266-227で “主導権” 奪取
EJ・タケットが11ストライク勝利→レーン選択権へ
(キャプテンズマッチ速報)

博物館のレーンが呼び覚ました「宿命の続編」

PBAツアーの近年を語るうえで避けて通れないのが、EJ・タケットジェイソン・ベルモンテの関係だ。三年連続PBA年間最優秀選手(PBA Player of the Year)に輝くタケットと、過去25シーズンのPBAツアーでランキング1位に位置づけられてきたベルモンテ。実績だけを並べても、この対戦が「特別」である理由は十分すぎる。

その最新章が、日曜午後、国際ボウリング博物館&殿堂(International Bowling Museum and Hall of Fame)館内レーンで書き加えられた。これは4月4日CBSParamount+で放送される「PBA USA vs. The World」の前哨戦となるキャプテンズマッチ。タケットが266-227で勝利し、本戦に向けてただの勝ち星以上の価値を手にした。

この舞台設定がいい。競技の歴史を展示する空間で、現役最高峰の物語が更新される。時間旅行のようなロケーションで、現在進行形の覇権争いが立ち上がる。PBAが積み重ねてきた「物語の強さ」を、そのまま1ゲームに凝縮したような午後だった。

 

266の中身が示した「差」と、4月4日へ続く「布石」

1)勝利の意味はスコア以上:賞金ではなく“主導権”を奪う一戦

キャプテンズマッチは、本戦のプロローグであり、同時に戦略の入口でもある。勝者はテレビ決勝におけるレーン選択権と、ラインアップ(対戦順など)を決める優先権を得る。
つまり、タケットはこの1ゲームで「勝利」と「設計図」を同時に手にした。

4月4日の決勝は、USAとThe Worldによるシングルス4試合で争われ、各試合1点。さらに両チームの合計スコアが高い側に2点が加算される。引き分けの場合はワンボールのロールオフで決着がつく。
この仕組みは、単に強い選手がいるだけでは勝てない。対戦順の組み方レーンの選び方、誰に「点を取りにいかせるか」という配分が、結果を左右する。タケットの勝利は、4月4日に向けた“最初の一手”として極めて大きい。

 

2)ベルモンテに「展開の余白」を与えない:11ストライクの圧力

266-227という数字だけを見ると、点差は39。だが試合の印象は、数字以上にタケットの支配が強かった。タケットは12フレーム中11ストライク。ベルモンテが追いつくために必要な「連続加点の窓」が開く前に、タケットがストライクで塞いでいく。

象徴的なのが8フレーム目の7-10スプリットだ。タケットの唯一の乱れは、ポケットヒットからの7-10スプリット。しかし、完璧に近い流れの中で訪れた“たった一度の不完全”が、逆にタケットの完成度を浮かび上がらせた。
ベルモンテ側からすれば、この一投に「攻略の糸口」
を見いだしたいところだが、そこに至るまでの流れが強すぎる。ミスを待つだけでは追いつけない。4月4日も同じだ。ベルモンテ陣営が必要なのは、相手の失速ではなく、自分たちで主導権を奪う攻めの設計になる。

 

3)指名が語る「チーム像」:タケットは現状最強を重ね、ベルモンテは勝ち筋を再現する

キャプテンズマッチ後、両キャプテンはそれぞれ2名を指名し、チームの骨格を固めた。このパートが、ニュースとして最も面白い。なぜなら、ここに両者の“勝ち方”がはっきり表れるからだ。

 

USA(タケット)の指名:アンダーソンフィオーレ

タケットが選んだのは、アンドリュー・アンダーソンイーサン・フィオーレ。2人は昨季POTY投票でタケットと並び立つ「共同2位」という評価を受けた存在だ。

  • アンダーソン2025年コンペティションポイントでツアー2位タイトル2勝に加え、全米オープン準優勝(タケットに次ぐ)。年間を通じて“落ちない強さ”を示した。

  • フィオーレPBAプレイヤーズ選手権優勝で、PBA史上4番目の若さのメジャー覇者。大舞台で勝ち切る胆力を持つ。

この指名は意外性も含んでいた。アンソニー・シモンセンカイル・トループが残っていたからだ。
それでもタケットは「話題性の最大化」ではなく、「今この瞬間の勝率」を積み上げる選択をしたように映る。短期決戦のシングルス戦では、ハイアベレージを出せる選手はそのまま“点”に変換できる。さらに総合スコア2点の存在が、安定して高得点を出せる人材の価値を押し上げる。タケットの選択は、このルールを真正面から踏まえた“合理的な強化”だ。

 

The World(ベルモンテ)の指名:スベンソンバレット

ベルモンテが選んだのは、スウェーデンのイェスパー・スベンソンと、英国のドム・バレット。こちらは「多くが想像した通り」の堅実な布陣だ。

  • スベンソン:昨季のトーナメント・オブ・チャンピオンズ優勝PBAプレーオフ優勝。短期戦でのピーク性能が高い。

  • バレットトリプルクラウン覇者。経験と総合力に裏打ちされた強さがある。

さらに重要なのは、ベルモンテが2023年大会でも同じ2人を指名し、そのチームが圧倒的に勝利している点だ。
ベルモンテの戦略は明快だ。「勝ったことのある組み合わせ」を再現し、チームとしての勝ち筋を呼び戻す。タケットが“最新の戦力値”を積んだのに対し、ベルモンテは“実績のある勝ち筋”を選んだ。ここに両者のコントラストがある。

 

4)最後の1枠が試合を熱くする:3月22日までのポイント争いが鍵

両チームの4人目は、3月22日のPBAインディアナ・クラシック終了時点での2026年コンペティションポイント上位者が入る。USAは「最高位のアメリカ人」、The Worldは「最高位の国際選手」が条件だ。

このルールはよくできている。キャプテンの指名だけでなく、シーズン序盤の“勢い”そのものがチームに注入される。つまり、今週から始まるツアーの流れが、そのまま4月4日の戦力図に直結する。
固定メンバーではなく、ポイント争いの結果で最後の席が決まるからこそ、出場選手にとっても視聴者にとっても「序盤戦の意味」
が濃くなる。

 

5)2026年開幕と放送の転換点:The CWで迎える“新しい入口”

2026年PBAツアーシーズンは今週、テキサス州アーリントンでのPBAプレイヤーズ選手権で幕を開ける。予選は火曜日開始。決勝のチャンピオンシップ・サンデー東部時間午後4時からThe CWで放送され、プロボウリングにとってネットワークでのデビューとなる。

放送の入口が広がると、競技の魅力は「技術」だけでなく「物語」でも伝わりやすくなる。タケット対ベルモンテという分かりやすい軸に、国別対抗という構図が重なり、さらにポイントレースがチームを完成させる。要素が多いのに散らからない。2026年の開幕週は、その見取り図が一気に提示されるタイミングだ。

 

勝ったのはタケット、動いたのは4月4日への空気

今回のキャプテンズマッチは、単なるエキシビションではない。タケットはベルモンテを266-227で下し、11ストライクの内容で「現在地の差」を見せつけたうえで、レーン選択権とラインアップ優先権という実利まで持ち帰った。1ゲームの勝利が、チーム戦全体の主導権へ転換された瞬間だった。

そして指名が、そのまま両陣営の思想を映し出した。タケットは現状の戦力値を積み上げて勝率を最大化し、ベルモンテは勝ち筋の再現性で対抗する。残る1枠は3月22日までのポイント争いが決めるため、2026年の序盤戦そのものが4月4日の前哨戦になる。

博物館の中で更新されたのは、過去の栄光ではなく、現在の覇権だ。次に物語が大きく動くのは、シーズン開幕週のアーリントン。そしてその熱が集約する先が、「PBA USA vs. The World」である。タケットとベルモンテのライバル史は、今度は「チーム」という形で、より大きな勝負の景色を映し始めた。