1ピン負けの翌日、首位奪取
EJ・タケットがオハイオで見せた反発力

1ピンの敗北から48時間──EJ・タケットが示した「反発力」という強さ

ボウリングの勝敗は、ときに“1ピン”で分かれる。そして、その1ピンはスコア以上の意味を持つ。USBCマスターズのタイトルマッチで、EJ・タケットはブーグ・クロルに1ピン差で敗れた。最後に必要だったのは、あと1回のストライク。勝っていれば、マスターズ、全米オープン、トーナメント・オブ・チャンピオンズ、ワールドチャンピオンシップを揃える「PBAグランドスラム」達成者として史上4人目になっていた。

だが、彼の真価は「負けた直後」にこそ現れる。敗戦から48時間も経たないうちに、タケットは次戦のPilgrim’s PBA Ohio Classicで予選2ラウンド(計12ゲーム)首位へ。47フィートのDragon(ドラゴン)オイルパターンで、平均250点に迫る圧巻のペースを刻んでいる。敗北の痛みを引きずりながらも、結果で上書きする。近年のタケットを語るなら、この回復力は外せない。

 

“ドラゴン”を読み切る者がコロンバスを制す──首位タケット、背後は超僅差の高密度

1)数字が語る支配力:12ゲームで2,996(+596)平均249.67

舞台はオハイオ州コロンバスのColumbus Square Bowling Palace。タケットは12ゲームで総ピンフォール2,996(+596)を叩き出し、平均249.67でトップに立った。単に「爆発した」だけではない点が重要だ。長めの47フィートでは、わずかな判断ミスがスプリットやビッグゲーム崩壊につながる。そこで彼は、崩れる兆候を早めに察知し、被害を最小化する投球を積み上げている。

本人も「レーンの動きに先回りできている」、「数フレーム分、他の選手より早く動けている」と語る。派手なストライクの連打よりも、9本止まりでも“割らない”選択を続けることが、最終的に平均を押し上げる。250近いアベレージは偶然ではなく設計の成果だ。

 

2)トップ5は1~2ピンの世界:追う4人も“同じ景色”を見ている

もっとも、上位は独走ではない。2位パッキー・ハンラハンが2,969(247.42)、3位に地元オハイオのクリス・ヴァイが2,968(247.33)、4位ライアン・バーンズが2,967(247.25)、5位ダレン・タンが2,954(246.17)。この僅差は、数フレームの判断で順位が入れ替わることを意味する。

上位10人に目を広げても、カイル・シャーマン(2,947/245.58)、ビル・オニール(2,929/244.08)など経験と実績のある顔ぶれが並ぶ。つまり「タケットが抜けている」より「複数の選手が高精度で攻略している」大会だ。タケットは首位でも、気を抜く余白がない

 

3)40位でも平均233超:199人のサバイバルを象徴する“高すぎる”カットライン

今大会の難度を端的に示すのがカットラインである。現時点で40位のトーマス・カイフコは2,804。平均にして233点超。予選を安全圏で抜けるイメージを大きく上回る水準で、ミスが1つ増えれば一気に沈む199人が並ぶ戦場で、1ショットの選択が順位を何十段も上下させる可能性がある。

この状況は、上位争いにも同じ圧力をかける。勝つために攻めるべき局面と、割れを避けて耐えるべき局面。その見極めが、そのまま順位表に反映される。

 

4)「落ち込み」を認めて、作業へ戻す:タケットの切り替えは精神論ではない

タケットはマスターズの敗戦後について「日曜夜は少し落ち込んだ。月曜の朝も少し引きずっていた」と率直に語った。ここが興味深い。強者は感情を消すのではなく、感情を把握したうえで行動に戻る。そして彼は「練習でレーンに立ったら置いていけた」、「良いゲームをまとめればリードに近づける」と続ける。

切り替えの本質は“忘れる”ことではない。今、やるべき具体(レーンの変化、球速、回転、立ち位置、ミスの形)に集中し直すことだ。タケットの回復力は、感情を技術へ変換する能力と言い換えられる。

 

5)歴代級アベレージと「2026初タイトル」:強さの証明は勝利で完結する

タケットはここ2シーズン、PBAツアーの単年平均記録に迫り続け、今季も高水準で推移している。今大会前の時点で252ゲーム平均233.67。コロンバスでの2ラウンドを終え、その数字はさらに押し上がっている。

一方で、競技ポイントでは首位に立ちながら「2026年の初タイトル」はまだない。年間最優秀選手(PBA Player of the Year)の4年連続受賞という前例のない目標を狙うなら、支配力を示す指標だけでなく“勝ち切る”結果が欲しい。マスターズで取り逃した1ピンが、今週の勝利への飢えをより鮮明にしている。

 

6)今後の流れ:予選最終日からアドバンサー、そして日曜の決戦

水曜(現地時間)は予選ラウンド3・4でさらに12ゲームが加わり、最初のカットが現実になる。木曜はアドバンサーラウンドが2回。36ゲーム完了後のトップ5が日曜のチャンピオンシップラウンドへ進出し、ステップラダー形式で決勝が行われる。

配信・放送も充実している。予選はBowlTVでライブ配信、日曜4月5日午後4時(米東部時間)からThe CWで決勝生中継予定。さらに土曜4月4日午後2時(米東部時間)には「PBA USA vs. The World」がCBS/Paramount+で放送される。競技と露出が重なる週であり、ここで勝ち切れれば、シーズンの物語が一気に加速する。

 

1ピンが残した“未完”を、オハイオで完結させられるか

EJ・タケットは、USBCマスターズの1ピン敗戦という痛恨を、わずか48時間足らずで「平均249.67の首位」という事実に変えた。そこには、レーンの動きを先読みして早めに手を打つ判断、割れを避けるスコアメイク、そして感情を自覚したうえで作業へ戻る冷静さがある。強さは、勝った日の輝きだけでなく、負けた翌日の整え方にも宿る。

ただし、背後は超僅差で、40位ですら平均233超という苛烈なサバイバルが続く。ここからは「攻める精度」と「耐える精度」を同時に求められる局面だ。タケットがこのまま突き抜けて2026年初タイトルを掴むのか。それともハンラハン、ヴァイ、バーンズ、タンらが主役を奪うのか。今週の焦点は単なる首位争いではない。マスターズで取り残した“1ピン分の未完”を、オハイオでどう回収するのか。その答えが、週末の決戦で提示される。

最新の順位表(スタンディング)は、こちらで確認できます。

 👉  PBA Ohio Classic