サイモンセン首位奪還
2026年U.S.オープン、最終日へ向けた激戦図
2026年U.S.オープン、主役は再びサイモンセンか
PBAメジャーの中でも、特に過酷なコンディションと長丁場で知られる「Go Bowling U.S. Open」。2026年大会はインディアナポリスのRoyal Pin Woodlandを舞台に、40ゲーム終了時点でアンソニー・サイモンセンが首位を奪い返し、最終日(現地日曜)のタイトル争いへ突入した。
「日曜日にU.S. Openの優勝をかけて戦うことが、自分にとって地球上で一番好きな場所」——サイモンセンはそう語り、決勝の舞台へ照準を合わせる。しかも今大会は上位争いが接近しており、トップ5争いには複数の実力者がひしめく。残り16ゲーム(+勝敗ボーナス)が、順位表の景色を一気に塗り替える可能性は十分だ。
40ゲーム時点の情勢と、最終日に向けた焦点
1)サイモンセンが首位奪還:安定感が生む「追わない」強さ
40ゲーム消化時点でサイモンセンは平均226.23超、トータル9,199ピン(+1,199)。マッチプレー初戦(ナイトセッションのオープニングラウンド)を5勝3敗でまとめ、ボーナス150ピンを確保して首位に立った。
ポイントは、派手な爆発力だけではない。本人が強調するのは「追いかける展開になっていない」ことだ。
「最後の日に“ショー(決勝の5人)”を追うより、ショーの中にいる状態で迎える方がいい」
予選初日(火曜)からトップ5付近をキープし続け、トップ36、トップ24といったカットラインを“追う”局面がほとんどないまま終盤へ。U.S. Openのような消耗戦で、この安定した位置取りはそれ自体が最大のアドバンテージになる。
2)2番手以降は僅差:フォイJr.、ヴァイが射程圏
首位サイモンセンを追うのは、ティム・フォイJr.(63ピン差)と、2021年王者クリス・ヴァイ(76ピン差)。残りは8ゲーム×2セットの計16ゲーム。勝敗に応じてボーナスピンも積み上がるフォーマットを考えれば、この差は「守り切れる」数字ではなく「いつでも入れ替わる」差だ。
現在のトップ5は、フォイJr.、ヴァイに加えてパトリック・ドンブロウスキー、AJ・ジョンソンが続く。ただし4位・5位の2人は首位から200ピン以上離れており、現状では「首位を奪う」より「ショー(上位5枠)を固める」戦いになりやすい。さらに、5位から200ピン以内に8人(ディフェンディングチャンピオンのEJ・タケットを含む)が控える。上位5枠の椅子取りゲームは、最後の最後まで揺れるだろう。
3)6位以降の存在感:経験者と“今大会の物語”
6位には昨年準優勝のアンドリュー・アンダーソン。メジャー終盤の空気を知る経験値は、終盤戦の「崩さない」局面で効いてくる。
そして今大会の上昇株として語られるのがトゥン・ハキムだ。第4予選ラウンドのラスト6投を連続ストライクでつなぎ、マッチプレーへ滑り込み。そこから平均241超・7勝1敗の快進撃で、23位から7位へ急浮上した。
「初めてのU.S. Open。すごく興奮しているけれど、まだ16ゲームある」
勢いに飲まれず、先を見据える言葉が頼もしい。伸びる選手の共通点は、好調時ほど冷静で、悪い時間帯ほど丁寧になること。ハキムがその型に入れば、最終日に“台風の目”になる資格は十分だ。
さらにTJ・ロックも面白い。木曜予選では36人のアドバンサー枠に“最後の一人”として滑り込んだが、アドバンサー後に16位まで上昇。マッチプレーでも一時トップ5に顔を出し、最終的に9位で夜を終えた。
ロックは、2023年のWichita State大学全米制覇メンバーとしても注目される存在で、同世代の仲間がPBA主要大会のファイナルに進む流れが続いている。2025年のPlayers Championship決勝に進んだライアン・バーンズとアレック・ケプリンジャー、そして今季のシーズン開幕メジャーで決勝へ進んだブランダン・ボンタとスペンサー・ロバージ——仲間の活躍が、挑戦者の背中を押す。
「(ボンタの優勝で)自分もPBAツアーで戦えると思えた。大学で一緒に投げて育ってきた。彼のサポートがあるのも大きい」
競技は個人戦でありながら、成長の物語は“仲間の連鎖”で加速する。その空気が、今大会のロックの投球にも確かに宿っている。
4)王者タケット、歴史を狙うベルモンテの現在地
ディフェンディングチャンピオンであり、2023年と2025年のU.S. Open王者でもあるEJ・タケットは12位。5位まで150ピン差で、まだ十分にショーを狙える射程圏だ。U.S. Openは短距離走ではない。残り16ゲームの積み上げで、王者が“当たり前のように”圏内へ戻してくる可能性は現実的にある。
一方、ジェイソン・ベルモンテは18位。もしU.S. Openを再び制せば、PBAメジャー5冠を「2回ずつ」達成する史上初の選手になるという大記録がかかる。しかし現状はショーまで290ピン差。勝敗ボーナスは最大480ピンの可能性があるとはいえ、取りこぼしが許されない位置でもある。ベルモンテが“記録のための無理”ではなく、“勝つための現実解”をどう組み立てるかが、終盤の見どころになりそうだ。
5)日程と視聴:土曜に決着、日曜にステップラダー
マッチプレーは土曜日に2ラウンド(午前10時、午後5時開始/米東部時間)を行い、日曜の決勝(ステップラダー)に進む5人が確定する。予選とマッチプレーはBowlTVでライブ配信。決勝のステップラダーは、2026年3月8日(日)午後4時(米東部時間)からThe CWで放送される。
日本から追う場合、米国はこの週末に夏時間へ切り替わる可能性があるため、日本時間では3月9日(月)早朝(目安:午前5時前後)として、直前に公式の案内で最終確認しておきたい。
最後に勝つのは、最も「強い一投」を残せた選手
40ゲームを終えて首位に立ったサイモンセンは、今大会を通じて「追いかけない位置」に居続けた安定感が光る。だが、フォイJr.とヴァイが僅差で迫り、タケットのような王者が中位から射程に入るなど、U.S. Openらしく最終日まで読めない構図が出来上がった。
残り16ゲームは、爆発力だけでなく、難条件でスコアを崩さない技術、流れが悪い時間帯に踏みとどまるメンタル、そして勝敗ボーナスを拾い切る勝負勘が問われる。ハキムの勢い、ロックの伸長、ベルモンテの歴史への挑戦——物語の層も厚い。
日曜の5人枠に誰が残り、最後のステップラダーで誰が“最も強い一投”を放つのか。U.S. Openの終盤戦は、ボウリングという競技の奥深さを最も濃く味わえる時間になりそうだ。