最難関メジャー開幕:2026 Go Bowling U.S. Open
Woodlandで歴史が動く

プロボウリング最高峰の“最難関”がインディアナポリスに帰ってくる

プロボウリングで「最も過酷な試験」と呼ばれる大会が始まる。2026年PBAツアー(Go Bowling冠)の第2メジャー「Go Bowling U.S. Open」が、インディアナ州インディアナポリスのRoyal Pin Woodlandで開催される。狙われるのはメジャータイトル、今季5つあるメジャーのうち2つ目の栄冠、そして優勝賞金10万ドル。決勝のステップラダーは、米東部時間3月8日(日)午後4時からThe CWで生中継される。

U.S. Openが特別なのは、称号や賞金の大きさだけではない。レーンは選手の“得意”を許さず弱点をあぶり出す設計になっている。複数のオイルパターン使用ボールの持ち込み制限、そして今年は新たな用具規定まで追加された。勝つために求められるのは、派手な爆発力ではなく、どんな条件でも崩れない総合力と、その場で答えを出し続ける判断力だ。大会名が示す通り、歴史が試される一週間になる。

 

勝敗を分けるのは“万能性”と“修正力”

1)注目選手:Woodlandで際立つ二強と、記録を超えて歴史を狙う

Woodland開催のU.S. Openで、明確に抜けた存在がいる。EJ・タケットアンソニー・サイモンセンだ。U.S. OpenがWoodlandに戻った2022年以降、この2人は4大会すべてで決勝に進出会場適性大舞台での再現性を、数字で証明している。

タケットはインディアナポリスから車で約1時間半という“地元”の利もあり、直近3大会でグリーンジャケット(優勝者の象徴)を2度獲得した。2023年に初戴冠し、2025年には劇的な追い上げで2着目を追加。2024年も4位と、毎年最終盤に残ってくる

対するサイモンセンは、2022年の決勝でタケットを下しタイトルを奪取。近年の成績も4位、2位、5位と安定して上位に入り、Woodlandでは2016年USBC Masters優勝の経験もある。タケットの“地の利”に対し、サイモンセンは“勝った経験”で対抗する構図だ。両者の再戦が実現すれば、今大会の中心ストーリーになる。

そして、歴史という観点で見逃せないのがジェイソン・ベルモンテである。彼は2020年のU.S. Open王者で、Woodland開催の4大会中2大会で決勝進出。直近7回のU.S. Openでも4回決勝に入っている。

ベルモンテとマイク・オールビーは、PBAの5大メジャー完全制覇の達成者。ベルモンテは2020年U.S. Open優勝で「Super Slam」を完成させた。しかも彼は、U.S. Openを除くすべてのメジャーを少なくとも3回優勝している。つまりU.S. Openは、彼にとって唯一、回数が突出していないメジャーでもある。ここで再び勝てば、“二度目のSuper Slam”という常識外の領域に踏み込み、歴史の更新に近い意味を持つ。

実績だけでなく“キャリア完成”の物語を背負うのがクリス・プレイサーだ。2020年TOC、2022年ワールドチャンピオンシップを制し、主要3冠のTriple Crownまであと一つ。直近4年中3年でマッチプレーに進出し、2025年の最高成績は7位。勢いと課題がはっきり見える位置にいる。

さらに、プレイサーのダブルスパートナーであるアンドリュー・アンダーソンも要注目だ。昨年は大会をほぼ最初から最後までリードしながら、タイトルマッチでタケットに敗北。ただし、その後のシーズンで非メジャーのタイトルマッチにおいてタケットを2度撃破し、雪辱を果たしている。敗北を糧にできているのか、因縁が重圧になっているのか。同じ相手を前にしたとき、答えが出る。

 

2)なぜU.S. Openは“最難関”なのか:弱点を暴く設計と、新ルールのインパクト

直前の大会「PBA Pete Weber Classic」を制したグラハム・ファックは、U.S. Openは「あらゆるボウラーの弱点を搾り出す」と語ったという。これは誇張ではない。大会設計そのものが、単一の得意パターンでは生き残れないように作られているからだ。

予選は火曜から木曜までの3日間、日替わりで異なるオイルパターンを使用して行われる。各日8ゲーム、合計24ゲーム。パターンが変わるたびに、ボール選択もライン取りも回転の使い方も変わる。さらに、予選中に持ち込めるボールは10個までに制限されている。選手は「この球で攻め切る」よりも、「外したときに何を修正するか」「変化したレーンにどう追随するか」を問われ続ける。

そして今年は、用具規定が一段と厳しくなった。「低速でオイルを吸収する高性能ボール」使用禁止で、実質的にウレタン系ボールが使えない。影響が最も大きいのは、予選ラウンド3で用いられる35フィートのショートパターンだ。通常なら“曲がりを抑えてコントロールする”目的でウレタンを選ぶ選手が多い領域で、その定石が封じられる

月曜の練習セッションでは、スペア用として知られるプラスチックボールを、該当パターンで試す選手が多数いたという。これは奇策ではなく、「曲がりすぎない道具でラインを守る」という現実的な代替案の模索だ。新ルールは、技術の優劣だけでなく“準備の質”そのものを試す。誰が最初に正解へ辿り着くのか。今大会の最大の見どころは、ここにある。

 

3)フォーマットの要点:24ゲームで残り、8ゲームで絞られ、総当たりで削られる

大会の流れは明快だが、どの段階も厳しい。

火曜から木曜にかけて予選24ゲームを終えた時点で、上位32名が金曜朝のラウンドに進出する。ここからは第4のオイルパターンが投入され、このパターンが以降の大会で使われ続ける。金曜午前の8ゲームで、マッチプレーへ進む24名が確定する。

金曜夕方からはラウンドロビン形式のマッチプレーが始まり、土曜夜のポジションラウンドを経て、日曜の優勝決定ステップラダー(5人)へ。決勝は米東部時間3月8日(日)午後4時からThe CWで生中継される。

このフォーマットが示すのは、短期の爆発力より、複数日にわたって崩れない耐久性の価値だ。1ブロックの不調が致命傷になる一方で、序盤に完璧に当てても、翌日には別の問いが突き付けられる。だからこそ、毎年のように決勝へ残るタケットとサイモンセンの強さが、ここではいっそう際立つ。

 

4)日程(現地時間):焦点は木曜のラウンド3、そして金曜午前の“絞り込み”

  • 3月3日(火) 予選ラウンド1:A/B/C各スクワッド(各8ゲーム)

  • 3月4日(水) 予選ラウンド2:同(各8ゲーム)

  • 3月5日(木) 予選ラウンド3:ショートパターン対応が分水嶺

  • 3月6日(金) 午前:上位32の8ゲームでマッチプレー24名へ絞り込み/夕方:マッチプレー開始

  • 3月7日(土) マッチプレー、夜にポジションラウンド

  • 3月8日(日) 午後4時:決勝ステップラダー(The CW生中継)

 

勝つのは“最も強い選手”ではなく、“最も崩れない選手”かもしれない

2026年のGo Bowling U.S. Openは、例年通り“最難関”でありながら、今年はとりわけ「勝ち方の常識」を問い直す大会になる。3種類の予選パターンと10個のボール制限だけでも、選手の引き出しと判断力を徹底的に試す。そこへウレタン禁止の新ルールが加わり、ショートパターン攻略の前提が揺らいだ。練習からプラスチックボールを試す選手が増えたという事実は、その変化の大きさを物語る。

優勝争いの軸は、Woodlandで結果を積み上げてきたタケットとサイモンセンだろう。しかし歴史の目線で見れば、ベルモンテの“二度目のSuper Slam”という、競技の枠を超えた挑戦も現実味を帯びる。プレイサーのTriple Crownアンダーソンの雪辱も含め、今大会は強者の序列を示すだけでは終わらない。新ルール時代の最初の象徴が生まれる可能性がある。

3月8日の決勝で語られるのは、予定調和の王者か、それとも新時代の勝ち方を体現した勝者か。U.S. Openはいつだって、最後に立つ1人の選手だけでなく、ボウリングという競技の現在地を映し出してきた。その更新が、今週起きるかもしれない。

全米オープンの詳細情報をご覧いただけます。

 👉  2026 Go Bowling U.S. Open