは足りない。スペアを確実に拾う安定感、レーン変化を読む判断力、そして相手のビッグゲームに動じない精神力が必要になる。
日本のファンにとって、近藤菜帆が敗者復活側からどこまで勝ち上がれるかは大きな見どころだ。世界の強豪が集まる舞台で、近藤が粘り強くティアラ争いに食らいつけるか注目される。
ナターシャ・ロスラン、2度の300ゲームで大会史に名を刻む
この日の最大の話題は、マレーシアのナターシャ・ロスランだった。ロスランはマッチプレー中に2度の300ゲームを達成。同一のUSBCクイーンズ大会で複数回のパーフェクトゲームを記録した選手は、過去にティッシュ・ジョンソンとダナ・ミラー=マッキーしかいなかった。ロスランは、その歴史的なリストに加わったことになる。
しかし、本人の言葉は意外なほど自然体だ。ロスランは、アメリカの強豪が集まる舞台に立てることを「夢がかなったようだ」と受け止めており、記録を狙っていたわけではない。プレッシャーを背負い込むのではなく、経験を楽しみ、目の前の1投に集中する。その姿勢が、結果として歴史的なスコアにつながった。
実際、ロスランの内容は圧巻だった。マッチプレー9ゲームを通じて平均254点以上を記録し、743、783、760という高水準のシリーズで勝利を重ねている。このペースが続けば、2019年大会で同じマレーシアのシン・リ・ジェーンが記録したマッチプレー平均248.72点という大会記録を上回る可能性もある。
それでも、ロスランは記録更新に意識を向けすぎていない。自分に余計な重圧をかけず、楽しみながらベストを尽くす。そのメンタルの安定こそが、今大会で彼女を一段上の存在に押し上げている。
アレクシス・ランク、負傷を抱えながら826ピンの新記録
ロスランが無敗で輝きを放つ一方、アレクシス・ランクは別の形で大会を象徴する存在となっている。ランクは初戦で敗れたものの、その後エリミネーションブラケットで4連勝。崖っぷちに立たされながらも、驚異的な粘りで勝ち残っている。
特に大きなインパクトを残したのが、ジョーダン・スノッドグラスとの一戦だ。ランクはこの試合で826ピンを倒し、2019年大会でインドネシアのタニャ・ルーミンパーが記録した822ピンを上回る、USBCクイーンズのマッチプレー新記録を樹立した。
この記録をさらに特別なものにしているのが、ランクのコンディションだ。彼女は左足に疲労骨折を抱えている。しかも、その左足は投球時にスライドする足であり、ボウラーにとって非常に重要な部位だ。痛みを抱えながら、精密なバランスとタイミングを求められる投球を続けるのは簡単ではない。
ランクは、試合中にアドレナリンが痛みを和らげ、メンソールテープにも助けられたと語っている。すでに予選とマッチプレーを合わせて30ゲームを投げており、残っている選手の中では最多のゲーム数を消化している。肉体的な負担は大きい。それでも彼女は、勝つために必要な集中力を最後まで切らさなかった。
負傷を言い訳にせず、むしろ逆境の中で記録を塗り替える。その姿は、今大会のドラマ性を一段と高めている。
300ゲーム続出が示す、今大会の異例のレベル
この日は、ロスランとランクだけでなく、エミリー・エックホフ、カーステン・ムーア、シャノン・プルホウスキー、シン・リ・ジェーンもパーフェクトゲームを達成した。ムーアは808、韓国のリュ・ソヨンは805という800シリーズも記録しており、全体として非常に高いスコアが並ぶ一日となった。
今大会では、ここまで12回の300ゲームが記録されている。これは2010年大会の9回を上回る数字であり、近年のUSBCクイーンズの中でも特にハイレベルな大会であることを示している。
ただし、ハイスコアが続出する大会は、選手にとって決して楽な展開ではない。周囲も高得点を出してくるため、わずかなミスが致命傷になりやすい。ストライクを重ねる力だけでなく、スペアの確実性、レーン変化への判断、相手の勢いに飲まれない精神力が重要になる。
残る16人の戦いは、まさにここからが本番だ。高得点を出す力に加えて、勝負どころで自分の投球を貫けるかどうかが、決勝進出の分かれ目になる。
ティアラをかけた戦いは最終局面へ
残った16人は、月曜日の正午から再びゴールドコースト・ボウリングセンターで戦いに臨む。勝者側ブラケットでは最終的に2人が残り、その2人が火曜日のテレビ決勝に向けた第1シードを争う。一方、エリミネーションブラケットでは4人が生き残り、ステップラダー決勝に進む最後の3枠をかけて投げ合う。
ナターシャ・ロスランが歴史的な勢いのまま頂点へ駆け上がるのか。アレクシス・ランクが負傷を乗り越え、さらなる番狂わせを起こすのか。日本の近藤菜帆がエリミネーションブラケットから粘り強く勝ち上がるのか。あるいは、無敗を守る他の実力者が流れを渡さず頂点に近づくのか。
2026年USBCクイーンズは、記録、国際色、逆境、そして勝負強さが交差する大会となっている。パーフェクトゲームが続出する華やかな展開の裏側で、選手たちは一投ごとに重圧と向き合っている。
ティアラに最も近いのは誰か。答えは、残された数試合の中で明らかになる。女子ボウリング界最高峰の戦いは、いよいよクライマックスへ向かう。