開幕から主役へ
グラハム・ファッハが「ピート・ウェバー・クラシック」制覇
キャリア3勝目
開幕ダッシュの主役、グラハム・ファッハが “ピート・ウェバー・クラシック” 制覇
2026年PBAツアー(Go Bowling協賛)は開幕から話題が尽きないが、その中心にいるのはカナダ出身の強打の左腕、グラハム・ファッハ(Graham Fach)だ。シーズン最初の2つのタイトルイベントでチャンピオンシップラウンド(テレビ決勝)に到達したのはファッハただ一人。そして現地日曜日、ミズーリ州セントルイス近郊のBowlero St. Petersで行われた「PBA Pete Weber Classic」で、ファッハはその勢いを“優勝”という最も分かりやすい形に変えた。
タイトルマッチではトップシードのジャスティン・ノウルズ(Justin Knowles)を258-196で撃破。キャリア3勝目とともに、優勝賞金3万ドルを手にした。テレビ中継特有の重圧を跳ね返し、ストライクを重ねて突き放す――今大会のファッハは、強さの根拠を技術と心の両面で示したと言える。
45フィートの攻防を制したのは“再現性”と“揺れない確信”
1)長めの「Dick Weber」パターンがあぶり出す総合力
今大会は45フィートの「Dick Weber」オイルパターンで実施された。長めのパターンは、投球の回転・球速・入射角の管理が難しくなりやすく、さらにゲームが進むほどレーンの変化(トランジション)が勝負を左右する。単発のビッグゲームより、判断の正確さと修正能力、そして同じ動作を繰り返せる“再現性”が問われる舞台だ。
ファッハは予選18ゲームを終えて10位でマッチプレーへ進出。上位通過ではないが、ここから一気にギアを上げる。
2)Round of 24で平均280超――「勝負はテレビの前より前に決まる」
マッチプレーRound of 24で対戦したのはエリック・ジョーンズ(Eric Jones)。ファッハは259、300、277、290を並べ、4連勝のスイープ。平均280超という数字以上に際立つのは、ゲームごとの波が小さいことだ。300の一発が目立ちやすいが、むしろ周辺の3ゲームも高い水準で揃えている点に“強さの質”がある。
ファッハは優勝後、「勝負はもっと早い段階で決まっている」と語った。結果の華やかさの裏側にある積み重ねが、ここでスコアとして表れた。
3)ハナハン、スモールウッドを退けて第2シード確保
その後もファッハはパッキー・ハナハン(Packy Hanrahan)、トム・スモールウッド(Tom Smallwood)を撃破し、ステップラダー決勝は第2シード。勝利までの距離が短くなるだけでなく、テレビ決勝で必要な情報整理も進めやすい立場を手にした。
4)テレビ決勝は平均263――それでも盤石だった理由
日曜日のテレビ決勝での平均は263。十分に高い一方、Round of 24の爆発力と比べれば“落ち着いた数字”にも見える。しかし、ここがポイントだ。テレビ決勝では「最大値」より「勝てる手順」を崩さないことが重要になる。
しかもファッハが投げたレーンペアは、ジョーンズ戦が行われたのと同じペア。すでに成功体験とラインの基準がある状態で、必要な修正だけを最小限に行う。迷いを増やさず、確率の高い選択を積み重ねられるかどうかが、最後の差になる。
ファッハは「カメラがオンでも同じくらい自信を持てる」と話した。今季のファッハが“安定して強い”と言われる理由が、この言葉に凝縮されている。
ステップラダー決勝:地元の追い風、右腕の難所、そしてファッハの制圧
第1試合:ルッソが地元の後押しで先勝
第5シードのマット・ルッソ(Matt Russo)が、ヘイデン・スティピッチ(Hayden Stippich)を238-203で下した。スティピッチは前週の話題をさらったブランドン・ボンタ(Brandon Bonta)の歴史的テレビデビューの再現とはならず、ルッソが勢いを掴む。
ルッソは妻ローレンとともにメアリービル大学女子ボウリングチームを指導し、居住地も会場から車で15分。観客の声援も含め、会場の空気を味方にできる条件が整っていた。
第2試合:唯一の右利き、ラーセンが突破
続く第2試合はデンマークのトーマス・ラーセン(Thomas Larsen)が246-191でルッソを撃破。テレビ決勝で“唯一の右利き”という構図の中、レーン変化の影響を受けやすい状況でも、ラーセンが主導権を握った。
第3試合:ファッハが完璧に近い支配
第2シードのファッハは、ラーセンを268-235で下す。終盤までパーフェクトゲームを意識させる展開で、9フレーム目に「ストーン9(9番ピン残り)」が出て完全試合こそ逃したが、流れは揺れなかった。大崩れの芽を早い段階で摘み、最後まで“勝ち筋”を手放さない。これが現在のファッハの強みだ。
タイトルマッチ:ノウルズの“崩し”を、連打で上書きした
決勝で待ち受けたのはトップシードのジャスティン・ノウルズ。ノウルズは試合前の練習投球で、ファッハの得意ライン付近に強いボールを重ね、オイルを削ってファッハの優位性を消す狙いを見せた。いわば“快適なゾーン”から引きずり出す作戦だ。
作戦は一時的に機能する――しかし、長くは続かなかった。ファッハは直後に5連続ストライク。さらに次の9投のうち8回ストライクという圧倒的な連打で突き放し、258-196で決着をつけた。相手の仕掛けに過剰反応せず、必要な微調整だけで自分の確率を守り切った点が大きい。
「自分のベストを信じ切れた時、想像していた以上に自分は強いと分かってきた」――勝者の言葉が、すでに次戦を向いているのも印象的だった。
3勝目が示す“物語”と“現在地”――2016からの時間を越えて
ファッハの初タイトルは2016年。そこから2勝目まで約9年を要し、2025年のシーズンオープナーでようやく再び頂点に立った。そして13カ月後、「PBA Pete Weber Classic」で3勝目。しかもトロフィーは、名手ピート・ウェバー本人から手渡された。タイトル名と授与者が重なる瞬間は、勝利の価値をもう一段引き上げる。
さらにファッハは、同大会の優勝者としてアンソニー・サイモンセン(Anthony Simonsen)とEJ・タケット(EJ Tackett)に並んだ。ファッハは「彼らの名前と一緒に語られるなら、何かを正しくやれているはずだ」と語る。自信と敬意が同居する言葉は、今の充実を端的に物語っている。
“勝てる強さ”を手にしたファッハ、次はメジャーU.S. Openで真価が問われる
「PBA Pete Weber Classic」での優勝によって、グラハム・ファッハは2026年シーズン序盤の主役であることを、結果と内容の両面で証明した。予選10位からの勝ち上がり、Round of 24での平均280超、テレビ決勝での冷静さ、そしてタイトルマッチでの連打。これは勢いの産物ではなく、再現性と修正力、そして舞台が大きくなるほど揺れない確信がもたらした結果だ。
そしてツアーは今週、メジャー第2戦「Go Bowling U.S. Open」へ進む。予選は火曜日に始まり、決勝は3月8日(日)午後4時(米東部時間)にThe CWで放送予定とされる。メジャーは条件も日程も厳しく、引き出しの数と我慢強さが問われる舞台だ。
開幕から2大会連続でテレビ決勝に立ち、ついに優勝まで手にしたファッハは、いま最も“勝ち方”を理解している選手に見える。次に問われるのは、勢いの維持ではなく、メジャーという別種の圧力の中で同じ勝ち筋を再現できるかどうか。そこを越えた時、2026年は「躍進の年」ではなく「支配の年」として記憶される可能性すらある。
試合結果まとめ(テレビ決勝)
第1試合:マット・ルッソ 238-203 ヘイデン・スティピッチ
第2試合:トーマス・ラーセン 246-191 マット・ルッソ
第3試合:グラハム・ファッハ 268-235 トーマス・ラーセン
決勝:グラハム・ファッハ 258-196 ジャスティン・ノウルズ
最終順位(賞金)
1位 グラハム・ファッハ:30,000ドル
2位 ジャスティン・ノウルズ:18,000ドル
3位 トーマス・ラーセン:13,000ドル
4位 マット・ルッソ:10,000ドル
5位 ヘイデン・スティピッチ:9,000ドル