USBCマスターズ開幕戦で歴史級スコア
ベナードが1,309で首位発進

USBCマスターズ開幕、初日から“記録級”の異変

米国ボウリング界の名門メジャー「USBCマスターズ」が、ミシガン州アレンパークのサンダーボウル・レーンで開幕した。初日の予選ラウンド(Round 1)から、いきなり大会史に刻まれるスコアが飛び出し、今大会の熱量を一段押し上げている。

主役となったのは、テキサス州ロアノーク出身の22歳、デオ・ベナード。5ゲーム合計1,309(平均261.8)で初日首位に立ち、その数字はUSBCマスターズ史上「2番目に高い5ゲームブロック」に相当する。開幕日にして“大会の流れそのもの”を塗り替える一撃だった。

 

ベナードの1,309が示した「強さの形」と、上位争いの輪郭

1)1,309の破壊力:派手さだけではない「崩れない」首位

ベナードの5ゲームは、269、236、279、258、267。最低ゲームが236で、残り4つは258以上。爆発力より先に、安定感が際立つスコア構成だ。

終盤には、パーカー・ボーンIIIが保持する大会最高の5ゲーム記録1,319に迫る可能性も残っていた。しかし最終第5ゲームの10フレーム、第一投が厚めに入って「2-4-7」が残り、記録更新の芽はそこで消える。それでもベナードはスペアを確実に取り、フィルボールはストライクで締めた。

この終わり方が象徴的だ。大記録を狙える局面で“わずかな狂い”が出ても、取りこぼさずに結果を固定化する。開幕日の首位が偶然ではないことを、最後の数投が証明している。

さらに注目すべきは、歴代上位の顔ぶれとの並びだ。今回の1,309は、ピート・ウェバーの1,308(2015)を1ピン上回るなど、名だたる記録の間に割って入る内容。開幕日にして、記録のページへ名を刻んだ

 

2)好調の理由は「技巧」より「設計」:スピードを落とし、前で扱う

ベナード自身が語る好調の要因は明快だった。ボールを身体の前で収める感覚を大切にし、球速を意識的に落として、レーンコンディションに噛ませる。

重要なのは、これが“その場の思いつき”ではないことだ。本人は当初「最初の2ゲームは我慢になる」と見ていたという。しかし第1ゲームから260台に乗せたことで手応えは一気に確信へ変わる。準備していた勝ち筋が、予想以上の精度で機能した──その構図が読み取れる。

今大会のオイルパターンは41フィート。レーンの変化が進むほど、ライン取り、回転、スピードのわずかな差がスコアに直結する。ベナードは「キャリー(ピンアクション)が想像以上に良かった」とも述べており、狙いと結果が同時に噛み合った一日だったことがうかがえる。

 

3)会場サンダーボウルは“勝てる場所”:2024年PBA初タイトルの記憶

今回の舞台であるサンダーボウルは、ベナードにとって縁の深いセンターだ。2024年のPBAツアー「チータ・チャンピオンシップ」初優勝も、このサンダーボウルだったという。

競技の勝負所では、技術や戦術と同じくらい「場への相性」が効く。本人が「ここが大好き」と語るほどの好印象があるなら、集中の質やリズムにも影響して不思議ではない。初日の爆発は、レーン対応の精度に加え、心理的な追い風も含めて理解すると立体的になる。

 

4)ベナード一強ではない:300が2本、上位陣も多彩

とはいえ、開幕日が“ベナードだけの日”だったわけではない。イングランドのドム・バレットは今大会初のパーフェクトゲーム(300)を達成し、合計1,282で2位。さらに数時間後、トム・ドハティも300を記録した。初日から完全試合が2本出る展開は、それだけレーン攻略がハマった選手がいたこと、そしてフィールドの爆発力が高いことを示している。

3位には2019年王者ジェイコブ・バトゥルフが1,252で続き、カナダ勢のザカリー・ウィルキンス(1,242)とグラハム・ファッハ(1,221)がトップ5を形成。国際色も濃く、上位争いは早くも「単独の独走」ではなく「多極化」の気配を帯びている。

 

5)前年覇者は206位スタート。それでも“枠”は残る

一方、前年覇者のゲイリー・ヘインズは初日1,015で206位と大きく出遅れた。ただしUSBCマスターズでは、ディフェンディングチャンピオンにマッチプレー出場枠が保証される仕組みがある。予選順位が厳しくても、前年覇者として64番目のシードに収まる可能性が残る。

ここは、ベナードの立場と対照的だ。ベナードは“保証”がないぶん、残る予選2日間でも確実にスコアを積み上げ、正面から枠を取りにいく必要がある。初日首位は大きな資産だが、まだ「通過点」にすぎない。

 

6)今後の見どころ:予選15ゲームの総合力が、最後まで物を言う

大会は予選が合計15ゲームで争われ、上位63人に前年覇者を加えた64人がマッチプレーへ進出する。以降はダブルエリミネーション方式のマッチプレー(3ゲーム合計ピン)で金曜・土曜にかけて絞り込まれ、日曜はステップラダー決勝へ。中継はThe CW、配信はBowlTVが担い、優勝賞金は10万ドル。さらに、PBAツアーのメジャータイトルとして記録にも残る。

今回のトピックの一つが、伝統的な「5人ステップラダー」が戻ってくる点だ。勝者側ブランケットの最後の2人が第1シードを争い、敗者側から3枠が加わる。そして第1シードには、優勝決定戦で「一度負けても終わらない」優位性がある。つまり予選順位は、気分の問題ではなく、最終日を左右する「制度上の武器」になる。

 

初日の1,309が示したのは「勢い」ではなく「勝ち筋」だ

ベナードの1,309は確かに派手だ。しかし本質は、記録を追いかける局面でミスが出ても、最後まで結果を崩さずに固定した点にある。狙い(球速を落とし、前で扱う)と結果(高いキャリーと安定したスコア)が一致し、さらに会場との相性も後押しした。初日首位は“たまたまの上振れ”ではなく、勝ち方の輪郭が見える内容だった。

同時に、初日から300が2本出たこと、元王者バトゥルフが上位にいること、前年覇者ヘインズが順位的には沈みながらも枠を持つことなど、今大会は早くも「展開の幅」を広げている。予選はまだ続き、フレッシュとバーンの違いが容赦なくスコアを揺さぶる。

ベナードが“好相性の舞台”で物語を伸ばすのか。あるいは各国の強豪が読み合いを制して一気に主導権を奪うのか。開幕日の記録は結末の予告ではない。ここから始まる総合戦の号砲だ。

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