PBA60初代世界チャンピオンにジャック・ジュレク選手が輝く

60歳以上の頂上決戦「PBA60 ワールドシリーズ・オブ・ボウリング」開催

2025年7月、アメリカ・オハイオ州の「Wayne Webb’s Columbus Bowl」にて、60歳以上のボウラーたちが競い合う史上初の大会「PBA60 ワールドシリーズ・オブ・ボウリング」が開催されました。
この大会は、6日間にわたり3種類の異なるオイルパターン
を攻略するという極めて高度な挑戦。参加者は約140名、経験と技術、そして精神力を武器に、熾烈な戦いが繰り広げられました。

その中で頂点に立ったのは、ジャック・ジュレク(Jack Jurek)選手。ステップラダーファイナルで圧巻のパフォーマンスを見せ、初代「PBA60ワールドチャンピオン」に輝きました。

 

精神力と技術で頂点に立ったジャック・ジュレク選手の戦い

セミファイナルでの冷静な判断が勝負の流れを変えた

準決勝では、ジュレク選手とクリス・ウォーレン選手が対戦。両者とも序盤からストライクを連発する展開となりました。ジュレク選手は3フレーム目に4-6-7スプリットを残してオープンフレーム。その後も苦しい展開が続きましたが、第5フレームでのボールチェンジという決断が流れを一変させました。

その後は8連続ストライクを記録し、スコアは255。ウォーレン選手も後半に5連続ストライクを決める追い上げを見せましたが、スコアは245で惜敗。

この試合では、両者合わせて19本のストライクが飛び出すなど、レベルの高い内容に観客からも大きな拍手が送られました。

 

決勝戦はトップシードを下す堂々たる勝利

決勝戦では、予選1位通過のブライアン・ルクレア(Brian LeClair)選手と対戦。ジュレク選手は序盤から4連続ストライクでリズムを掴み、その後も安定した投球で主導権を握ります。

一方のルクレア選手は、中盤に数回のダブルを記録するも、ジュレク選手の安定感に追いつくことができず、最終スコアは245対215。ジュレク選手が堂々たる勝利でタイトルを獲得しました。

試合後、ジュレク選手は「まだ自分が優勝したなんて信じられない」と語り、謙虚な姿勢を見せました。「この大会が新設のメジャー大会で、素晴らしい選手たちが出場している中で、自分がトロフィーを手にできたことは本当に光栄。子どもの頃からの夢が叶った瞬間だった」と感慨深げに話しました。

 

精神的な葛藤と母親との思い出が勝利の裏に

ジュレク選手の今回の勝利の背景には、家族との別れという深い苦悩がありました。近年は母親の介護のために数シーズンを欠場。母の死後は「人生で最も暗い6か月を過ごした」と語ります。

しかし、そんな中でも再びボウリングへの情熱を取り戻し、「子どもの頃から愛していた競技に戻れたことが、人生の中での幸運だった」と語る姿は、多くのファンの心を打ちました。

また今シーズンは「精神的にうまくいかない時間が多かった」とも述べ、「ラスベガスの大会では自分に腹が立ったし、過去の“悪魔”が再び顔を出したようだった」と心境を明かしました。

それでも、「脳は良くも悪くも働くもの。これも小さな壁。家に帰ったらしっかりと向き合うつもり」と、前向きな姿勢を示しました。

 

仲間との絆がもたらした勝利

ジュレク選手は、決勝戦の対戦相手であり、友人でもあるブライアン・ルクレア選手に感謝の言葉を述べています。「彼のプレーを間近で見て、自分のレーンの攻略方法を学んだ。その通りにプレーしたら上手くいった」とコメント。

スコアではこれまでルクレアに何度も負けてきた。今回は自分が勝てたが、彼が勝ってもおかしくなかった」と語り、ライバルへの敬意を忘れませんでした。

 

準決勝以前もレジェンドたちの激闘が続く

大会では、アムレト・モナチェリ選手が3大会連続でステップラダーに進出。初戦ではピート・ウェバー選手と対戦し、6連続ストライクを含むスコア259で快勝。

続く第2戦では、ウォーレン選手に238対228で惜敗しましたが、ベテランらしい安定感を見せました。

 

60歳以上のレジェンドたちが魅せる“もう一つの世界”

ジュレク選手の優勝で幕を閉じた第1回PBA60ワールドチャンピオンシップは、技術・精神力・そして人間性が試される濃密な大会となりました。
60歳を超えてもなお、最高の舞台で競い合うレジェンドたちの姿は、多くのファンに勇気と希望を与えたことでしょう。

次回は「PBA50 ワールドシリーズ・オブ・ボウリングIII」が開幕予定。7月11日、ミシガン州ジャクソンのJAX 60で開催され、5つのタイトルが争われます。シニア世代のボウラーたちの戦いは、まだまだ続きます。

 

【大会最終順位・賞金】

1位:ジャック・ジュレク 15,000ドル
2位:ブライアン・ルクレア 8,000ドル
3位:クリス・ウォーレン 6,000ドル
4位:アムレト・モナチェリ 5,000ドル
5位:ピート・ウェバー 4,000ドル

 

【決勝ラウンド スコア一覧】

  • 試合1:モナチェリ 259 – 162 ウェバー

  • 試合2:ウォーレン 238 – 228 モナチェリ

  • 試合3:ジュレク 255 – 245 ウォーレン

  • 決勝戦:ジュレク 245 – 215 ルクレア

 

今後もシニアボウリング界の熱い戦いに注目が集まります。