最終ゲームがすべてを変えた
PBAインディアナ・クラシック、クロル267でトップシード奪取

PBAツアー「インディアナ・クラシック」は、米インディアナ州フォートウェインのDavid Small’s Pro Bowl Westで行われ、36ゲーム総得点(ピンフォール)で決勝(ステップラダー)進出者を決定。最終ゲームでボーグ・クロルが267を打ってトップシードを奪取し、マーシャル・ケント(2位)ティミー・タン(3位)ライアン・バーンズ(4位)EJ・タケット(5位)が続いた。決勝は現地時間3月22日(日)16:00 ETThe CWで生中継予定。

 

最後の1ゲームが、36ゲームの物語を塗り替えた

ボウリングのトーナメントは、ときに「長いほどフェア」で、ときに「長いほど残酷」になる。インディアナ・クラシックはまさにその象徴だった。35ゲームを積み上げてきた総得点レースは、最終ゲームを迎えた時点で僅差。首位バーンズの背後にケントが4ピン差、クロルが17ピン差で迫り、さらに4位タンの背後にもタケットとビル・オニールが数ピン差で影を落としていた。

そして最終10フレーム。クロルが267で一気にトップへタンが10連続ストライクを含む279で3位に躍り出る一方、バーンズは163で4位に後退タケットは255で扉を閉め、オニールの追い上げを振り切った。数字は冷静だが、意味するところは熱い。最終戦は、順位表の並び替えではなく、選手それぞれの「勝ち方」と「耐え方」をあぶり出す決定打になった。

 

トップ5に刻まれた“勝負の輪郭”と、決勝の読みどころ

1)クロルが首位に立てた理由は「技術」よりも「決断」にある

ボーグ・クロルは、木曜24ゲーム終了時点では11位。しかし金曜のアドバンサーラウンド(各6ゲーム×2)で急上昇し、最終的に8,765ピン(平均243.47)で首位に立った。39フィートの「Mike Aulby」オイルパターンを最も的確に攻略したとされる。

ここで重要なのは、攻略の“手段”より“迷いの排除”だ。クロルは最終ラウンドで「ウレタンを使い切る」ことを選び、レーン変化の中で判断の枝を増やさなかった。4人同組のペアから2人同組へ条件が変わる局面で、対応を“増やす”のではなく“絞る”。この判断が、終盤のストライク量産と、最後の267につながった。

本人が語る「普段は滑り込む側だったが、リードして迎えるのは新鮮」という言葉は、今回の首位通過の価値を端的に示している。トップシードは決勝で“待つ側”になれる。勝負所で焦って追い上げる必要がないぶん、メンタルの作り方まで変えられるのが強みだ。

 

2)ケントの2位は、派手さではなく「崩れない力」の証明

マーシャル・ケントは最終ゲーム2302位を守り切った。クロルやタンのような爆発ではないが、僅差の総得点争いで“落とさない”ことは最大級の価値を持つ。

背景を知ると、この2位はさらに重い。2024年にメジャーを含む2勝で年間表彰争いの上位に立った一方、2025年は52位まで急落し、今季もポイントランキング71位と苦しんでいた。そこから「一人で何時間も投げ込み」、感覚が“カチッと噛み合う”まで繰り返したというプロセスを経て、今大会で上位復帰を果たした。

決勝のステップラダーは短期決戦だが、短期決戦ほど“再現性”が効く。ケントは爆発ではなく、ミスを最小化する型で上がってきた。相手の波に飲まれにくい2位シードの怖さを、日曜の舞台に持ち込む。

 

3)タンの279は、ステップラダーで最も脅威になるタイプの火力

ティミー・タンはゲーム35で199と一度足踏みしながら、最終ゲームで10連続ストライクを含む279を叩き出し、3位へジャンプアップした。

ステップラダーは「波をつかんだ者が、そのまま駆け上がる」形式になりやすい。タンが見せた279は、単なる高得点ではなく、ラインとテンポが噛み合ったときの“連鎖”を証明している。さらに彼は、昨季に初めて決勝進出を経験したばかりで、今回は「殿堂入り選手クラスを抑えて勝ち取った」手応えを強調している。マレーシア勢としてはTun Hakimが先にPBAタイトルを獲得しており、タンは「2人目」を狙う立場だ。

物語性と爆発力が同居する3位シードは、上位陣にとって最も嫌な存在になる。

 

4)バーンズの163が示した現実:総得点レースの“落とし穴”と、決勝の“開き直り”

バーンズは大会の大半をトップ3圏で走りながら、最後の1634位へ後退した。「最後のゲームを取り戻したい」という言葉が、その落差をそのまま語っている。

ただし、決勝のステップラダーに入った瞬間、総得点の貯金は消える。バーンズが初タイトルを狙うには4連勝が必要で、初戦の相手は3年連続年間最優秀級のタケット。厳しい。しかし、追う立場になったことで気持ちが軽くなる場合もある。バーンズは「35ゲームは良かった」と言い切っている。崩れた一戦を引きずらず、残りを“別競技”として切り替えられるかが鍵だ。

 

5)タケットは“地元の舞台”“形式への適性”が重なる

EJ・タケットは最終ゲーム255で決勝進出を決めた。出身はインディアナ州北東部、故郷ブランフトンは会場から約45分。会場のセンターで25年以上投げてきたという。地元でタイトルに挑めること自体が特別であり、「ここで勝てなければ空虚になり得る」という趣旨の言葉からも、勝利への渇望が見える。

また、今大会は「ボーナスなし・マッチプレーなし」の総得点形式で、タケットが好むタイプだとされる。「運の要素が減り、自分の運命は自分で握る。強い選手が上に来る」という評価は、彼の勝負観そのものだ。さらに、日曜の結果に関係なく2026年ポイントレース首位に立つ見込みという状況もある。それでも彼にとっては、地元で勝つことのほうが重要だ。

 

決勝は「波」「再現性」か、そして“待つクロル”を崩せるか

36ゲームの総得点は、実力を浮かび上がらせる一方で、最後の1ゲームにすべてを凝縮させる。クロルは決断の鋭さでトップシードを取り、ケントは崩れない強さで2位を守り、タンは爆発力で3位に滑り込み、バーンズは痛恨の失速から“開き直り”の4位へ、タケットは地元の執念と形式適性で5位に踏みとどまった。

決勝ステップラダーの読みどころは明快だ。タンやバーンズのように“波”で駆け上がるのか。ケントやタケットのように“再現性”で耐え抜くのか。そして最後に、待ち構えるクロルが、相手の勢いを受け止めて自分の型で押し切れるのか。
3月22日(日)16:00 ETの生中継は、36ゲームで積み上げた物語が、数試合の短期決戦で結末へ向かう瞬間になる。

最新の順位表(スタンディング)は、こちらで確認できます。

 👉  PBA Indiana Classic