2026 U.S. Open決勝進出者決定
サイモンセン首位通過で頂上決戦へ
Go Bowling U.S. オープン、決勝は“豪華すぎる5人”のステップラダー勝負へ
PBAツアーのメジャー大会「Go Bowling U.S. Open」で、決勝ラウンド(ステップラダー形式)に進む5選手が出そろった。アンソニー・サイモンセン、パトリック・ドンブロウスキー、クリス・ヴァイ、ティム・フォイJr.、アンドリュー・アンダーソン。近年のPBAシーンを語るうえで欠かせない名が並び、決勝にふさわしい“スター揃い”の構図が完成した。
舞台はインディアナポリスのロイヤル・ピン・ウッドランド。決勝は現地時間3月8日(日)午後4時(ET)からThe CWで放送予定とされ、勝者にはメジャータイトル、象徴的なグリーンジャケット、そして優勝賞金10万ドルが贈られる。
U.S.オープンは、派手なハイスコアよりも「ズレがそのまま失点になる」厳しさで知られる大会だ。ラインが合っていなければ容赦なく崩れ、合っていれば派手さがなくても勝てる。だからこそ、この5人の到達は“たまたま”ではない。精度、修正力、終盤の胆力が、切符の実体だ。
トップシードはサイモンセン。追う4人も“勝つ材料”が揃う
サイモンセンが第1シード獲得。ウッドランドで連続進出を伸ばす男
第1シードを手にしたのはアンソニー・サイモンセン。ウッドランド開催のU.S.オープン決勝ラウンド進出は5年連続となり、この会場との相性の良さを改めて示した。2022年に優勝し、その後も4位、2位、5位と毎年上位に絡む。しかも彼は2021年大会に出場していないため、「出場したU.S.オープン」に限れば決勝進出は7大会連続。2015年のデビュー以来、出場11回で決勝進出8回という数字は、安定感を通り越して“この大会の常連”と言うべき領域にある。
本人が語るように、U.S.オープンは総じてスコアが伸びにくい。たとえ攻略の糸口が見えるレーンでも、少しでもラインがずれていれば結果にくっきり表れる。逆にいえば、正しく並べられる選手ほど、技術差をそのままスコアに変換できる大会だ。ウッドランドでの開催が数年続いたことで、ボールの動きやレーンの癖を理解しやすくなった点も追い風。迷いが減るほど、U.S.オープンは強い。
そして第1シードの価値は、ステップラダーの仕組みに直結する。上位シードほど投球数が少なく、消耗も情報露出も抑えられる。サイモンセンが「確実な賞金が得られて、タイトルまで1試合で済むのは大きい」と語ったのは、強者の実感そのものだ。
ドンブロウスキーは僅差を守って第2シード。手堅さが勝負の鍵を握る
第2シードはパトリック・ドンブロウスキー。第3シードのクリス・ヴァイとは、わずか2ピン差で踏みとどまった。こうした僅差を“落とさない”こと自体が、メジャーでは武器になる。ドンブロウスキーは2024年のUSBCマスターズで準優勝しており、大舞台の重圧に耐える経験値もある。
ステップラダーは一発勝負が連続する形式だ。勢いが出れば下位からでも駆け上がれる一方、ちょっとした判断ミスであっさり終わる。第2シードは、決勝に最短で手が届く位置でありながら、相手の勢いを止める“門番”にもなり得る。守りの強さが光る位置だ。
ヴァイは“勝ち急がない”再挑戦へ。元王者が向ける視線はスコアではなくプロセス
第3シードはクリス・ヴァイ。2021年のU.S.オープン覇者であり、今年は2年連続の決勝進出となった。昨年は準決勝でEJ・タケットに敗れたが、本人は原因を冷静に言語化している。テレビマッチの最初は良かったのに、途中から「無理に大きいゲームを作ろうとして力んだ」。強敵を前にすると、気づかぬうちに“260を投げに行く”思考になる。しかしU.S.オープンは、まさにその欲を罰する大会だ。
だからこそ、今年のヴァイの目標「良いショットを投げて、あとは流れに任せる」は効く。スコアを追うのではなく、ショットの質を揃える。元王者が“勝ち方の再現”を狙うというより、“勝ち筋の基礎”に戻っている点が不気味だ。
フォイJr.は経験を力に変える局面。初タイトルへ、あと一段の現実味
第4シードはティム・フォイJr.。昨季はPBAワールドチャンピオンシップ、PBAプレーヤーズ選手権と、メジャーの決勝ラウンドに進出しており、テレビの舞台経験を積んできた。ツアーでも複数回ショーに登場し、ポイントランキングも上位でフィニッシュ。それでもPBAツアーの初優勝は未達だ。
本人は「テレビにはかなり慣れた」と語り、さらに勝つためには「いくつかのブレイク(運)も必要」と現実も見据える。完璧さを求めすぎると崩れ、雑になればミスが増える。ステップラダーは、その両極端を避けた者が勝つ形式だ。経験が“落ち着き”に変わったとき、初タイトルは一気に近づく。
アンダーソンは薄氷の第5シード。逆風の終盤を制し、2年連続で舞台へ
最後の席を掴んだのはアンドリュー・アンダーソン。ここは最もドラマが濃い。最終局面ではアンダーソンとトゥン・ハキムの争いとなり、さらに5位から90ピン以内に5人がひしめく混戦だった。残り4ゲーム時点で5位に234ピン差だったジェイソン・ベルモンテまで追い上げ候補に挙がるほど、終盤の空気は荒れていた。
勝負は10フレームに凝縮された。アンダーソンは10フレでマークが必要な場面で2-8-10スプリットを残し、痛恨のオープン。これで勝負はハキムに傾きかけた。ハキムは決勝進出のために「2連続ストライク+8本」が必要。1投目はストライクで会場の空気を変えたが、2投目が薄く入り2-5を残して届かない。アンダーソンは221-214で逃げ切り、2年連続のU.S.オープン決勝進出を決めた。
アンダーソンは昨年、タイトル戦でタケットに敗れて準優勝。その悔しさが「かなり」残っていたという。しかしその敗戦が、その後の2勝(いずれもタケット相手)につながったとも語り、経験を前向きに再解釈している。さらに言えば、36時間前の時点でカットラインから約200ピン外にいたという。そこから決勝に滑り込むのは、運だけでは説明できない。読み替え、立て直し、勝負どころでの踏ん張り。第5シードは最も険しい道だが、“這い上がってきた選手”は一番怖い。
最後に残るのは「一番派手な人」ではなく「一番正しい人」
Go Bowling U.S. Openの決勝は、トップシードのサイモンセンを軸に、性格の違う強さが並ぶ構図になった。最短ルートを確保したサイモンセン。僅差を守り切ったドンブロウスキー。勝ち急がないことを選んだ元王者ヴァイ。経験を“勝ち切る力”へ変えようとするフォイJr.。そして薄氷の攻防を制し、悔しさを抱えたまま戻ってきたアンダーソン。誰が勝っても「理由がある」と言える決勝だ。
U.S.オープンの本質は、スコアの派手さではない。ズレを早く認め、修正し、淡々と“正しいショット”を積み重ねられるか。決勝は短いが、その短さがむしろ残酷で、判断の質が凝縮される。だから見どころは「誰が一番点を出すか」より、「誰が一番、正しさを続けられるか」にある。
放送は現地時間3月8日(日)午後4時(ET)。グリーンジャケットと10万ドルを手にするのは、最も強い選手かもしれない。しかしこの大会では、最も“正しい”選手が勝つ。そう断言したくなる5人が揃った。