データで読むボウリングボール業界の現在地
Motiv・Brunswick・Stormを徹底比較

データが映す「ボウリングボール業界」の現在地

新作ボールの話題は、使用感レビューや「走る・曲がる・止まる」といった印象語で語られやすい。一方で、各社のカタログを数値で棚卸しすると、メーカーの狙い、手薄な領域、そして市場全体の流れが驚くほど明確になる。
本稿は、ZVL Bowlingの定点観測企画「STATE OF BOWLING! Data-Driven Look at Bowling Balls(2月版 State of the Brands)」の内容を基に、主要3勢力――Motiv、Brunswick系7ブランド、Storm(Storm/Roto Grip/900 Global)――をデータで比較し、「業界がどこへ向かっているのか」をニュースブログとして整理する。

この企画の核は、単なる新作紹介ではない。現行生産中のボール総数、非対称コアとシンメトリック(対称コア)の比率、表面仕上げ(ダル/シャイニー)、平均価格、平均リリース時期、そして独自のカテゴリースケール上での分布といった“構造”を可視化し、メーカー各社へ提言まで行う点にある。数字が示す偏りは、ボウラーの選択肢やトレンド形成に直結する。つまりこれは、今後の「買い方」そのものに影響する業界ニュースだ。

 

3勢力の現状を分解する――「数」「強さ」「価格」の戦略差

1. Motiv:少数精鋭は維持、ただし“非対称コア不足”の修正が進む

Motivは、現行ラインナップを20個未満(概ね17〜20)に抑える運用を続けている。大量投入で棚を埋めるのではなく、選抜したモデルでブランドの筋を通す、典型的な少数精鋭型だ。今回の集計はEvoke Mayhemのリリースまで反映され、前回(2025年11月)と比べても全体像は大きくは変わらない。

ただし、変化が小さいからこそ目を引くポイントがある。コア構成が、前回の「非対称コア6:シンメトリック14」から、今回は「非対称コア7:シンメトリック12」へと動いた。数にすれば1〜2個の違いだが、カタログに占める非対称コア比率は確実に上がった。前回の提言は「Motivは非対称コアが足りず、強いシンメトリック寄りで勝負しすぎている」というものだったため、この修正は方向性として明確な前進と評価される。

背景には、強めシンメトリック領域が“当たり外れ”の評価を受けやすいという事情がある。ForgeやRaptorがモデルによって反応が割れた経緯を踏まえると、非対称コアの厚みを増やしてラインの安定度を上げることは、製品群の信頼性にもつながる。
表面仕上げ(ダル/シャイニー)は、ダル8・シャイニー11で大きく崩れず、2025年7月時点より改善したバランスを維持している。Motivは「急激に変えず、弱点だけを補正する」現実的なアップデートを選んでいるように見える。

 

2. Brunswick系7ブランド:非対称コアが突出、強い領域に集中しやすい構造

Brunswickは単体ではなく、Brunswick、Radical、Track、Ebonite、Hammer、Columbiaなど計7ブランドを束ねた“巨大連合”として集計される。現行ボール数は非常に多く、ここが市場の統計を大きく左右する。

最大の特徴は、非対称コアの多さだ。現行で非対称コア31・シンメトリック27非対称コア比率は53%。前回も53%で推移しており、Brunswickが継続的に「強めの非対称コア」を中核に置く戦略であることが分かる。数で勝ち、強い球で勝つ。しかもそれを複数ブランドで同時に展開する。こうした構造は、ボウラー側から見ると“似た領域に選択肢が多い”状態を生みやすい。

さらに、平均リリース時期が2025年5月(1年未満)と非常に新しい点も示唆的だ。ディスコン(生産終了)と投入を高頻度で回し、カタログの平均年齢を若返らせている。新陳代謝が速いことは、旬のレーン傾向やトレンドへ適応しやすい反面、購入側にとっては「選び直しが早い」「比較が難しい」といった負担にもなる。

表面仕上げはダル27・シャイニー31。前回(ダル29・シャイニー42)よりシャイニー過多が改善し、比率は落ち着いてきた。一方で、カテゴリ分布を見ると強い領域への集中は続いており、「強めの武器は多いが、弱めの穴埋めが薄い」という従来の課題が再び浮かぶ。

 

3. Storm勢力:中〜弱は厚いが、「弱い球ほど高い」という逆風

Storm(Storm/Roto Grip/900 Global)は、ラインナップ数が大きく動かず、現在は安定している。平均価格は165〜170ドル帯で推移し、競合との価格競争を意識しつつも、ブランドの価値を崩しすぎないレンジを維持しているように見える。

コア構成は、非対称コア比率38%とBrunswickより低い。つまり、Stormは非対称コア一辺倒に寄せず、シンメトリックを厚く残した“裾野の広い設計”を採っている。平均リリース時期が古めに出るのは、High RoadやPhaze IIといった長寿モデルが統計を引っ張るためで、ディスコン(生産終了)の速度もBrunswickほど速くない。Motivよりは動くが、Brunswickほど激しくはない中間的なテンポ、という位置づけだ。

表面仕上げでは「シャイニーが増えた」に加え、4000番手仕上げの増加が注目点として挙げられる。従来のStormは「ダル=2000」「シャイニー=1500ポリッシュ」のような分かりやすい二分が多かった。4000番手の増加は、扱いやすさの再設計、あるいは“いかにもダル/いかにもパール”ではない中間の質感を増やす動きと読める。

しかし、結論部で最も強く問題提起されるのは価格戦略だ。Stormは弱い球を多く作っているが、弱い球が高い。弱めのレンジは入門・サブ用途で需要が強い一方、価格が上がりすぎると購買のハードルが上がる。性能は高評価でも、「弱い球ほど手頃であってほしい」という市場心理と逆向きになり得る点が、今後の課題として示される。

 

全社合算111個、平均170ドル――だが“戦場”が違う

3勢力を合算すると、現行生産中のボールは111個。新作発表とディスコン(生産終了)のタイミングで数は週単位でも揺れるが、市場全体としてはこの規模で回っている。そして平均価格は約170ドル。ここだけ見れば「どこも似たようなもの」に見えるが、実際にはメーカーごとに戦場が異なる

ZVL独自のカテゴリースケールで分布を見ると、Brunswickが強い領域を厚くして数で押す構図が際立つ。強くてスムース、強くてシャープといった上位帯で球数が突出し、統計を引っ張る。一方で、中でキレる(Medium & Sharp)や弱めの領域では手薄になりやすく、直近のディスコン(生産終了)で中間帯がさらに薄くなったことも示唆されている。結果として「強い球は豊富だが、繊細な隙間を埋めにくい」という形になる。

Stormは中〜弱の厚みが強みだ。弱くてキレる、弱くて扱いやすい、といったレンジが揃いやすい。ただし価格が高めに出ると、せっかくの“裾野”が購買面で狭くなる。ここが戦略上のジレンマになっている。

Motivは球数が少ないぶん、空白が明確になる。強い非対称コアと定番中核の間のレンジが薄く、選択が二択になりやすい。少数精鋭を保ちつつ、どの“穴”を埋めるかが次の焦点だ。

 

前回提言の「改善」は見えた。次は“中核の不足”をどう埋めるか

このシリーズは、単なる現状報告では終わらない。前回(2025年11月)の提言に対する答え合わせを行う点が、ニュースとしての価値を高めている。今回の評価は、3勢力とも一定の改善があったというものだ。

Brunswickは「製品の重なりが多いのに比較手段がない」という課題に対し、新作ごとにカテゴリーチャートを提示するようになった。インタラクティブではなくとも、比較の基準が明示されることは購入の意思決定を大きく助ける。ボウラーにとっては、それだけで現実的な改善だ。

Motivは非対称コア不足の指摘に対し、非対称コアの数と比率を引き上げた。大改革ではないが、弱点に対する“狙った修正”が見える。

Stormは「強い系統が足りない」に対し、強めカテゴリに新作を加えたことで、上のレンジを補強した。弱いだけのブランドではなく、強い球も揃うというメッセージになっている。

では2026年2月時点で、次の宿題は何か。提言は具体的で、しかも“中核”に踏み込んでいる。

Brunswickに求められているのは、強いシンメトリック・パールの復活だ。低RG・高ディファレンシャルで、シャイニー寄りの中〜強レンジが薄くなり、結果としてStormのPhaze II(およびそのPearl)に対抗できる軸が見えにくい。Crown Victory Pearlの投入はあるが、それだけでは埋まり切らない。派手なスキッドスナップではなく、扱いやすく強い“中心球”をどう再構築するかが問われる。

Motivに求められているのは、最強非対称コア群とVenom帯の間を埋める選択肢だ。Evoke MayhemやJackal級の上、Venom ShockやBlack Venomなどの下。この間が薄いと、ボウラーは「強すぎるか、足りないか」の二択になりやすい。ソリッドとパールの両面で中間レンジを用意できれば、バッグ構成の連続性が一気に良くなる。

Stormに求められているのは、弱めレンジの価格再設計である。弱い球は多いが高い。性能が高くても、弱めの役割は「入門」「セカンド」「レーン変化への逃げ道」と幅広く、価格の手頃さが購買を左右する。150ドル程度の弱めラインが出れば、Stormの裾野はさらに強くなる、という提案だ。

数字が示すのは、単なる「どれが良い球か」ではない。メーカーがどこを厚くし、どこを削り、どこを“次の勝ち筋”と見ているかである。次の四半期、Brunswickが中核シンメトリック・パールを補うのか。Motivが中間レンジを埋めるのか。Stormが弱め価格帯を現実的に下げるのか。
これらの動きが、カタログ上の“穴”を埋めるのか、それとも別の偏りを生むのか。ボウラーの選択肢は、メーカーの戦略に連動して変わる。だからこそ、次の更新で数字がどう動くかを追うこと自体が、最も実用的なボウリングニュースになる。