EJタケットはジェイソン・ベルモンテを超えられるのか?
PBA史上最大級のGOAT論争を考える
記事に入る前に、音声による要点解説をお聞きいただくと、内容が一段と理解しやすくなります。
要点音声解説
本要点音声解説は、「OneHandedBowling」掲載の動画内容をGemini Notebook を用いて生成したものです。
2026年、再び浮上した「史上最高」という問い
プロボウリングの世界で、「史上最高の選手は誰か」という問いに、誰もが納得する一つの答えを出すことは難しい。
メジャータイトル数を重視するのか。
通算タイトル数を見るのか。
年間平均や長期的な支配力を評価するのか。
それとも、競技そのものに与えた影響まで含めるのか。
評価基準によって、その答えは大きく変わる。
そして2026年、その議論の中心にいるのがEJタケットとジェイソン・ベルモンテだ。
ベルモンテはPBA史上最多となる15個のメジャータイトルを獲得し、2ハンドスタイルを世界中へ広めた象徴的存在。一方のタケットは、ここ数年間で驚異的なペースで実績を積み上げ、2026年には平均スコアの記録でも歴史的な数字を残した。
ここで問われているのは、単純に「現在どちらが上なのか」という比較ではない。
EJタケットは現役を終えるまでにベルモンテを追い抜き、史上最高の選手と呼ばれる存在になれるのか。
この問いこそ、今のPBAを語るうえで最も興味深いテーマの一つになっている。
メジャー、通算勝利、平均、支配力――GOATを決めるのは何か
ベルモンテ最大の武器は「メジャー15勝」
EJタケットとジェイソン・ベルモンテを比較するとき、最初に避けて通れないのがメジャータイトル数だ。
2026年時点で、ベルモンテは通算15個のメジャータイトルを獲得している。
一方、タケットは8勝。
数字だけを見ると、
ベルモンテ15勝、タケット8勝。
その差は7つある。
PBAのメジャー大会は、通常のタイトルイベントよりもゲーム数が多く、強豪選手が集まり、複雑なフォーマットの中で長期間にわたって結果を出す必要がある。
単発的な好調だけでは勝ち切れない。
予選から決勝まで高いパフォーマンスを維持し、レーンコンディションの変化に対応しながら、トップレベルの選手を倒し続けなければならない。
それだけに、メジャー1勝だけでも選手のキャリアを大きく評価する実績になり得る。
その舞台で15回勝っているという事実は、ベルモンテのキャリアを語るうえで極めて大きい。
もしGOATを「最大舞台で最も多く勝った選手」と定義するのであれば、現段階でベルモンテが非常に強い立場にいることは間違いない。
通算タイトルでは、タケットがすでにベルモンテへ急接近
しかし、メジャー以外に視野を広げると、両者の距離は一気に縮まる。
2026年時点で、
ジェイソン・ベルモンテ:32タイトル
EJタケット:28タイトル
とされており、その差はわずか4タイトルだ。
さらに重要なのが、両者のキャリア開始時期である。
ベルモンテがプロとして活動を始めたのは2008年。
タケットは2012年。
つまり、ベルモンテのほうが約4年早くキャリアをスタートしている。
このキャリア年数の差を考慮すると、ベルモンテが現在のタケットと同程度のキャリア年数だった時点では、およそ25タイトルだったと比較されている。
この見方を採れば、同じキャリア年数で比較したとき、タケットは通算タイトル獲得ペースでベルモンテを上回っていることになる。
もちろん、通算タイトル数だけで両者を単純比較することはできない。
ベルモンテは32タイトルの中に非常に多くのメジャーを含んでいる。
それでも、タケットが28タイトルまで積み上げているという事実は重い。
かつては遠く見えたベルモンテの32勝が、今では現実的に届き得る数字になっている。
タケットはメジャー15勝を超えなければGOATになれないのか
ここで議論はさらに難しくなる。
タケットがベルモンテを超えるために、必ずメジャー15勝を上回る必要があるのか。
この問いには、一つの明確な答えはない。
たとえば将来、タケットが通算35勝、メジャー11勝まで到達したとする。
一方でベルモンテが通算32勝、メジャー15勝でキャリアを終えた場合、どちらを上位に評価するのか。
メジャーを最重要視するのであれば、ベルモンテを支持する考え方になる。
しかし、通算タイトル、年間平均、年間最優秀選手、長期的な支配力まで総合的に考えるのであれば、タケットを高く評価する見方も成り立つ。
動画でも、タケットがベルモンテを歴代ランキングで上回るために、必ずしもメジャー最多記録まで更新する必要はないという考え方が示されている。
ただし、議論の余地をほとんど残さないほどの「圧倒的な史上最高」を目指すのであれば話は別だ。
通算タイトルでも上回る。
メジャーでも上回る。
年間平均でも歴史的な記録を残す。
年間最優秀選手も複数回獲得する。
そこまで積み上げて初めて、誰が見ても極めて強力なGOAT候補になる。
2023年以降、タケットは毎年のように「歴史」を作っている
タケットのGOAT論争が現実味を持ち始めた最大の理由は、ここ数年間の内容にある。
2023年にはトリプルクラウンを達成。
2024年には6大会連続でチャンピオンシップラウンドへ進出する記録を樹立。
2025年にも高水準のシーズンを送り、2026年には年間平均記録を更新した。
ここで重要なのは、単に勝利数を増やしているわけではないことだ。
毎年のように、PBA史に残る新しい実績を生み出している。
通常、どれだけ強い選手でもキャリアには波がある。
タイトルを量産する年もあれば、好成績を残しながら勝ち切れない年もある。
しかしタケットの場合、タイトル、メジャー、平均、テレビ決勝進出といった異なる指標で、毎年のように歴史的な結果を残している。
動画では、2023年から2026年までの実績について、これと同じ内容を仮に8年間かけて達成したとしても、十分に一時代を代表するキャリアになるという趣旨の評価が示されている。
それほど、この4年間の密度が異常に高い。
現在のタケットを評価するうえで、この「実績の密度」は非常に重要な要素だ。
2026年は「史上最高の1年」ではなくても、キャリア上は極めて重要
一方で、2026年のタケットを過大評価してはいけないという視点もある。
年間平均記録を更新したことは大きな実績だが、タイトル数は1勝。
そのため、複数タイトルやメジャー優勝を含んだベルモンテの2017年シーズンと比較した場合、2026年を単純に「史上最高のシーズン」と呼ぶことは難しいという見方が示されている。
この指摘は非常に重要だ。
GOAT論争は、1年間だけを切り取って決めるものではない。
どれほど圧倒的なシーズンを作ったとしても、その後に長期間結果を残せなければ、キャリア全体の評価には限界がある。
逆に、毎年高水準を維持しながら10年以上トップに居続ければ、単年のインパクト以上に大きな価値を持つ。
つまり2026年のタケットにとって重要なのは、
「この年が史上最高だったか」ではなく、「2023年から続く長期的なピークの一部であること」
だ。
2023年、2024年、2025年、2026年。
この流れ全体を見たとき、タケットのキャリアは明らかに特別な段階へ入っている。
歴代最高へ近づくために必要な「第二のピーク」
歴代の名選手たちを見ると、ある共通点が見えてくる。
若い時期だけではなく、キャリア後半でも再び大きな成功を収めていることだ。
動画では、ピート・ウェバー、ノーム・デューク、ウォルター・レイ・ウィリアムズJr.などの名前が挙げられている。
ベルモンテも同じだ。
初期に急速にタイトルを重ねただけではなく、2017年に大きなピークを作り、その後2022年にも再び強烈なシーズンを迎えた。
この第二、第三のピークが、キャリアを一段上の歴史的存在へ押し上げている。
タケットがベルモンテへ本当に追いつくためには、現在のピークだけでは足りない可能性が高い。
30代後半に入ってからも、
年間複数勝利
メジャー優勝
年間最優秀選手争い
高い年間平均
といった結果を複数年にわたって残す必要がある。
少しずつ勝ち星を積み上げるだけでは、メジャー7勝差を縮めるには時間がかかる。
必要なのは、数年間にわたる大きな爆発だ。
現在のタケットは明らかにピークの中にいる。
今後の最大の焦点は、このピークが終わったあとに、もう一度同じような高みに戻れるかどうかだ。
平均記録がGOAT論争で持つ意味
GOAT論争ではタイトル数に注目が集まりやすい。
しかし、動画ではもう一つ重要な指標として年間平均が強調されている。
メジャー優勝は、大舞台で勝ち切る力を示す。
一方、年間平均は、シーズン全体でどれだけ高いパフォーマンスを維持したかを示す。
この二つは同じ「強さ」でも性質が違う。
メジャーでは、その大会期間中にピークを合わせる必要がある。
年間平均では、ほぼすべての大会、ほぼすべてのゲームで高いパフォーマンスを出し続けなければならない。
タケットは2023年以降、何度も平均記録に迫り、2026年についに記録を更新したとされている。
この実績は、通算タイトル数だけでは十分に表現できない。
年間平均を重視するのであれば、
「そのシーズンを通して、最も安定して強かったのは誰か」
という評価になる。
GOATをメジャー数だけで語ると、このような長期的な支配力が見えにくくなる。
逆に平均記録だけを見れば、大舞台での勝負強さを十分に評価できない。
だからこそ、両方を合わせて見る必要がある。
ベルモンテには「競技を変えた」という別次元の実績がある
数字だけでは測れない実績もある。
ベルモンテの場合、それが2ハンドスタイルを世界規模で広めた影響力だ。
2ハンドという投球方法そのものはベルモンテが生み出したわけではない。
しかし、そのスタイルで世界最高峰の舞台を勝ち続けたことで、ジュニア世代を中心に2ハンドが急速に普及していった。
現在では、2ハンドボウラーを見ることは珍しくない。
つまりベルモンテは、
勝った選手であるだけでなく、競技の景色そのものを変えた選手
でもある。
この影響力はタイトル数には表れない。
タケットにも、別の意味で象徴的な価値がある。
2ハンドスタイルが大きな存在感を持つ現代において、高回転、高速、高精度の1ハンドスタイルで世界最高クラスの結果を出し続けている。
「1ハンドでも現代PBAの頂点に立てる」
タケットはそれを証明している。
ただし、競技全体の投球スタイルやジュニア世代の選択そのものを大きく動かしたという意味では、ベルモンテの影響は非常に大きい。
タケットの前に立ちはだかる「若手世代」
今後のタケットを考えるうえで、競争環境も無視できない。
2026年には4人のルーキー優勝者が誕生し、動画ではこれが歴史的な記録だったとされている。
さらに、アレックス・ホートンのように早い段階で複数タイトルを獲得する若手も登場している。
これはタケットにとって大きな壁になり得る。
今後5年間でさらに新世代の選手が増えれば、トップ選手が複数タイトルを獲得する難易度は上がっていく。
現代の若手は、パワーだけではなく、
レーンリーディング
ボール選択
フィジカル
映像分析
ゲームプラン
といったあらゆる要素で高度化している。
その中で勝ち続けることは簡単ではない。
タケットがベルモンテとの差を縮めるためには、単に現在の実力を維持するだけでは足りない。
新しい世代が次々と台頭する環境で、それでもタイトルを奪い続ける必要がある。
この競争激化こそ、今後数年間の最大の不確定要素の一つだ。
パワースタイルだからこそ無視できない身体的リスク
タケットの将来を考えるうえでは、身体への負担も重要な要素になる。
タケットは高い回転数と強烈なボールスピードを両立する、非常にパワフルな1ハンドスタイルで知られている。
このスタイルは大きな武器である一方、長期間同じ出力を維持することにはリスクがある。
動画では、特に前腕などに問題が起きた場合、パフォーマンスへ大きな影響が出る可能性が指摘されている。
30代後半に入っても、現在と同じ出力を維持できるのか。
あるいは、スピードや回転数が多少落ちたとしても、精度やレーンリーディングによって補えるのか。
ここは今後のキャリアを大きく左右する。
ノーム・デュークやウォルター・レイ・ウィリアムズJr.のように長く勝ち続けた選手たちは、年齢に応じて自分の強みを変化させながら戦ってきた。
タケットにも将来的には、現在とは違う形の強さが必要になる可能性がある。
GOATとは「最も勝った選手」なのか、「最も強かった選手」なのか
この議論を難しくしている最大の理由は、GOATという言葉そのものに共通の定義がないことだ。
メジャー数を重視するならベルモンテ。
年間平均や直近の支配力を重視するなら、タケットの評価は大きく上がる。
競技への影響力まで含めれば、ベルモンテの存在はさらに大きくなる。
さらに歴代全体へ視野を広げれば、アール・アンソニーのような選手も無視できない。
時代によって大会数も違う。
ツアー環境も違う。
メジャーの位置づけも変化している。
そのため、異なる世代を単純な数字だけで比較することには限界がある。
結局、「史上最高」という議論は、
何をボウラーの偉大さと考えるのか
という問いでもある。
最大舞台で勝つことなのか。
毎週最も高いスコアを出すことなのか。
長期間トップであり続けることなのか。
それとも、競技そのものを変えることなのか。
この評価軸が違えば、答えも変わる。
だからこそ、EJタケットとジェイソン・ベルモンテの比較は、単なるタイトル数の比べ合いでは終わらない。
PBAにおける「偉大さ」とは何かを考える議論そのものになっている。
タケットはまだベルモンテを超えていない。しかし、その議論が成立する場所まで来た
2026年9月時点で、EJタケットがジェイソン・ベルモンテを超えたと断定する段階にはない。
最大の理由は、やはりメジャータイトルだ。
ベルモンテ15勝、タケット8勝。
この差は依然として大きい。
さらにベルモンテには、2ハンドスタイルを世界へ広げ、競技そのものに大きな影響を与えたという、数字には表れにくい実績もある。
一方でタケットは通算28タイトルまで到達し、ベルモンテとの差を4勝まで縮めた。
そして2023年以降、
トリプルクラウン
連続チャンピオンシップラウンド進出
年間平均記録
など、歴史的な実績を毎年のように積み重ねている。
今、本当に注目すべきなのは、
「タケットはすでにベルモンテを超えたのか」ではない。
「この歴史的なペースを、あと何年続けられるのか」だ。
もし30代後半に入っても複数タイトルを獲得し続け、メジャーの差を縮め、通算タイトルでベルモンテを上回れば、GOAT論争の構図は大きく変わる。
逆に現在がキャリア最大のピークであり、ここからペースが落ちれば、ベルモンテの15メジャーという数字は改めて巨大な壁として残る。
現時点で確かなことがあるとすれば、それは一つだ。
EJタケットは「史上最高になれるか」を真剣に議論できる場所まで来ている。
まだ歴史は完成していない。
だからこそ面白い。
私たちは完成したキャリアを後から振り返っているのではなく、PBA史に残る可能性を持ったキャリアが作られていく過程を、今まさに目撃しているのである。
