首位でも笑えない PBA Players Championship
タケットの苛立ちが暴く「左右別ゲーム」の罠

上位にいるのに、誰も笑っていない――PBA Players Championshipが示す「メジャーの温度」

PBAのシーズン開幕メジャー「PBA Players Championship」は、初手から“実力者の整列”で始まった。予選30ゲーム終了時点のリーダーボードを見ると、2025年のツアーを牽引した名前がそのまま並ぶ。首位は3年連続PBA年間最優秀選手(POTY)のEJ・タケット。3位には昨季POTY投票で共同次点のアンドリュー・アンダーソン。間に割って入る2位が、2025年の最初の優勝者グラハム・ファックだ。

だが、この大会の面白さは順位表の“順当さ”では終わらない。むしろ逆で、上位にいるはずの選手ほど口調が険しい。
「悪くないのに点が出ない」、「スペアを落としてピンを捨てた」、「投げているのに結果が出ない」。
メジャーの怖さは、内容が悪いことではない。“悪くないまま、伸びない”状態が続くことだ。修正が遅れれば、首位ですら簡単に飲み込まれる。今回の30ゲームは、その緊張感が濃いままマッチプレー
へと流れ込んでいく。

舞台はテキサス州、アーリントン近郊のBowlero Euless。ここで選手たちは、左右レーンで性格の違うオイルパターンを同時に攻略する。左は50フィートのBadger(長い)、右は37フィートのViper(短い)。長短が大きく異なる条件は、単に球筋を変えるだけでなく、選手の心理の使い方まで変えてしまう。片側が不安定になると、もう片側に「取り返す義務感」が乗り、判断を狂わせる。上位選手が“内容への不満”を強く語るのは、その罠をよく知っているからだ。

 

タケット首位の裏で何が起きているのか――「左右別ゲーム」が奪うスコアと自信

1)タケットは首位でも納得せず。問題は「左のBadger」が連鎖を生むこと

タケットは30ゲーム合計6,838ピン、アベレージ227.93でトップに立った。数字だけを見れば申し分ない。しかし本人の自己評価は意外なほど厳しい。

「ひどいボウリングをしたわけじゃない。ただ本当にスコアできなかった」
そして矛先は左レーンへ向く。
「左レーンで本当に苦しんだ。何かを組み立てて、自信を持てる形にしないといけない」

ここで重要なのは、彼が“片側の不調”を単独の問題として語っていない点だ。左で苦しむと、右レーンでストライクを強要される感覚が生まれ、右でも自分に過剰なプレッシャーをかけてしまう――と彼は説明する。これは二枚のパターンを同時に使う形式ならではの落とし穴で、攻略が「技術」だけで完結しないことを示している。メジャーで勝つには、球を曲げる前に、頭の中の“帳尻合わせ”を消さなければならない。

首位の苛立ちは、リードが安全ではないことの裏返しでもある。2位以下が僅差で追う中、タケットにとって最優先は「右で稼ぐ」ではなく「左で崩れない」だ。左の解決は、そのまま右の自由度とスコアの上限を押し上げる。

 

2)3位アンダーソンは怒りを隠さない。「スペアを取れていれば首位だった」

アンドリュー・アンダーソンは3位(6,774、225.80)。しかしコメントは首位争いの余裕とは程遠い。

「今めちゃくちゃ腹が立っている。スペアを作れていれば、もう首位だったかもしれない」
「ピンを左右に捨てている気がする。メジャーでピンを捨てたくない」

ボウリングの怖さは、ミスが「大きく見えない」ことにある。スペアの1本は、1フレーム単位なら小さな損失に見える。だが30ゲーム、さらにマッチプレーまで続くメジャーでは、その小さな損失が確実に“順位”へ変換される。上位にいるほど、ストライクの気持ちよさより、スペアミスの痛みが勝つ。アンダーソンの怒りは、感情というより計算だ。「今、何本捨てたか」を正確に把握しているからこそ、悔しい。

彼は「後半で整理して、ショー(決勝)に向けて走る。朝には準備して戻ってくる」と切り替えを宣言した。つまり課題は明確で、修正プランもある。メジャーで怖いのは、怒っている選手ではなく、怒れるほど課題を特定できている選手だ。

 

3)最後の椅子を掴んだオニールの“本当の苛立ち”――「投げているのに結果が出ない」

16人のマッチプレー枠、その最後の1席を滑り込んだのがPBA殿堂入りのビル・オニールだ。Advancer Round最終ゲームで235を打ち、出場権をもぎ取った。だが彼もまた、満足から程遠い。

「ボールをどうやってピンに通せばいいのか分からなかった。かなりフラストレーションが溜まった」
そして決定的なのが、次の感覚だ。
「投げているのに、求めている結果が出ない。それが一番きつい」

オニールの強みは「どこに立つべきか」「どのボールを使うべきか」「レーンの正しい場所に居続けること」だという。だからこそ、その強みが効かない瞬間は、自分の核を揺さぶられる。単に調子が悪いのではない。“答えが見えない”のが苦しいのだ。

ただ、ここからがオニールの怖さでもある。彼は5位から166ピン差とされながら、こう言い切る。
「自分の自信は、この大会の出来ではなく、キャリアで達成してきたことから来る」
「出る大会は全部勝てると思っている。そう思えなくなったら、もうインタビューされない」

メジャーでベテランが怖いのは、スコアよりも“勝つ前提”が揺れないことだ。残りは16ゲーム。長丁場で波を作れる時間は十分ある。しかも彼の前には、初メジャーを狙うベテラン勢に加えて、勢いの塊のような3人のルーキー――CJ・ペトリン、スペンサー・ローバージ、ブランドン・ボンタが立つ。経験と更新速度がぶつかる構図は、マッチプレーに入ってさらに尖っていくだろう。

 

4)順位表が示すのは「一撃でひっくり返る差」――トップ5が11ピン差の現実

30ゲーム終了時点の上位は以下の通り。

  • 1位 EJ・タケット:6,838(227.93)

  • 2位 グラハム・ファック:6,777(225.90)

  • 3位 アンドリュー・アンダーソン:6,774(225.80)

  • 4位 CJ・ペトリン:6,771(225.70)

  • 5位 ショーン・マルドナード:6,766(225.53)

2位から5位まで、わずか11ピン差。これは極端に言えば「1フレームの判断」や「1本のスペア」で並びが変わる距離だ。トップ10にも実力者が詰まっており、誰かが一時的に噛み合えば、流れは簡単に塗り替わる。だからこそ、上位陣が“今の内容”に神経質になるのは自然だ。僅差のメジャーでは、気持ちよく勝つより、嫌な時間を短くする方が強い

 

鍵は「左を直すこと」と「16ゲームの逆算」。不満を言語化できた選手が伸びる

今回の30ゲームは、強者が上にいるというより、「強者が上にいながら、修正点をはっきり掴んでいる」ことが最大のニュースだ。

  • タケットは左(Badger)での迷いが右の圧になっている。左を整えれば、スコアの天井が上がる

  • アンダーソンはスペアの損失を明確に自覚している。メジャーで最も回収しやすい改善点でもある。

  • オニールは答えが見えないことに苛立ちながらも、“勝つ前提”が揺れていない16ゲームあれば流れを作れる

視聴面では、予選ラウンドはBowlTVで配信され、決勝はThe CWで放送予定。日程は現地時間で2月20日(金)にマッチプレーラウンド1・22月21日(土)に殿堂入りと2025シーズン表彰式2月22日(日)に決勝が組まれている。

上位で不満が噴き出している大会ほど、マッチプレーは面白い。満足できない理由が明確な選手は、その理由を消した瞬間にスコアが跳ねる。PBA Players Championshipは今、順位よりも「修正の速度」が勝敗を決めるフェーズに入った。タケットの左が落ち着くのか。アンダーソンのスペアが締まるのか。オニールが“答え”を取り戻すのか。メジャーの本番は、ここからだ。

最新の順位表(スタンディング)は、こちらで確認できます。

 👉  2026 PBA Players Championship