タケットが第1シード独走、ルーキー2人が決勝へ
PBAプレーヤーズ選手権が2026年ツアー開幕を決定づける
2026年の「最初の答え合わせ」が、いきなりメジャーで始まった
2026年PBAツアー(Go Bowling協賛)は、開幕から“説明不要の顔ぶれ”が中心に立った。EJ・タケット。3年連続PBA年間最優秀選手(Player of the Year)に君臨する現役の象徴だ。そのタケットが、PBAプレーヤーズ選手権で約300ピン差の独走を演じ、ステップラダーファイナルの第1シードを獲得した。
だが、今大会がただの「強者の順当勝ち」を予告しているわけではない。決勝進出の最後の2枠をつかんだのは、いずれもルーキーのブランドン・ボンタとスペンサー・ロバーグ。しかも2人はウィチタ州立大学の元チームメイトだ。王者の盤石さと、新世代の急襲。2026年最初のメジャーは、この二つが同じステージに並ぶことで、シーズンの物語を一気に加速させた。
決勝(チャンピオンシップ・サンデー)は米国時間2月22日(日)午後4時(ET)からThe CWで放送予定。開幕週から、PBAが最も得意とする「実力と物語が同時に走る展開」が完成している。
独走のタケット、僅差のシード争い、大学から直結した“二人の初舞台”
1)タケット、約300ピン差の支配――「勝てていないメジャー」を取りに来た
タケットの首位通過は、単なる好調ではない。第4予選ラウンドで首位に立って以降、1ゲームたりともトップを譲らず、そのまま46ゲームを走り切った。メジャーのフィールドで主導権の奪い合いが起きないというのは異例で、今回の数字が示しているのは、強さ以上に「崩れない完成度」だ。
通算27勝、メジャー7勝。それでもPBAプレーヤーズ選手権だけは勝てていない。過去には2020年、タイトルマッチでビル・オニールに敗れ、2023年はテレビ決勝枠の準々決勝で後の優勝者ケビン・マキューンに阻まれた。つまりこの大会は、タケットにとって“実績の空白”であり、同時に“キャリアの引っかかり”でもある。
もし今大会を制すれば、早すぎる段階とはいえ4年連続POYという記録的偉業へ向けて、シーズンの主導権をいきなり握ることになる。さらに、スーパースラム到達にも近づく(USBCマスターズのタイトルがあと1つという位置づけ)という文脈が加わり、この一戦の意味は「開幕戦の優勝」より重い。
タケットは今、勝つべき理由が多すぎる。だからこそ面白い。勝つべき人が勝てるとは限らないのが、ステップラダーの怖さだからだ。
2)第2シードはファック――“開幕に強い男”が、難条件を歓迎する
第2シードはグラハム・ファック。2025年のシーズン開幕戦(デラウェア開催)優勝の男が、2026年も序盤から上位に座った。本人は「秘密はない。できる限り準備するだけ」と語り、成功の方程式を神秘化しない。だが、結果だけは毎年しっかり“早い”。
注目すべきは、今回がハイスコア祭りの大会ではない点だ。ファックが制した2025年開幕戦は記録的なスコアペースだった一方、今大会はストライク率が明らかに落ち、我慢の時間が長いメジャーになった。それでもファックは「挑戦が好き。自分たちの力を見せられる」と言い切る。
つまり彼は、簡単な条件で爆発するだけの選手ではなく、“難しい条件で嫌がらない選手”として決勝に入ってきた。ステップラダーでこの気質は強い。相手が崩れた瞬間を、容赦なく刈り取れるからだ。
3)第3シードはスベンソン――2025年終盤の覇者が、今年は「遅くない」
第3シードはイェスパー・スベンソン。PBAトーナメント・オブ・チャンピオンズ(TOC)優勝、さらにPBAプレーオフ優勝(10万ドル)。しかもプレーオフではタケットに勝って締めくくった。2025年の最終盤を“持って行った”選手が、2026年開幕でも上位にいる。
スベンソン自身は、終盤の成功を「キャリア最高の2カ月」としつつ、「例年はシーズン序盤が遅い。でも今年はそうでもない」と手応えを語った。序盤はフィジカル面の感覚調整に苦労したとも述べており、結果より動きの再現性を優先して整えてきた様子がうかがえる。
さらに、本人が笑いながら触れた「これからウレタンなしの大会が続く」という話も、今後の布石として面白い。準備と適応の話をしている時点で、スベンソンの視線は“今週だけ”にない。こういう選手は、ステップラダーでも怖い。
4)ルーキー2人が決勝へ――ウィチタ州立大の“共同作業”が、そのままプロの舞台に出た
今大会をニュースとして一段引き上げたのが、ルーキーのボンタとロバーグが揃って決勝に進んだことだ。大学で4年間チームメイトだった2人が、プロ初戦級のタイミングでテレビ決勝枠に並ぶ。出来すぎているほど出来すぎている。
2人は大学実績により2026年ツアーの優先出場資格(priority status exemptions)を獲得しており、ボンタはNCBCAオールアメリカン3回、ロバーグは4回選出。さらにチームとしては、2023年Intercollegiate Team Championships優勝。つまり彼らは“突然出てきた新星”ではなく、「勝つ環境で勝つ訓練を積んだ選手」だ。
ロバーグは、子どもの頃からボンタと同じ大会で投げ続けてきた関係を語り、「これは物語みたいだ」と言った。ボンタも「プロとして初めての大会でショーに出られるのは夢のよう」と語り、初舞台の高揚を隠さない。
この2人が決勝にいるだけで、ステップラダーの1試合目は「勝ち上がり」以上の意味を持つ。片方が勝てば、もう片方の“初舞台”を踏み台にすることになるからだ。友情と競争が同居した関係性は、勝負の空気を濃くする。
5)左右で別パターン――46ゲームの総合力を強制する、意地の悪いほど“メジャーらしい設計”
今大会の難しさを端的に表すのが、左右レーンで別のオイルパターンが採用された点だ。左レーンは50フィートのBadger、右レーンは37フィートのViper。長短がはっきり異なり、同じ投球感覚をそのまま左右に持ち込めない。
この条件は、単にライン取りが難しいだけではない。46ゲームという長丁場の中で、レーンが変化し、ミスの種類が変わり、ストライク率が落ちる局面が必ず来る。そこでスコアを守れる選手が残る。今大会の上位者が「派手さ」より「崩れなさ」で並んでいるのは、その設計の帰結だろう。
6)数字が示す“混戦”――2位から5位は僅差、決勝は一瞬でひっくり返る
スタンディング(46ゲーム終了時点、ボーナス込み)は、タケットが10,882で首位。そこからファック10,583/スベンソン10,571/ボンタ10,566/ロバーグ10,559と僅差で連なる。
ここが重要だ。決勝はシード順が勝負の骨格を決める一方で、2〜5位の差は“1試合の展開”で簡単に意味を失う程度しかない。つまり、タケット以外はほぼ団子。誰が一番良いタイミングでハマるか、誰が一番悪いタイミングで外すかで、結末は変わる。
ショー外の最上位はティム・フォイ Jr.(6位)で、ロバーグから91ピン差。トップ10にはブラッド・ミラー/マット・オグル/アンドリュー・アンダーソン/BJ・ムーアが入った。ビル・オニール(11位)、ルーキーのCJ・ペトリン(14位)も上位に名を連ね、新旧の混在がそのまま今季の縮図になっている。
7)決勝の見どころ――「未踏の王者」か、「初舞台の新人」か
ロバーグが初戦を勝てば、スベンソンとの対戦が見えてくる。そしてこのカードは、単なる“次の試合”ではない。ロバーグは2021年にPBAジュニア男子ナショナル選手権の初代王者となったが、その始まりは今回と同じBowlero Eulessでの地域予選だったという。さらに当時、スベンソンとダブルスで同じショーに出場し、数週間後には18歳のアマチュアとしてUSBCマスターズ決勝にも進出。そこでもトップシードがスベンソンだった。
つまり、スベンソン対ロバーグが実現した瞬間、そこには「5年越しの連続性」が生まれる。もちろんロバーグはまずボンタを越えねばならないが、そうした前日譚がある試合は、観る側の体温を上げる。
一方で、最も分かりやすい軸はタケットだ。勝てていないメジャー。勝てば4年連続POYへ向けた先手。キャリアの節目。勝つ理由が揃いすぎている時ほど、負けた時のストーリーも大きくなる。タケットが勝てば「取りこぼしの回収」。負ければ「また届かなかった」。この二択の強度が、決勝の緊張を作る。
開幕週にして、2026年の主役候補が出そろった
PBAプレーヤーズ選手権は、46ゲームと左右別パターンという“ごまかしの効かない条件”で、2026年の序列を早くも描き出した。タケットは独走で第1シードを奪い、未踏のタイトルへ手を伸ばす。ファックは開幕の強さを難条件で再証明した。スベンソンは2025年終盤の覇者としての存在感を維持し、「今年は遅くない」という変化を示した。そしてボンタとロバーグは、大学で培った勝負強さをそのままプロの舞台に持ち込み、初戦から物語の中心に座った。
2月22日の決勝は、単なる「今大会の勝者」を決める場ではない。2026年シーズンが誰を中心に回り始めるのか、その最初の確かな輪郭を与える一夜になる。王者が空白を埋めるのか。新人が時代の扉を開くのか。開幕戦から、答え合わせのスピードが速すぎる。