プロボウラーの頭の中 ― 「Inside the Pro Mind」から学ぶ勝つための思考法
ボウリングを趣味として楽しむ人にとっても、大会に出場する競技者にとっても、共通する課題があります。
「どうすれば大事な場面で実力を出し切れるのか」「緊張や不安をどう乗り越えるのか」。
今回ご紹介するのは、Storm社のサポートスタッフであり、元トップアマチュアとして数々の実績を持つロブ・ゴッチェル氏のインタビューです。彼はプロボウラーを日常的に支え、ツアーでの準備や調整を間近で見てきました。番組「Inside the Pro Mind」で語られた内容には、アマチュアにも役立つヒントが詰まっています。
1. 試合前に考えていること ― 環境を制する者が試合を制す
プロは会場に入った瞬間から試合が始まっています。最初にすることは環境の把握です。
駐車場やロッカールームの位置を確認する
プレイヤーサービスがどこにあるかを把握する
レーンの種類や表面の状態、どんなオイルマシンが使われているかを調べる
これらは一見些細なことですが、選手の安心感に直結します。余計な不安や焦りを取り除くことは、パフォーマンスを最大化するための第一歩です。
また、大会によっては食事やドリンクが充実している場合もあれば、ほとんど用意されていないこともあります。そのため、プロは自分の補給手段を必ず準備します。試合の合間にコンビニへ行く余裕はないため、開始前に水や軽食を確保しておくのです。
これは市大会や県大会に出るアマチュア選手にも同じことが言えます。「準備は試合前に終えておく」。この姿勢が大きな違いを生みます。
2. メンタルとフィジカル ― 本番で力を出すための黄金比率
ロブ氏は、本番での比率をこう語ります。
「25%がフィジカル、75%がメンタル」
普段の練習では筋トレやフォーム修正といったフィジカル面が中心です。しかし、大会当日は技術よりも精神的安定が大きな比重を占めます。
ロースコア環境(例:全米オープン)
200点でも好スコアとなる状況では、とにかく粘り強さが重要。1投ごとの集中力、そして「割れたら仕方ない」と切り替える力が問われます。ハイスコア環境
誰もがストライクを連発する状況では、1つの判断ミスが致命的。ボール選択やライン調整を即座に行える冷静さが必要です。
つまり、本番で結果を残すには「冷静に状況を見極め、自分をコントロールできるか」がカギとなります。
3. 初投球で得る情報 ― レーンを読む力
試合が始まって最初に投げるボールはベンチマークボールと呼ばれる信頼できる1球です。
たとえば「Phase II」や「Optimum Idol」といった、安定したボール反応を示すモデルが多く選ばれます。
最初の数投で観察するのは以下の点です。
ボールがフロントをスムーズに抜けるか
減速のタイミングはどこか
最終的にどれだけ曲がるか
これらを確認することで、その日のレーンコンディションが見えてきます。アマチュアでも「最初の投球をただ投げる」のでなく、情報収集の手段と考えるだけで、大会での結果が変わるはずです。
4. ボール選択と調整 ― 常に一歩先を読む
試合が進むにつれ、オイルは変化していきます。プロは「今の投球がどうだったか」だけでなく、「次はどう変わるか」を予測し続けます。
他の選手の使用ボールや立ち位置を観察
オイルの変化をチームや仲間と共有
変化が来る前にボールを替えたりラインを修正
「後手に回る」ことは致命的です。先に対応した選手がストライクを続ける一方、遅れた選手は割れやスプリットで流れを崩してしまいます。
さらに、プロは自分のお気に入りのボールを基準に判断を下します。「信頼できる1球」を持つことは、冷静な判断の軸となるからです。
5. プロのマインドセット ― 誤解と真実
多くの人が「プロは緊張しない」と考えます。しかし実際には、決勝やテレビ放送の舞台では必ず緊張しています。
そこで重要なのがルーティンです。
毎回同じ動作で構える
投げる前に深呼吸する
大会を楽しむ意識を持つ
緊張を完全に消すことはできません。しかし、「普段通りの行動」を繰り返すことで心を落ち着けるのです。これは誰にでも応用できるテクニックです。
6. プロの“秘密” ― 柔軟なオープンマインド
ロブ氏が明かした「秘密」とは、常にオープンマインドでいること。
理論やデータがあっても、実際に投げなければわかりません。
決めつけずに状況を受け入れる
実際の反応を見て柔軟に修正する
「ボールに答えを語らせる」姿勢を持つ
固定観念にとらわれず、状況に応じてすぐに切り替えられる柔軟性こそが、プロとアマチュアを分ける最大の違いです。
まとめ ― アマチュアが学べること
今回の「Inside the Pro Mind」で語られた内容を整理すると、プロの思考法は以下のようにまとめられます。
環境を制する者が試合を制す
本番の75%はメンタルで決まる
初投球は情報収集のツール
調整は後手に回らず、常に一歩先を読む
緊張は誰でもする、普段通りを守る
常にオープンマインドで柔軟に対応する
これらはプロだけでなく、市大会やリーグ戦に挑むアマチュアにとっても役立つ心構えです。技術練習と並行して、こうした「考え方」を身につければ、試合での成果は大きく変わるはずです。
ボウリングは技術のスポーツでありながら、心と準備が結果を左右するメンタルスポーツでもあります。次の大会では、ぜひプロの頭の中を意識してみてください。