
クリス・ヴィアが2025年PBAトニー・レイエス地域貢献賞を受賞へ
〜ボウリング界の紳士が示す、競技を超えた人間力〜
トニー・レイエスの精神を受け継ぐ者
米プロボウリング協会(PBA)は2025年、「PBAトニー・レイエス地域貢献賞(Tony Reyes Community Service Award)」の受賞者として、クリス・ヴィア(Chris Via)を選出しました。
この賞は、シーズンを通して地域社会への貢献、慈善活動、教育活動などにおいて顕著な功績を残した現役のPBAメンバーに贈られる名誉ある賞です。賞の名前にもなっているトニー・レイエス氏は、2012年に亡くなったボウリング界の伝説的存在であり、「人としての温かさと貢献精神」で広く知られていました。
ヴィアは受賞について次のように語っています。
「トニーの名前がついた賞に関われるのは大きな名誉です。選ばれたことに感謝します。ボウリング界をより良い場所にして次の世代に引き継ぎたい。」
彼の言葉には、競技者である前に、一人の人間としての深い誠実さがにじみ出ています。
社会貢献を通じて輝くヴィアの姿勢
■ 完璧なプレーと完璧な寄付:乳がん支援のための大会での行動
2024年7月、ヴィアは「Storm PBA/PWBA Striking Against Breast Cancer Mixed Doubles Tournament(SABC大会)」に参加し、2回のパーフェクトゲーム(300点)を達成しました。驚くべきことに、彼はそのたびに獲得した賞金をすべて、迷うことなくSABC財団へ寄付しました。
「我々は与えられたこのプラットフォームを、素晴らしい目的のために使うべきだと思っています。ヒューストンに行くのは乳がん支援のため。ボウリング大会はおまけのようなものです。」
この発言からも分かるように、ヴィアにとってボウリングは単なる競技ではなく、「社会のために貢献する手段」として位置づけられています。
大会の創設者であるドナ・コナーズ氏とそのチームへの深い尊敬もヴィアのモチベーションの一つです。ヴィアは支援者としてだけでなく、プレイヤーとしても結果を残し、ペアのブライアンナ・コーテ選手と共に2024年大会で優勝を果たしました。大会は今年で25周年を迎え、その節目にふさわしい勝利となりました。
■ 米軍退役軍人支援団体「BVL」との協働
2025年、ヴィアはもう一つの社会貢献として「Bowlers to Veterans Link(BVL)」の公式支援者にも就任しました。
BVLは1942年創設の、米ボウリング界で最も歴史ある慈善団体であり、退役軍人や現役軍人の心身のケアを目的に、これまでに5,700万ドル以上を集めています。
「もっと多くの人にこの活動を知ってもらいたい。私がその架け橋になれれば嬉しいです。」
ヴィアはただの“顔役”としてではなく、広報・啓発・資金集めといった実働を伴う形で関与しており、これもまた彼の本質的な貢献精神を示しています。
■ チームUSAでのリーダーシップと後進育成
ヴィアは2016年からアメリカ代表(Team USA)に所属し、現在では若手選手のロールモデルとして中心的役割を担っています。
彼自身、かつてはクリス・バーンズ、トミー・ジョーンズ、ショーン・ラッシュといった名選手から多くを学んだと語っています。現在はヴィア自身が、ジュニア代表や若手選手の手本となり、チーム文化の維持と発展に努めています。
「私たちは“勝てば当然”とされた時代の伝統を、世界のレベルが上がった今でも守り続けたい。世界一のチームであり続けると同時に、“家族のような文化”を築きたい。」
選手の中には1度しか代表に入らない者もいれば、10回以上の者もいる。しかしヴィアは、「誰が何回出場しても、同じチームとして尊重し合える文化」を重視しています。こうした価値観の共有こそが、代表チームを強くする土台なのです。
■ 地元オハイオ州への深い愛と恩返し
ヴィアはオハイオ州スプリングフィールドの出身。2021年に全米オープンを制した功績を称え、地元では毎年5月25日が「クリス・ヴィア・デー」に制定されています。
現在はミッキー・タン選手とともに、オハイオ州に3つのプロショップを運営し、地元のボウラーの器具調整や技術相談に乗るなど、積極的に地域と関わっています。
「私はここで育ち、ここで学びました。同じ地域の人たちに、今度は私が恩返しをする番です。」
彼は競技技術の科学的側面にも深い関心を持ち、道具の知識やフィッティングの技術を活かして、多くの人に貢献しています。これは単なるサービスではなく、「技術を通じた教育と人材育成」の一環とも言えるでしょう。
「偉大なボウラーとしてよりも、偉大な人間として記憶されたい。」
ボウリングを通じた社会貢献の手本
PBAコミッショナーのトム・クラーク氏は、今回の受賞についてこう述べました。
「トニー・レイエス賞はPBAにおける最も意味ある賞のひとつであり、クリス・ヴィアの受賞は彼の人間性を象徴しています。」
トニー・レイエス氏が遺した「笑顔・温かさ・無償の与える心」という精神は、今やヴィアの中で生き続けています。彼は競技での活躍だけでなく、社会全体にポジティブな影響を与える存在であり、これからのボウリング界を牽引する人物です。
その姿は、スポーツが人間性の延長線上にあるという事実を改めて私たちに教えてくれます。
【過去のPBAトニー・レイエス地域貢献賞 受賞者一覧】
年度 | 受賞者名 |
---|---|
2025 | クリス・ヴィア |
2024 | カイル・トゥループ |
2023 | ジョニー・ペトラーリア |
2022 | ライアン・シェイファー |
2021 | ウォーレン・イールズ |
2020 | ダニー・ワイズマン |
2019 | チャック・ガードナー |
2018 | クリス・バーンズ |
2017 | デル・バラード・ジュニア |
2016 | リノ・ペイジ |
2015 | エド・ゴッドボー |
2014 | ミッシー・パーキン |
2013 | パーカー・ボーンIII |
編集後記
競技者としての強さだけでなく、人間としての温かさで評価されるクリス・ヴィア。
今後も彼のような選手が増えていくことで、ボウリング界全体が社会に対してポジティブなインパクトを持ち続けることができるでしょう。