ボウリング上達の鍵は「正しいライン取り」から始まる
マーク・ベイカー流ラインアップ術
PBAツアーコーチ・マーク・ベイカー氏が伝える、ボウリングで最も重要な「ラインアップ術」。今回は、初心者から上級者までが即実践できる6つの重要ポイントを徹底解説します。
【1】お気に入りのポジションから始めるな:「ラインアップは“判断”を引き出すための準備」
「自分はここが投げやすいから」「いつもこのラインでストライクが出るから」――そんな思い込みが、試合のスタートであなたを苦しめる原因になることがあります。マーク・ベイカーは、最初のスタンスは“お気に入りの場所”ではなく、“検証のための場所”であるべきだと語ります。
たとえば、普段スタンス20枚目・スパット10枚目で安定している人が、そのままスタートして合わなかった場合、次にどこをどう動くべきか“判断”が曖昧になります。逆に、最初から「極端に右側(右利きの場合)」に立って投げたとすると、ボールがどの程度曲がるか明確にわかるため、「ここから何枚動けばよいか」という調整が“勘”ではなく“論理的な判断”として成立します。
また、このように極端な位置から始めることで、「レーンがどれだけドライ(乾いている)か」「オイルがどれくらい長く残っているか」といった情報も収集しやすくなります。これらは1投目を“当てに行く”のではなく、“探るために使う”という考え方に通じます。
【2】レーンは毎回違う:「左右対称」という前提を捨てよ
ボウリング場において、左右のレーンが同じように反応するとは限りません。というより、同じように反応することの方が珍しいともいえます。マークはこれを「左右非対称がデフォルト」という前提で捉えることが重要だと指摘しています。
その理由は明確です。一見同じように見えるレーンでも、オイルの塗布ムラや時間経過、使用頻度、さらには直前に誰が投げていたかによって、レーンの性質は大きく異なります。たとえば、片方のレーンに高回転のボウラーが続けて投げていた場合、オイルが早く削られてフッキングポイントが手前にズレてしまいます。一方で、もう一方のレーンはオイルがまだ残っていて滑りやすい――そんなことは日常茶飯事です。
このため、左右のレーンで「同じように投げる」ことを前提にしてしまうと、うまく対応できずフラストレーションが溜まります。むしろ、「レーンは違って当然」「違いを見つけるのが早いほど有利」と考えることで、気持ちにも余裕が生まれ、柔軟な戦術が取れるようになります。
【3】足元とスイングのリズムを整える:「カウント練習」でフォームを安定させる
足の動きとスイングのタイミングがズレてしまうと、どれだけ良いリリースや回転をしていても、結果はついてきません。そこでマークが推奨するのが「カウント練習」です。
たとえば、「1・2・3・4」と声に出して数えながらアプローチすることで、自分の歩幅・リズム・スイングの速度が明確になります。この練習は、特に次のような悩みを持つ人に有効です:
「試合になると緊張でスイングが早くなる」
「アプローチでふらついてしまう」
「投げるときにいつも肩が突っ込んでしまう」
プロのボウラーたちの多くも、最初の2歩のリズムを非常に重要視しています。これらが一定であれば、スイングの“始点”が安定し、結果的にリリースの再現性が高まるのです。
また、カウント練習は「感情に左右されないプレー」を助けてくれるメンタルツールにもなります。焦っている時や、スコアが思うように伸びないときほど、テンポを声に出して整えることは効果的です。
【4】パワーは肩ではなく脚で生む:「肩を使いすぎるとミスを生む」
多くのボウラーが「もっとスピードを出そう」「もっと回転をつけよう」と肩に力を入れてしまいがちですが、それはフォームを崩す最大の原因です。肩の力でスイングを加速させようとすると、スイング軌道が乱れ、体の軸がブレてしまい、コントロールも精度も落ちます。
マークが提唱するのは、「脚で押し出す感覚」。スイングは自然に“落ちてくる”ものであり、肩で“引く”ものではない。重いボールを無理に肩で引っ張ることで、バランスを崩し、リリースも狂いがちになります。
代わりに、アプローチの終盤で左足(右利きの場合)にしっかり体重を乗せ、そこを“軸”にして腕をリラックスさせたままスイングさせる。このフォームこそが「パワーをコントロールできる投球」につながるのです。
【5】回転を加えるタイミングを見直す:「早すぎるローテーションは方向ミスのもと」
回転(ローテーション)を早い段階でかけてしまうと、ボールがリリース前に手元で動きすぎてしまい、スイングの軌道が乱れ、方向性も悪くなります。特に“肩で引っ張って回す”ような動作は、結果としてボールが「抜ける」「内ミスする」「回転が暴れる」などのトラブルを招きます。
理想的なのは、「スイングの最下点で自然に回転を加える」こと。ボールの重みを利用し、腕の動きと指先の動きが連動する中で、回転が滑らかにかかるイメージです。
この動きは、「手の中でボールを感じながら最後に“押し出すように”回す」ことで実現します。力ではなく、タイミングと体の流れが大事なのです。回転を後半で加えられるようになると、ボールの読みやすさ・ラインの再現性が劇的に向上します。
【6】一投のミスを“失敗”と捉えない:「情報を集めて判断する姿勢が上達を加速させる」
あなたは10ピンが残ったとき、どう感じますか?「ああ、ストライクじゃなかった」と悔しがりますか?――その感情は自然ですが、それで終わってしまっては成長のチャンスを逃してしまいます。
マークはこう言います。「その一投は“失敗”ではなく、“情報”だ」と。たとえば、「しっかりポケットに入ったのに10ピンが残った」としたら、それは「角度が足りなかった」「回転量がやや少なかった」など、次の一投に活かせるヒントの宝庫です。
実際、上級者ほど「一投一投の反応を観察し、それに基づいて次を決めている」のです。感情で判断するのではなく、「数字」「動き」「反応」で判断する姿勢を身につけることが、ボウラーとしての飛躍につながります。
また、マークは「ミスは片方(右または左)だけに絞れ」ともアドバイスしています。両サイドにミスが出ていると、調整の方向性が見えません。右にしか外さないようにすれば、少なくとも“何を変えるか”が明確になります。
おわりに:自分だけの「正しい投球」を見つけよう
ボウリングは、ただピンを倒すスポーツではなく、「自分自身と向き合いながら成長していく競技」です。マーク・ベイカーの指導を通じてわかるのは、「うまくなりたいなら、投げ方ではなく“考え方”を変えること」こそが、本当の上達につながるということ。
うまくいかない日も、思った通りにいかない投球もあるでしょう。でも、それこそがあなたの“データ”であり、“財産”です。そこから学び、調整し、前より少しでも良い一投を目指すこと。それがボウリングの醍醐味です。
今日ご紹介した6つの視点を、自分の練習やリーグ戦にぜひ取り入れてみてください。あなたの中にしかない「正しいボウリング」が、きっと見えてくるはずです。
次回のブログでは、スペアメイクやメンタル面、試合中の判断力についてさらに掘り下げていきます。そちらもぜひお楽しみに。
あなたのボウリングライフが、より楽しく、より深くなることを願っています。