親友との約束を果たした一投
マーク・クラーク、涙のPBA50世界選手権初優勝!

悲しみを乗り越えた挑戦の舞台

2025年7月、ミシガン州で開催されたPBA50ワールドシリーズ・オブ・ボウリングIII(WSOB III)にて、マーク・クラーク選手がキャリア初となるPBA50メジャータイトルを獲得しました。

しかし、その勝利の裏には深い悲しみがありました。大会のわずか12日前、クラーク選手は長年の友人であり、ツアールームメイトでもあったブライアン・デニスさんの突然の死という悲報を受け取ります。「もう彼と話すことは二度とできない」と感じながらも、彼は試合中、心の中で何度もデニスさんに語りかけていたと言います。

「これは僕たちがずっと夢見ていた瞬間だった」
そう語るクラーク選手の戦いには、友情と想いが強く宿っていました。

 

熱戦の裏にあった“心の声”と、重ねた奇跡

破竹の勢いで掴んだ第1シード

クラーク選手は予選およびマッチプレーで16勝2敗という圧巻の成績を記録し、決勝ステップラダーの第1シードに抜擢されました。この時点で彼の実力と集中力は群を抜いており、周囲からも「この大会は彼のもの」とささやかれるほどの仕上がりでした。

そして決勝戦の対戦相手は、ベテランでメジャーチャンピオンでもあるクリス・バーンズ選手。予選中も2人は共にラウンドを回っており、バーンズ選手は「クラークが話すタイプだから、自分も意識して会話し、彼が落ち着けるように努めた」と語っています。試合を超えて生まれたリスペクトと連帯感が、両者をタイトル戦へ導きました。

 

息詰まる攻防:一投一投に込めた“祈り”

試合序盤から両者は互いにダブル(連続ストライク)でスタートし、まさに“どちらがミスをするか”という緊迫の展開に。

  • 第3フレーム、バーンズ選手はソリッドな8ピンを残すものの丁寧にカバーし、その後も2つのストライクを追加。

  • クラーク選手は連続でシングルピンを取り、続いて勝負どころでのダブルストライクを決めます。右側へ歩きながらボールを見送ったその姿には、自信と覚悟が宿っていました。

両者は第6フレーム終了時点で136-136の同点。緊張感は最高潮に達します。

  • 第7フレーム、クラークは「ノーズ」へ突っ込む失投で3-6ピンを残すも、冷静にカバー。

  • 次の一投で放たれたボールに対し、彼は右腕を地面に向かって振り下ろすようにして「これは決まった」と確信。

一方のバーンズ選手は、7フレームでスペア、8フレームでストライク。9フレームで6-10ピンのカバーを成功させて望みを繋ぎました。

 

最後の投球、魂のストライク

9フレーム、クラークはこう思ったと言います。
「ただ、ブライアンみたいに投げよう。完璧を狙うな。彼ならどうするか。それだけを考えた」

その一投は、まさに祈りと信念の結晶のようなストライク。
10フレーム前に再度リラックスし、自分に言い聞かせるようにリラックスを取り戻し、もう一度…再ラックを取り、「良いショットを打つだけ」と集中しました。

10フレームでもストライクを決めた瞬間、彼は両拳を強く握りしめて叫びました。「これが僕の人生で一番感情を込めたショットだった」
それは、彼自身にも、見ていた誰にとっても特別な瞬間でした。

最後、バーンズは223点で終了。クラークは涙を拭きながら投げた最終投で9本を倒し、245点で勝利。PBA50初タイトルと25,000ドルの賞金を手にしました。

 

共に歩んできた証

この勝利は、ただのスポーツの結果ではありませんでした。

「この勝利は、彼(デニス)に、彼の奥さんレネーに、そして僕の家族に捧げたかった。みんなが悲しんでいたから、何か大きなものを残したかった」

また、「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」はポイント制ですが、今回の優勝で同じくメジャー大会で勝利したトム・ドハーティと並ぶ成績に。今後の活躍次第ではタイトル獲得の可能性も見えてきました。

ドハーティ選手はFacebookでこう称えています:
「今日、10フレームでクラークがやったことは一生忘れない。あんな場面で、あの状況で、あのパフォーマンス。書けと言われても書けない。感動したよ」

クラークが望むナショナルチャンピオンバナーの色は「ター・ヒールズブルーに白文字」。それは、生涯の親友だったブライアン・デニスが愛していた大学、ノースカロライナ・ターヒールズのカラーです。「彼がいつもそこにいてくれるように」という想いが込められています。

 

夢はまだ終わらない

夢は終わったと思っていたけど、終わってなかった。今なら言える。僕たちは、トップレベルで戦える力があった」

かつてアマチュア時代、全ての大会で勝っていたクラークとデニス。しかし、人生の選択は異なり、プロとしての道を歩むことは叶いませんでした。クラーク選手は今、家庭とキャリアを両立しながらも、再び夢に向かって挑み始めています。

「競争心を満たす何かを見つけて、それに全力を注ぐ。それが人生の価値だと思う」
これは、彼の子どもたちに向けたメッセージでもありました。

 

📌 次回PBA50ツアーは、ミシガン州ウエストランドで開催されるハムトラムク・シングルス。予選は火曜日に開始され、BowlTVでライブ配信予定です。

 

📝 最終順位 – PBA50世界選手権

1位:マーク・クラーク($25,000)
2位:クリス・バーンズ($13,000)
3位:ジョン・ジャナウィッツ($7,000)
4位:トム・ドハーティ($6,000)
5位:トム・ヘス($5,000)

 

🎳 マッチスコア一覧:

  • マッチ1:ジャナウィッツ 290 – ヘス 190

  • マッチ2:ジャナウィッツ 258 – ドハーティ 236

  • マッチ3:バーンズ 214 – ジャナウィッツ 202

  • 決勝:クラーク 245 – バーンズ 223

 

その一投が、人生を変える。クラークの勝利は、多くの人の心に響くストーリーでした。