プロ直伝!ボウリング技術を磨く12の極意
本気で上手くなりたいあなたへ〜

ボウリングは、見た目以上に奥深いスポーツであり、技術や戦略、道具の選択など、多くの要素が絡み合っています。特に近年では、サムレス投法や両手投げ(2ハンド投法)など、新しいスタイルが注目を集めています。本記事では、ボウリングの技術向上を目指す方々のために、12の重要ポイントを詳細に解説します。初心者から上級者まで、すべてのボウラーにとって有益な情報をお届けします。

1. プラント投法とスライド投法のタイミングの違い

ボウリングにおけるステップには、大きく分けて「スライド投法」と「プラント投法」の2種類があります。スライド投法では、最後のステップで足を滑らせながらリリースしますが、プラント投法では足をしっかりと固定してリリースします。この違いにより、タイミングの取り方も変わってきます。

スライド投法のタイミング:

  • 最後のステップで足が完全にスライドし終わり、地面にフラットに着地した瞬間にリリースするのが理想的です。

プラント投法のタイミング:

  • 最後のステップで足を固定し、かかとが地面にしっかりと接地した瞬間にリリースします。

例えば、Shannon Pluhowsky選手やMike Houman選手は、プラント投法の名手として知られています。彼らは、かかとを基点にタイミングを取ることで、高い安定性と精度を実現しています。

 

2. サムレス片手投げのデメリットとその対策

サムレス(親指を使わない)での片手投げは、高回転を生み出しやすい一方で、いくつかのデメリットも存在します。

デメリット:

  1. バックスイングの制限: 親指を使わないため、ボールの保持が不安定になり、高いバックスイングを取ることが難しくなります。

  2. 筋力の必要性: ボールを安定して保持するためには、前腕や手首の筋力が必要です。

  3. リリースの安定性: 親指がないことで、リリース時のコントロールが難しくなり、ボールの方向性が乱れる可能性があります。

対策:

  • 筋力トレーニング: 前腕や手首の筋力を鍛えることで、ボールの保持力を向上させます。

  • フォームの見直し: 無理のないバックスイングとリリースを心がけ、安定したフォームを確立します。

  • 適切なボール選び: 自分の筋力や技術レベルに合ったボールを選ぶことで、コントロール性を高めます。

サムレス投法を検討している方は、これらのポイントを踏まえて練習を進めることが重要です。

 

3. フックが強すぎるボールの対処法

ボールのフックが強すぎると、コントロールが難しくなり、狙ったポケットに入れることが困難になります。特に、オイルの少ないレーンや乾燥したコンディションでは、ボールが予想以上に曲がってしまうことがあります。

対処法:

  1. ボールの変更: フックの少ないボールや、表面が滑らかなボールを使用することで、過度な曲がりを抑えることができます。

  2. 投球速度の調整: ボールの速度を上げることで、フックの強さを軽減できます。

  3. リリースの見直し: 手首の角度やリリースポイントを調整し、回転数をコントロールすることで、フックの強さを調整します。

これらの方法を試すことで、過度なフックを抑え、安定した投球が可能となります。

 

4. スライドとプラントの違いと選択基準

◆ 基本の定義

まず最初に、「スライド」と「プラント」という言葉の意味をはっきりさせましょう。

用語説明
スライド(Slide)最後の一歩(リリース直前のステップ)で、前足を滑らせながら投げる投法。一般的な競技ボウラーのスタイル。
プラント(Plant)最後の一歩で足をしっかり地面に固定して止まる投げ方。スライドせず、踏み込んで投球するスタイル。

◆ 両者の違いを深掘り比較

項目スライド投法プラント投法
動きの流れ流れるような動作でスムーズなリリースがしやすい一度「止まる」動作が入るため、リズムが分断されることも
リリースの安定性足元が滑る分、バランスを取りやすく体が開きにくい足が止まることで、上半身が先に開きやすく精度に影響することも
使う筋肉の部位下半身と体幹の連動で力を伝える上半身主導になりやすく、肩や腕に負担がかかりやすい
タイミングの取り方スライドの終わりでリリースする足が止まった瞬間(特にかかと着地)でタイミングを取る
適したシーンレーンコンディションが整っていてスライドできるときスライドが困難なとき(例:粘着性の高い床や湿度が高いとき)

◆ プラント投法が増えてきた理由とは?

最近では、「プラント気味で投げるボウラー」が増えてきている傾向があります。以下のような背景があります:

  1. レーンやアプローチの素材が変化

    • 旧来の木製アプローチから、現在は合成樹脂素材が主流。

    • この合成素材は季節や湿度により「滑りすぎる」または「全く滑らない」ことがあり、スライドの安定性に不安が出る。

  2. センターごとの床の摩擦がまちまち

    • あるセンターではよく滑るのに、別のセンターでは全く滑らない。

    • そのため、「滑るか滑らないかに依存しない投げ方(=プラント)」を身につける選手も多くなっている。

  3. 特定のプロボウラーの影響

    • たとえばShannon Pluhowskyは完全にプラントスタイルですが、その正確性と安定性はトップクラス。

    • このようなプレイヤーの影響で、プラント投法が一つの選択肢として見直されてきています。

◆ あなたに合うのはどっち?選び方のヒント

✅ スライドを選ぶべき人

  • 安定したアプローチのあるセンターで投げることが多い

  • ボウリングシューズのソールやヒールを調整できる

  • リズムよく流れる動作が得意

  • 左右に開く癖が少なく、体幹が強い

✅ プラントを選ぶべき人

  • センターによって床の滑り具合がまちまちでストレスになる

  • 滑ることに不安がある(怪我経験があるなど)

  • より「ガチッ」と力を込めて投げたい

  • 靴の滑りを調整できない、レンタルシューズを使っている

◆ プロからのアドバイス:完璧でなくてもOK

プロコーチのMark Baker氏はこう語っています:

「滑れないなら無理に滑らなくていい。大切なのはリリースの再現性とボールのコントロール。それができるなら、スライドしてようが、プラントしてようが関係ない。」

つまり、形式にこだわるよりも、「自分が安定して狙ったラインにボールを投げられる形」を重視することが一番の上達法です。

 

5. サムなし投げに最適なトレーニング動画の選び方

サムレスで片手投げを行うスタイルは、近年特に若いボウラーの間で人気が高まっています。このスタイルは、2ハンド投法(両手でボールを支えてリリースするスタイル)に似た特性があるため、どのトレーニング動画を参考にすべきかが重要なポイントになります。

なぜ2ハンドの動画が有効なのか?

  • サムなしでは、ボールが手に「引っかかっていない」ため、スイングが自然と短くなる傾向があります。これは2ハンド投法の典型的な特徴でもあります。

  • 2ハンド動画では、肩と体幹の連動性、リリースポイントの作り方、タイミングの取り方が重点的に解説されているため、サムレススタイルの練習にも非常に役立ちます。

  • 逆に、片手で親指を使って投げるスタイル(伝統的な片手投法)向けの動画では、リリースの支点やバックスイングの取り方が異なるため、参考になりにくいことがあります。

選び方のコツ

  • 自分の現在のスタイルに近いスイング軌道やフォームを持つプレイヤーの動画を選びましょう。

  • 解説付きで、フォームの全体像と細部の動きが分かる映像が理想です。

  • できればプロコーチやPBA選手が出演しているものを選ぶと、信頼性も高まります。

 

6. 「ボールの後ろに手を置く」の本質

「手をボールの後ろに置け」というアドバイスは非常によく耳にします。しかし、多くの人がこの言葉を静止画やスイングの途中の姿勢だけで捉えてしまい、誤解するケースが多いのです。

大切なのは「リリースゾーン」での手の位置

  • 投球中に手が一時的にボールの横や上に回っていても、リリース時に手がしっかりと後ろ(回転軸の下)にあることが重要です。

  • つまり、「見た目の美しさ」より「機能性」を重視するべきです。

  • 実際、見た目にはフォームが独特でも、PBAツアーで活躍している選手たちは、リリースのタイミングではほぼ例外なく理想的な「手の後ろのポジション」に入っているのです。

例:Walter Ray Williams Jr.

  • 彼のフォームをスローモーションで見ると、スイング中の手の動きは非常に個性的で、一見バランスが悪く見えるかもしれません。

  • しかし、リリースの瞬間には完璧にボールの後ろに手が入り、軸がブレずにしっかりと回転がかかっているのです。

 

7. 利き目と投球手が違う場合の精度向上法

右利きだけど左目が利き目(またはその逆)という人は少なくありません。これは「クロスドミナンス(交差利き)」と呼ばれ、ボウリングにおいては視点とボールの出るラインがズレる原因になります。

どう影響するか?

  • 右手で投げていても、左目でターゲットを捉えている場合、実際に狙ったラインよりも左を向いて投げてしまう傾向が出ます。

  • その結果、思った通りに投げているのにボールが意図しない方向に行く、という現象が起こります。

解決策:自分の「ズレ」を知る

  • プロボウラーも用いている方法が、「自分のドリフトとターゲットのずれ(ミス)」の数値化です。

  • 例えば「スライドが4枚右にずれて、毎回3枚左に外れる」という癖があれば、スタンスを補正して意図的にズラして立つことで調整可能になります。

  • 一度自分の動画を撮影し、立ち位置・スライド位置・視線の位置を見比べてみると効果的です。

 

8. 2ハンド投法でのタイミング調整法

2ハンド投法は爆発力と回転数で注目されていますが、同時にタイミングの難しさもあります。特に、初心者は「ボールが早く落ちる」「スイングが浅い」「踏み出す前にリリースしてしまう」といった課題を抱えがちです。

よくある間違い:頭の落ちが早すぎる

  • 多くの人はプッシュアウェイ(ボールを前に出す動作)と同時に頭を下げてしまうため、スイングが高くならず、タイミングが狂います。

  • 正しい形は、ボールが後ろにスイングし始めてから頭を下げることで、自然な高さが得られます。

解決策:

  • 肩と頭の位置を意識しながら、胸を張ったままプッシュアウェイすること。

  • 頭の高さを保てば、スイングの幅とタイミングが一致しやすくなり、リリースもスムーズになります。

Jason Belmonte選手のフォームをスローモーションで見ると、この「頭のタイミング」がいかに絶妙であるかが分かります。

 

9. ドリフトがないのは問題?ドリフトの意味と価値を再確認

ボウリングでは「ドリフト」という概念がよく使われます。これはスタンス位置とスライド(最後の一歩)の位置の違いを指します。例えば、スタンスで板の15番に立ってスライドが18番なら「3枚右にドリフトしている」ということです。

ドリフトは必ず必要?

答えはNOです。

  • Chris BarnesやNorm Dukeといった世界的なトッププロでも、ドリフトなし(=一直線)のスタイルを貫いて結果を出しています。

  • つまり、「ドリフトがあるから良い」「ドリフトがないとダメ」という絶対的なルールは存在しないのです。

重要なのは一貫性と再現性

ドリフトがあっても、なかっても重要なのは以下の2点です:

  • 自分のドリフト傾向を知り、毎回同じように動けること

  • その上で狙ったスパットにボールを通せるコントロールがあること

例えば自分が「常に5枚左にドリフトする」タイプであれば、それを前提にスタンスや狙うスパットを補正すればよいのです。問題なのは毎回ドリフトの幅が違うことです。

 

10. レヴレート(回転数)は高ければ良いわけではない

ボウリングでは「レヴレート(rev rate)」=ボールの回転数がよく話題になります。確かに高いレヴレートはピンアクションに有利ですが、回転数が高ければ必ずしもスコアが良くなるわけではありません。

回転数よりも大切なこと

  1. コントロール性
     ボールがよく曲がっても、思ったラインを外れればスプリットになりやすい。回転数だけが高くて、狙った場所にボールを通せないなら、それは「暴走エンジン」のようなものです。

  2. レーンとのマッチング
     回転数が高すぎると、レーンオイルが少ない日には曲がりすぎて狙いが狂うこともあります。逆に、オイルが多い日は低い回転だと全然曲がらないことも。

  3. プレースタイルとの整合性
     スピードが遅いのに回転数だけ高いと、ボールが暴れて扱いづらくなります。自分のスピードと回転のバランスが取れていることが最も重要です。

プロの例から学ぶ

テレビ中継で見かけるプロボウラーたちは、回転数だけでなく「安定性」と「再現性」のレベルが極めて高いです。それこそが「使える回転数」なのです。

 

11. スイングと下半身の役割分担「70/30理論」

Mark Bakerコーチが提唱している「70/30ルール」とは、投球動作において「下半身が70%」「腕・スイングが30%」という比率が理想的という理論です。

なぜ下半身主導が重要なのか?

  • 腕に頼ると、リリースタイミングがバラつく

  • 上半身が先に動くと、ボールに力が伝わらずパワーロスする

  • スイングの自然さ(重力利用)を活かせなくなる

この比率が逆転し、「50/50」になると、「スイング」ではなく「投げる(Throw)」になってしまい、精度もパワーも安定性も落ちるのです。

プロの事例:Parker Bohn III, Pete Weber, Chris Barnes

  • 彼らは皆、スイングはあくまで体に付属している「振り子」として機能しており、主導権は常に下半身と体幹にあります

  • スイング自体にはほとんど力が入っておらず、自然落下+下半身の推進力によってスピードや回転を生み出しているのです。

腕力ではなく「体の使い方」がすべて

あなたが体格的に大きくなくても、正しい比率で体を使えば、プロのような滑らかで安定した投球は実現可能です。

 

12. なぜ女性プロボウラーは参考にしやすいのか?

ボウリングにおいては、身体的なパワーよりも、フォームの安定性やタイミングの良さが重要です。そのため、多くのアマチュアにとっては女性プロのフォームの方が「現実的にマネしやすい」のです。

男性プロとの違い

項目男性プロ女性プロ
球速速い(25km以上)やや遅い(20km前後)
回転数非常に高い中程度
体格大柄・筋力型標準・柔軟性重視
動きダイナミックで爆発力重視滑らかで再現性重視

見るべき女性選手

  • Shannon O’Keefe:教科書のようなフォーム、コントロール力抜群。

  • Danielle McEwan:滑らかなスイングとタイミングの美しさが際立つ。

  • Daria Pajak:パワフルでありながらバランス感覚が絶妙。

女性ボウラーを観察するメリット

  • フォームがシンプルで、動作の意図が読み取りやすい

  • 実際のプレーに落とし込みやすい(モーションの再現性が高い)

  • スイングスピードや回転数が自分と近いため、練習に役立てやすい

 

結論:知識と気づきが、あなたのボウリングを変える

ここまで12の項目を解説してきましたが、共通するのは「自分を知ること、そして理論を理解して実践すること」の大切さです。

ボウリングは単なる感覚のスポーツではなく、理論的に考えることで上達速度が飛躍的に上がるスポーツでもあります。