グリーンジャケットは誰の手に?
2026 U.S. Open決勝5強の全貌

U.S. Openは「偶然」では勝てない。その最終舞台に残った5人

ボウリング界で「最も勝つのが難しいメジャー」と語られるのがU.S. Openだ。優勝が偶然転がり込む余地はほとんどない。5日間で合計56ゲームを投げ切り、日替わりで牙をむく難しいレーンコンディションに適応し続け、さらにマッチプレーの駆け引きとプレッシャーをくぐり抜けた者だけが、最後の舞台「ステップラダー決勝」に立つ。

2026 Go Bowling U.S. Open(インディアナポリス/Royal Pin Woodland)は火曜朝、108名で開幕した。しかし土曜夜のマッチプレー最終ラウンドを終え、日曜のテレビ決勝に進んだのはわずか5人。優勝者には象徴である「グリーンジャケット」と、賞金10万ドルが与えられる。生中継は日曜、米東部時間16時からThe CWで放送予定だ。

 

決勝進出者の顔ぶれと、最後の一枠を分けた「静寂の10フレーム」

1)ステップラダー決勝のシード順位と総ピン

56ゲーム総ピン(勝利ごとにボーナス30ピン)で決まったシード順は以下のとおりだ。

  • 第1シード:アンソニー・サイモンセン(ラスベガス)
    総ピン13,024マッチプレー15勝9敗。長丁場で崩れない“軸”を見せ、トップ通過

  • 第2シード:パトリック・ドンブロウスキー(オハイオ州パーマ)
    総ピン12,981マッチプレー17勝7敗。勝ち星で積み上げた数字が、そのまま説得力になった。

  • 第3シード:クリス・ヴァイ(オハイオ州ブラックリック)
    総ピン12,979マッチプレー14勝10敗。ドンブロウスキーとはわずか2ピン差

  • 第4シード:ティム・フォイ Jr.(デラウェア州シーフォード)
    総ピン12,94511勝12敗1分。星勘定は苦しみながらも、総合力で席を確保。

  • 第5シード:アンドリュー・アンダーソン(ミシガン州ホリー)
    総ピン12,82914勝8敗2分。最後まで続いた最終枠争いを勝ち抜き、2年連続の決勝進出

ステップラダー方式は下位シードから順に戦い、勝った者が上位シードへ挑む。上位ほど有利だが、この形式がしばしば生むのは「勢い」という見えない武器だ。

 

2)最終枠を決めた一投:アンダーソン vs トゥン・ハキム

土曜夜、最も濃いドラマを生んだのはアンダーソンと、マレーシアのトゥン・ハキムの争いだった。ハキムは最終ゲーム前、3ピンのリードポジションラウンド(順位同士の直接対決)という構図が、緊迫感をさらに増幅させる。

勝負が動いたのは9フレーム。ハキムが4-6-10スプリットを残してオープンフレームとなり、流れはアンダーソンへ傾いた。ところが10フレーム、今度はアンダーソンが2-8-10スプリットを残し、これを取れずに優位が揺り戻される。

ハキムが必要としていたのは、最終フレームで「最初の2投をストライク、フィルボールで8以上」。会場が静まり返った中、結果は薄いポケットヒットで2-5残り。ストライクが出ず、ハキムの快走はここで止まり、アンダーソンが滑り込む形でテレビ決勝進出を掴んだ。

 

3)雪辱を誓うアンダーソン、立ちはだかるのは「4連勝」という最難関

アンダーソンは前年2025年、テレビ決勝の第1シードとしてタイトルマッチまで進みながら、EJ・タケットに238-184で敗れ準優勝。グリーンジャケットまであと一歩だった。

今年は第5シード。優勝するには4連勝が必要だ。最も険しい道である一方、連勝が生む“熱”をまとえるのも下位シードの特権。本人は「前例はある」と言う。シーズン序盤のメジャーでブランドン・ボンタがラダーを駆け上がり優勝した事実は、挑戦者にとって確かな根拠になる。昨年の決勝経験も、初戦からテレビの空気に呑まれない材料だ。

 

4)今大会の空気を決めた「9つの300」

2026年大会は記録面でも派手だ。パーフェクトゲーム(300)が9回。現行フォーマット(2020年採用)以降のU.S. Openで単一大会最多とされる。土曜だけでも3回が生まれ、ヴァイは今週2度目の300、さらにドム・バレット(イングランド)とジェイソン・ベルモンテ(オーストラリア)も達成した。

ただし、この数字は単なるお祭りではない。難条件のU.S. Openで完璧が出ること自体、適応の精度が極まっている証拠であり、同時に「一枚ズレれば一気に崩れる」紙一重の危うさも浮き彫りにする。

 

5)日曜の勝ち上がり図と見どころ:鍵は「最初の1試合」と「サイモンセンの壁」

日曜の対戦は次の流れだ。

  • マッチ1:第5シード アンダーソン vs 第4シード フォイ Jr.
    フォイは決勝進出者5人の中で最高平均225を記録。さらに2025年シーズンはテレビ決勝6回(メジャー2回を含む)。アンダーソンが連勝街道に入るには、ここで“熱量”を奪われないことが第一条件になる。

  • マッチ2:マッチ1勝者 vs 第3シード ヴァイ
    ヴァイは813シリーズ(279-257-277)を叩き出し、爆発力が際立つ。一方で本人は、昨年のテレビ決勝での反省から「力まず、起きることに任せる」姿勢を掲げる。

  • 準決勝:マッチ2勝者 vs 第2シード ドンブロウスキー
    ドンブロウスキーは21連続ストライクを含む「300→299」を記録。47歳のベテランで地域タイトル11を誇るが、ツアー本戦では未戴冠。必要なのは“あと2勝”だ。

  • 決勝:準決勝勝者 vs 第1シード サイモンセン
    サイモンセンはU.S. Openステップラダー進出5年連続、直近11年で8回。さらに同会場で行われた2022年の覇者でもある。今回勝てばツアー通算17勝、メジャー6勝、緑のジャケット2着目。最終戦は結局、「サイモンセンを倒す方法」を探す試合になる。

 

王者の安定か、挑戦者の連勝か。U.S. Openは最後の1投まで揺れる

2026 U.S. Openのステップラダー決勝は、「頂点で待つ王者」と「下から駆け上がる挑戦者」という、分かりやすくも残酷な構図になった。サイモンセンは実績・対応力・勝ち方を知っている。待ち構える側の優位は明確だ。

しかし、U.S. Openが面白いのは、明確な優位があってもなお、最後の数フレームで景色が変わるところにある。アンダーソンは最終枠の修羅場をくぐって手にした席であり、フォイは最高アベレージテレビ経験を武器に初戦から勝負できる。ヴァイは爆発力に加えて「力まない」という課題を持ち込み、ドンブロウスキーは悲願の初戴冠まで2勝に迫った。

土曜夜、会場が静まり返ったたった1投が最終枠を決めた。日曜もまた、静寂と歓声が交互に訪れるだろう。グリーンジャケットに袖を通すのは、王者の貫禄か、挑戦者の連勝か。答えは、最後の10フレームが教えてくれる。

全米オープンの詳細情報をご覧いただけます。

 👉  2026 Go Bowling U.S. Open