シン・リージェーン、2026年PWBA開幕戦を制覇
ロックフォードで見せた圧巻の逆転優勝劇

2026年PWBAツアーは、シンの劇的な逆襲で幕を開けた

2026年のProfessional Women’s Bowling Association(PWBA)ナショナルツアーは、開幕戦から大きなインパクトを残す結果となった。

イリノイ州ロックフォードの「The Cherry Bowl」で開催された「2026 PWBA Bowlers Journal Rockford Open」で、マレーシアのシン・リージェーンが優勝。決勝ではシンガポールのニュー・フイフェンを257対234で下し、自身6度目となるPWBAタイトルを獲得した。

今回の勝利がひときわ印象的だったのは、シンが第1シードとして決勝で待ち受けていたわけではない点にある。予選24ゲームを戦い抜いた末、彼女は第4シードでステップラダー決勝へ進出。そこから3人の上位シード選手を次々と破り、最後にトップシードのニューを倒して頂点に立った。

まさに、一段ずつ階段を上るように勝ち上がった優勝劇だった。

シンにとって「The Cherry Bowl」は特別な場所でもある。2024年大会でも同会場で優勝しており、その勝利は同年の年間最優秀選手獲得へ向けた大きな転機となった。2年後の2026年、彼女は再びロックフォードで輝きを放ち、シーズン開幕戦から存在感を見せつけた。

 

第4シードから頂点へ。勝負を分けた修正力と集中力

予選での苦戦を、決勝での対応力に変えたシン

シンは今大会、予選から圧倒的な独走状態だったわけではない。24ゲームの予選を通じて粘り強くスコアを重ね、第4シードとして決勝ラウンドに進出した。

本人によると、予選ではやや外側のラインを使って投球していたという。しかしステップラダー決勝では、他の選手たちが多く使っていたエリアへラインを変更。さらに、ボール選択やレーン攻略にも修正を加えた。

この柔軟な対応力こそ、今回の勝利を支えた大きな要因だった。

シンは試合後、「ステップラダーでは一試合ずつ考えるだけ。楽しむこと、そして一投ずつ集中することを意識していた」と振り返っている。大舞台であっても余計なプレッシャーを背負い込みすぎず、目の前の一投に集中する。その姿勢が、試合を重ねるごとに彼女の投球精度を高めていった。

 

初戦:ローレン・ルッソを211対178で下し、流れをつかむ

シンのステップラダー初戦の相手は、第5シードのローレン・ルッソだった。

ルッソは試合開始から5フレーム連続でスペアを重ね、安定感のある立ち上がりを見せた。一方のシンは、同じ序盤で4つのストライクを奪い、早くも優位に立つ。

第6フレームでは両者がスプリットからオープンフレームを出したものの、この時点でシンは22ピンのリードを確保していた。その後、両者ともダブルを決めて試合は進んだが、第9フレームでルッソが10ピンをミス。この一投で勝負の流れは決定的となった。

シンは最後まで大崩れすることなく、211対178で勝利。まずは確実に一段目を上り、タイトルへの道を切り開いた。ルッソは5位となり、賞金5,550ドルを獲得している。

 

第2戦:オリビア・ファーウェルに244対192で快勝

続く相手は、第3シードのオリビア・ファーウェル。ペンシルベニア州エリザベスタウン出身のファーウェルは、2022年以来となるチャンピオンシップラウンド進出を果たした選手だ。同年にはPWBAルーキー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれており、実力と将来性を兼ね備えている。

今大会では45フィートのオイルコンディションにうまく対応し、予選各ラウンドで上位を維持。第3シードとして決勝に進んだ。

しかし、シンとの対戦では流れをつかみきれなかった。ファーウェルは序盤5フレームをクリーンにまとめたものの、第6フレームで4-6-7スプリットを残し、これをカバーできずにオープンフレームとしてしまう。

一方のシンは、この試合で完全にリズムに乗った。立ち上がりから6連続ストライクを決め、一気に主導権を握る。序盤で築いたリードは大きく、ファーウェルは最後まで追い上げることができなかった。

結果は244対192。シンが危なげなく勝利し、準決勝へ駒を進めた。ファーウェルは4位で大会を終え、賞金6,500ドルを獲得した。

 

準決勝:ジェイド・コテを256対168で圧倒

準決勝でシンの前に立ちはだかったのは、第2シードのジェイド・コテ。カナダ出身のコテにとって、これはPWBAツアー初のチャンピオンシップラウンドだった。

コテはルーキーながら、大学ボウリングで豊富な実績を持つ。ヤングスタウン州立大学では2025年にNCAAボウリング選手権を制覇しており、大舞台での経験は十分にあった。

しかし、PWBAの決勝ラウンドは独特の緊張感に包まれる。コテは初投でストライクを決めたものの、その後は4-7のチョップ、さらに連続して3-6を残すなど、なかなか波に乗ることができない。次のストライクが出たのは第6フレームだった。

その間に、シンは試合を支配していた。最初の7フレームで6つのストライクを奪い、リードを一気に拡大。2024年PWBA年間最優秀選手としての実力を、まざまざと見せつけた。

最終スコアは256対168。シンは大差で勝利し、ついにタイトルマッチへ進出した。コテは3位となり、賞金7,500ドルを獲得している。

 

決勝:ニュー・フイフェンとの頂上対決を257対234で制す

決勝の相手は、第1シードのニュー・フイフェン。現役の年間最優秀選手であり、ここ2シーズンのPWBAを語るうえで欠かせない存在だ。

シンとニュー。近年の女子プロボウリング界をけん引してきた2人によるタイトルマッチは、期待どおりのハイレベルな展開となった。

シンはオープニングフレームをスペアでまとめると、そこから4連続ストライクを決める。その後は連続スペアで落ち着かせ、終盤には圧巻の5連続ストライク。最終的に257点を記録した。

ニューも簡単には引き下がらない。初投でストライクを奪い、第2フレームはスペア。その後、自身も4連続ストライクを決めて食らいついた。第7フレームでは惜しくも9ピンが残り、完全には流れを引き寄せられなかったが、試合終盤まで勝利の可能性を残した。

ニューは最終フレームを迎える時点でダブル中。逆転優勝には、第10フレームの最初の2投をストライクとし、さらにフィルボールで9本を倒す必要があった。

しかし、運命の第10フレーム。ニューの最初の投球は10ピンが残り、ここで勝負は決まった。

257対234。シンが2026年PWBAナショナルツアー最初のタイトルを手にし、優勝賞金20,000ドルを獲得した。ニューは準優勝となり、10,000ドルを手にしている。

 

4試合合計986点、平均242点。記録にも残る優勝劇

今回のシンの強さは、数字にもはっきり表れている。

ステップラダー決勝4試合のスコアは、211、244、256、257。合計986点、平均242点という圧巻の内容だった。これは2015年以降の4ゲーム・ステップラダー合計として、5番目に高い記録である。

ただし、シン本人はスコアを意識していたわけではなかったという。

「正直、スコアのことは考えていませんでした。良いショットを投げることだけを考えていました」

この言葉が示すように、彼女が重視していたのは結果そのものではなく、目の前の一投の質だった。問題が起きればすぐに修正し、ボール担当者とも話し合いながら、できるだけ早く解決策を見つける。その積み重ねが、4試合平均242点という圧倒的なパフォーマンスにつながった。

 

2025年の無冠を越えて、再び優勝争いの中心へ

シンにとって2024年は、キャリアを大きく飛躍させたシーズンだった。The Cherry Bowlでの勝利をきっかけに勢いをつかみ、最終的にはPWBA年間最優秀選手に輝いた。

一方で、2025年は安定した成績を残しながらも、タイトルには届かなかった。チャンピオンシップラウンド進出も一度にとどまり、本人の中にも試合勘への不安があったという。

シンが最後にステップラダーで投球したのは、2025年のUSBC Queens。その大会では準優勝に終わっていた。

だからこそ、今回のロックフォード・オープンは大きな意味を持つ。シンは「久しぶりのステップラダーで少し不安もあった」と明かしながらも、自分に落ち着くよう言い聞かせた。そして、「遠く離れた故郷からここまで来ているのだから、今この瞬間を楽しみ、良いショットを投げ、起きたことを受け入れるだけ」と考えたという。

結果的に、その自然体の姿勢が最高のパフォーマンスを引き出した。

 

シン・リージェーンの2026年は、再び主役として始まった

2026年PWBAナショナルツアー開幕戦でのシン・リージェーンの優勝は、単なる一大会の勝利にとどまらない。

第4シードからステップラダーを勝ち上がり、5位シード、3位シード、2位シード、そして1位シードを次々と撃破した内容は、まさに実力でつかみ取ったタイトルだった。しかも決勝ラウンド4試合の平均は242点。勝ち上がるごとに調子を上げ、最後の2試合では256、257という高スコアを並べた。

2025年は無冠に終わったシンだが、今回の優勝によって、彼女が再びPWBAツアーの主役候補であることを強く印象づけた。冷静な判断力、状況に応じた修正力、勝負どころでストライクを重ねる爆発力。そのすべてが、開幕戦の大舞台で発揮された。

シンは今大会を通じて、「強い選手」とは単に高いスコアを出す選手ではなく、変化する状況の中で最善の答えを見つけ続けられる選手なのだと証明した。

次戦は、コロラド州グリーリーのHighland Park Lanesで開催される「PWBA Northern Colorado」。日程は5月7日から9日までとなっている。

ロックフォードで再び頂点に立ったシン・リージェーンは、この勢いをどこまで広げていくのか。2026年のPWBAツアーは、開幕早々から大きな注目を集める展開となった。