スコア急落の原因は“手”じゃない
2〜3歩目のためらいを消すだけでリリースが戻る
(PBAコーチMark Bakerの現場修正)
記事に入る前に、音声による要点解説をお聞きいただくと、内容が一段と理解しやすくなります。
要点音声解説
本要点音声解説は、「The Clean Up Crew」掲載の動画内容を整理・補足して、NotebookLM を用いて生成したものです。
これは「新作レビュー」ではなく、スコアを戻すための現場ドキュメントだ
動画タイトルは「Do This For A Perfect Release In Bowling」。一見すると、PBAコーチのマーク・ベーカーが“理想のリリース”を教える定番のハウツーに見える。ところが中身は、もっと実戦寄りで、しかも贅沢だ。ホストのRichが新作ボール2球を投げながら、ベーカーがその場でフォームの乱れを診断し、修正し、さらに「球の使い分け」まで一本の筋にしていく。
登場する主役は2つ。900 Global Vikingと、Phaze II Pearl。Vikingは“とにかく来続ける”連続性が売りの強い球で、角度を作って奥で失速させないタイプ。対するPhaze II Pearlは、長年ベンチマークとして君臨してきたPhaze IIの系譜を引きながら、パール化によって長さと扱いやすさを狙った存在だ。
この回の価値は、ボールのスペック紹介ではない。「なぜ今その球が良く見えるのか」「なぜ急に当たらなくなるのか」を、身体・ライン・45フィートという“現代の勝ち筋”にまとめ直してくれる。リーグで崩れた日の原因究明にも、そのまま使える。
「弱い球から入れ」「手を追うな」—2つの原則が全部をつなぐ
1. 企画の勝ち方:ボールの動きは“評価”ではなく“診断”に使う
多くのボールレビューは、見栄えの良い一投を切り取り、「切れる」「走る」「止まらない」といった印象で終わる。だがこの回は逆だ。ベーカーはボールのリアクションを“点数”として付けない。むしろ、フォームとラインの状態を映す「検査結果」として扱う。
例えば、奥で急に止まる、早く寝る、手前で読みすぎる。そうした挙動が出た時、単純に「球が合っていない」と片づけない。「今、足が止まって肩が入ったから45フィート手前で仕事をさせたのでは?」と原因を身体側に置く。つまり、球の動きが“フォームの乱れ”を暴く仕組みになっている。
視聴者にとって重要なのは、この思考順だ。
まず身体が同じ動きを再現できているか
次に、その再現性でレーンの情報を取れる球を投げているか
その上で、必要な分だけ強さや形を足していくか
レビューを見て球を選ぶ前に、そもそも「球を働かせられる身体」になっているか。ここを正面から扱うのが、この動画の強さだ。
2. 最初の結論:「未知のコンディションほど、弱い球から入れ」
ベーカーが冒頭で示す方針が、この回の背骨になる。未知の状況、しかもフレッシュに近い状態で、いきなり強いスキッド/フリップを投げるとラインアップが難しくなる。なぜなら、反応が鋭すぎると“情報”が取れないからだ。1投ごとの結果が振れ、何を修正すべきかが見えなくなる。
だから、まずはPhaze II Pearlのような「長くなるが基本スムースで読みやすい球」から入る。
同じ動きを作れるか(身体の再現性)
どこで読み始めるか(レーンの輪郭)
どの程度戻るか(許容の広さ)
この“測定”ができたら、反応が足りない局面でVikingへ上げる。強さは後から足せる。だが強すぎる反応を最初に引いてしまうと、減らすために速度・回転・ラインの微調整が増え、結局は身体まで崩れる。
「フックを増やすのは簡単。減らすのは難しい」
この一言は、球選びのテクニックというより、思考の節約術だ。迷った時ほど、まず“読みやすい基準点”を置け。Phaze II系がベンチマークとして支持され続ける理由も、結局そこにある。
3. スランプ診断:問題は「手」ではない。2〜3歩目の“ためらい”だ
ホストが「最近投げてない」「スランプっぽい」と言うと、多くの人は手首や指の抜けを疑う。だがベーカーは、最初から手を見ない。足とタイミングを見る。ここが、この回の最も実戦的なポイントだ。
ベーカーが特定した症状は「2歩目と3歩目の巨大なためらい」。このためらいが起点になって、崩壊の連鎖が始まる。
ためらう → 3・4歩目が前進ではなく上下運動になる
上下運動 → ボールが自然落下しない
自然落下しない → 肩で“引き下ろす”動作が出る
肩が入る → 頭が前に出てバランスが崩れる
バランスが崩れる → リリースで帳尻を合わせようとして手が外に出る
重要なのは、最後の「手が外に出る」は“結果”だということ。原因は、2〜3歩目のためらいと、それによる比率崩れにある。ホストが自分の感覚として「手が変」と言っても、ベーカーが「その前に足とタイミング」と言い切る理由がここにある。
良い投球の定義を、ベーカーは極端にシンプルにする。
良い投球:足が先に行き、スイングが勝手に落ちる(体が邪魔しない)
悪い投球:足が止まり、上体で勢いを作る(肩が介入する)
この二択で、ほとんどの“スランプ”は説明できてしまう。
4. 逆説の名言:「良い投球ほど手は感じない」
この回が強いのは、視聴者がハマりやすい罠を、真正面から壊してくる点だ。YouTubeで人気なのは“手”の話だ。スナップ、回転、リリース角度。分かりやすく、真似しやすい。しかしベーカーは言う。良い投球の時、投げ手は手を感じない。
これは精神論ではない。構造の話だ。
手を感じようとすると、末端(手)で主導権を取りに行く
末端主導になると、足・重心・リズムの大きい要素が崩れる
大きい要素が崩れた状態で“良い手”を作ろうとするほど、全体の連鎖が壊れる
つまり、手は“作る”ものではなく、“整った身体が勝手に連れてくる結果”だ。スランプ時に「回転を増やそう」「抜けを直そう」として悪化するのは、ここを逆にやっているからだ。
5. 分岐点は右膝と右肩:正解ルートと崩壊ルート
ベーカーの説明が鮮烈なのは、違いを「右膝が入るか、右肩が入るか」で整理するところだ。
正解の連鎖
下半身が前に進む
右膝が内側に入る(タイミングが合う)
その動きが手を“正しい内側”へ導く
押して奥で切り替わり、ピン前でエネルギーが残る
不正解の連鎖
足が止まる/ためらう
勢いを作るため右肩で引き下ろす
チキンウィング的になりやすい
頭が前に出てバランスを失い、早く失速する
投げ手の体感では“小さな違い”に見える。しかしボールには巨大な差として出る。早く寝るか、奥で仕事をするか。Vikingのような“止まらず来る球”は、正解ルートなら強烈に武器になるが、不正解ルートだと寝やすさが目立ち、ミスを拡大しやすい。ここで、球の性格と身体の状態が初めて噛み合う。
6. 左足は嘘をつかない:フィニッシュの静けさが再現性のメーター
ベーカーが何度も注目させるのが左足だ。投げ手が上体で押し下ろす力(ダウンフォース)を入れると、その反動が身体のどこかに出る。左足の揺れやジャンプは、その“嘘”を暴くサインになる。
良い投球:左足が静かで、余計な動きがない
悪い投球:左足が揺れる、跳ねる、着地が落ち着かない
この指標が優れているのは、「本人の感覚とズレにくい」ことだ。手の感覚は錯覚しやすい。ボールの動きもレーン状況で変わる。しかし左足の落ち着きは、再現性そのものに直結する。自己修正のチェックポイントとして、これほど分かりやすいものはない。
7. 「最初の2歩がすべて」:入口が同じなら、最後はシンプルになる
一般のボウラーが崩れる典型は、最初の2歩で自分から崩れ、残り3歩で立て直しながら投げようとすることだ。立て直しながら投げると、やることが増える。ターゲットも気にする。回転も気にする。ボールの動きも気にする。結果、全部が薄くなる。
プロや上手い人は逆だ。最初の2歩が毎回同じ。入口が同じだから、後半は“投げるだけ”に近い。ここでベーカーの冗談「チェックリストが増えてる時は、だいたい球が間違ってる」が効いてくる。チェックリストが増えるのは、球が合っていない時もあるが、そもそも入口が崩れている時も同じ現象が起きる。だから順番が大事になる。入口を揃え、基準球で読んで、必要なら球を変える。
8. 70/30と30/70:崩れる日は“比率”が壊れている
ベーカーが提示する「足と腕の比率」の話は、リーグボウラーに刺さる。良い状態は足が主で腕が従(70/30)。崩れた状態は足が止まり腕で作る(30/70)。そして比率が壊れる瞬間、ほぼ必ず肩が入り、頭が前に出る。
ここで見逃せないのが「体力(endurance)」の視点だ。ホストが言う「ゲーム2あたりから急に悪くなる」は、技術不足ではなく、比率を保てなくなる疲労のサインでもある。重い球を持って歩き、18mph前後で投げ続ければ、誰でも足が止まりやすくなる。足が止まると腕が出る。腕が出ると手を感じ始める。手を感じ始めるとさらに崩れる。悪循環の構造が、ここで説明できてしまう。
9. ボール比較の結論:Vikingは“取り切る刃”、Phaze II Pearlは“読むコンパス”
身体の話を踏まえると、この2球の役割がはっきりする。
900 Global Viking
強み:角度を作れた時に止まらず来る連続性。ピン前で失速しにくい
条件:足が進み、押して奥で切り替える投げ方ができていること
リスク:足が止まる投げ方だと早く寝て、ミスが目立つ
Phaze II Pearl
強み:長くなっても暴れすぎず、45フィート付近の読みが分かりやすい
価値:ベンチマークとして“次に何へ行くか”の判断材料になる
相性:インにミスりがちなタイプでも、油の中で転がり、外に出したら戻る幅を作りやすい
ベーカーが「リーグならゲーム2で自動的にこれ」と言うのは、Phaze II Pearlを“当てに行く球”ではなく、“読むための基準点”として評価しているからだ。目立つ一投より、崩れない判断のほうがスコアに直結する。
10. Emberの意味:派手さより「ミス耐性」が勝敗を分ける
途中で出てくる900 Global Ember(パール・シンメトリック)は、Vikingと比較して「スムースでやりすぎない球」がどう見えるかを示すための差し込みだ。ホストが「こういう球が好き。やりすぎないから」と言うのは、実はかなり強い経験則に基づいている。
ハウスショットには“勝手にフックする要素”がある。回転量がある人ほど、奥が強すぎる球は暴れやすい。見栄えのする球が必ずしも正解ではなく、「ミスした時にどうなるか」がリーグの平均点を決める。この“現実”を、Emberが分かりやすく見せた。
11. 45フィートの本質:同じ板でも7〜8フィート違えば、別の投球だ
ベーカーが現代ボウリングの核心として語るのが「どこで読み始めるか」。早く読めば、その分だけ奥で速度が落ち、曲がる距離が増えて左に行く。遅くまで押せれば、奥でコアが切り替わり、ピン前でエネルギーが残る。
ここで重要なのは、「板」ではなく「距離」だという視点だ。投げ手の感覚では同じ板に見えても、実際は曲がり始める位置が7〜8フィート違うことがある。だから、狙いの板をいじる前に、足とタイミングで“読み始めを遅らせる”ことが効く。フォーム修正が、レーン攻略に直結する瞬間がここだ。
12. “回せば曲がる”の誤解:回すほどフックではなくスピンになる
この回の決定的な言い換えが、「回せば回すほどフックする」ではなく、「回せば回すほどスピンになる」だ。回転量を増やそうとして早く回すと、コアが変な場所で読み、失速しやすく、曲がりがズレる。逆に回転を遅らせれば、奥でコントロールでき、狙いに対して素直になる。
つまり、答えは“回転量の追加”ではなく、“回転が入るタイミングの整理”。そしてその整理は、結局「2〜3歩目のためらいを消し、右膝の連鎖に戻す」ことで実現する。動画の前半で語られたことが、ここで一本につながる。
13. Phaze IIがホームラン球になった理由:誰にとっても事故りにくい設計
ベーカーが雑談の形で触れるPhaze IIの成功論は、ボウラーにもプロショップにも刺さる。誰が投げてもある程度OK(bowler-proof)。どの店がどうドリルしても大事故になりにくい(pro-shop-proof)。全国で条件がバラバラな中で、どこでも“そこそこ機能する窓”を持つ球は希少だ。Phaze IIがベンチマークとして残り続けるのは、派手さではなく、その許容範囲の広さが理由だと分かる。
現代の勝ち筋は「投げ方・場所・45フィート」—球は最後に効いてくる
終盤、ホストは「Phaze II PearlとViking、どっちを買うべきかはタイプ次第」と締める。ベーカーは最後まで一貫している。ボールは助けになるが、ボールのせいにしてもスコアは戻らない。現代の要点は3つだ。
どう投げるか:足とタイミング、バランス。特に2〜3歩目のためらいを消し、右膝の連鎖に戻す
どこに投げるか:狙いの板より、読み始めの位置を意識する
45フィートで仕事をさせるか:早読みさせず、奥で切り替え、ピン前にエネルギーを残す
最後に、実戦でそのまま使える持ち帰りメモを置いておく。
迷うほど弱め・スムース側から入る(フック増は簡単、減は難しい)
スランプの入口は2〜3歩目のためらい(足が止まる→肩が出る)
良い投球ほど手は感じない。手を追うほど全体が崩れる
右膝が入る連鎖は正解、右肩が入る連鎖は崩壊
左足は嘘をつかない。静かならスイング、揺れるならダウンフォース
“回せば曲がる”は神話。回しすぎはスピン。鍵は回転を遅らせる
Phaze II系はベンチマークとして判断の基準点になる
Vikingは角度が作れた時に止まらず来る。取り切る局面で強い
この動画の本当のテーマは、新作2球の優劣ではない。「崩れる典型」を見抜き、「戻す順番」を決め、「45フィートで勝てる形」を再現することだ。リーグでスコアが落ちた日、まず“手”ではなく“2〜3歩目”を疑う。そこから始めれば、ボールの性能はようやく味方になってくれる。