マーク・ベイカーが徹底解説
ボウリングの疑問10選にプロ目線で回答!
アメリカの名コーチ、マーク・ベイカーが、ファンから寄せられたボウリングに関する多様な質問に応えた最新のQ&A動画が公開されました。今回は、そのすべての質問と彼の深い解説を詳しく紹介します。
① スプレッドとは何か?
質問: スプレッドとは何を意味しますか?
回答:
スプレッドとは、ボウラーがスライドする位置(つまり最後の一歩で足が止まる位置)と、実際にボールがレーン上でヒットするポイントとの“板目の差”を指します。これはライン取りやアングル決定において極めて重要な概念です。
例えば、マーク氏自身が21枚目でスライドし、10枚目を狙うとしたら、そのスプレッドは11になります。スライド位置が15枚目なら7枚目ヒットでスプレッドは8、25枚目なら12枚目で13、35枚目なら20枚目で15と変化します。スプレッドの数値が大きくなると、より大きなアングルを使ってボールを投げていることを意味し、これはブレイクポイントの位置やオイルパターンへの対応に直結します。
この概念を理解することで、自分のボールがどのような軌道で走るのか、なぜその軌道が必要なのかを、より論理的に分析できるようになります。
② リーグ戦に持ち込むべきボールの数
質問: リーグ戦で5〜10個のボールを使う人がいますが、これは適切ですか?
回答:
マーク氏は「私なら一球だけで通していたが、それはあくまで自分のやり方」と前置きしながらも、現在のボウリング環境では、3〜4個のボールを持っていくのが現実的で効果的だと説明しています。
なぜなら、リーグ戦でもレーンコンディションはゲームごとに変化し、オイルが削れたり、キャリーダウン(オイルの持ち運び)によって対応すべきラインや表面素材が変わってくるからです。必要以上にボールを頻繁に変えるのは逆効果で、的確な順番で使い分けられる“アーセナル(戦力)”を構築することが鍵です。
③ ベーカーボックスはどこでも使えるのか?
質問: ベーカーボックスは、どんなコンディションでも使えるツールですか?
回答:
現在公開されているベーカーボックスは、「ハウスショット専用」に設計されています。これは、一般的なボウリング場で使用されるレーンコンディションに最適化されたもので、特定のゾーンごとにプレイヤーの特徴やミスの傾向を視覚化するツールです。
しかし、マーク氏は2024年のクリスマス頃に、「スポーツショット」対応版のベーカーボックスをリリース予定であると発表しました。撮影はすでに完了しており、編集作業に入っているとのこと。この新バージョンは、より難易度の高いコンディションに対応した内容になっており、アドバンスレベルのプレイヤーにとって大きな助けになるでしょう。
④ プレイラインの決定方法
質問: どのようにして、自分のプレイラインを決めるのですか?
回答:
マーク氏は、プレイラインの決定において「まずは敢えて右側(外側)から攻める」と語っています。具体的には、最初の投球ではスタンスを10枚目、狙うスパットを5枚目とし、あえて自分があまり得意ではない位置からスタートすることで、そのラインが使えるかどうかをまず判断します。
もしこの初球が左のガターに向かえば、「この5枚分は使えない」と即座に除外できます。その後は小刻みに3〜4枚ずつ移動し、レーンのどの範囲が使えるかを探っていきます。これにより、39枚あるレーン幅から20枚以上を効率よく除外し、最適な攻めどころを17枚以内に絞り込むという非常にロジカルなアプローチです。
⑤ ミスナンバーの正体とは?
質問: 「ミスナンバー」とは何ですか?どこから導き出されたものですか?
回答:
ミスナンバーとは、プレイヤーがミスをしやすいゾーン、または特定のブレイクポイントにおけるボール挙動の誤差範囲を示す数字です。マーク氏によれば、これは何百、何千という投球データの観察から導かれたものであり、特にゾーン1では、ボウラーが左に動きすぎたり、回転を過剰に加えた場合に、ボールが早期に反応しすぎてしまい、制御不能に陥るケースが多いとのことです。
これにより、2-10、3-6-10などの嫌なスプリットが頻発しやすくなるため、回転量と軌道のバランスを正確に調整する必要があります。
⑥ 高湿度環境での対処法
質問: 室温80°F(約27℃)以上の高湿度環境では、どのように対応すれば良いですか?
回答:
高温多湿な環境では、最も大きな問題が「アプローチの滑りにくさ」です。合成樹脂製のアプローチは湿気を吸収しにくいため、逆にべたつきやすく、まるで“接着剤の上で滑ろうとしている”かのような状態になります。
その対策として、トッププロのクリス・バーンズ選手は、スライドソールやヒールパーツを自分のスタイルに合わせて“半分に切って”カスタマイズしています。こうすることで、状況に応じて滑りの加減を微調整し、安定したスライドが可能になります。
また、レーン自体のオイルも早く崩れやすくなるため、ラインの変化にも素早く対応し、大きな移動をためらわないことが重要です。
⑦ 2ハンド投球のスライドステップは2段階?
質問: 2ハンド投球において、スライドステップは2段階に分かれているのですか?
回答:
マーク氏は「いいえ、それは誤解です」とはっきり否定しています。2ハンドスタイルのスライドは、ピボットステップと完全に連動しており、2つに分かれているわけではありません。
例えば、アンソニー・サイモンソンや“Bマン”の動きを見ると、彼らの3歩目が“回転の軸”となり、そのまま右足からのパワーによってスライドが生まれます。この動きによってバランスが保たれ、肩の力で投げるのではなく、下半身からの力を効率的に使って安定したフォームが完成します。
⑧ ロフトの理想的な距離は?
質問: ロフトはどのくらいが理想ですか?ファウルラインすぐ後に落とすのは良くないですか?
回答:
マーク氏は「私は、ボールがファウルラインのすぐ近くに落ちるのは好ましくないと考えています」と明言しています。理想は、18〜40インチ先に自然に着地すること。このように適度に“浮かせて”落とすことで、ボールのコア(内部重心)管理がしやすくなり、無駄な摩擦や早期反応を防ぐことができます。
この考え方は、ボールの軌道設計やリリース時の手のポジションにも密接に関わっており、安定したボールリアクションの鍵になります。
⑨ 教材やポスターの購入方法
質問: マーク・ベイカーのビデオや書籍はどこで買えますか?
回答:
マーク氏の最新ビデオシリーズ『Game Change』は、彼の公式サイト(markbakerbowling.com)からアクセスし、Vimeo経由で購入可能です。1ハンドスタイル用と2ハンド用の2種類があり、両方を購入するコーチも多いそうです。
また、書籍については現在はAmazonでのみ取り扱っているとのこと。ベーカーボックスのポスターも販売されていますが、物理的なものは高価なため、15ドルでデジタル版(PDF)を購入する形となります。
⑩ 自分に合ったコーチか見極めるには?
質問: 自分に合うコーチかどうかを判断するにはどうすればいいですか?
回答:
「まずはビデオを見て、自分に合うかを確かめてほしい」とマーク氏。彼のスタイルは非常にエネルギッシュでテンポも速いため、人によっては合わないかもしれないと正直に語っています。ビデオを見れば、彼の教え方や理論、指導のテンション感が伝わるため、レッスンを受ける前に最もリスクの少ない選択肢になると述べています。
まとめ:プロの視点から見たボウリングの「気づき」と「実践」
今回のQ&Aセッションは、マーク・ベイカー氏が長年の指導経験と、現役トッププロとの関わりから得た知見を、惜しみなく共有した非常に価値ある内容でした。
特に印象的だったのは、どの質問に対しても「単なる理論」にとどまらず、現場で即使える“実践的なアドバイス”が含まれていたことです。
例えば、スプレッドの考え方やプレイラインの探り方は、どんなレベルのボウラーにも役立つ「考え方のベース」になりますし、高温多湿への対策やスライドステップの動作原理などは、意外と見過ごされがちな重要ポイントです。
また、自分に合ったコーチを見つけるためにまず「教材を通して相性を確認する」という提案も、デジタル時代ならではのスマートな方法です。
最後に
ボウリングは「誰にでもできる」スポーツでありながら、「奥が深い」世界でもあります。今回のような専門家からのフィードバックは、日々の練習に新しい視点を与えてくれます。
もしあなたが、自分のプレイスタイルを一歩進化させたいと思っているなら、今回紹介された内容を一つひとつ実践してみてください。そして、必要であればマーク・ベイカー氏の教材を通じて、さらに深く学ぶことを検討してみてはいかがでしょうか。
今後も、ボウリングに役立つ情報をお届けしてまいります。次回の更新もどうぞお楽しみに!