マーク・ベイカー氏が徹底解説
スペア攻略・フォーム改善・スイング制御のための具体的アドバイス集

アメリカの名門ボウリングコーチ、マーク・ベイカー氏が、人気YouTube番組「クリーンナップ・クルー」に登場し、視聴者から寄せられた実戦的な質問に答えました。本セッションでは、ノーサムでのスペア攻略、体の構造に合ったスイングメカニズム、両手投げにおける左右のバランス、タイミング調整法まで、幅広いテーマを深く掘り下げています。以下に、内容を項目ごとに詳細にまとめます。

 

【1】ノーサム(二本指・親指なし)の片手投げで難関スペア(特に7番・10番ピン)を攻略するための理論と具体的アプローチ方法

マーク氏が最初に取り上げたのは、親指を使わないノーサムスタイルにおけるスペアの攻略法。特に右利きプレイヤーにとって難関となる10番ピン7番ピンの処理について、実戦的なアドバイスが披露されました。

ノーサムで投げると自然に回転(レヴレート)が高まり、ボールが大きくフックしやすくなります。そのため、10番ピンを狙う際は直進性のあるプラスチックボールを使い、回転を最小限に抑える必要があると強調されました。また、投球の際は「親指が天井を向かず、右壁の方向を向いたままリリースする」ことで、フックしにくい安定した直球が放てるといいます。これは一般的なストローク感覚とは逆で、「バックアップボール」のような投げ方に近く、慣れが必要ですが効果的です。

一方の7番ピンは「最も取りやすいスペア」とのこと。その理由は、「もしも7番ピンがヘッドピンに変更されたら?」という仮想状況を想定し、ストライクボールのまま、足を8〜12枚右へ、目線(ターゲット)を1枚右にずらして投げるだけで自然に狙えるようになるという考え方にあります。心理的な抵抗をなくし、体の反応で狙うことができる優れたイメージトレーニングです。

 

【2】手のひらの向きとスイングの始動姿勢がスイングの高さと軌道に与える影響、そして筋肉の自然な使い方を活かすフォーム設計

「なぜボールを構えるときに手のひらを上に向けてはいけないのか?」という質問に対して、マーク氏は体の自然な構造に沿ったフォーム設計の重要性を強調しました。

人は直立姿勢をとったとき、自然に親指は体側または内側を向くものです。つまり、ボールを構える際もこの自然なポジションを保つことで、スイング中の筋肉の緊張を最小限に抑えることができ、より滑らかな可動域が確保できるのです。

実際に、手のひらを上に向けたままスイングを開始すると、上腕三頭筋が早い段階で緊張してしまい、スイングが途中で制限されてしまう現象が発生します。これにより高いスイングやロングショットに必要な振り幅が得られなくなります。

逆に、手首を内側に巻き込むようにセットアップすれば、肩や腕の自然な連動が生まれ、腕がトップまでスムーズに引き上げられるのです。これにより、スイングの“窓”が大きく開き、安定感のあるフォームが形成されます。

 

【3】両手投げプレイヤーにおける“左手”の使い方とその影響──パワー・バランス・タイミングに直結する補助腕のコントロール法

両手投げスタイル(二刀流)が普及する中で、多くのプレイヤーが悩むのが左手の使い方。マーク氏は「左手はリリースまでに自然に外れるべきものであり、前に出るとバランスを崩す原因となる」と断言しています。

左手が前に出すぎると、体の回転軸がブレ、スイングに必要な体幹の安定が失われます。その結果、投球時の力が分散され、ボールに十分なエネルギーが伝わりません。例として、「両手でパンチを打っても勝てない」というユニークなたとえを使い、力の方向性とバランスの関係性を強調しました。

また、二刀流プレイヤーの多くは、スイングの最下点で左手が自然に抜けて右手だけでリリースするスタイルに移行しています。人によっては左手を前に残すスタイルもありますが、マーク氏の見解では「上に上げず・前に出さず・横に逃がす」というスタイルが最も安定すると述べています。

 

【4】滑り型(スライド型)と踏み込み型(プランター型)それぞれに適したタイミング計測の基準とフォーム安定化のための足と肩の連動性

投球タイミングの取り方はボウリングにおいて極めて重要ですが、その測定基準はプレイヤーのスタイルによって大きく異なります

  • スライド型(スライダー):スライドの動作が終わり、足が完全に前に出て体重が乗るタイミングが、ボールが膝の少し上に来るのが理想とされます。このポジションは、いわゆる“ベルモンテ・ポーズ”と呼ばれる安定した投球体勢の要となる瞬間です。

  • プランター型(踏み込みで止まるタイプ):こちらはかかとが地面に接地した瞬間がタイミングの指標となります。この時点で肩の動きと足の沈み込みが同時に始まり、ダウンスイングへと自然に移行します。

マーク氏は「かかと着地の瞬間が正しいタイミングポイントであり、全足が着地した後では遅すぎる」と語っており、このタイミングの違いを理解することで、無駄な早さや遅れを排除した正確なリリースが可能になると説明しています。

 

【5】左腕の過度な動作が胸郭の回転を引き起こし、スイング軌道を逸脱させるメカニズムと、理想的な胸骨の固定によるフォーム安定法

マーク氏は、スイングの安定性において“胸骨の向き”が極めて重要であると述べています。多くのプレイヤーが、左肩を後ろに引いたり、左腕を大きく動かすことによって、胸の向き(胸骨の角度)が変化し、スイング軌道が外れてしまうという問題を抱えています。

これは、胸骨→肩→腕→親指→ボールという一連の連動のズレが生まれ、前のターゲットには合っていても、奥のターゲット(ブレイクポイント)で数枚のズレが生じる原因になります。その結果、ターゲットに到達したとしても方向性が狂い、ピンアクションに繋がらないというミスを引き起こします。

この問題を解決するには、胸骨の向きを構えた時からリリースまで一定に保ち、左腕の動きによって胸が回転しないよう制御することが不可欠です。

 

【6】SNS・オンラインレッスン・キャンプ・著作活動を通じて“最多貢献”を目指す──マーク・ベイカー氏が語る指導者としてのビジョンと使命感

セッションの締めくくりとして、マーク・ベイカー氏は自身のコーチングに対する理念を次のように語りました。

私は“最高のコーチ”を目指していない。“最も多くのボウラーを助けた男”になりたい。それが私の使命です。」

この強い想いから、マーク氏は対面レッスンだけでなく、SNS、YouTube、オンラインコーチング、キャンプ、著作など、あらゆるメディアを活用して幅広い層のボウラーにアプローチしています。

彼のメッセージは一貫しています。「レベルは関係ない。初心者でも、ツアープロでも、困っているなら質問してほしい。誰にでも応える。」というオープンで情熱的な姿勢に、多くのボウラーが勇気をもらっています。

 

おわりに

今回のインタビューは、ボウリング技術だけでなく、体の構造・感覚・考え方を包括的に捉えた実践的なセッションでした。技術の裏付けとなる理論、フォーム改善における身体構造の理解、コーチとしての熱意。すべてが詰まったマーク・ベイカー氏の回答は、今後も多くのボウラーにとって貴重なガイドとなるでしょう。