強いのに扱える球はどれだ
2025年Strong & Smoothランキングで見えた現実解

2025年「Strong & Smooth」は“最強”ではなく読みやすい強さを選ぶ企画だった

今回の動画は「2025年の年間Top5企画」の一部で、独自に設けた6カテゴリのうち、Strong & Smooth(強くてスムーズ)部門のTop5を発表するものだ。対象期間は2024年12月1日〜2025年12月1日。この期間に一般リリースされたボールが評価対象になる。

まず押さえるべきは、Strong & Smoothが指す「強さ」の定義である。ここでの強さは、単にフック量が大きいことではない。オイルに負けず手前から噛み、奥で暴れすぎない。鋭角に切れ込むのではなく、曲がりが読みやすく、ライン取りやコンディション変化を制御できることが核になる。つまりこの部門は「強いのに扱いやすい」という矛盾しがちな要件を成立させたボールを選ぶ枠だ。

動画内で重要語として繰り返し登場するのが「cliff(クリフ・壁)」である。真ん中が濃く外が薄い、典型的なハウスショットの段差。Strong & Smoothは、この段差をどう越え、どう受け止め、どう“読みやすく”戦えるかが評価に直結する。さらに2025年はこの枠に該当するリリースが合計14個で、ブランド傾向としてはBrunswick系が多く、Motivも複数、Stormは意外と少なめ。結果としてランキングが“Brunswick寄りの顔ぶれ”になりやすい、という前置きも含め、企画は最初から状況説明が丁寧だ。

ただし、この動画の骨格はランキングよりも「Strong & Smoothが現代でどう必要とされ、どう不要になりつつあるか」という現実論にある。ハウスショットのオイル量は地域やセンターで差が大きく、さらに回転数が増える潮流もある。強すぎるスムーズ球の出番は以前ほど普遍ではない。その前提を置いたうえでなお、いま“必要な強さ”の代表例としてTop5を切り出した点に、この企画の意味がある。

 

Top5に共通した評価軸はクリフに強い制御性強いのに使える実戦性

第5位:Radical Evil Eye――“穴を開けた瞬間に性格が変わる”という設計思想

第5位はRadical Evil Eye。リスト内で唯一「シンメトリック」とされるが、動画の主張はここからが本題だ。指穴を開けた瞬間に“実質かなりアシンメトリックになる”という説明で、レイアウト次第で中間差(intermediate diff)を極端に増やしたり、逆に抑えたりできる。要するに一つの器で複数の性格を作れる、調整幅の広さが売りになる。

扱いとしては「マーケティングの誇張はさておき、実力として良いボール」という温度感で、無条件のNo.1ではないが条件が揃えば武器になる枠だ。特に刺さるのは、オイル量が多く、クリフが強いハウスショット。球を曲げにくい人、曲げ始めを“スムーズに遅く”作りたい人、まっすぐ目に投げたい人にハマりやすい。一方で、アップ・ザ・バック寄り(回転軸が立ちやすい)なタイプだと好みが分かれる可能性も示され、万能扱いしない姿勢がこの企画らしい。

Evil Eyeは「段差に強いが、無理に派手さを作らない」。Strong & Smoothの入口に置かれたのは、そういう“読みやすさの出発点”としての価値を買われたからだろう。

 

第4位:Storm EquinoX Solid――「必要なのに埋まっていない枠」を埋める、現実的な強さ

第4位はStorm EquinoX Solid。元祖EquinoXは“ハウスショット支配者”的な立ち位置だったが、Solid版は同系統でありながら、Pearlほどハウス特化の尖り方ではない、と説明される。コアは元祖と同じで、RG 2.48前後、DIFF 0.054、MB 0.018。そこにより強いA2S Solid系カバーを組み合わせ、手前の安定感を増した構成だ。

評価の芯は「バッグに必要なのに埋まっていない枠」という引用にある。最上位の“強すぎる球”ほどではないが、強いのに使える。ここでの“使える”は、単に曲がることではなく、深いライン(中〜内目)でも手前で迷子にならず、奥で暴れず、クリフを読みやすく越えられることを意味する。Evil Eyeよりも奥で深いラインを取りやすい傾向がある、という対比も分かりやすい。

さらに整理が鋭いのは、近年増えているレブドミナント(回転多め)のボウラーへの言及だ。回転が多い人ほど、上の球は“強ければ強いほど良い”になりにくい。強すぎるとやりすぎになるからこそ、EquinoX Solidの「やりすぎない強さ」が現実的だと語られる。

Strong & Smoothは、そもそも多くのボウラーが必要としない場面もある。そう言い切ったうえで、それでもこの枠を必要とするなら「これが現実解になりやすい」と置く。4位の説得力は、性能だけではなく、使用局面の言語化の上手さで支えられている。

 

第3位:Hammer Zero Mercy Solid――“史上級”を入れつつ、必要性を冷静に切り分ける

第3位はHammer Zero Mercy Solid。発売(周知)がかなり新しいのに上位に入れた理由として、Brunswickスタッフやツアー選手の評価が異常に高い点が挙げられる。最大の特徴は、カバーの強さを最重要視して語る語彙の強さだ。“現時点で地球上で一番フックするボール”“史上最強クラスのカバーストック”。新開発のHK22C²(スクエア)系カバーが、他よりも早くレーンを噛み、箱出しも1500グリットの超ダルで、とにかく手前から止まりに行く性格を持つ、と断言に近い。

一方で、動画が評価されるべきはここからである。強いから良い、では終わらない。「良い=誰にでも必要ではない」と明確に線を引く。視聴者の9割には不要で、ハウスでもスポーツでも“やりすぎ”になり得る。古いレーンパネルなど摩擦が出る環境では噛みすぎてコーナーピン量産のリスクもある、と具体的な失敗像まで置く。

それでも3位に入れたのは、州大会、ナショナルズ、アマ大規模戦など、これからのトーナメントシーズン“会場に溢れる”ほど使われると見ているからだ。つまり順位の根拠が「一般需要」ではなく「競技シーンでの存在感」にある。この切り分けは、ランキング企画にありがちな誤解を防ぐ。上位=買いではなく、上位=シーンで重要という読み方を提示している。

 

第2位:Track Paragon Shadow――Zero Mercyの“強すぎる問題”を埋める、トップフック枠の現実解

第2位はTrack Paragon Shadow。アシンメトリックのハイブリッドだが、挙動はソリッドっぽい安定感「少しだけ奥のキック」を足したイメージで、Strong & Smoothの中でも扱いやすさと幅の広さが評価される。Paragonシリーズ自体を「Track近年最高クラスのラインナップ」と高評価し、強いParagonコアと強めのQR-12 Hybrid系カバーで、差(DIFF)が非常に高くフレアも大きい。オイルへの強さが構造的に担保される、という整理だ。

この球の面白さは、性能だけでなく“扱われ方”にもある。「Brunswickの新作ラッシュで埋もれた」という背景が語られ、実力の割に注目されなかった“損な一球”として紹介される。ランキングが、単なる広告ではなく市場の見落としも拾い上げる企画になっている。

位置づけは明快だ。Zero Mercyみたいに「強すぎる」ほどは必要ない。でも、もう少し強いボールが欲しい人にとって、Paragon Shadowは“いちばん現実的な強い選択肢”になりやすい。レーンの摩擦が強い、投げる人が多くて荒れやすい、変化が早い――そんな状況では、Zero Mercyだと反応しすぎて扱いにくいことがある。その“強すぎる”部分をおさえつつ、必要な強さをちょうどよく補ってくれるのがParagon Shadowだ。さらに「Top5内で最も角度が出る」とされ、スムーズ枠にいながら奥での反応も欲しい人に刺さる。Strong & Smoothの中で“幅”を担当するのが2位、という配置が綺麗だ。

 

第1位:Motiv Jackal Onyx――「強いのに長く使える」という、2025年型の完成形

1位はMotiv Jackal Onyx。2025年1月発売で、序盤から投げ手本人も含め強烈な印象(早々に300ゲーム)を残したという語りが添えられる。結論としては、Jackal Ghostを別格としつつも、Motiv史上でも屈指に“強くてスムーズで、しかも使える”ジャッカルという評価に着地する。

Motivのこの枠は過去に当たり外れがあり(例:Jackal Ambushは微妙だった、という言及)、その反動もあってOnyxの完成度が際立つ、という語り口が効いている。強いコアと強いカバーで「本来は最もオイル向け」なのに、Duramax技術によってレーンシャインが進みにくく、摩擦がある環境でも性能が崩れにくい。ここが1位の決定打として語られる“強いのに寿命が長い”という価値である。

使用レンジの例として、オイル量(mL表現)で35でも25でも持つとし、ピンアクションも良好。ただし苦手は「ど真ん中を真っ直ぐ」=直進主体の攻め方で、球が早めにオフラインへ出たがる(ややクイック)面がある。ただ、そのクイックさはParagon Shadowに近い“許容できる速さ”で、表面加工(例:500グリット)で十分コントロールできる、と整理される。

さらに競合比較として、現代の“アシン・ソリッド三強”の文脈でStorm Ion Max、Jackal Onyx、Brunswick Mesmerizeが主要ライバルとして挙げられ、Zero Mercyもそこへ食い込みつつある、という見立てが示される。Onyxはその中でも「典型的に期待するアシン・ソリッドの完成形」に近い。強いだけでなく、読みやすく、崩れにくく、最後まで使える。Strong & Smoothというカテゴリ名を、そのまま製品に落とし込んだような存在として1位に置かれた。

 

ランキングの真意は「強さの序列」ではなく「需要の地図」だった

このTop5が示したのは、最強決定戦ではない。Strong & Smooth部門のリアルとは、強いボールの中から“読みやすく、制御でき、実戦で使える”ものを選び直すことだ。2025年は該当が14個で、Brunswick系が多いという土台があり、結果として“Brunswick寄りの顔ぶれ”になった。それでも上位選考の軸はブランドではなく、クリフを前提とした制御性と、強いのに使える(usability)実用性へ収束している。

特に象徴的なのが、Zero Mercy Solidの扱いだ。“規格外”を3位に置きながら、「9割の人には不要」と言い切る。この一文が、動画全体の信頼度を決めている。競技シーンでの需要と一般需要を切り分け、誰に何が必要かを言語化する。ランキングが「買わせる」ためではなく「間違って買わせない」ためにも機能している

そして1位のJackal Onyxは、その結論を体現する存在として選ばれた。最もオイル向けのスペックを持ちながら、摩擦下でも崩れにくい耐性を備え、“強いのに長く使える”。Strong & Smoothが現代で成立する理由があるとすれば、それはこの“使い切れる強さ”にある。