サイモンセン雪辱へ前進
イリノイクラシック16強の全貌と見どころ
イリノイクラシック、主役は“雪辱”のサイモンセン
PBAツアー「Groupon PBA Illinois Classic」は、予選を勝ち上がった上位勢がトーナメント方式の「エリミネーション・マッチプレー」へ突入し、タイトル争いが一気に佳境へ入った。注目の中心にいるのは、先週の「Go Bowling U.S. Open」決勝でわずか2ピン差に泣いたアンソニー・サイモンセンだ。悔しさをそのまま推進力に変えるかのように、今週はイリノイ州ディケーターのVictory Lanesで予選首位を奪取。16強の最前線に立ち、リベンジへの道筋をはっきり描いてみせた。
今大会は96人でスタートし、水曜までの予選を経て上位32名が木曜午後のアドバンサー・ラウンド(6ゲーム)へ進出。ここを通過した上位24名が、負ければ終了のマッチプレー方式で優勝を争う。さらに上位8名には1回戦免除(bye)が与えられ、強豪が消耗を回避した状態で「ベスト・オブ・7(先に4勝)」の短期決戦が始まった。
予選首位サイモンセン、バックアップボール勢、そして波乱の24→16
1)サイモンセンが示した「状態の良さ」を裏づける数字
サイモンセンは予選を通じて平均240超という圧倒的な水準を維持し、22ゲーム合計5,284ピン(+884)で96人の頂点に立った。舞台となったのは、デイビッド・スモールのVictory Lanes(イリノイ州ディケーター)。レーンコンディションは、シカゴのレジェンド、カーメン・サルビノの名を冠した43フィートのオイルパターンだ。
この手のパターンは“高スコアが出やすい”と語られがちだが、同じラインを投げ続ければレーンは刻々と変化し、後半ほど微調整の精度が問われる。だからこそ、単発のビッグゲームではなく「通しの平均」で押し切ったこと自体が、今週のサイモンセンの完成度を証明している。
2)上位8名が1回戦免除:強者が得た“夜の休息”の意味
アドバンサー・ラウンド後、上位24名がマッチプレーへ進むが、上位8名は1回戦を戦わずにRound of 16へ直行する。サイモンセンに加え、マット・オーグル、前回王者サンツ・タフバイナイネン、EJ・タケット、ブーグ・クロール、AJ・チャップマン、イーサン・フィオーレ、ビル・オニールが“夜の休息”を獲得した。
ベスト・オブ・7は、技術以上に集中力とメンタルの持久力が消耗する形式だ。1シリーズ丸ごと分の疲労を回避できることは、単なる「楽」ではない。レーン変化への対応力、試合中の判断力、終盤での一投の再現性――それらを支える土台として、byeの価値は終盤ほど効いてくる。
3)Round of 24で際立った3つの物語
(A)カイヒコがタンを完封:300を挟んだ“加速の勝ち方”
Round of 24で最も鮮烈だったのは、トーマス・カイヒコ(フィンランド)がダレン・タンを4-0で一掃したシリーズだ。246、300、253で一気に3連勝し、最後も206-192で締める“隙のなさ”。ベスト・オブ・7は長丁場になりやすいが、短時間で決着をつける勝ち方は、そのまま次戦の余力に直結する。
(B)左腕対決なのに“右側”へ:ベナードのバックアップボールが示す適応
デオ・ベナードはマット・ルッソとの左利き対決を7ゲームの末に制したが、特筆すべきは投球の組み立てだ。ベナードはバックアップボール(通常とは逆回転の軌道を描く投球)を使い、右側のラインで勝負した。
ここで面白いのは、サイモンセンがPBAツアー史上「バックアップボールでタイトルを獲得した唯一の選手」として知られつつも、それを“限定的に”用いるのに対し、ベナードは火曜の第1ゲーム4フレーム目から、すでに約30ゲーム近く継続している点だ。奇策ではなく、コンディションへの“一貫した解決策”として成立している。トーナメント後半、同じ戦略を貫けるのか、それとも変化に合わせて別解へ移るのか。ベナードの次戦は、技術と判断の両面で見どころが濃い。
(C)ベルモンテ敗退、地元育ちピーターズの“届かなかった舞台”
HBOのドキュシリーズ「Born to Bowl」で取り上げられる予定のジェイソン・ベルモンテは、Round of 24でアレック・ケプリンジャーに4-3で敗退した。終盤に失速し、最後の4ゲーム中3ゲームで200未満。短期決戦では「良い時間帯」を長く保てないと、勢いが一気に相手へ傾く。ベルモンテの敗退は、その残酷さを端的に示した。
一方、ジェイク・ピーターズは地元ディケーター育ちで、まさにこのセンターで技術を磨いてきた選手だ。木曜はケビン・マキューンに4-1で敗れたが、象徴的なのは“思い出のレーン”が日曜のTVレーン(31-32)になる点である。ピーターズが初めて300を出したのが31-32。物語としては完璧な舞台だったが、主役になる権利は勝者だけのもの――地元のドラマは、あと一歩で届かなかった。
4)Round of 24 結果
ブランドン・ランク 4-3 カイル・トループ
ザック・ウィルキンス 4-2 ジュリアン・サリナス
ショーン・マルドナド 4-3 パトリック・ドンブロウスキー
ケビン・マキューン 4-1 ジェイク・ピーターズ
デオ・ベナード 4-3 マット・ルッソ
トーマス・カイヒコ 4-0 ダレン・タン
アレック・ケプリンジャー 4-3 ジェイソン・ベルモンテ
ライアン・バーンズ 4-2 マイケル・デイビッドソン
5)Round of 16:注目カードと“勝ち筋”の見取り図
Round of 16(ベスト・オブ・7)の組み合わせは以下の通りだ。
No.1 アンソニー・サイモンセン vs No.16 ブランドン・ランク
No.8 ビル・オニール vs No.9 ザック・ウィルキンス
No.2 マット・オーグル vs No.15 ケビン・マキューン
No.7 イーサン・フィオーレ vs No.10 ショーン・マルドナド
No.3 サンツ・タフバイナイネン vs No.14 デオ・ベナード
No.6 AJ・チャップマン vs No.11 トーマス・カイヒコ
No.4 EJ・タケット vs No.20 ライアン・バーンズ
No.5 ブーグ・クロール vs No.12 アレック・ケプリンジャー
最大の焦点は、サイモンセン vs ランクだ。ランクは今大会でタイトル争いに残る“もう一人の左利き”で、トループとの7ゲームを勝ち切って勢いに乗る。サイモンセンにとっては、予選首位とbyeというアドバンテージを「実戦の説得力」に変える試合になる。序盤で主導権を取れれば“強者の試合”にできるが、もつれれば短期決戦らしい事故も起きうる。
もう一つの山場は、タケット vs バーンズ。バーンズは、いわゆる高スコアパターンを“殴り合い”に変える消耗戦を抜けてきた。中盤から上げてくるタイプの選手だけに、タケットが前半で突き放せるか、あるいはバーンズが泥試合に持ち込むかで様相が変わる。
6)決勝進出の条件:Round of 8の勝者+“最高シードの敗者”
Round of 8(準々決勝)で各ブロックの勝者がステップラダー・ファイナルへ進出。さらに、Round of 8で敗れた選手の中から「最もシード順位が高い敗者」が追加で決勝へ滑り込む。勝ち上がりの道筋が複線化しているため、Round of 8は「勝てば確定、負けても可能性が残る」独特の緊張感がある。終盤の1ゲーム、1フレームの重みが増すルールだ。
勝敗を分けるのは「変化対応」と「終盤の再現力」
イリノイクラシックは、予選首位サイモンセンの雪辱劇が最も分かりやすい軸でありながら、バックアップボールを戦略として貫くベナード、完封勝ちで駆け上がったカイヒコ、ベルモンテ敗退に象徴される波乱――複数のストーリーが同時進行する大会になっている。
43フィートのパターンは高スコアが出る反面、進行とともにレーンは確実に変わる。だから勝負を分けるのは、派手な一発ではなく、ボール選択とライン調整の精度、そしてシリーズ後半でも崩れない“再現性”だ。特にベスト・オブ・7は、5~7ゲーム目に技術の差が露骨に出る。サイモンセンが先週の2ピン差を今週のタイトルに変えるのか。それとも、勢いと工夫で勝ち残った挑戦者が主役を奪うのか。週末の数時間で、シーズン第4戦の結末が決まる。
放送・進行スケジュール(米東部時間ET)
3月13日(金)
12:00 ET:エリミネーション・マッチプレー Round of 16(ベスト・オブ・7)
19:00 ET:エリミネーション・マッチプレー Round of 8(ベスト・オブ・7)3月15日(日)
16:00 ET:決勝(ステップラダー・ファイナル)