サイモンセン首位奪還、U.S. Openが混戦へ
ロック急浮上で決勝争い激化
混戦の金曜を制したのはサイモンセン。だが主役は一人ではない
インディアナ州インディアナポリスで開催中の「2026 Go Bowling U.S. Open」は大会4日目の金曜日、二度目のカット(上位24名への絞り込み)と、マッチプレー第1ラウンドを一気に消化した。舞台はロイヤル・ピン・ウッドランド。10時間を超える長丁場のなかで、順位表は大きく揺れ、優勝争いの輪郭がくっきりと浮かび上がった。
その中心に立ったのは、2022年王者で今大会の開幕リーダーでもあるアンソニー・サイモンセン(ラスベガス)だ。29歳のツーハンド右腕は総合首位を奪還し、日曜日のステップラダー決勝(進出5名)へ向けて最良の位置を確保した。もっとも、今大会の魅力は“首位の強さ”だけではない。パーフェクトゲームが相次ぐ派手な一日でありながら、真に胸を打つのは、順位表の下から現実をねじ曲げるように迫ってきた存在――ルーキーのTJ・ロックの急浮上である。
二度目のカット、マッチプレー開幕、そして「完璧」と「急上昇」が交差した
1)二度目のカットを越え、勝負は「24人のマッチプレー」へ
金曜日のスタートは予選ラウンド4。32名が8ゲームを投げ、合計スコア上位24名だけがマッチプレーへ進む。ここから先は、単にスコアを積むだけでは足りない。ラウンドロビン形式のマッチプレーが導入され、勝敗に応じたボーナスも加算される。つまり、安定して打つ力に加え、勝ち切る力、流れを読み切る力が問われる局面へ入った。
マッチプレーは3つの8ゲームブロックで争われ、金曜日に第1ブロック、土曜日に残り2ブロックが行われる。最終的に総合上位5名が日曜日のステップラダー決勝へ進出。決勝は東部時間午後4時からThe CWで生中継予定だ。
2)サイモンセンが総合首位へ:数字以上に際立つ「再現性」
最終ショットが落ち着いた夜、順位表の一番上に戻ってきたのはサイモンセンだった。予選ラウンド4で8ゲーム合計1,758(アベレージ219.75)をまとめ、続くマッチプレー第1ブロックでは5勝3敗。4日間・40ゲームの総計は9,199ピン(勝利ボーナス150ピン含む)に達した。
この首位が意味するのは、単なる一時的な爆発ではない。サイモンセンは、U.S. Openのような“崩れたら終わる”メジャーで、毎年のように上位へ戻ってくる。勝負どころで最も価値があるのは、派手な一撃よりも、同じ質のショットを繰り返せる再現性だ。金曜のマッチプレーでも、232、227、269、221、225、269、253、279で合計1,975。高い平均で相手を押し切る「主導権の取り方」が、彼のボウリングの強みとして改めて示された。
ただし差は小さい。2位ティモシー・フォイ・ジュニア(9,136)、3位クリス・ヴァイ(9,123)が僅差で追走し、4位パトリック・ドンブロウスキー(8,989)、5位A.J.ジョンソン(8,973)も手が届く距離にいる。土曜日の16ゲームで勢力図が塗り替わる余地は十分にある。
3)ヴァイの300、ジョーンズの300:「完璧」が流れを押し曲げる
金曜日は“完璧”が大会の温度を一段上げた日でもあった。ヴァイはマッチプレーで1,980を記録し、内訳には300ゲームが含まれる。さらに彼は予選ラウンド4の最初の3ゲームで279、257、277の813シリーズを叩き出しており、一日を通して勢いが途切れない。スコアの強さに、象徴としての強さが重なった。
一方、2006年U.S. Open覇者トミー・ジョーンズも、マッチプレー第1ブロック最終戦で12連続ストライクの300ゲームを達成。メジャー終盤でのパーフェクトは、本人の内部だけでなく、周囲の想定や会場の空気まで変えてしまう。数字は順位表に並ぶが、空気は並ばない。土曜以降、この“空気の貯金”がどこで効いてくるかは見逃せない。
4)急上昇の連鎖:ドンブロウスキー、アンダーソンが一気に前へ
大きく動いたのは上位だけではない。ドンブロウスキーは朝の時点で16位から出発し、予選ラウンド4で1,781、マッチプレーで6勝2敗と勝ち越して総合4位まで浮上した。単なる良い時間帯のスコアではなく、1日を通して崩れない“上げ方”である。
さらに目を引いたのがアンドリュー・アンダーソンだ。大会4日目開始時点で31位という厳しい位置から、朝の8ゲームで1,872、夜は5勝2敗1分で総合6位へ急浮上。昨年この会場で準優勝した経験が、レーンの見立てや調整の速度として活きた可能性がある。ディラン・ジャブロンスキーも、予選1,846とマッチプレー5勝2敗1分で20位分順位を上げた。つまり今大会は、上位が僅差で固まる一方、中位からの“現実的な逆転”も成立する状況にある。
5)最大の物語はロック:最終枠滑り込みからトップ10へ
そして金曜最大の主題は、TJ・ロック(ウィチタ)の躍進だ。木曜夜、彼は最終ゲームの244で36位タイに食い込み、かろうじて初回カットを突破した。そこから先は、金曜朝の予選ラウンド4で少なくとも11人を抜かなければマッチプレーに届かない――普通なら、希望より計算が先に立つ状況である。
だがロックは“生存”ではなく“反撃”を選んだ。予選ラウンド4で258、232、244、173、212、242、224、230の合計1,815(アベレージ226.88)をまとめ、36位タイから16位へジャンプアップ。さらにマッチプレーで6勝2敗と勝ち越し、総合9位にまで押し上げた。日曜ステップラダー決勝の最終枠を争う位置につけ、ジョンソンとの差は125ピン未満。土曜日の16ゲーム次第で、ルーキーがメジャーのテレビ決勝に現れる現実味が一気に増した。
ロックが強いのは、ここで浮かれない点だ。マッチプレーは高得点でも負け、低得点でも勝つ。だからこそ彼は、「良いショットを投げ続ける」という方針を掲げ、相手の結果より自分の実行に焦点を合わせる。さらに彼の背中を押すのが、元ウィチタ州立大学のチームメイト、ブランドン・ボンタの成功だ。ボンタは数週間前のPBAプレーヤーズ選手権でステップラダーを駆け上がり、優勝決定戦で300を放って初タイトルとメジャーを同時に獲得。その出来事がロックに「自分もできる」という確信を与えたという。
6)連覇を狙うタケット:歴史の扉も同時に開く
もう一つの視点は、現時点12位につけるEJ・タケット(インディアナ州ブラフトン)だ。昨年王者が今年も勝てば連覇となり、1995年と1996年に連覇したデイブ・ヒューステッド以来の快挙。さらに4年で3度目の優勝という圧倒的な支配も現実になる。地元インディアナでの戦いという文脈も含め、土曜日の巻き返しが始まれば、優勝争いは一段と厚みを増す。
優勝賞金は10万ドル。総賞金は27万5,000ドル超。USBCとBPAAによる共同開催というスケール感も含め、U.S. Openが「キャリアを決める舞台」であることは揺るがない。
土曜日の16ゲームが、常連の強さと新星の本物度を分ける
金曜を終えて、サイモンセンは総合首位を奪い返した。だが、その背後にはフォイ、ヴァイ、ドンブロウスキーらの追走が密集し、土曜日の2ブロックで順位が入れ替わる条件が整っている。ヴァイとジョーンズの300が示した通り、メジャーの終盤は、「一日分の流れ」が「一投分の象徴」によって押し曲げられることがある。
その一方で、今大会の熱量を最も引き上げているのはロックだ。最終枠滑り込みから始まり、予選での大ジャンプ、マッチプレー6勝でトップ10入り。彼が狙うのは上位フィニッシュではなく、日曜のステップラダー決勝という“勝負の舞台”への到達である。マッチプレーの不確実性を理解したうえで、自分の実行に集中するという言葉は、結果が伴ったときに説得力を持つ。土曜日の16ゲームは、その言葉を証明する試合でもある。
日曜に残れるのは5人だけ。金曜は派手だった。しかしメジャーの本当の重さは、派手さの後にやってくる。土曜の夜、順位表の一番上に誰がいるか以上に重要なのは、そこへ至る過程で“崩れなかった者”が誰かだ。常連が常連であり続けるのか、新星が本物になるのか。U.S. Openは、その境界線を容赦なく引く。