プロコーチ・マーク・ベイカーが答える!
ボウリングQ&A特集(第3回)
アメリカを代表するボウリングコーチ、マーク・ベイカー氏が登場する人気シリーズ「Questions with the Coach」の第3回が公開されました。今回は視聴者から寄せられたリアルな質問に、マーク氏が自らの豊富なコーチング経験をもとに、実践的かつ深い回答を届けてくれました。
この記事では、特に注目すべき質問とその回答をひとつひとつ丁寧にご紹介し、ボウリングをより深く理解するためのヒントをお届けします。
【質問1】足運び(フットワーク)を真っ直ぐにするには?
Q:どうすればフットワークをまっすぐにできますか?
マーク氏は、足運びを「完全にまっすぐにする必要はない」と前置きしたうえで、最も大切なのは「バランス」であると強調しました。右利きのボウラーが4歩助走を取る場合、1歩目と3歩目は頭の真下に来るように意識すると、体の中心軸を保ちやすくなります。
さらに、スライドステップ(最後の一歩)では、ピボットステップ(軸となる足の動き)と同じボード上で滑ることを意識しましょう。こうすることで自然と足運び全体のバランスが取れ、安定感のある投球が可能になります。
プロの投球を見てみると、頭と足の位置が常に揃っており、投球中にブレることがほとんどありません。クリス・プレイサーやジェイソン・ベルモンティ、ビル・オニールといったトッププロたちは、まさにこの「頭と足の位置が一致している」典型例であり、バランスの重要性を如実に物語っています。
【質問2】「ポスト」とは何か?それをうまく行うには?
Q:投球後の「ポスト」って何ですか?どうやってできるようになりますか?
「ポスト」とは、ボールをリリースした後もバランスを保ちながらスライド足の上でしっかりと立てている状態のことを指します。これは非常に重要な技術であり、上達の鍵のひとつです。
ポストができている状態では、投げ終わった後も体勢が崩れず、ボールが狙った通りの方向に進みます。逆に「フォールオフ(falling off)」してしまうと、腕(前腕)がボールに正確な方向を伝えられず、コントロールが乱れてしまいます。
マーク氏は、「フォロー・スルーが矢印(アロー)をしっかり通過してから自然と踏み出すならOK(これは“ステップオフ”)だが、リリース中にバランスを崩してしまうのはNG」と、細かな違いを明確に解説してくれました。
【質問3】助走ステップ数の正解は?4歩でも大丈夫?
Q:私は右利きで4歩助走をしていますが、5歩の方がいいですか?
これについてマーク氏は、「ステップ数は人それぞれ」であると明確に述べています。4歩、5歩、6歩でも、それぞれに合ったやり方があり、正解は一つではないということです。
例えば、パーカーボーンやブライアン・ヴォスのような名選手も4歩で成功を収めています。つまり、大切なのは「自分が再現しやすいリズムを持っているかどうか」。何歩であっても、毎回同じように助走できる再現性があれば、それがその人にとっての正解ということです。
【質問4】初心者のプレーで「 cringe(恥ずかしい)」と思うことはある?
Q:初心者が投げるのを見ると、どこが一番 cringe に感じますか?
この質問に対して、マーク氏は明確に「ない」と答えました。彼は、自分が初めてゴルフをしたときの惨状を例に出し、誰にでも最初はあると語ります。
どんな初心者でも、何か一つは良い点を持っているもの。それがスタンスの取り方だったり、手の添え方だったり、あるいはもともとダンス経験があり足運びがうまかったり。コーチとしての役割は、その「光る一部分」を見つけて伸ばすことであり、最初から否定するようなことは決してしないと語ります。
【質問5】リストブレースは使うべき?
Q:ボウリング後に手首が痛くなります。リストブレースを使うべきですか?
マーク氏はこの質問に対して「中立的」な立場を取っています。彼はリストブレースの使用に反対も賛成もしませんが、「トッププロにも使っている選手は多くいる」と紹介しています。
もし手首に痛みが出るのであれば、リストブレースを試してみるのも良いでしょう。特に、子供の頃に手首を骨折した経験がある人や、長時間のプレーで痛みが出る人には、有効なサポートになります。
【質問6】リストブレースによる制限はある?
Q:リストブレースを使うと手首の動きに制限はありますか?
確かに、リストブレースを使うと手首の柔軟性は減少します。例えば、手首を後ろに反らせるスタンスや、ボールのリリース時に自由に手首を動かすプレースタイルを持つ選手には、リストブレースが制限となる場合があります。
特に、手首の使い方が自由な選手(例:クリス・バーンズ)にとっては制限となる可能性もありますが、それでも多くの選手がうまく取り入れていることから、必ずしもマイナスとは言い切れません。
【質問7】バックスイングの高さは投球に影響する?
Q:もっと高いバックスイングにすればスピードやパワーは上がりますか?
マーク氏は、「高いバックスイングを意識的に増やす必要はない」と述べています。むしろ、身長や腕の長さといった身体的な特徴が自然とバックスイングの高さを決めるので、それに逆らって無理に高くするのは逆効果になる可能性もあると指摘しています。
重要なのは、「タイミング」と「バランス」。これらが整えば、自然とパワーや回転数(レヴ)もついてくるため、無理にフォームを変える必要はないとのことです。
【質問8】ボールの下に親指を入れて回転をかけるには?
Q:どうすれば親指を入れたままボールの下に入り込めますか?
この質問に対してマーク氏は、非常に印象的な回答をしています。
彼は、すべてのボウラーを「ジグソーパズル」に例え、「リリースは最後に組み込むピース」だと語ります。最初からリリースにこだわりすぎると、基礎(タイミング、バランス、再現性)が崩れ、結果的にうまくならないケースが多いのです。
マーク氏のコーチング哲学では、まず「ボールを安定して投げるための土台(外枠)」を作り、その後でリリースという「中心のピース」を入れていくという順番が大切になります。
【質問9】バージニアビーチでのキャンプ開催はある?マーク氏の活動拠点は?
Q:マーク・ベイカーさんはバージニアビーチでキャンプを開催していますか?
この質問に対して、マーク氏は「いいえ」とはっきり答えています。彼はカリフォルニア州オレンジカウンティ在住で、生まれ育った南カリフォルニアを拠点として活動を続けているとのこと。
過去にはクリス・バーンズ選手と共に世界各国でクリニックを開催していた時期もありましたが、コロナ禍以降は遠征によるレッスンは控えているそうです。現在は、地元の生徒たちとのレッスンやトレーニングに集中しており、「旅はストレスが増え、コストも上がってしまった」との理由から、しばらくは地元中心の活動が続く見込みです。
とはいえ、今後クリス・バーンズ選手との再共演による「Baker-Barnesクリニック」の復活を期待する声も多く、マーク氏も「クリス次第」と冗談交じりに話していました。今後の展開には引き続き注目です。
まとめ:あなたの成長は「今この一歩」から始まる
今回のQ&Aセッションでは、テクニックから考え方、トレーニングの哲学まで、マーク・ベイカー氏のコーチングスタイルが随所に表れていました。
ボウリングは、単なるフォームや力の問題ではなく、自分の体の使い方や再現性を理解し、バランスとタイミングを整えていくことが重要だと再認識させられる内容でした。