
ショーン・ラッシュ、2025年ストーム・ラッキー・ラーセン・マスターズ優勝
PBA殿堂入り後、初のタイトル奪還
2025年のPBAツアー最終戦「ストーム・ラッキー・ラーセン・マスターズ」がスウェーデン・ヘルシングボリのオリンピア・ボウリングセンターで開催され、アメリカのベテランボウラー、ショーン・ラッシュが堂々の優勝を果たした。
今年、PBA殿堂入りを果たしたラッシュにとって、この勝利は自身のキャリアにとっても特別な意味を持つ。彼が最後にPBAツアータイトルを獲得したのは2021年のPBAチェサピーク・オープン以来であり、通算18回目のツアー優勝となった。
彼は右手または手首の負傷を抱えながらも、最後まで冷静に試合を運び、若手や実力者との接戦を制して栄冠を掴んだ。
接戦続きのトーナメントを制した道のり
予選ラウンド:安定したパフォーマンスでシード通過
ラッシュは予選ラウンドで安定したスコアを重ね、好成績を残すことで「ファイナルステップ1」を免除される特典を得た。これにより、彼は疲労を軽減しながら上位進出への好スタートを切ることができた。
次の「ファイナルステップ2」では、上位40名による6ゲーム制の短期決戦が行われた。このステージでは集中力と安定性が問われるが、ラッシュは持ち前の技術と経験で上位に食い込み、決勝トーナメントへの進出を決めた。
決勝トーナメント:1ピンを争う激戦が続く
ラウンド16では、フィンランドのカーロム・サロマと対戦。
このラウンドは3ゲームの合計スコアで勝敗を決める形式で、ラッシュは606対567で快勝した。精度の高いストライクと冷静なスペア処理が光った内容だった。
続く準々決勝では、イングランドのレイモンド・ティースと対戦。
ここでは586対584という、わずか2ピン差の劇的な勝利を収めた。1投ごとのプレッシャーが極限まで高まる中でも、ラッシュは落ち着きを失わず、終盤のスペア処理とカバーが勝敗を分けた。
準決勝:精神力と集中力の勝負
準決勝の相手は、2024年のPBAルーキー・オブ・ザ・イヤーであるネイト・パーチェス。試合は1ゲームマッチ形式で行われた。
ラッシュは1フレーム目にストライクを取るも、2フレーム目で「ポケット7-10スプリット」という難解な残りピンに遭遇し、流れが一時的に崩れる。中盤は苦しい展開が続いたが、ベテランとしての修正力を発揮し、9・10フレームで連続ストライクを記録。
一方、パーチェスはプレッシャーの中で3-6-9-10の残りピンをミスし、10ピンを残す痛恨の失投。結果、ラッシュが174対166で逆転勝利を収めた。
もう一つの準決勝と決勝戦:戦術と経験の勝利
第2の準決勝では、2018年のPBA年間最優秀選手であるアンドリュー・アンダーソンと、フィンランドのユホ・リッサネンが対戦。アンダーソンはスウェーデンのボウリングリーグにも参戦経験があり、“ホームチームプレイヤー”として観客の声援を受けたが、リッサネンが213対189で勝利する番狂わせを演じた。
決勝では、ラッシュとリッサネンが激突。
ラッシュは試合序盤、手の怪我の影響で投球が乱れ、最初のショットでヘッドピンの左側を直撃。明らかにリリース時にボールが滑ったような様子だった。
その後、ラッシュはスピードと回転を抑えた“スペアショットのような”投球スタイルに切り替え、右手の痛みを最小限に抑えながらゲームを展開。これについて、モーティブのツアーレップであるブレット・スパングラーは「何かが固まり、手の感覚がなくなっていた」と報告。
それでも、ラッシュは4連続ストライクを記録し、試合を優位に進めた。リッサネンは緊張とレーンコンディションに苦しみ、7フレーム目で1-2-4の残りピンをミスするなど精彩を欠いた。
最終フレーム、ラッシュは1マーク(スペアまたはストライク)で勝利を確定できる場面で、3連続ストライクを決めて試合を締めくくった。
試合後には、「これはベテランたちのための勝利だ」と語り、さらに「不安が頭を支配しそうになったとき、妻に電話した。彼女は『気持ちで勝てる、できることをやるだけよ』と言ってくれた」と、家族の支えの大きさも明かした。
真のチャンピオンにふさわしい勝利
ショーン・ラッシュの18回目のPBAタイトルは、単なる勝利ではない。年齢、怪我、精神的プレッシャー、すべてを乗り越えた“勝者の哲学”が凝縮された一勝だった。
彼は今後のPBAツアーでもすでに“レジェンド”としての地位を確立しており、そのプレーや姿勢は若手選手への大きな道しるべとなるだろう。
「心で勝つ」— それを証明したショーン・ラッシュの姿に、今後も注目が集まる。