2025「Weak & Smooth」Top3
過敏なレーンを安定させる“使える弱さ”
2025年「Weak & Smooth」Top3が映す“いま必要な弱さ”
曲がらないことは、武器になる
ボウリングボールの話題は、どうしても「どれだけ曲がるか」「どれだけ止まって返るか」に注目が集まりがちだ。けれど実戦では、その真逆が勝敗を分ける場面がある。手前の摩擦が強く、少し触れただけで反応が暴れる。ラインは見えているのに、毎投ちがう顔をする。そんな時に必要なのは、強いアングルではなく、扱いやすい“弱さ”だ。
今回取り上げるのは、2025年発売ボールの中から「Weak & Smooth(弱めでスムーズ)」カテゴリの上位を選ぶランキング企画。ここでいうWeak & Smoothとは、コアもカバーも“弱め”で、奥で急激な角度が出にくいタイプを指す。摩擦に過敏に反応してオーバー/アンダーになりにくいため、基本的に真っすぐ目のラインで組み立てやすいのが特徴だ。
そして、このカテゴリが輝くシーンもはっきりしている。古いウッドレーン/古いシンセティック、あるいは手前30ft付近で摩擦が強いセンター。手前で噛みすぎて失速したり、外が急に反応して曲がりすぎたりする環境で、必要以上に暴れず、スムーズに奥へ運べる。その「噛みすぎない安心感」こそが、弱スムーズの価値である。
2025年は“少なすぎる”からTop3になった
なぜTop5ではなくTop3なのか
通常はTop5形式でまとめる企画だが、2025年は事情が違う。弱スムーズに該当するリリースが合計6個しかないからだ。背景として、Brunswickがこの枠をあまり出さないこと、Stormがこの枠のリリースを減らしたことが語られ、Motivについては当初「ゼロ」と見られていたが、のちに「1個あった」と訂正される。要するに市場全体として、このレンジの新作が極端に少ない年だった。
だからこそ今回のランキングは、単なる順位付けではなく「このカテゴリがなぜ必要か」、そして「どんな弱さが実戦で効くか」を浮かび上がらせる内容になっている。弱いだけでは役に立たない。弱いのに使える。そこに価値がある。
第3位:Ebonite Turbo X──“弱スムーズの端”にいる万能選手
3位はEbonite Turbo X。旧Turboシリーズのリメイク風の名前をまといながら、実態は「名称を活かしてアップデートされた別物に近い」という紹介だ。
注目すべきは、このボールがリスト内でもやや強めで、弱スムーズ枠としては「ギリギリ該当」と評されている点。普通なら弱点にもなり得るが、ここでは逆に武器になっている。弱すぎるボールは、少しでもオイルが残ると機能しにくい。回転数が少ない人やスピード優位の人だと、なおさら「曲がらないまま終わる」感覚が出やすい。Turbo Xは、その“弱すぎ問題”を埋める。
結果として守備範囲が広い。スピードドミナント/バランス/レブドミナントまで対応でき、しかもハウスでも投げられる現実味がある。「気づけばバッグに残っているタイプ」のボールだ。
さらに面白いのが、レーンシャイン(艶)が想像以上に早く出るという話。強めカテゴリならネガティブに捉えられがちだが、弱スムーズではむしろ「より先まで進み、手前の摩擦を抜けやすくなる」方向に働く。つまり、このカテゴリの目的と整合している。価格も手頃で過小評価されがちだが、奥の動きはきちんとスムーズ。3位は“堅実な現場力”の評価と言える。
第2位:Motiv Max Thrill Hybrid──弱い顔をした“弱寄りミディアム”
2位はMotiv Max Thrill Hybrid。動画内でいったん「Motivはこの枠を出していない」と言った直後に、忘れていたとして訂正されて登場する。Max Thrill SolidとPearlの中間に当たるハイブリッド版で、構造はベーシック。しかし評価は驚くほど高い。
キーワードは「弱いカテゴリなのに妙に強い」。ここでの“強い”は、暴れる強さではなく、必要な分だけ仕事をする強さだ。とくに、手の中で起こしすぎず、ボールの後ろから押せるアップ・ザ・バック気味のタイプに相性が良く、「好きになる人が多い」ボールとして語られる。回転が少なめの人にとっても、弱い球としては強度がある分、レーンが少し難しくても置いていかれにくい。
ただし、位置づけは明確だ。これは“本当に弱い”というより、弱寄りのミディアム(medium-weak)。Motiv自体が「超弱い球」の選択肢をあまり出していない点も、弱点として触れられる。
それでも2位に入る理由は、実用性の厚さにある。角度が出すぎず(スムーズ寄り)コントロールしやすい。さらにサーフェス調整への反応が良いため、幅広い状況に寄せられる。価格は約120ドルで、コストパフォーマンス最強クラスという評価。体感の強さは「900 Global級にかなり近いが、ほんの少し弱い」程度とされ、値段以上のリターンがあるとして高順位になった。
第1位:Storm Ion Pro Solid──“矛盾を両立”した年間候補
1位はStorm Ion Pro Solid。オリジナルION Proの「シャイニーソリッド版」という位置づけだ。
普通なら「シャイニー=よりスムーズでマイルド」というイメージを持ちやすい。しかし動画内の評価は少し違う。なぜかオリジナルより「長く(先まで行き)・速い(奥での反応が早い)」。理屈では説明しづらいが、そう感じるというニュアンスで語られる。
ここで重要なのは、速いのに暴れないという点だ。先まで進む。奥で反応は早い。それでもコントロールできる。これは弱スムーズが目指す理想形に近い。手前の摩擦をいなしつつ、奥で必要な分だけ返ってくる。ハウスショットで「ION Proがやりたかった動き」を実現した存在として評価されるのも頷ける。
実例として、トーナメントやPBA選手が投げているのをよく見る、プロショップでも今年かなり人気、といった話が重なり、「今年を代表する1個」になり得るボールとして推される。色も含めて評判が良く、さまざまなスタイルに合う汎用性が“年間候補”とされる理由だ。
欠点は価格で、弱めカテゴリのボールなのに200ドルという点ははっきり不満として語られる(理想は170ドル程度)。ただ、それでも売れているようで、人気への影響は限定的だろうという見立てで締められる。高いが、替えが効きにくい。1位は“説得力のある完成度”の勝利である。
次点と総括:Top3外と「弱い球が増えない」現実
Top3外として挙げられたのは、Torpedo / Direct Hit / The Level / Hustle Earth。全体の評判や意見を踏まえると、「上位に入るほどではない」と整理されている。
そして最後に提示されるのが、弱いボールが市場で増えにくい理由だ。「売れにくいから各社が作らないのだろう」という推測は、身も蓋もないがリアルでもある。派手な曲がりは動画映えし、試投でも印象に残りやすい。一方、弱スムーズの価値は“困った時に効く”という性質上、購入の動機が後回しになりやすい。その結果として2025年は母数が少なく、Top3という形になった。
弱スムーズは“逃げ”ではなく“戦略”だ
2025年のWeak & Smooth Top3は、「弱い順」ではなく「役に立つ弱さ」を評価したランキングだった。
Turbo Xは弱すぎない強みで守備範囲を広げ、Max Thrill Hybridは弱寄りミディアムとしてコスパと調整幅を武器にし、Ion Pro Solidは「長いのに速いのにコントロールできる」という理想形で頂点に立った。
弱スムーズは、曲げたい時の主役ではない。だが、荒れた摩擦/古いレーン/過敏な反応に悩まされた瞬間に、主役級の価値を発揮する。バッグの中で最後まで残るのは、派手な一球ではなく、崩れた状況を立て直せる一球かもしれない。