USBCがウレタンボールの硬度規制を強化へ
公平な競技環境の実現に向けた決断

2025年 USBC ボウリングボール硬度管理レポート:歴史・研究・競技への影響

最近発表された USBC(全米ボウリング会議) の報告書は、現在の公認競技における ウレタンボールとリアクティブレジンボールの共存 を検証したものです。1970年代初頭から収集された重要なデータと、近年業界内で指摘されてきた主要な懸念事項がまとめられています。

報告書における「ウレタンボール」という用語は、オイル吸収の遅い高性能ボールを指し、古いウレタン技術を応用した現代のカバーストック製品(例:Purple HammerPitch Black)を含みます。すべての高性能ボールには何らかの形でウレタンが含まれますが、リアクティブレジンボールは可塑剤や添加剤によって表面が多孔質となる点で大きく異なります。

したがって、本レポートは、オイル吸収・レーンとの相互作用・競技への影響の点でリアクティブレジンとは著しく異なるウレタン製品に焦点を当てています。

 

硬度規制の導入と変遷

1973年、競技ボウリングの変化を背景に、ボール表面を化学的に軟化させる事例に対応するため、硬度規制が導入されました。

  • PBA(プロボウラーズ協会) は硬度下限を「ショア75」に設定。

  • ABC(アメリカンボウリング会議) は1976年に「72」に設定。

当時は、PBAの基準(75以上)を満たすため、ほとんどのボールが 79〜80 程度で製造されていました。

1990年代後半になるとリアクティブレジンが競技の主流となり、ウレタン使用はほぼ消滅。2001年、PBAは硬度チェックを廃止。ABC選手権でも同様にテストが無駄と判断され中止されました。

 

2008年 ボールモーション研究

USBCと世界ボウリング連盟が2008年に行った 大規模なボールモーション研究 では、ウレタンはほとんど議論されませんでした。当時の関心は リアクティブレジンとオイルパターン、プレースタイルの相互作用 に集中していたためです。

研究対象は「表面粗さ」で、これは粒子入りボール(ガラス片や砂を混入したもの)が流行していた背景からも当然でした。その結果、表面粗さ規格 が導入されました。

しかし2000年代後半、国際大会の一部でトップ選手が 旧型ウレタンボールの安定した軌道 を再評価。Storm社の選手が他社製ウレタンを使用する許可を得るケースもありましたが、2009年にStormが 78D硬度のナチュラルウレタン を発売すると、この動きは収束しました。

 

2010年代の再浮上

  • 2014年、Stormが Pitch Black(79.9D) を発売。

  • 2016年、Eboniteが Purple Hammer(72.07D) を発売。

これにより、業界全体で硬度の低下傾向 が見られ、PBAが硬度規制を撤廃した2001年以降、その傾向は加速しました。

Purple Hammerの成功を機にウレタン使用が再拡大し、USBCは2019年以降フィールドテストを実施。使用中のボールが徐々に柔らかくなる現象 が確認されました。

 

2020年以降の規制強化と調査

  • 2020年:製造基準を 72D → 73D に引き上げ、試合での抜き打ちチェックを導入。

  • 2022年:Ebonite元スタッフの証言を受け、2016・2017年製 Purple Hammer を調査。最大で 43%が基準未満の可能性 があると統計的に判明。

  • 2022年3月:USBCとBrunswickの合意により、2016・2017年製 Purple Hammer の承認を取り消し

 

2023年〜2025年の研究と国際的影響

USBCは2023年も研究を継続し、フットプリント測定法 を開発。硬度と接地面積の強い相関を確認しました。また、ウレタンを溶剤に浸すと急激に軟化する事実も実験で確認されています。

国際的にも、

  • 日本:2025年 U22 福岡サマーカップでウレタン禁止

  • ノルウェーを含む複数連盟:規制・禁止を検討。

こうした動きは、育成・競技公平性の観点からウレタン廃止が世界的に議論されていることを示しています。

 

2025年の最終決定

USBCは包括的な調査と業界関係者の意見を踏まえ、次の措置を発表しました。

  • 2025年12月31日以降:オイル吸収が90分以上のウレタンボールは、78D以上の硬度 でなければ米国内で販売承認されない。

  • 2026年1月1日以降:USBC全米大会では、

    • 該当するウレタンボールを全面禁止、または

    • 78D以上のもののみ使用可、のいずれかを適用。

 

結論

この規制は、競技の公平性を確保し、長年の用具格差問題に対応する重要な一歩 です。USBCは今後も競技結果の監視、選手からのフィードバック収集、追加調整を続け、スポーツの健全な進化を保証していくとしています。